黒の組織の幹部だけど有名アイドルの双子の姉妹なんです   作:黒っぽいアイドル擬き

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警察達の追及

ジンとの仕事を終えた私は疲れを覚えつつ、変装を解いてそのままアイ達の所へ戻ろうとしていた。

 

ジンはジンでとっとと帰ったし、送ってもくれなかったけどまぁ、ジンみたいに怪しい男と帰ったらアイに怪しまれるから送ってくれるって言われても断ってるけどね。

 

私はいつもの様にそのまま人混みに紛れ込んでしまおうとした時。

 

「そこの君。ちょっと待ってくれないかな?」

 

後ろから声を掛けられた。

 

私は後ろを振り向くとそこにはスーツを着た中年風の男が立っており、声を掛けられるにしても歳を取り過ぎている事に私が首を傾げて疑問を抱いていると懐から手帳を取り出して中を開いて見せてきた。

 

【警部補 平泉 正治郎】

 

紛れもない警察手帳だった。

 

バッチもバッチリ……いや、受け狙いじゃないけど警察バッチまでちゃんと見せてきたのは間違いなく警察官だと伝える為、私の事を未成年だと知っていると言う事になる。

 

普通、中年の男の人が私みたいに若い女の子に声なんて掛ける目的が無いし最悪、身体目的で近付いて来るくらいだし。

 

もしかしてアイと間違えた?

 

カミキヒカルを殺した事件の事をまだ追ってるみたいだし、アイの聴取はまだみたいだしね。

 

……だとしたら面倒ね。

 

偶然見つけた私をアイではないと悟れば私の存在は公の場に引き摺り出される。

 

アイ達に迷惑が被るし、組織の事もある。

 

少しだけアイに成り済まして適当にあしらおうかしら?

 

「あの……刑事さんが何の用ですか?あの事件の聴取ならまた後日に」

 

「すまないね。君がアイではないのは知っている。いや、正確には今、確かめた。これを聞きたまえ」

 

差し出されたのは携帯。

 

私は言われるがままに取って耳を当てると。

 

《あの、ユメちゃん?聞こえてる?私だけど?》

 

「ッ!?」

 

私は驚いた。

 

アイの所にも刑事がいるのか平泉の携帯からアイの声が聞こえた。

 

流石に動揺する私に平泉は携帯を私から取り、ある程度までアイとやり取りすると懐にしまい鋭い目付きで私を見てくる。

 

「これで君がアイではない別人だと証明された。さて……君は何者だ?どうして関係者である事を黙っていた?」

 

「別に?隠す事に何か問題でも?」

 

「ある事件においておかしな出来事があった……カミキヒカルを知ってるか?」

 

「あぁ……確か死んだんですよね?それが何か?私、関係ないですし」

 

私は惚けて見せたけど平泉はそれは通じないとばかりに続けてくる。

 

「カミキヒカルはある人物に呼び出されて殺された。そのある人物はアイドルをやっている星野アイではないかとし、すぐに終わると思われた捜査は難航した。我々はアイやその関係者が疑わしいと捜査し、徹底的に調べたが……全員、確かで確固たるアリバイがあった。俺と含めて全員で頭を抱えたよ。君の存在を知るまではな」

 

「へぇ、私の存在を……どうやって私を探りだしたのやら」

 

私は本当に何処から私の存在が知れたのか疑問に思う中、平泉はまた携帯を取り出して画面を見せてくるとそこには私の写された写真があった。

 

私は目を見開いて見ていたら平泉は鼻で笑ってきた。

 

「これはツイッターに投稿された物だ。その反応を見るからにどうやら黙って撮られたらしいな。君の失敗はあまりにアイと顔が似過ぎたと言った所かな?」

 

「……で?それがどうして殺人になるの?私の顔がアイに似てたら殺人犯になるの?教えてよ刑事さん……証拠は揃えてるんだよね?」

 

「ふん。俺は一言も君を殺人犯だとは言ってないぞ。……まだ、容疑者の一人だと言ったつもりだけどね」

 

「へぇ……私が容疑者ね……証拠だけじゃなく、関係性も視野に入れないと捕まらないわよ?証拠、関係性、動機。あらゆる物を突き付けなければ犯人は捕まらない。私もそうよね?」

 

「そうだ。だが、必ず見つけてみせるさ。関係性も動機もそして、証拠もね」  

 

