黒の組織の幹部だけど有名アイドルの双子の姉妹なんです 作:黒っぽいアイドル擬き
書いててちょっと長くなるのが目に見えてしまいまして。
組織での裏切り者の始末と報告を終え、ある程度の引き継ぎをした後で私はすぐに九州の宮崎に向かった。
飛行機で東京から宮崎へ到着するとそのままタクシーを使って宮崎の片田舎にあるアイのいる筈の病院へ向かう。
街を出て、山道を走るタクシーに揺らされながら私は携帯でニュースを読みながら最近の世間の情報を集めていた。
世間の情報は裏の情報よりも信憑性が低く使えない事が多いが、それでも調べてみる価値がありそうな話が出てきたりするのでありがち馬鹿には出来ないから私はよくニュース画面を開いている。
「銃撃事件に通り魔事件、爆発事故に轢き逃げ事件……何れもこれも私が起こした事件じゃん」
過去にやって来た殺しの仕事を私は幅広くやって来た。
銃は勿論、ナイフで滅多刺しにして通り魔に見せたり、爆発事故に見せかけた爆殺、ベルモットから教わった変装術を駆使して適当な車を使ってターゲットを撥ね飛ばして持ち主に罪を擦り付けたりもした。
私は齢16で血に濡れきった少女……光の元に暮らすなんて考える事すら馬鹿らしい位に仕事をしてきた。
お金だってきっちりと仕事をこなせば沢山貰えたりもした。
あの人間不審の塊みたいなジンにもそれなりに評価されているし、しくじらない様に勤め続ければ老衰まで行ける筈。
私は自分の人生プランを考えながら携帯を見続けているとタクシーが止まった。
「お客さん。着きましたよ?」
「ありがとうございます」
「所で何か悩みでもあるのかい?」
「何がです?」
「此処って片田舎の病院がある場所だからね。何かしら重病で療養の為に来たとか……産婦人科もあって訳アリの人が来る場所だからね。君は若いし、病気とも思えない。まさか……」
「何もありませんよ。此処までありがとうございました」
私はドライバーの話を遮る形で会話を終えると運賃を払ってタクシーを降りて病院の方へ歩いていく。
このままだといらない誤解を招きかねないし、妊娠したの私じゃなくてアイだし。
そんな私の心情を知らないドライバーは暫く留まってたけどそのまま何処かに走り去って行くのを音で確認して漸く一息つけた。
「はぁ……やってられない。何で私が妊娠したみたいに扱われるのよ。全く」
私はまだそこまで動いていないのに疲れを感じながらそのまま病院へと向かっていく。
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暫く歩くとやっとの思いで病院に辿り着くと私は先ず、顔が上手く隠れているのか確かめた。
サングラスと帽子はちゃんと着けている。
この顔は良くも悪くも有名な顔。
この顔のせいでアイに間違われてアイのファンに遭遇してサインをねだられたり、不審者に襲われたりした。
まぁ、ファンの人には誤解だと分かってくれたし、不審者は撃退して警察に突き出してやった。
本当ならマスクもしたいけどそれだと不審者丸出しだし、何より病院側も星野アイと言う大物アイドルが秘かに来たとすれば警戒を厳重にし、怪しい輩は近付かせやしない筈。
本当なら本格的な変装をしても良かったけど……何でか気分じゃない。
私はまぁ、何とかなるだろうと思いつつ、病院の中を何食わぬ顔で歩いて散策する。
人の数は流石は片田舎の病院と言った所だった。
患者らしき人はまぁいるけど……少ないし、おじさんとおばさんが多い。
これならアイを知らない人の方が多い筈。
私は産婦人科の近くまで来ると先ずは様子を伺う。
いきなり鉢合わせする様な事は避けて先ず、相手の男がいるの確認、アイのお腹が何れだけ大きいのか確認、出来れば何れだけ経っているのかも知りたい。
私はもう突入しているのか分からない男の額に銃を突き付けてしまいたい衝動を抑えながらウズウズしていると不意に肩を叩かれてしまった。
「もしもーし」
声まで聞こえ、その時の私はパニックになってしまい、そのまま後ろに素早く振り返って身構えるとそこにいたのは。
「うおぁッ!?ビックリした……大丈夫?」
計画通りに進まないものね……鉢合わせしちゃった。
「ずっと診察室の前に立ってたけどどうかしたの?此処は産婦人科だよ?」
お腹を大きく膨らませた私の双子の妹の星野アイ本人だった。
「あ、いや……その……」
「……分かった!貴方も妊婦さんでしょ!」
「断じて違う。確かに紛らわしいけども」
アイが名推理だとばかりにドヤ顔して予想してくるけど断じて違う。
私は妊娠してないし、妊婦でもない。
「えぇー……仲間が増えたと思ったんだけどなぁ……」
「あ、貴方はお若いですよね?……歳は?」
「うーん……えへへ内緒!女の子の歳は聞いちゃ駄目なんだよ!」
少し考える素振りをした後、可愛らしくウィンクして舌を軽く出しながらピースしてくるアイに私はちょっとイラッとしたけど我慢した。
こんな風に「いや、もうネタは挙がってるんだから誤魔化せやしないのよ!」……と言ってやりたいと思ってもね。
「ま、まぁそうだけど……貴方の旦那さんは?貴方の様な妊婦さんをほっといて何処に行ったのかしら?」
此処で本命に迫る!
いや、答えの予想は既に出来てる……でも、聞かないといけない!
「そーれーもー……内緒!」
ちくしょうやっぱりかぁ!
幾らなんでも秘密が多すぎるのよ!
あんたはベルモットみたいな秘密主義か何かなのかな!
