黒の組織の幹部だけど有名アイドルの双子の姉妹なんです 作:黒っぽいアイドル擬き
~別視点side~
ニューヨークの朝、いつもの様に穏やかな日常が待っているのだと信じて疑わない晴れた日の今日、全てのテレビ局のニュースは一つの話題で持ちきりとなっていた。
ゴットスピード・ファミリーの事務所が襲撃され、エイデンを含めた構成員は全て死亡、子供二人が生き残った事がニュースで大々的に取り上げられた。
銃声を聞き付けた地元住民からの通報により、警察が到着した時には子供二人を残して死んでいる事が確認され、重大事件として捜査はFBIが担当する事になった。
事件が移されてからFBIはすぐに動き、現場まで駆けつけるとそこはあまりに悲惨な状態だった。
「これは!」
「ひ、酷過ぎる……!」
FBIの捜査官達が見たものは射殺された死体に止まらず、爆発でグチャグチャになった死体とバラバラになった死体、身体の一部が欠損した状態の死体などと乱雑に床に転がっていた。
この光景にFBIの捜査官達は顔をしかめ、酷ければ吐き気を覚えて外に駆け出す者まで出始めた。
「これは……シンフォニーの仕業か?」
捜査官の中には今回の一件が普通の抗争事件ではないと睨んだジェイムズが訪れていた。
アメリカには組織随一の武闘派で凶悪な存在であるシンフォニーの存在がチラついている事は分かっており、その事を踏まえての行動だった。
「うむ……これは思っている以上にシンフォニーをアメリカで好き勝手にさせてはおけんかもしれんな」
ジェイムズはシンフォニーが起こした可能性のあるこの事件に冷や汗をかくのだった。
その頃、ゴットスピード・ファミリーの本拠である屋敷ではゴットスピード・ファミリーの幹部達が集まっていた。
無論、副首領であるソフィアも高校を休んで同席しており、それぞれ長いテーブルを挟んで椅子に座っている。
「今回、お前達を集めたのは他でもない……我々の拠点の一つが潰された。たった一人の東洋人の娘に」
ゴットスピード・ファミリーの首領、リアム・ゴットスピードのその言葉にソフィアを含めた幹部達に動揺を走らせた。
無理もなかった。
何しろたった一人の娘が借りにもマフィアの拠点を叩くなどあり得ない話だからだ。
「首領!一体、何の冗談ですか!?」
「本当の敵の数は!何処の奴らなんですか!」
「……残念だが、事実だ。敵は一人、そして敵対してきた組織と呼ばれる勢力は現時点で不明だ」
「敵対してきているのが他のファミリーではないと?」
ソフィアのその質問にリアムは頷き、シンフォニーから改めて送られてきた"メッセージ"を幹部達に見せた。
「この小娘は組織の代表として通告してきた。我々に傘下になれとな」
「傘下?……我々が何処の何か分からない奴らの下に付けと言って来たのですか?」
「そうらしい。このメッセージとやらに書かれている事が正しければ……その組織の武力は恐らくは小国に匹敵するやもしれん。何処まで正しいのか分からんがな」
リアムはそう言って小さな溜め息を吐くとソフィアは机を強く叩いて椅子から立ち上がった。
「だからと言って、何もしないでみすみす降ると言うつもりですか!」
「冷静になれ。ファミリーの者達が無惨に殺され、年端の行かない子供にすら手を出す者の下になど誰だって着きたくはない……が、このまま行けばファミリーは更に多大な被害を受ける事になるだろう。傘下になる一考の余地は持っておかねばならない」
リアムはソフィアにあくまでも冷静にそう言うが内心では悔しさと怒りがあった。
たった一人の少女に翻弄された挙げ句、その場で戦った仲間は惨殺され、子供達にすら手を出してきた。
普通なら報復しないとなど言わないが、黒の組織の強大な力を感じ、このまま抗争になればゴットスピード・ファミリーだけでなく、周りの全てを巻き込みかねないと考え、抑えていた。
ゴットスピード・ファミリーの身内の中には裏社会とは関係なく暮らす者もおり、裏社会を生きる自分達だけならともかく、容赦の無い黒の組織が関係ない者達までも目をつけないと言う保証は無いのだから。
「くッ……分かりました。しかし、僕はまだ納得出来ません。暫く時間を下さい」
「良かろう。頭を冷やしてくるが良い。お前達も考える機会を与える。一週間後、再び此処に集まれ」
リアムはそう言ってその場から去ると幹部達はざわざわと会話した後、項垂れた様子で去っていく。
一人残ったソフィアは思考の海の中にいた。
「(お父様があそこまで弱気になるなんて……それだけ敵が強大だと言う事か……しかし、子供にまで手を出す連中のこのまま下に付いてもきっと、ろくな事にならない筈だ。傘下になってはいけない。だが……敵の内情も正体も分からない。どうやって探るべきか……)」
ソフィアは黒の組織をどうやって探るべきか考える過程でエミリーに頼る事を考えたがすぐに却下した。