平泉のその言葉に私は苛立ちを覚えながらニコやかに微笑んで見せた。

 

「それは楽しみですね。なら、いくらでも探してみて下さい。……見つかる訳がないですけどね」

 

アイとの"関係性"はともかく、動機と証拠は分かる事はない。

 

動機はカミキヒカルを殺害した理由がカミキヒカルをアイと子供達から永遠に遠ざける為。

 

アイ自身も子供の事で秘密を固く閉ざすのは目に見えてるし、斎藤達も知らぬ存ぜぬと言うのは間違いないし、子供達に至っては父親を知らない。

 

だから、動機不明になる。

 

証拠はサイレンサー付きのワルサーP99だけど……あれは少し陸から離れた海にパーツを細かく分解して投げ捨てたから探す以前の問題だし、監視カメラに頼ろうにもカミキヒカルを殺す所だけ私の素顔を出してたし、何より殺害現場にはカメラ一つ無い事も確認済み。

 

つまり、接触前と接触後の私は"別人の顔"で移動をしていたと言う事。

 

勿論、指紋も残しはしなかった。

 

徹底的に証拠を消し去った以上、アイの秘密に気付いて、カミキヒカルの非道を知って、私の動機を悟っても絶対に捕まらないのよ。

 

人を裁く為には確かな証拠が必要……それが今の法律である以上は私を犯人として引っ張って例え裁判に持ち込めたとしても無罪になる。

 

まぁ、その前に私はジン達に消されるだろうから真実は永遠に闇の中に入る……だから、警察の勝利はあり得ない。

 

だから平泉……貴方は今夜、私に消されなさい

 

「今日はもう疲れた。さよなら刑事さん。また、会いましょう……」

 

私はそれだけを言うと平泉を残してその場から去った。

 

~別視点side~

 

平泉 政治郎は事件の黒幕であろう"アイに似た少女"を見つけ出した。

 

だが、戸籍どころか出生届すら存在せず、名前も分からない。

 

警察の全てを使ってもこの"少女"の名前を最近まで何一つ分からなかった。

 

星野アイから得た情報は"夜空ユメ"と言う名前だけ。

 

それ以外の全ては全く分からない……分からな過ぎる。

 

経歴不明、学歴不明、職歴不明。

 

全て不明。

 

「(一体、何者なんだ?明らかに無さすぎる……まるで最初から存在なんてしていなかったようだ……)」

 

平泉は明らかに隠されたユメと言う存在に何かとても危険な存在に触れてしまった様な気がした。

 

だが、賽は投げられた。

 

カミキヒカルは彼女が殺したと考えれば全ての辻褄が合う。

 

素人にアイドルの真似事を……アイドルとしての歴の長いアイの真似事など顔が似ていても誤魔化す事は出来ない。

 

"自分の娘がそう言うんだ……間違いない"。

 

そう信じてユメに対しての調査をする為に警視庁に帰った。

 

~side終了~

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朝から外出したけど今は太陽が沈む様な夕暮れ時まで私は念入りな準備をしていた。

 

必要な凶器は"紐"。

 

舞台は人通りの少ない神社。

 

演じるのは一人の男の悲劇の自殺。

 

自殺理由は……"私を死なせた"からで良いや。

 

「うん、少し帰りが遅くなるんだ」

 

《大丈夫?刑事さん達の事でじゃないよね?》

 

「大丈夫だよ。それじゃ、晩御飯までには何とか帰れるからね」

 

私はそう言ってアイとの連絡を終えて携帯をしまうと自分を殺す用意を整えた

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夜になり、私は人通りの無い神社に平泉を呼び出し、そして彼が来た。

 

「何の用だ?未成年がこんな夜中にうろちょろするな」

 

平泉から警察として全うな事を言われたけど私は気にせずに感心した顔を見せてみた。

 

「へぇ、本当に一人で来たんだ……他の気配が何処にもない。それにしても私の年齢を知ってたんだ?」

 

「アイとの関係性を見ればすぐに察せれるさ。それで?結局、何の用だ?」

 

「あのね平泉刑事。私、カミキヒカルを殺ったんだ」

 

私の突然の告白に平泉は目を見開いているけど私はそれに構わず足元に置いてあった液体を入れた容器を手に取る。

 

そして足元に入念にバラ蒔く。

 

