黒の組織の幹部だけど有名アイドルの双子の姉妹なんです 作:黒っぽいアイドル擬き
ラグーン号に揺らされる事、約1時間。
私はようやくロアナプラに上陸して背筋を伸ばした。
「疲れた~!」
「俺達の仕事は此処までだ。後は好きにしな」
「勿論だよダッチ。ありがとう」
私はそう言って軽く手を振りながらその場を早足で離れる。
そうじゃないと後ろから……。
「何処に行きやがったぁッ!!」
「落ち着けよレヴィ!!」
船の中からでも聞こえる怒鳴り声……まぁ、おっかない。
ラグーン号きってのゴリラちゃんが来て時間を食うからね~。
さっさと報告しないとマジで物理での処刑になりかねないし、何より調べたい事も山程ある。
一先ず連絡できる場所に行こうかな。
_________
_______
_____
私はロアナプラにある野良のゴロツキの事務所に押し入ってゴロツキを全員殺すと置かれていた机の上にあった固定電話を使って電話する。
暫く着信音が鳴る中、ようやく電話に出た人がいた。
《随分とまた遅い報告ですね?》
「……ラム。面目も何も無いよ。責任を取った身投げしたら死に損なったみたいで……私の処分はどうなるの?」
《そうですね……貴方の失態こそ大きいですが功績もまた大きいです。君のボーイフレンドを始末し、組織に歯向かう敵を殲滅し、正体を探りだした。結果論とは言え、仕事をこなした以上は無視は出来ませんね》
「つまり……不問と?」
私は組織にしては甘い処遇に首を傾げているとラムの否定の言葉がすぐに飛んだ。
《いいえ。完全な不問は不満を持つ者もいるでしょう。特にジンがね。貴方には埋め合わせをして頂きましょうか。三つの大きな任務を与えます》
「三つの任務?」
私はラムからの埋め合わせの任務が三つと聞いて何をさせたいのかと少し不安になった。
《大した事でもありませんよ。内容は一つ目以外は達成すると共に追々伝えるつもりです》
「ラム。質問」
《何です?》
「私をどうして殺さないの?」
私の質問にラムは何も答えない……無言が続く。
「組織において例外無き処分は存在しない。逃亡中のシェリーだって生死問わずだけど死が与えられている。どんなに優秀な人材でも裏切りや失敗は死を持って償わせる組織が私を生かす理由が分からない」
《……そうですね。貴方は我々に都合の良い刺客ですからと言えばよろしいですか?貴方は飛び抜けて優秀な鉄砲玉であり、優秀な策略家でもあり、高い忠誠故に組織に叛意を抱かない。そんな人材を一々、簡単に手放していては組織は内部から崩壊するでしょう》
ラムのその言葉に私は最もと思いつつ、厳しい沙汰が下されない事に不満だった。
私が組織を危険に去らしたのは事実。
自分を抑えきれなかったせいで危うくFBIの手の平で踊る羽目になる所だった。
私がしっかり手綱を握っていればこんな事にはならなかった。
《さて、そろそろ質問は置いときましょう。三つの任務……最初に行う内容はコーサ・ノストラのロアナプラ支部のボス、ヴェロッキオを暗殺しなさい》
「ヴェロッキオを?彼奴、何かしたの?」
《えぇ、やりました。彼はコーサ・ノストラに急かされ、命欲しさに独断でロアナプラの均衡を崩そうと画策しています。それは我々の本意ではありません……組織の方針に反する行為を行う幹部、ブランデー……ヴェロッキオは組織を裏切ったも同義。生きる価値すらありません。必ず仕留めなさい》
「分かったよラム。仕事はやるよ。それにしてもブランデーが独断行動ねぇ……」
ブランデー……コーサ・ノストラの幹部であり、ロアナプラ支部のボスであるヴェロッキオの暗殺。
ロアナプラを任せられる位には頭と腕は良い筈なのに焦るあまりやってしまった以上、手に掛けるしかない。
まぁ、あんまり交流なんてしてないし、遠慮なくやろう。
「分かったよラム。ヴェロッキオの死を伝えられるニュースを楽しみにしてて頂戴」
《えぇ、楽しみにしてますよ》
ラムはそう言って電話を切ってしまうと私は受話器を置いて溜め息をつくとその場を去った。
__________
_______
____
~別視点side~
ユメがブランデーことヴェロッキオ暗殺に動いた頃、日本ではベンジェンスの襲撃によってマスカレード・ナイトは近くの停泊所で留まらざるえず、大騒ぎになっていた。
警察や自衛隊による捜査が行われ、乗客達は楽しい船旅が恐怖の船旅へと変わった事に戸惑いと恐怖で溢れ、この事件を受け、有力者達を多く招待していた鈴木財閥は謝罪して回ったり、一般客達からのクレームに追われる事となる。
乗客達は近くのホテルで保護され、アイ達もそこにいた。
そんな中、アイはエミリーに……姉であるユメに連絡を取ろうとしていた。
「出ない……」
いくらコールしても出ないユメにアイの不安は大きくなっていく。
アイがエミリーはユメだと気付いたのは至極単純な理由だった。
過去に吸っていた煙草と船で吸っていた煙草が同じだったからだ。
それの何処か同一人物に導かれるのかと言うと必ず首を傾げるだろうがユメの吸う煙草はブラック・デビルと言う日本では非常に珍しい黒い紙が使われた煙草だ。
アイはそれをエミリーとユメのどちらの喫煙を目撃し、細かな喫煙者動作も同じだった事で嫌でも同一人物だと理解した……してしまったのだ。
アメリカ出身のエミリーならブラック・デビルを吸っていても不思議ではないが、日本出身のユメが煙草を吸うとしても何時、珍しい煙草であるブラック・デビルを吸う様になったのかと考えれば自ずと答えは分かるのだ。
「嘘……だよね……」
アイは悲痛な表情を浮かべた時、そこへ。
「ママ?」
ルビーが来た。
アイは悲痛な表情からすぐに笑顔になるとルビーに視線を向けた。
「なーに?」
「大丈夫?元気……無いよ?」
アイはルビーにそう言われ、アイは少し動揺するもやんわりと否定する。
「大丈夫だよ!私、ちょー元気だから!」
「そ、そうだよね!でも……お兄ちゃん……元気なくて……」
ルビーはそう言って事件後の元気を失っているアクアの事を考え、悲しげな顔をし、アイもアクアの事を案じる。
アクアはマスカレード・ナイト襲撃事件後、全く無い訳ではないが食欲も無く、呼び掛けにも曖昧だった。
定期的にアイやルビー、コナンと蘭も励ましに来るが全く立ち直る気配が無く、アイはどうすれば良いのか分からなかった。
「暫くほっといてやれ。こう言った時はな、下手に励ますよりも一人にさせてやった方が良い時もあんだよ」
見かねた小五郎がそう言った事でアクアを暫く一人にしておく事になったがアイは一人の母として悩み、旅行になんて行くのではなかったと後悔し続けた。
「き、九州に行けなくて残念だったね!また機会があったら皆で行こうよママ!」
「九州……」
アイは九州と聞いた時、記憶から雨宮吾朗の姿を思い浮かべた。
出産の前と後の時には顔すら出す事と無かったが心身に向き合って助けてくれた吾朗の事を思い浮かべ、アイは決意を決めた。
「行こうか、九州」
「え?」
アイのその言葉に流石のルビーも困惑するのだった。
~side終了~