黒の組織の幹部だけど有名アイドルの双子の姉妹なんです 作:黒っぽいアイドル擬き
私は西村さんの合図と共に登場した かなちゃんを見ていたんだけど……。
「有馬かなです!よろしくお願いします!」
すっごい笑顔……私、何度か一緒に過ごしてたのに見た事もないんだけどあんなの……。
「普段からあんな風だったらなぁ……」
もう少し扱いやすいんだけど……。
私はそんな事を思いながら苦笑いしていると かなちゃんの演技が始まった。
演技は あかねちゃん同様に素晴らしいものだった。
天才子役と呼ばれているだけあって他の子役に追従を許さない演技力……でも、おかしい。
演技は良いのに何処か違和感がある……。
私は視線を鋭くして かなちゃんの演技をよく観察する……。
「……やっぱり」
私は かなちゃんの演技を見て感心出来てきた。
かなちゃん……何処か演技に加減があった。
素人の目には過去の演技と今の演技には区別がつきにくいけどベルモットの様な女優達を見てきた私の目は誤魔化せない。
でも、どうして……出来レースに関する情報は子役達には勿論、かなちゃんにも同様に隠している。
情報が漏れた?
私は考え込んでいたらいつの間にか かなちゃんの演技が終わっていた。
「素晴らしい演技でした!流石は天才子役!高い評価が期待できそうですねぇ!」
「はい!かなちゃんの演技。素晴らしいものでした。私が審査員だったら高得点を出したいですね」
西村さんとヨーコさんが かなちゃんの演技に関して言い合う中、アイと剣崎さんも評価を始めた。
「私も良い演技だと思ったよ。凄いね!」
「良い演技を見せて貰ったよ。やはり天才子役と呼ばれるだけはあるな」
二人とも高い評価を言う中、私は かなちゃんへの不信感を抱いていると。
「エミリーさんはどの様に評価しますか?」
西村さんに振られて私は平常心を保ちながら笑って かなちゃんを見ると かなちゃんは何処かビクッとした反応を見せた。
私、何も言ってないのにね。
「そうだね……かなちゃん。とても良い演技だったよ。流石は天才子役。皆、良い評価を出してるよ。でも一つ聞いて良い?」
「な、なに?」
「……本気……の演技だったよね。コツとかあったら皆の今後の参考にさせてあげて欲しいなって」
私はそう言って微笑むと かなちゃんは何処か震えてる様子を見せたけどすぐに笑顔で答えてきた。
「コツですか?私、ずっと自然にやってきて上手くやるコツはよく分からないです」
かなちゃんはそう言って笑って見せる姿に私は納得した事にして審査を終えた。
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全ての子役の審査を終え、会場に子役達が集まっている。
私は審査に疲れて一息ついていると西村さんが結果を発表を始めた。
「素晴らしい演技を皆さんに見せて貰いました!さぁ、栄えある春瀬成美役を勝ち取った子役を発表致しましょう!」
西村さんのその言葉と同時に発表用のBGMが流れ始めると周りが固唾を飲んでその結果を待っている。
やがてBGMが鳴り止むと当初の予定通りに。
「有馬かなちゃん!おめでとうございます!」
かなちゃんが選ばれた。
かなちゃんは笑顔で選ばれた事を喜んで見せ、何も知らない観覧席の人達はそれを讃えた。
私も笑顔で拍手する中、かなちゃんを見つめ続けた。
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オーディションの収録を終えた私はその足で かなちゃんの元へ向かった。
挨拶してくるスタッフに適当に挨拶してあしらいながら かなちゃんの所へ行くとスカーレットに頭を撫でられてる かなちゃんを見つけた。
「かなちゃん」
「エミリー。仕事は終わったのですね。丁度良いです。小五郎さん達と一緒に」
「ごめん。少しの間だけ かなちゃんを貸して」
私のその言葉にスカーレットは首を傾げていて かなちゃんはうつ向いている。
私はそれを気にせず かなちゃんの前まで来ると屈んで視線を合わせた。
「良いかな?」
私は只、それだけを言うと かなちゃんは頷いた。
「よし。それじゃ、ちょっと借りてくね。スカーレットは小五郎さん達といてなよ。すぐに行くから」