「ッ!?何をするつもりだ!」

 

「私は罪を償う!でも、刑務所なんて行ってやらない!奴の為なんかに長い年月を牢屋で過ごしてやるものか!」

 

私はそう言って容器を投げ捨てるとマッチを擦って火を点けると地面にそのまま落とした。

 

「止めろ!早まるな!!」

 

液体がガソリンだと考えた平泉は大慌てで焼けどする事も厭わずに飛び込んでマッチを空中で手で取り、そしてそのまま液体の上からダイブして濡れてしまった。

 

「これは……水?」

 

平泉が浴びた液体が"水"だと言う事に困惑している隙に私は平泉の顔の前から屈み込む形で紐を取り出して平泉の首に巻き付けるとそのまま強く引っ張って上に持ち上げ、そのまま背中に回り込んでエビ反りにする形で背中に座って抑え込み、紐を引っ張り続ける。

 

「ぐ、ぐうぅッ!?」

 

これなら力の強い男、鍛え抜かれた刑事と言えど抵抗らしい抵抗も出来ずに窒息する。

 

女の私でも出来る絞殺方法。

 

私は平泉が小さな抵抗と意識が無くなるまで紐を引っ張り続けると平泉は……死んだ。

 

「ふぅ……お休みなさい。刑事さん」

 

私はそう言うと念の為に脈とか調べたけど特に動いてないから死んだのは間違いないと判断、次のステップに入る。

 

適当な木を……御神木が良いわね。

 

罰当たりだけど……どちらにしても地獄行き確定なのだから神様には多めに見て欲しい。

 

とにかく、御神木に紐を結んで吊るすと力一杯に持ち上げた平泉の首に事前に結んだ輪っかを通して吊るし首にした。

 

これで立派な首吊り自殺の出来上がり。

 

後は私が死ぬだけ……勿論、策もある。

 

それはね……適当な死体安置置き場から同い年位の無傷の子を連れてきちゃう事。

 

こればかりはジンに手伝わせた。

 

借りを今すぐに返せって言って要件を告げたら組織の息の掛かった病院から丁度、天涯孤独で頼れる親戚なんておらず一人暮らしをしていて尚且つバイト帰りに事故で死んだ女子高生の死体を持ってきてくれたんだもん。

 

凄くない?

 

ある意味、かなり冒涜的な事を連発してるけど私の存在が知られたのなら仕方ないしね。

 

アイ達には……申し訳ないけどごめん、私は一度死ぬわ。

 

事前に私の私服に着替えさせているから余計な手間は無く、私は濡らした所に死体を持っていくとそこに"本物のガソリン"を撒くと最初の一本を回収してもう一本のマッチでガソリンの方に投げ込んだ。

 

投げ込まれたマッチを元にガソリンは勢いよく燃え上がり、みるみる内に誰かさんの少女の死体は燃えていく。

 

一応、踠き苦しんだ様に見せてはあるけど……ちょっと不安。

 

さぁ、フィナーレよ。

 

死んだ私はこの場に居てはいけない……"三人目"は存在しないのだから消えないと。

 

ありがとうね……名の知らない少女さん。

 

これで……私は思う存分にアメリカに行ける。

 

私は神社の鳥居から外に出るとそこにハーレーダビットソンVRSCに乗ったベルモットが出迎えてくれた。

 

「終わったのかしら?」

 

「えぇ、勿論。私は死んだ。平泉刑事の失態でね」

 

「本当に貴方は残酷ね……そこが愛らしいけどね」

 

全てを隠す為に何の罪も無い者に罪を被せ、裏切りの代償には死よりも恐ろしい苦痛を。

 

私はね……ジンよりも怖いんだよ?

