黒の組織の幹部だけど有名アイドルの双子の姉妹なんです 作:黒っぽいアイドル擬き
夜になり、ニューヨークのライトの輝きが煌めく中、ベルモットが運転するシェルビーコブラの助手席に私は座っていた。
オープンカーだから走れば直接、風を感じるからとても気持ちいい。
「どう?たまにはこういう車も良いものでしょ?」
「うん!最高だよ!!」
私はもう最高過ぎてちょっとハイになったけど取り敢えず落ち着いて席に座り直す。
これがジンが言っていた何時か分かるさの意味がようやく理解出来た。
「車に興味が湧いた?」
「うん。でも……私、17歳だから免許なんて無理だよ」
「あら?言ってなかったかしら?アメリカだと16歳。州によっては早くて14歳から免許が取れるのよ。貴方はとっくに車の免許を取れる歳ってこと」
「え?そうなの?」
「因みにバイクも同じ位よ。まぁ、どっちに乗りたいにしろ表で乗り回したいなら免許を取らないといけないけどね」
へぇ……流石、高校生にして大人扱いのアメリカ。
バイクはともかく、車が14歳から16歳で取れるなんて凄いわね。
「と言ってもお酒は21歳からで、銃に至ってはライフルが18歳で、拳銃はお酒と同じで21歳になってから購入できるけど州次第だと免許が必要だったりして規制が厳しい所も多いわ。特に今いるニューヨークは拳銃を持つ事は許されていないわね。出歩いている時に拳銃をうっかり警察に見せたりしない様にしなさい」
「はーい」
アメリカって銃の所持が何処でも自由かと思ってたけど違うんだね……今、私の腰辺りにワルサーP99を隠してるんだけどあんまり出さない様にしないと。
私は腰にある私の
「ベルモット」
「分かってる。尾けれてるって事はFBIね」
FBI……私達、組織の邪魔をする連中。
仕事の邪魔をしては損失を出させてくるから私達にとっては目の上のタンコブの一つ。
今度は私達のプライベートまで邪魔をするつもりなのね。
「殺す?」
「お馬鹿ね。此処はニューヨークの街中のど真ん中よ?こんな所で発砲なんてすればニューヨーク市警も黙らないわ。此処はね……こうするのよ!」
ベルモットはそう言ってシェルビーコブラのスピードを上げて急発進させるとFBIもそれに続いてくる。
ベルモットはそれを意に介さずに高まるスピードに私は流石に怖いと思った。
「べ、ベルモット!流石にスピード出しすぎじゃない!?」
「あら?怖いのかしら?」
「だ、だだ、だって!!」
「恐れちゃ駄目よ。自分の腕を信じて身を任せ、車両を動かしなさい。それが私から貴方が車を持った時のアドバイスよ」
ベルモットはそう言うと信号が切り替わろうとしている交差点にそのまま突っ込むと見事なドリフトを決めて曲がると同時に他の車を巻き込んで急停止させ、渋滞を作る事によってFBIの連中を撒いてしまった。
「力技だけじゃやって行くのは難しいわよ?覚えておきなさい」
「は、はい……」
ベルモットの滅茶苦茶な運転で流石に私は疲れてしまいそうになる。
~別視点side~
一方、撒かれたFBIの捜査官達は悔しげにしていた。
「くそ!あの魔女め!!」
運転を勤めていた捜査官の男がそう叫んで怒鳴ると助手席に座る立派な髭を生やした紳士風のFBIの男、ジェイムズが咳払いをして男を嗜める。
「あまり怒る事はあるまい。今回も逃がしたと言うだけだ」
「しかし……!」
男はベルモットを逃がした事に悔しさを覚える中、ジェイムズはそんな彼に告げる。
「今回は我々は"運が良かったのだよ"。彼女の隣にいた少女の事は見たかね?」
「は、はい。確か……存在しない筈の次女、エミリー=ヴィンヤードですよね?」
「そうだ。彼女は恐らく……シンフォニー。"魔女の猟犬"だ」
「ッ!?あ、あのシンフォニーですか!?」
黒の組織を追う組織の一つであるFBIにおいてシンフォニーの名はベルモットやジンに続いて有名だった。
曰く、残虐非道の組織の始末屋。
曰く、子供にすら容赦の無い血に濡れた狂犬。
曰く、ベルモットに仇なす者がいれば全力で排除に出る通称、魔女の猟犬。
圧倒的な暗殺のセンスと戦闘力、凶悪性においてFBIの捜査員達はシンフォニーとの会敵をする事を非常に恐れており、またジンかシンフォニーのどちらに捕まりたいかと聞かれれば真っ先にジンを選ぶ捜査員も多い。
シンフォニーはジンとは違い、すぐには殺さない。
ジワジワと嬲り殺しにする事を好んでいると言う噂があり、万が一に彼女に捕まりでもしたら……そんな事を考え、震え上がる者もまた、多い。
「今回は戦力的にも我々が不利だ。それに今夜ばかりはベルモットとシンフォニーのプライベートの様だからな。邪魔をして余計な怒りを買うのは避けさせて貰うとしよう。日本から潜入している赤井からの報告を待ちながらね。5年も猶予が与えられたんだ。それを有効活用させて貰おう」
