陰の実力者…?   作:ponpon3

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 七陰列伝の第03話です。

 基本、カゲマス準拠ですが…

 今回は、上中下の3部作の上となっています。


 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレています。

 …当然、みんなの性格や嗜好も変わってしまいました。

 そして、シドへの……教育も始まっているため、七陰との距離感が違います。


 ──これはそんな「if」の物語──


陰の… 七陰列伝 第03話「対決!アレクサンドリアの古き龍」上

 

 その日もラムダは、シャドウガーデンの構成員 ──メンバーズとナンバーズ── を鍛えていた。

 

 現在シャドウガーデンは構成員が100名を超え急速に拡大しつつある。

 

 一般の構成員には、100番以降の番号が与えられる、それをメンバーズ(番号持ち)と呼ぶ。それ以外に、25番~99番までの上位メンバーズに、ナンバーズという『記号』(ギリシャ文字)持ちの精鋭、後は特例としての番外(エクストラ)、という仕組みもできた。

 

 自分も『λ』(ラムダ)というナンバーズ(記号持ち)の1人だ。

 

 ラムダも、ほぼ一年前に、教団から、──悪魔憑きからガーデンに助けられた古参の1人だった。

 

 その後、元ベガルタ帝国軍所属の高位軍人だったこと、諜報員として活動していたことを打ち明けたこともあってか、アルファ様に教官としてシャドウ様へと推薦された……されてしまったのだ。

 

 結果、内家戴天流剣術を叩き込まれ、氣を目覚めさせられ、正しく促成栽培されて、──お礼として失明していた右眼を再生されて──内家戴天流剣術師範代理と諜報活動の教官となった。

 

 もちろん内家戴天流剣術を修行中の身ではあるが、師範代理……の代理程度には仕上がったのではないだろうか……? もう二度と、あのような1日が48時間あるような特訓 ──シャドウ様の氣と魔力、イータ様のスペシャルドリンクでドーピング?されて無理やりヤらされる── は受けたくない。

 

「……よしっ! 次っ!」

 

 <ザシュッ> メンバーズが立てられ直径が20cmほどの丸太に斬りかかる。滑らか断面で最後まで斬り落とされていた。

 

「……よしっ! これより30分休憩! 水分補給を怠るなよ!」

 

 ……シャドウガーデンの構成員は、その出自 ──元悪魔憑きであること── から、みな訓練に熱心だ。シャドウ様が、メンバーズの中からは氣の適正が高い者へ、ナンバーズには全員に、氣──内家戴天流の修行を直接指導してくれる……、ということもある。

 

 だが、これ以上増えるとなると、充分な訓練スペースを確保するのも、一苦労になりそうだな……

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「第9回、七陰会議を始めます。」

 

 (アルファ)は、シャドウガーデンを世界に進出させることを決めてから、だいたい2ヶ月ほど経ったことに感慨を覚えながら七陰を見回した。

 

「……拠点……狭い……。」

 

 会議の冒頭にイータが呟いた。デルタも相づちを打つ。

 

「なのです! 狭いのです! 群れが大きくなるのは、嬉しいのです! でも、狭くなるのは、嬉しくないのです!」

 

「ラムダが行っている構成員への訓練にも、支障が出始めていますし。」

 

 イプシロンも訓練の現状を報告する。

 

「私の計算によれば、今のペースで構成員が増え続けますと……、あと数ヶ月程でこの拠点は一杯になってしまいます。」

 

「構成員の居住スペースの空きも、限界に近づいています。実際、暮らすのが厳しくなり始めている状態ですね。」

 

 ガンマとベータが自身の予想を述べた。

 

 (アルファ)は、再度七陰を見回してから話し始めた。

 

 さすがに、これ以上ゼータのことを待てそうにないわね。今日中に帰還するから、その時点の候補の中から、新しい拠点となりそうな場所を絞り込みましょう。

 

「それじゃあ、ゼータが戻って来るまで、会議は一時中断ですね。」

 

 ええ、イプシロン。紅茶だしてもらってもいい?

 

「……ん、じゃあ、寝る……」

 

「お前、いつもグースカ寝てるなぁ。」

 

「デルタも会議ではだいたい寝てますよね……?」

 

 イプシロンが紅茶を注ぎながらつっこんだ。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 いきなり扉の開く音がした。さすがゼータ気配を感じさせない。

 

「…ただいま。」

 

「あっ、メス猫が帰ってきた。」

 

「もしかして、会議中だった?」

 

 おかえりなさい、ゼータ。今は一時中断中よ。あなたが戻り次第、再開する予定だったのだけど……、どうする? 少し休んでも構わないわよ?