エミリーはルポゼの一件以降、この一年で瞬く間に"探偵"としての頭角を示し、数多くの難事件と個人的な依頼を解決して見せている。
エミリーなら、もしかしたら探り出してくれるとソフィアは思いつつ、裏社会とは全く関係ない友人を巻き込みたくなかった。
「(僕はどうすれば……エミリー……君なら、どうする?)」
ソフィアは一人、悩み続けた。
冷酷な組織の下に着くか、抵抗して全てを失う覚悟で銃を取るか。
良い手段を思い付く事なく、時間だけが過ぎていく。
~side終了~
昨晩での出来事がニュースで何度も流れる中、私は予告通り、ゴットスピード・ファミリーに対して傘下になる様にメッセージを送ったけど……駄目ね、屋敷に忍び込んで仕掛けた盗聴機で学校を休んでまで盗み聞きしてたけど、まだ全体が傾いてないし、このまま行けたとしても内部抗争なんて目の当てられない事態になりかねない。
それにリアムに実権を握らせるつもりはない……何時か、消えてもらう。
リアムを消したら次の首領には私はソフィアを裏からそうなる様に推すつもりだし、問題のソフィアに対してや傘下になるのを渋る様な反発勢力は私が全部片付ければ良いし、問題無い。
まぁ、それはさておき、まだ圧力が足りないならもっと荒らさないと……ゴットスピード・ファミリーが管理する孤児院の一つを子供ごと焼こうかしらね。
よし、次の目標は決まった。
私は妙案を思いつけて良かったと思いながら盗み聞きを止めるとその場から離れた……のは良かった。
「どうしてこうなる……?」
「エミリー君。今回もすまないね」
また、殺人事件に巻き込まれた。
レッドウッド警部達に信頼されてるから捜査に加われるけど……別に参加したい訳じゃないのよ、帰りたいのよ。
私は運が悪いなぁ……なんて思いながら早く事件を終わらせようとした時、現場に足を踏み入れる人が現れた。
「ふむ……殺人か。噂通りなら君がすぐに解決させてしまうのだろうね」
「え?あの……何方で?」
「いや、申し訳ない。私は工藤優作。単なる推理小説家だよ」
そう言って優しげに微笑んでくる自称、推理小説家の工藤優作さんは手を差し出して握手を求めてきた。
私は首を傾げながら握手に応じるとそこへ、レッドウッド警部が走ってきた。
「おぉ、優作君!君も来てくれたのか!」
「えぇ、たまたま通り掛かったら事件だと聞いてね。そして噂の名探偵、エミリー=ヴィンヤードが来ていると聞いたんだよ。彼女の実力を見てみたいとも思ったんだ。小説の参考にもなりそうだからね」
レッドウッド警部も知り合いと言うのならこの人、割と事件とかに首を突っ込むタイプの人か。
まぁ、私は本なんて興味ないからどうでも良いけど。
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一先ず、殺人事件の捜査、推理を私は終わらせて犯人の逮捕に貢献した後、私は帰ろう……とした所で優作さんに連れられて近くのカフェまで来ていた。
いや、断ろうとしたよ?
でも、流石に……。
「あら?浮かない顔なんてしてどうしたの?」
「な、何でもないよ"お母さん"」
今は私の母の顔であるシャロン=ヴィンヤードのベルモットがいるなんて思わないじゃん。
優作さんにベルモットもいるよなんて言われた時は耳を疑ったけど、本当にいたから驚いて暫くぎこちなかった。
「いや、お母さんの知り合いだとは思わなくてさ……優作さんとその奥さんと。しかもその奥さんとは親友だし」
「意外と人間関係と言うのは広いものなのよ。ねぇ、有希子?」
「うん、そうよ。エミリーちゃんも長く生きて、もしかしたら予想外な所で親友が出来るかもしれないわよ」
そう言って楽しげに微笑みながら言うのは有希子さん。
優作さんの奥さんで、女優だったらしく、二十歳の時に結婚を期を引退、出産した経験を持つなどある意味で凄い人。
一度、トイレと言う名目で抜け出して検索すれば出るわ出るわで、数多くの賞を総嘗めしてハリウッドにも進出しているまさに、アイとは別のベクトルで天才的な人物だった。
優作さんの方も調べたらかなり有名な小説家らしくまた、同時に桁外れの推理力で難事件を解決する人物でもあった。
私はこの結果に困惑しつつ取り敢えず席に戻ってベルモットに恥を掻かせない様に勤める事にした。
「それにしてもシャロン。どうして言ってくれないのよ?こんな可愛いらしい娘さんがもう一人いるなんて。しかも名探偵って言われているみたいだし」
「念の為としか言えなくてね。私とクリスの女優としての名は有名過ぎると思ってね。もし、良からぬ誰かに狙われたりしないかと不安だったのよ。それにこの子、実は意外と抜けてる所があるのよ。気を抜くとすぐに変なミスをするし」
「そうなの?意外ね」
「彼女にだって気を抜きたい時はあるさ。そうだろ?」
優作さんにそう言われて私は頷くと有希子さんは不思議そうに私を見てくる。
「もしかして……エミリーちゃん、人見知り?」