ジェイムズはそう言って事態を収拾に動くのだった。
~side終了~
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FBIを振り切った私達はベルモット行きつけのレストランまでやって来た。
"レストラン
此処は隠れ家的なお店で隠れ家と言うだけあってお客が少ないけどベルモット曰く、料理は一級品らしい。
「やぁ、クリスさん。お久しぶりですね」
「えぇ、久しぶりね。今晩はこの子と一緒に行く美味しい料理を食べにきたわよ」
「おや?君が噂のエミリーちゃんかい?」
「は、はい。エミリー=ヴィンヤードです」
「うむ。とても良い子だね」
「何たって私の自慢の妹なんだもの。良い子に決まってるでしょ?」
流石は行きつけと言うだけあってオーナーと仲良さげに話すベルモットに私は唖然としているとオーナーに席を案内され、その席にベルモットと座った。
私とベルモットが料理をオーナーさんに注文して後は適当に会話しながら待つだけになった時、厨房の方から悲鳴が挙がった。
「なに!?」
「エミリー。静かに」
驚いて立ち上がろうとした私をベルモットが制すと慌てた様子の声が響いてくる。
「あ、頭から血を流している!?」
「救急車を呼んでくれ!」
そんな声が店内に響き、私達は間違いなく面倒事に巻き込まれたのは間違いなかった。
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人が倒れたのを期にルポゼの店内は慌ただしくニューヨーク市警の警官や鑑識の人間が捜査し、私やベルモットと言った客達とオーナーさん、三人の店員は店に残される形で事情聴取を受ける事になった。
「それで被害者が亡くなる前、クリスさんとエミリー君はこの席に?」
この事件に駆け付けた刑事、ラディッシュ=レッドウッド警部はそう私達に質問してきた。
「えぇ、そうよ。殺しに行ける様な距離でもないし、目立つわ。それに私達は来店してからそこにいるオーナーに席を案内されて注文もしたばかりだったから不可能よ」
「はい。クリスさんの言う通り、私はクリスさんとエミリーさんを席に案内してご注文を伺いました。私が離れてからも席を外す気配もありませんでした」
「うむ……だとしたら誰がどうやって……」
被害者はルポゼに勤めるスタッフの一人の男性で、厨房で一人で作業していた所を鈍器で何度も殴られて死亡、警察が来てからも未だに凶器は見つかっていない。
私達、客は厨房なんて入るなんて事はしてないからオーナーさんと残り二人が容疑者として挙げられているけど……犯人を挙げる以前に凶器が見つからない謎が分からない。
レッドウッド警部は頭を抱え込んでしまい、私はこのまま行くと長期戦になると考えると同時にどんな理由で殺しをしたの知らないけど私とベルモットとの少ないプライベートを邪魔をした奴に怒りを感じた。
どうやって鼻を明かしてやろうかと思いながら現場を見つつ、私は現場の状況を見て"自分が犯人ならどんな方法で殺すか"と考え、思い浮かべる。
一つ、一つと出された可能性を想像して脳内で実行しては否定し、また別の案を出すの繰り返しをした後でしっくりした内容を固めると次に状況の整理をして考えが何処まであっているのかを確認する。
……うん、これなら言って見ても良いかな。
私はベルモットの方をチラリと見るとベルモットは微笑んだと言う事は好きにしても良いと言う事だと解釈し、私は実行する。
「レッドウッド警部」
「ん?何かね?」
「現場を見てたらちょっと気になる事があって……」
私はレッドウッド警部に私の考えを言ってみた。
一つ、犯人はレストランのスタッフの中にいる事。
スタッフの制服は黒を強調としたエプロンを使っていて多少の返り血が付着してもすぐには気付かれないし、上手く誤魔化した後で予め隠しておいた予備のエプロンで交換してしまえば分からないと思うけど。
スタッフの一人である女性の黒いエプロンの下に着ている白いシャツの制服に微かに血らしき物が見えた。
本当に僅かだから下手したら見逃してしまう様な死角にあったから犯人も気付けれなかった。
一つ、凶器は至極単純な物……それは氷。
一見、氷が凶器になるなんて……なんて思うけど実際、氷は尖らせば突き殺せれるし、塊にして布に包んだしまえば簡易的な鈍器になる。
事情聴取を盗み聞きしてた内容だとスタッフの中でよく、冷凍庫の食材の出し入れを任されていたのは女性スタッフで、手入れもよく彼女のみがしていた為に他のスタッフはあまり、冷凍庫を開けると言う習慣はなかった。
彼女はそれを利用し、予め食材に紛れ込ませる形で拳サイズ位の氷を用意して隠しておいた。