 

「いや、すぐ再開してもらっても構わない。時間をかけさせてもらった分、よさげな場所、見つかったから。」

 

「いいお家……どこ……!」

 

 イータが飛び起きた。

 

「それでは、会議を再開しましょう。アルファ様、よろしいですか?」

 

 ええ、それでゼータいい場所というのは?

 

「…『古都アレクサンドリア』」

 

(いにしえ)(みやこ)……? 聞いたことがありませんね……」

 

 そう、ガンマも……、私も知らないわ。ベータは何か知ってるかしら?

 

「…えっと、一応知っています。」

 

 ベータが少し考えてから答えた。

 

「聖地リンドブルムのさらに東……『深淵の森』を抜けた先に存在するという、古代の伝説に語られている感じです。」

 

 と、エルフの古書にありました、とのこと。

 

「ですが、あくまで伝説、言い伝えにとどまる話で、その実在は確認されていない場所です。そもそも『深淵の森』自体が、侵入したら二度と出られないとされている、毒の霧に満ちた危険な森なので……」

 

「…だけど、誰にも邪魔されない場所としては、適切なはず。仮に古都がなくたって、拠点候補としては最有力だと思っている。」

 

 ゼータは、机に身を乗り出しながら力説する。

 

「邪魔されない場所であることが重要なのは、確かにその通りではありますが……」

 

 (アルファ)がメリット・デメリットについて考えを巡らせていると……

 

「アルファ様……。」

 

 イプシロンが声をかけてきた。

 

「なにか、悩んでいるようです、が……」

 

 これは以前、シドがリンドブルムの東の方向について話していたことがあって、たしか……

 

 ──リンドブルムより東の方から、何か大きい存在を感じたんだ。当時は、シャドウ・ゲート*1も無くて、距離も遠いから拠点候補から外したんだ──

 

 彼女はそう言っていたわ。

 

「まさかシャドウ様は……古都アレクサンドリアの存在を感知していた?」

 

「つまり、……古都アレクサンドリアは実在している!」

 

 ガンマとベータが驚いて言った。

 

「ならば、私たちの取るべき選択は……」

 

「『深淵の森』を抜けるための準備と、その先にある古都アレクサンドリアの調査、ね。」

 

 イプシロンとゼータがそう〆た。

 

 そうね、近日中に、戦力となる構成員(ナンバーズ)を集めて『深淵の森』の踏破を行いましょう……

 

「おおっ、デルタ知っているのです! それって『ピクニック』というやつなのです。」

 

「……私は……お出かけは……パスで……」

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「ねえ、アルファ。先日、デルタが修行中に言ってきたけど。みんなでピクニックに行く、って。」

 

「ピクニック……?、ああ、新しい拠点の調査のことね。」

 

シドが少し振り向きながら聞いてきたので、耳元で囁いた。

 

「ガーデンとして世界に進出して活動を本格化させていく私たちが、常にあなたの近くにいすぎては、あなたの存在をこの世界に ──ディアボロス教団に気付かせてしまう。」

 

 そのままシドを後ろからギュッと両手で抱きしめる。

 

「そうならないように、シャドウガーデンの拠点を、人里離れた場所……聖地リンドブルムのさらに東『深淵の森』の奥へと移すつもりなの。懸念としては、深淵の森を巡る言い伝えの中に、『霧の龍』という超越的な存在が語られていることね。」

 

 少しくすぐったいのかモゾモゾしている。

 

「まさか、そのままドラゴンが出てくるとは思わないけど……、強力なモンスターについて示した比喩表現かもしれない。だから、用心しつつ、行動するつもりよ。」

 

「ドラゴンに、新拠点の調査ね。ひゃ……でも、リンドブルムの東方向で『霧の龍』の伝承……となると、私もついていった方が良さそう。レミーとの入れ代わりを調整するから、日時が決まったら教えてね。」

 

「ありがとう、シド。できるだけ七陰でやり遂げたいけれど……、いざというときには助けてね。」

 

 もちろん!とうなずくシドかわいい。

 

「じゃあ、次は髪を洗ってあげるから、洗い場のイスに座って目を瞑って頭をこっちに向けて。」

 

「はーい。」

 

 よしよし、いい娘ね。

 ──ジュルリ

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 シドをカゲノー家に送ってきたわ。

 

 イータ?