 

だからアイ達以外には容赦はしない。

 

それが警察でも、名探偵でもね。

 

「さぁ、乗りなさい。この辺りの人払いは済ませてあるわ。急ぎなさい」

 

「はーい」

 

私はベルモットからフルフェイスのヘルメットを受け取って被るとベルモットの運転するハーレーダビットソンVRSCに揺らされながら後にする。

 

本当にごめんね……アイ。

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~別視点side~

 

夜空ユメ、無実の罪である筈なのに追い詰められ焼身自殺し、平泉 政治郎はその事に自責の感じて首吊り自殺。

 

夜空ユメは確かに怪しげな容疑者ではあったが調べれば未成年なうえに証拠らしい証拠など挙げられておらず、形だけの無実だと言う事に刑事達の結論は固まった。

 

それ故にこの事態に警視庁を始めとした警察達に動揺が走り、追い詰めてしまった平泉刑事は強い自責の念を持って、焼身自殺をした神社の御神木の太い枝に首を吊って自殺してしまったこの事件を信じられない思いだった。

 

平泉は刑事としてはかなり、優秀な人物であり、犯人をどんな理由で犯行に及んでも許さず、必ず捕まえる様な敏腕刑事で評判だった。

 

だからこそ、刑事達は念入りに調べれる心構えで挑んだ。

 

現場検証に目暮達を始めとした刑事達と鑑識達の念入りな捜査は長く続いたが結果としては……二人は自殺だと判定された。

 

他殺の証拠は無く、唯一不自然だったのは平泉の"不自然な手の平にある火傷"だが関係性が分からず、無関係な物とされた。

 

数日後、夜空ユメの死体は親族らしい親族もいなかった為、友人であった星野アイが引き取り、斎藤が葬式を開き、アイとアクア、ルビー、斎藤夫妻のみと言う簡素な葬式が開かれる中、目暮達も謝罪の為に訪れていた。

 

「何の用ですか……?」

 

「この度は……この度は誠に……申し訳ありませんでした!!」

 

何処か冷たい態度を取るアイに対して目暮はそう言って頭を下げ、他の刑事達も続いた。

 

警察としてあってはならない失態……平泉がそんな事をしないと信じたいが、もはや無実の人間を追い詰めて死なせたと言う事実はこの日本において大きな批判の的だった。

 

平泉刑事の事と警察は毎日の様にテレビや新聞で批判の報道が流れており、多くの国民もまた、警察を批判した。

 

質の悪い事に夜空ユメはアイドルのアイによく似ているとしてちょっとした有名人である事はアイのファン達では知られており、そのユメがアイの善き友人でもあったとなれば批判される事も無理はなかった。

 

その批判者の中には当然、アイ達もおり、数少ない友人を死に追いやった警察に対してよく思っていなかった。

 

「警部さん。謝罪なんて良い……迷惑だ。頼むから帰ってくれ」

 

ピリピリした状況の中、斎藤はアイの気持ちを汲んで目暮達に帰る様に促した。

 

ミヤコも言葉にしないが目暮達を睨んでおり、帰ってくれと言う雰囲気の中、ユメの遺体が入った棺の前で泣き叫ぶルビー。

 

目暮達もこの雰囲気に居たたまれなくなく、その場を後にした。

 

その様子を見ていたアクアはユメが死んだとは思っていなかった。

 

寧ろ、平泉刑事は嵌められて無実の人間を死なせたと言う罪を被せられたのではないのかと疑っていた。

 

ユメが裏の人間なら……遺体の代理なんて用意出来る。

 

アクアはそう考えながらも子供の戯れ言だと思われるのは目に見えているので言えなかった。

 

「(そう言えばユメは"アメリカ"に行くって言ってたな?)」

 

仮に生きているとしてアメリカに行く為にわざわざ死んだのは"延期"が出来なかったからなのかとアクアは推測した。

 

容疑者として疑われている中で海外に五年もいなくなるのは国外逃亡だと思われても仕方ない状態になる。

 

疑われるくらいなら普通は延期するが、ユメは何かしらの理由で延期は出来ず、平泉刑事に汚名を着せ、ユメはまんまと死んだ事にした事でアメリカに行ったのではと考えた。

 

「何れにしてももう手遅れか……」

 

数日も過ぎた時点でアクアはユメは既にアメリカに行ったと考え、死んだと思い込んでいる警察には手出しは出来ないと判断して諦めるしかなかった。

 

一方、目暮達はやるせない気持ちで帰路に着こうとしていた。

 

容疑者であった夜空ユメは死と言う形で闇に消え、平泉刑事もまた死なせてしまった自責の念を感じてか燃え盛るユメの死体の側で首を吊って死んでしまった。

 

「今回ばかりは我々の責任だな……」

 

「しかし、不可解な事が多すぎる。何故、平泉は死ぬよりも先に消火をせず、消防と救急車を呼ばなかったのか?誰にも告げず、一人でユメと会っていた事もおかしい」

 