氷を尖らせずに塊にして鈍器にしたのは尖らせた氷が勢い余って折れてしまい、体内で溶けてくれれば良いが運悪く残ってしまう事を恐れたから。
体内に不自然に氷が残ったりして万が一、痕跡が見つかれば凶器は氷だと教えてしまった様なもの。
だから敢えて鈍器として選んだ。
被害者を殺した後、氷は近くのマンホールか何処かに放り込んでしまえば自然と溶けて消えてしまう。
だから凶器は見つからない……でも、凶器に使用した布なら分かる。
一つ、使われた布の所在。
もし、私の仮説が正しければ布は犯人がまだ持っている。
騒ぎによって氷は始末出来ても布までは焼却炉みたいな設備を備えていないレストランでは普通に捨てるのはリスクが有りすぎる。
だからと言ってポケットに忍ばておいても身体検査などされたら自分が犯人ですと証明してしまう様なもの。
でも、仮説が正しければ"血が付着"している筈の布が犯人の手元にあるのは間違いない……いや、"手元"はおかしいよね。
何故ならその布は女性が"今、履いているソックス"なんだから。
彼女のソックスは制服に合わせて黒だし、まさか凶器の一部を履いてるなんて思いもしないうえに女性の脚をジーと見たりしたりしないから気付かれにくい。
もし、当たっているのなら検出される筈。
殴り付けた際に付着してしまった"被害者の血痕"がね。
私が考えついた事をレッドウッド警部に伝え終えるとレッドウッド警部は暫く唸った後、女性スタッフの制服とソックスが調べられる事になった。
結果は……黒。
私が言った通り、制服のシャツの見にくい所に付着した血が見つかった。
これは偶然、何かしらの作業で付着した物だとかで言い訳されたら終わりだけど本命であるソックスに関しては誤魔化しきれず結果として女性は観念して全てを打ち明けた。
犯人の彼女と被害者の男性は恋人同士だったけど、最近になって関係に縺れが生じたらしく、周りには心配を掛けさせない為に仲睦まじく見せていたが見えない所で何度も喧嘩をしていたそうだ。
仲が険悪になったのは結婚をするのか、しないのかだと言うありきたりなもので、女性は結婚したいと考えていたが被害者の男性の方が乗り気ではなく、何度かは軽い話し合い程度だったけど、女性が我慢しきれずに業を煮やして男性に問い詰め、男性もまた譲らずに言い合いになった。
喧嘩の末に女性の心は男性への愛から憎悪になり、結婚をしたくないのは誰かと浮気をしているのではと疑い、調べ様にも勇気が出ず、誰かに取られるくらいならいっそ、殺して自分も楽になろうとした結果が今回の殺人だった。
だけど、今回ばかりは彼女が哀れだと思った。
オーナーさんがそれを聞いて女性に説明したんだ。
男性は婚約指輪を用意していて仕事の後、プロポーズするつもりだったと。
結婚を渋っていたのは自分の店を持てる算段がつくまで彼女にはプロポーズはしないとオーナーに言っていたそうだ。
自分の店を二人で持つ事が夢だから彼女にはサプライズとしてプロポーズした後に言うんだと。
女性はそれを聞いて嘘だと譫言の様に呟き、力無く笑いながら涙を流し、床に膝をついた。
謝りたくてももう謝れない……愛していたからこそ起きた殺人は既に取り返しがつかない所に行ってしまったのだから。
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殺人事件の後、疲れ果てた私はベルモットの運転するシェルビーコブラの助手席で不貞腐れていた。
「ちょっと、まだ拗ねてるの?」
「だって……折角、FBIを撤いたのにろくにご飯も食べられなかったし、ベルモットとの少ない楽しみも無くなったし、最悪だもん」
「でも、おかげで警察とのコネが出来たじゃないのかしら?それに貴方のある意味、"有名"になるわね」
事件解決後、レッドウッド警部からかなり誉められしまい、気に入られたのか連絡先まで貰ってしまった。
それだけでなく、あのレストランには取材に来ていた出版関係者もいて私の事を取り上げたいって凄い剣幕で来たからつい頷いちゃった。
明日にでもこの事件の事と私が推理で事件解決に貢献した事を記事に載せるらしい。
「別に有名になりたくて推理したんじゃないよ」
「名声は時として隠れ蓑にもなるし、武器にもなるのよ。私だって女優よ?ピスコは大手の自動車メーカーの会長だし、キールは人気アナウンサー。組織は闇に潜んでばかりじゃないのよ。貴方は貴方自身で勝ち取った地位を上げて身を固めていけば良いの」
ハリウッド女優のベルモットにそう言われてしまうともう、言い返せない。
私は走行中の景色を不貞腐れながら見る事に専念する。
「……"探偵"ね」
エミリーに与えられた新たな顔……"探偵"。
世の中、探偵がいないとろくに事件も解決を出来ないのかと思ってしまう中、本来なら私には似つかわしくないマンハッタンの夜景を眺め続けた。