 

「盗聴防止……魔道具、正常動作を……確認……」

 

「カイとオメガも配置に着いています。」

 

 それでは、第9回裏七陰会議をはじめるわよ。

 

 レミー? 最近のシドの様子はどう?

 

「かれこれ1年と2ヶ月くらいだっけー。最近ようやく女の子らしいお洒落な服装のときでも照れなくなってきたかなー。ぼくがワザとそういう風な服をお姉ちゃんと選んでいるからねー。」

 

 レミー、GJよ。

 

「『お姉ちゃんと選んだ服着ないの?』『お揃いを着ないの?』って、いわれて、おとなしく着てるよー。同調(シンクロ)したときに文句たらたらだけどねー。」

 

 それはコラレタルダメージ?というやつね。

 

「ノンノン、コラテラルダメージねー。でさー。お姉ちゃんもママも乗っちゃってさ、お揃いのロングヘアー「主の髪はストレートミディアムボブでいい」……ちょっとゼータく「君読みしていいのは主だけ」……アッハイ。ゼータ、刀下げて……」

 

 ゼータ …イータも …話が進まないわ。

 

 ゼータは刀をメタルスライムに戻し収納し、イータはメタルスライムの刀を萌え袖に戻した。

 

「もう少しぼくにやさしくしてよー。」

 

「無理……マスターの……声で騙して……(からか)われた……恨みは……「忘れない。」」

 

「過去のぼくー! なんで二人にヤっちゃったんだよー!」

 

 と・に・か・く、シドは着飾ることへの抵抗が低くなってきたのね?

 ──お風呂も寝るときも一緒、に抵抗無くなってきているのよ(黒笑)──

 

「アルファもアタリがキツイよねー。まぁそうだよー。男っぽい(無防備)系からは離れたかなぁー。」

 

「主様が着飾ることを覚えてくだされば、幾らでも洋服を用意いたしますのに……」

 ──個人的には凛々しい系とか──

 ──カワイイ系もありよね──

 ──あえて……ボーイッシュに、する……のも──

 ──わたしとお揃いのセーラー服とか♪──

 ──猫耳付けてお揃いパーカーとか……いいね──

 ──えっと、お、お揃いのツインテールとか──

 

「イプシロン、それ髪型だよー。デルタは待てできてよしー。」

 

 ますます魅力的になるシドの貞操を悪い虫から守り抜くのよ!

 

「「「「「「おー」」」」」」

 

「……虫からだけじゃなくて、心も守ってねー。」

 

 それでシドのアライメントは……

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 数日後、毒の霧を避けながら『深淵の森』に挑む一行がいた。

 

「それっ!」

 

 ベータが、愛用している黒いコンパウンド・ボウから矢を放った。

 

 <スンンンン> 

 

 軽い音をたてて矢がモンスターの頭部を貫いた。

 

「ふぅっ……やりました。」

 

「なーんだ、弱っちいのです! 危険な森に棲んでるんだから、骨のある奴がいっぱいだと思ってたのです。」

 

「確かに、思ったよりも、モンスターに特別な変異が見られませんね。」

 

「変異……? その、もう少しわかりやすく言うのです、ベータ。」

 

 ベータの話を纏めると、以下の通りだった。

 

 『深淵の森』は毒の霧で満ちている。にもかかわらず、モンスターもこの霧に適応できておらず、霧の毒素を避けて生息していること。つまり、この霧が発生してから種族に変化が起こるほどの時間は経っていないこと。

 

「私たちも、毒の霧を避けて森へと入ったわけですが……。」

 

「モンスターが適用できていない……、んじゃ、この霧は、自然のものじゃないってことです!?」

 

「あらデルタ、珍しく冴えてるじゃない。恐らくは、そうだと考えられるわ。」

 

「そんなの当たり前なのです、ガンマ! 自然の機嫌をわからない奴が、狩りをできるわけないのです! お前、かしこいのに、こんなこともわかってないのですーー? そんなんだから、いつまで経っても命中率が悪いんですよ?」

 

「くっ……、デルタ……。ともかく、結論として、この霧は何か特異な存在によって、意図的に生み出された現象と考えるべきですね。」

 