刑事の一人がそう呟き、周りの刑事達も賛同する様に頷く。

 

平泉刑事は他の刑事達から離れてユメへの調査を行っていた。

 

曰く、「奴は狂犬だ……俺の勘がそう言っている。下手に触れて噛みつかれるなら俺一人で十分さ」と刑事の一人にそう言い残していた。

 

「平泉の事とあってか捜査も打ち切りだ……今さらその真意を探ろうにも既に平泉もユメもいない。無念だがせめてアイ君に"この結果"だけでも伝えたかったが……流石に無理か」

 

目暮はそう言って一枚の資料に目をやった。

 

その内容はDNA鑑定の結果が書かれた物で、鑑定相手はアイとユメだった。

 

目暮達はユメの存在を確認する為にアイの家に訪れた際にユメの毛髪らしき髪を見つけ出し、情報の少ないユメを探ぐる為にDNA鑑定をアイの名義の保護者である斎藤夫妻に持ち掛けた。

 

無論、今回の鑑定はアイ本人と戸籍上の保護者である斎藤から許可を得て行われ、アイも斎藤もユメが何者で、アイとどんな関係があるのかを気になっていたからこそ、許可したのだ。

 

そして結論から言えば星野アイと夜空ユメとのDNAは……一致。

 

紛うことなき"血の繋がった親族つまり、姉妹"であるとする確たる証拠だった。

 

この知らせは平泉とユメが死んだ翌日で、今の現状においてはあまりにも残酷な真実だった。

 

「この知らせに斎藤さんは?」

 

「アイが落ち着くまでは話さないつもりらしい。アイドルではあるが彼女もまだ17歳の少女だ。それが賢明だろう」

 

目暮はそう言って懐を触れた。

 

懐に入っているのは辞表だった。

 

目暮は今回の一件に関わった刑事達を庇う為にも全て責任を取るつもりでいた。

 

だが、その肩を掴む年配の男がいた。

 

「駄目だろ?そんなもんを出す歳じゃねぇぞ?」

 

「諸田さん!?」

 

目暮の肩を掴んだのはもうすぐ定年を迎える警部で、目暮の先輩にあたる諸田 博文だった。

 

「お前にはまだ片付けるべき事件(やま)が大量にあるだろ?そんな責任は俺の様な年寄りに任せておけ」

 

「しかし、それでは貴方は最後の最後で!」

 

「それくらいの傷なんざ……大した事なんてない。寧ろ、多くの未来ある後輩を庇うんだ。名誉だろ?」

 

諸田はそう言って目暮の肩を掴むのを止めて先に進んで行った。

 

「頑張れよ。あの馬鹿たれ探偵擬きの小五郎にもよろしく伝えておいてくれよ」

 

諸田はそう言い残してその場を後にしたのだった。

 

~side終了~

 

アメリカ合衆国、ニューヨーク。

 

私は自分を殺してでも痕跡を消し去ってやって来たアメリカの最大の都市であるニューヨークで身分も姿も変えて暮らしていた。

 

エミリー=ヴィンヤード。

 

シャロン=ヴィンヤードのもう一人の娘、クリス=ヴィンヤードの妹と言う設定で、姿も金髪のポニーテールにして瞳もカラーコンタクトで青にしている。

 

私の存在はアメリカを離れ、イギリスに長く留学していて有名女優であるシャロンとクリスの影響力を考慮して存在を秘蔵して送り出されていた所を帰ってきた事になっている。

 

まぁ、シャロンとクリスは同一、ベルモットの二つの顔だから事実上、私にとって母であり、姉であると言う事になる。

 

ちょっとややこしいけど……アメリカに来てからは組織としての関係じゃなく、普通の家族の様に扱って貰える。

 

それが嬉しくて堪らない。

 

日本にいるアイ達には酷く迷惑を掛けてしまった……影から守るつもりでいるけどもう直接関わる様な事はしない。

 

ベルモットから聞かされた……アイ、私の葬式で泣いていたって。

 

こうでもしないとあの刑事達は私をしつこく追ってきていたのは間違いない。

 

だから、死んだ事にしたのは間違いない。

 

私はこれ以上、もう自分の妹を、甥っ子達を泣かせやしない。

 

でも……アメリカの五年にも渡る有意義な生活が終われば少しは顔を見に行こうかな。

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