私が情報収集に悪戦苦闘していると向こうの曲がり角の廊下から足音が聞こえる。
もしかしたら此処の関係者かもしれない。
「ご、ごめんなさい!私、もう行かないと」
「もう行っちゃうの?もっとお喋りしたいな~。同い歳位の人がいなくて退屈なんだ」
此処でまさかの妨害!?
何故かアイが腕を掴んで粘ってくると言う予想外の行動を見せてきた。
この子、妊婦だしお腹も大きいから下手に振りほどけないし……でも、足音は確実に迫ってるし……兎に角、説得を!
「いや、ちょっと都合が……て、今暴露したよね?同い歳位って言ったよね?」
あ、私とした事が今はどうでも良い事に気付いてツッコミを入れてしまった。
アイはそれを聞いて目を輝かせて笑うとまだイケるなんて思い始めたのか今度はガッチリと両手で腕を掴んできた。
これ、詰んだ?
~別視点side~
星野アイ、16歳。
施設育ちで現在はB小町と言うアイドルグループのセンターを勤めていたが双子を妊娠し、九州の宮崎の片田舎の産婦人科に受診していた。
双子を産む事を決め、入院していたが歳の近い女の子は当然、産婦人科などに用はないので他に話し相手となるのは産婦人科の看護師や担当医のゴローこと雨宮吾郎、社長の斎藤壱護くらいなものなので少し、寂しさを覚えていた。
ある日、何時もの様に定期診察を受けに行く所で斎藤は電話が鳴ったので出て行き、アイだけが移動していた所で診察室の前に様子を伺う様な素振りを見せている同い歳位の少女がいた。
「(あの子、誰かな?今まで見た事も無いし)」
帽子とサングラスをしていて全体の顔は分かり辛いが何処かほっとけない気持ちになり、肩を叩いて「もしもーし」と声を掛けてみると肩をビクッとさせて急に身構えながら振り返ってきたので変な声を出して驚いてしまった。
この慌てようにこの子、何かあるなと勘づいたアイは自分の事をアレコレ聞いてくる少女に対応していれば逃げようとする素振りを見せ、咄嗟に片腕を掴んでしまった。
何故か"此処で逃がしてしまえば永遠に後悔する"。
そんな衝動に駆られてしまい、うっかり年齢が特定出来そうな発言をしてツッコミを入れられてしまうが此処で両手を握って離さない様にした。
~side終了~
どうしよう……わりと力が強くて全然、離してくれない。
私は完全に困ってしまっていると、遂に足音の人物が来てしまった。
「星野さん?そこで何を……貴方、誰ですか?」
駄目だ……白衣着た眼鏡の医者つまり、思いっきり関係者だ。
「すみません。場所を間違えてしまって……すぐに行きますね」
「場所を間違えてですか……何処を受診しているのですか?良ければ案内しますが?」
「いえ、お気になさらず」
マズイ、完全に勘ぐられてる。
そりゃそうよね……病院側がアイが有名アイドルだと把握してない訳ないもん。
何処からか追ってきたマスコミとかストーカーみたいな不審者だと思われてるよ絶対。
「すみません。私、帰りますから」
「もう少しいてよー」
「駄目だって」
「良いじゃんもう少しいてもさー」
予想以上にアイからのアプローチが激しすぎて離れられない。
どうしようなんて思ってあまり力を出しすぎない様に動いてたらサングラスがズレて落ちた。
「あ……」
「へ?」
「う、嘘だろ……!?」
この時、私の顔は二人に見られてしまった事が確定した。
「私だ!私の顔だ!先生、見たよね!」
「えーと……バッチリ見たと言うか……実は双子さんで?」
先生、良い所を突くわねいくわね……じゃないわよ!!
変装しなかった私も悪いけどバレたのは変な所で粘ってきたアイのせいよ!
妊婦じゃなかったらなぐ……いや、駄目だ殴れない!
妊婦じゃなくても可愛いアイを殴るなんて出来る筈がない!
「そんな訳ないでしょう。私とその人は"赤の他人"です。血どころか親戚ですらないです」
「私も聞いた事がないなー。私、一人っ子だった記憶しかないもん」
「そ、そうなのか……?こんなに似てるのに?」
「「全然知らない人だよ」」
私は否定するつもりで言ったらアイまで言ってしまい、声を揃えて言ってピッタリなタイミングで右手で同じ動きと速度で振ってしまった。
「いや、絶対おかしいだろ!?赤の他人同士がそんなに息ピッタリに言って、同じ動きするのか普通!?いや、待て……これは二倍特って言う意味ではイケそうな……」
この先生……もしや、アイのファンなのかな?
いや、鋭いツッコミを入れた後にブツブツとアイと私の両方を見て少しニヤけてるもん。
腕はいつの間にか離れてるし、私はもうダッシュで逃げようかと思ったら今度はグラサンの金髪のおじさんが来た。
「いや~すみません。家の家内からの電話で……て、アイが分身してる!?……俺も遂に歳か……変な幻覚が見える」
「いや、現実です。自分も何がなんだか……もう俺も幻覚って事にしようかな」
「もう先生も社長も大袈裟だよ」
現実逃避を始めた二人にアイはそう言ってケラケラと笑い、残された私はもうどうでも良いやと思った。
そう、これが私とアイとの初めての姉妹としての接触だった。
~一方、その頃~
とある道で車を走らせているベルモットは不意に九州に飛んだユメの事を思った。
「あの子……仕事以外だと抜けてる所が多いけど大丈夫かしら?まぁ、大丈夫ね。あの子も成長した筈だし」
ベルモットはそう楽観的な気持ちで考えるのを止めたが変な所で抜けてるユメが着いて早速、トラブルを起こした事を知るよしもなかった。