「まさかその特異な存在こそが、伝説に記述されている『霧の龍』だとでも……?」

 

 イプシロンが聞き返す。それにゼータが答えた。

 

「どうかな 伝説は伝説にすぎない。裏付けのない言い伝えは、噂とさして変わりないよ。でも、わざわざ記録されていることといい、実際こうして立ち込めている、毒の霧といい……、この森に住まう相手は一筋縄じゃ行かない存在なのは、確かだろうね。」

 

 首をすくめると続けて言った。

 

「だからこそ、この森を、隠れ家に利用できれば、さ。」

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「七陰の皆様も、警戒しておられるようですね。」

 

 ええ、ラムダ。遠足気分でいられるよりは、よっぽどいいわ。

 

 特にデルタは……即座に、この森が危険な領域だと悟った。今回はあの子の勘の良さに助けられる局面が、多くなりそうね。

 

「ゼータ様の事前調査に基づいて、準備も可能な限り整え、森での展開を妨げない程度に、構成員(ナンバーズ)も連れてきていますが……」

 

 ラムダ……、あなたは不安?

 

「常日頃から不安に身構え、様々な備えを怠らないのが、構成員を訓練し、隊の編成を行う、私の仕事ですから。」

 

 ……少し話が変わるのだけど、1つ、答えづらい質問をしてもいいかしら?

 

「答えづらいことでも、答えられることであれば、どのようなことでもお答えいたします。」

 

 そうね……、高位の軍務に携わっていたであろう、あなたの目から見て……、私以外の七陰の剣術(戴天流剣術)の仕上がりを、どう感じた?

 

「……そうですね。忌憚のない意見を述べさせていただくならば……、個々の能力差を横に置いてなお、一部に偏りを感じます。元々は、シャドウ様の弟子として、七陰の皆様に、剣術(内家戴天流剣術)の修行をされていた、とうかがっております……。」

 

 ……シャドウは、私たち七陰を弟子として、内家戴天流を……、彼女の剣と同じ形状の剣を使わせて、同じ刀剣の型 ──二八刀三六剣、しめて六四套路── を学ばせていたわ。

 

 でも、あるときを境に、自分自身で鍛錬を積み、個性を伸ばすように命じたわ。そういう経緯もあって、私たち七陰は、それぞれが好みの得物も使うようになったのだけど……

 

「そうですか……、その影響かどうかは分かりませんが、特にイプシロン様の剣術において、懸念すべき要素があります。恐らく、当人の創造性によるものなのでしょうが……。」

 

「他の七陰の方々が学んだ、シャドウ様の剣術とは異なり、魔力制御の重視に偏った、やや我流よりのスタイルで、太刀ち筋や斬撃の痕を、心得のある者が見れば、一目でイプシロン様の剣術だと分かるほどには、個性的です。」

 

「また、ガンマ様とデルタ様についても、どちらかというと力任せでシンプルに過ぎる剣術に仕上がっておりますので、何らかの形で、シャドウ様に剣術(内家戴天流剣術)の再修行してもらう必要性あり……、と考えます。」

 

 それでも私たちがシャドウガーデンとして行動する以上、七陰やガーデンの構成員が、シャドウの剣術(内家戴天流剣術)を習得することは、絶対条件よ。

 

 ラムダ……、あなたの手を、これからも煩わせることになるけど。

 

「それについては、お気遣いなく。そのために、私は今、こうしてここにいるのですから。 すべてはシャドウ様とシャドウガーデンのために。」

 

「……いや、(シャドウ)の前で堂々と言わないでほしいわ。っていうか、そこまで剣術(内家戴天流剣術)に拘らなくてもいいのだけれど……七陰は愛弟子でナンバーズは弟子だから別だけれども……」

 

 

 

*1
─ど◇でも●アの術式を刻んだメタルスライム─





 七陰列伝第03話です。

 基本はカゲマスですが、七陰の性格や嗜好も変わっています。

 それに本作の七陰列伝ではシドから旅立っていませんし、距離感も全然違います。

 さらに裏七陰会議で示された、シドへの…そう教育が明らかになってきます。

 それ以外にもレミーのヤッちまった話とかもあるし、どこに入れようかなぁ。


 この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。

 なお、メンバーズ、ナンバーズ等の設定は本作品での捏造設定です。
(まさかニューが**番だったとは…)

 他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。
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