「え?いや、その……」
「この子はあまり、人と関わらない事が多くてね。アメリカに帰ってきてから友達が出来たと聞いて私も安心したんだけど……この様子だとまだまだ慣れが必要みたいね」
うぅ……情けない。
ベルモットにカバーされ続けられるなんて私の未熟さがよく分かる……。
「そうなんだ……そうだ!エミリーちゃんが良かったら一緒に買い物に行かない?シャロンと私達、女性だけで」
「あら、良いわね。あまり着飾らないこの子にお洒落と言うものを教えたいって思っていた所なのよ。行くわよねエミリー?」
なんかノリノリな二人に私はこのままでは着せ替え人形にされる……断ろうにもベルモットからの笑顔の圧が凄い。
「え?いや、でも……優作さんは?」
「いやいや、気にしなくても良いよ。私は残りの原稿を書き上げなければならなかったからね」
最後の頼りである優作さんにそう言われてはどうしようも出来ない……私は抵抗虚しく、私は何処かパワフルな有希子さんとベルモットに買い物に連れ出されてしまった。
~別視点side~
工藤優作は推理小説家であり、名探偵の様に難事件を解決する程の卓越した頭脳の持ち主である。
アメリカのロサンゼルスに住んでおり、ニューヨークに来たのは小説家としての仕事の為で、妻の有希子も久しぶりに親友であるシャロンと会う為に同行、夫婦二人で訪れた。
ニューヨークに着いてから早々、殺人事件があったと言う騒ぎと世間から"名探偵"と名高いエミリー=ヴィンヤードが捜査に加わったと言う話を聞いた優作は興味を抱き、有希子に先にシャロンの元に行くように言ってから事件現場までやって来た。
優作が訪れると事件現場は慌ただしく捜査官達が動き、その中には推理をしているのか、静かに佇む金髪を束ねた少女がいた。
この子がそうかと優作は近づくと少女、エミリーに誰だと聞かれ、優作は素直に名乗り、"握手"を求めた。
少女は首を傾げながら優作の握手に応じて優作の手を握った時、優作は目を見開いた。
手の指に"タコらしき"感触があった。
普通なら何かしらタコが出来る程の力のいる事をしているんだろうと考えるが、タコの位置が問題だった。
中指の側面、人差し指と親指の間、親指の腹の辺りに特に感触があった。
このタコの位置は"よく銃を扱う者によく出来るタコ"で、中指の側面はトリガーガードを引く時、人差し指と親指の間は反動を抑える時、親指の腹はマガジンの交換する時と言った具合に役割に応じて出来る
優作は明らかに"未成年の少女"が撃ち慣れていると事に驚きを示したが顔に出さなかった。
別にアメリカにおいて銃の試し撃ちが未成年*1で許されていない訳ではないが此処まで仕上げられる程に通っているとは思えず、また此処は銃の所持に厳しいニューヨーク。
探偵として事件に関わるとしても流石に犯人を撃ち殺す勢いで捜査なんてする訳もないし、況してやエミリーがニューヨークの州法を知らない訳ではないだろうと言う事で銃を所持しているとも思えない。
だからこそ、このタコの謎に優作はエミリーに対して"不信感と好奇心"を覚えた。
本人に聞けば早いが……優作の中で"本人に聞いたら後悔する"と言う予感を覚え、質問を飲み込んだ。
エミリーが鮮やかに事件を解決した後、優作はエミリーを妻の有希子と親友のシャロンが待つカフェに連れていく事にした。
ヴィンヤードの名前からしてシャロン=ヴィンヤードの親戚、或いは家族だと考えた故の行動で、案の定、シャロンのもう一人の娘であった。
有希子とシャロンはエミリーの事で話を弾ませる中、優作は注意深くエミリーを観察していた。
何処にでもいそうで少し、人見知り?な大人しい少女。
そんな印象を優作は抱くが、それだとあのタコの説明が付かない。
意外性も考え、銃を扱うスポーツでもしているのかと考えてはみたがやはり、何処かしっくり来ない。
やがて、有希子とシャロンがエミリーを連れ出して買い物に行くと言い出し、優作自身も適当な理由をついて泊まっているホテルまで戻るつもりでいた。
昨日、起きた悲惨な事件……"マンハッタンの惨劇"を調べる為だ。
ニューヨークを中心に活動するマフィア、ゴットスピード・ファミリーの支部が突如、何処かの敵対組織からの攻撃を受け、支部の構成員は全て殺害、生き残ったのは幼い子供二人だけだと言う。
優作はそれを聞いて疑問を抱いた。
拠点を攻撃する様な大規模な抗争でゴットスピード・ファミリーと敵対した勢力側の死体が何故、無かったのか?。
普通なら計画的な奇襲であるからだとか、運が良かったからだとかで片付くがゴットスピード・ファミリーはそんなに甘くない。
ニューヨーク全体を牛耳れる程の力を持つゴットスピード・ファミリーの構成員が弱い訳がなく、敵対組織が仮に奇襲をしたとしても"一人位"は死人が出てもおかしくないのだ。
優作は考えた。
マンハッタンの惨劇は始まりに過ぎないのではないかと。
~side終了~