「……分かりました」
スカーレットの了承を得た私は かなちゃんを連れてその場から離れた。
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私は かなちゃんを連れて人気の無い場所まで来ると かなちゃんに視線を向けて質問した。
「かなちゃん。オーディションの演技。何で手加減したの?」
「な、何の事よ……私、手加減なんて……」
「嘘を言わないで」
私のその言葉に かなちゃんはビクッと身体を反応させると私は問い質した。
「あの演技は確かに凄かった。素人さんには見抜けないでしょうね。でも、私はこれでもお母さんやお姉ちゃんの側でプロの演技を見てきたんだよ。簡単には騙されない。ねぇ、教えてよ。貴方がどうして……わざわざ演技に手を抜いたのかをね」
私のその問いに かなちゃんは震えていた。
でも、だからと言って手加減はしない……そう言う約束だからね。
「代わりに答えてあげようか?貴方がわざわざ演技に手を抜いた理由を。かなちゃんは分かってたんだね。今回のオーディションが八百長……つまり出来レースだったって」
私のその言葉に かなちゃんは震えながら服の裾を掴む姿を見て私は続ける。
「何処からそんな情報を仕入れたのかは知らない。でも、貴方は今回の出来レースを知って余程の事でもない限り結果は貴方を選ぶと分かっていた。だからわざわざ本気の演技なんてしなくとも良いと思った貴方は私の眼前で手を抜いた演技を私に見せた。否定できる?」
私のその言葉に かなちゃんは何も言わない……いや、言えないんだね。
「言った筈よね。私は審査には手を抜かないって。どうしてなの かなちゃん。貴方もプロならどんな状況でも本気の演技をして見せるのが」
「煩い!!」
私の言葉を遮る様に かなちゃんはそう叫んで私を睨んだ。
「そうよ!知ってたわよ!今回が出来レースだって!だから望む様な演技をして!選ばれてやったのよ!悪い?悪いのはあんた達よ!出来レースに加担したあんただって!誰も私の演技なんて見てないのよ!見てるのは私の知名度と金になるかだけ!テレビの視聴率が取るだけなら良い演技が出来る子役よりも有名な子役を使う方が良いのよ!あんただってそう」
私は かなちゃんが言い切る前に頬を叩いた。
打たれた かなちゃんは叩かれた頬を手で押さえる姿を見ながら溜め息を吐いた。
「馬鹿……確かに今回のオーディションは出来レースだったよ……でもね かなちゃん……今回のオーディションは単にお膳立ての為のオーディションじゃないんだよ」
私はそう言ってある物を取り出して かなちゃんに差し出すと受け取った かなちゃんの手は震えていた。
「このオーディションは未だに埋もれている才能を掘り出す為の舞台だったんだよ……そう……素晴らしい演技を見せてくれた才能のある子役を探し、選び、そして見つけ出す……ダイヤの原石になる子を探す為のものだったんだよ……それは今回の評価が掛かれた資料よ……分かるよね かなちゃん……」
私のその言葉に かなちゃんは震えながら私を見てくるけど私は横に振った。
「手を抜いている事を見抜いたのは私だけじゃない……アイも剣崎さんも察していた……だてにプロをやってないからね……評価は落ちたよ……もしかしたら貴方の起死回生となる舞台だった筈だったんだよ……このオーディションは……」
私のその言葉を言いながら資料を かなちゃんから取り戻すと私は結論を言う。
「かなちゃん……プロと付く仕事で手を抜く様な奴はね……信頼を勝ち取れないんだよ……これで貴方の芸能界人生は終わる訳じゃないけど今後も貴方は苦しむ事になる……その事を肝に命じて二度と下らない演技なんてしないで……他の役者達に対して失礼でしかないからね……」
私はそう言い終わった時、かなちゃんは膝をついて泣き出した。
大人気なかったかもしれないけど かなちゃんの事を思えば下らない思想に取り憑かれさせる訳にはいかない。
かなちゃんの実力は本物なんだから……磨き続けさせる為にも厳しい言葉は時に必要になる……。
私は胸が締め付けられる思いで泣き続ける かなちゃんを見つめる。