NIKKE ―ガメラ超決戦―   作:ヒモトラマン・ロープダーク

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怪鳥Ⅰ

 

「…ねえ、覚えてる?例の来訪者。」

 

「ああ、デビルハンターだっけ。またあんなかんじの人たちが来るのかな…」

 

 

 地上の廃墟になった街並み。量産型ニケの小隊が瓦礫だらけの道なき道…ならぬ、道だった道を進んでいた。進行方向先にはそびえるほど巨大なリング状のラプチャー『ゲートキーパー』がこちらを見下ろすように鎮座している。

 この正体不明のラプチャーは異世界からの客人を呼び寄せるという奇妙な能力を持ち、その初事例が先日のデビルハンター御一行様来訪だ。最も、量産型ニケの端くれである自分らが関わるようなことはなかったのだが…

 

「…で、なんで今回は厄介事の専門家のカウンターズじゃなくて私たちが?」

 

「それは我らのミシリスの社長が……」

 

 

 

 ―――良い、あんたたち? 今度の来訪者は私たちミシリスで確保するの。アンダーソンや忌々しいカウンターズよりも早くね。

 

 ―――そのあと? 決まってるじゃない…丁重に『ミシリス流のおもてなし』をしてあげるのよ。ただ飯食わす余裕なんて無いのこっちには!わかったらさっさと行け、鉄屑ども!

 

 

 あのクソガキ。

 

 おおよそ、上司…いいや、自分たちニケを備品扱いしているので持ち主か。少なくとも、怒りと呆れを抱きながらまぁいつものこととグッとこみ上げる感情を彼女たちは呑み込む。そんな調子だから四方八方、縦横無尽に敵を増やすんだよあの社長は!

 出し抜こうとしたことがバレたらどうなるか…せめて、過酷な現場に責任が来ないで欲しい。

 

「来訪者をモルモットにでもする気なのかなー…」

 

「やりかねないよね。シュエン社長なら…」

 

 命令のニュアンスから鑑みてまあ間違いないだろう。デビルハンターの扱いはアンダーソンの余計かつ未知なるリスクを回避する判断もあってVIP待遇だったことにシュエンは大分不満を持っていたとか。おまけに、自分に報告が来たのは全てが終わったあと…デビルハンターたちが帰還してからとのこと。元よりアンダーソンや他社社長にカウンターズとも決して良好な関係ではないのは周知の事実だが、これがキッカケに溜まりに溜まったストレスと癇癪が爆発してその煽りが自分たち備品扱いニケに来たわけで…

 

「…そこ、私語は慎め!」

 

「は、はい!」

 

 

  ―――ベチャ

 

「?」

 

 前列からの注意に慌てたその時、足への違和感。

 

 何か踏んだ? あとさっきから何か鼻がひん曲がりそうな悪臭が…

 

 

「…なに…これ?」

 

 

 前方に『それ』はあった。白くて大きな人間大くらいでベチャベチャな泥と粘土の中間のようで、悍ましい悪臭の根源。蝿やゴキブリがたかり、アークには間違っても存在しない汚物の山。

 戦闘経験はそこそこある量産型ニケたちも顔を引きつらせる。

 

「………これ、もしかして排泄物…もしくは吐瀉物かなにか?」

 

「冗談キツいよ。こんなデカいクソにしろゲロにしろする生き物なんていないでしょ。」

 

「何にせよ、来訪者の手掛かりかもしれん。サンプルを回収するぞ。」

 

 ―――え゛

 

 量産型ニケたちは顔を見合わせた。回収するの?これを?

 

「…検体回収キットって誰持ってた?」

 

「……はい。」

 

 貧乏くじを引いたひとりが渋々汚物の塊のところに向かい、装備品入れのポーチからビニール手袋や容器類といったキット類を取り出し作業にあたる。ああ、臭いついたら暫くとれないだろうなと思いつつ彼女は手を突っ込む…

 

「……え?」

 

 すると、ずるり…と固形物が中から溢れ落ちてくる。

 

 キラリと光るそれはナイフ…あと柄の部分には腐食した物体がついていた。拾いあげて観察してみると…

 

「人間の…手?」

 

 間違いない、まだ微かに輪郭はある。しかし、この汚物からどうして人間の手が…?それにこの腐り方はまるで胃袋で消化されかけたよう…な…

 

 いや、そんなまさか。人間を好んで喰らいこれだけデカい汚物を出す化け物なんて存在するはずがない。ラプチャーですら手を焼いているのにそんなものいてたまるか!

 

 

 ――ズルリ…

 

「!」

 

 しかし、現実は非情である。続けて汚物から溢れてきたのは人の頭蓋だった……もうこれは疑いようがない。量産型ニケたちは青ざめ、指揮官代わりだったニケはすぐに警戒をはじめる。

 

「どうやら、急いで撤退するべきみたいだな。検体を採取次第、全力でこの場を離脱する。」

 

「ま、待って!こんな程度じゃシュエンは納得しな……」

 

「わかっている。前哨基地に向かおう…あそこの指揮官なら或いは……」

 

 

 

 されど

 

 ……もう遅い。

 

 

 

 

 

 

『ギャァア!!!』

 

 

「「「「!」」」」」

 

 既に、『災いの影』は翼を拡げ彼女たちの頭上に迫っていったのだから。

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ザーー…… ザーーー……

 

 

 パチン!

 

 

「…これが、残された記録映像だ。」

 

 アーク作戦会議室。モニターに映された一部始終に集まった一同は顔を険しくしていた。この場を仕切るアンダーソン副司令にカウンターズとその指揮官…そして、不貞腐れたようにふんぞり返るシュエンの姿。どんな面子だろうとシュエンがいれば最悪の空気になるのだが、今回はいつにもまして酷い。

 

「…それで、どうして先走った…シュエン。」

 

「は? わたしが自分の持ち物をどう扱おうと勝手でしょ。まあ、それなりの仕事はしたみたいだけど……」

 

「論点をすり替えるな。来訪者の存在がありうる場合は政府で対処すると誓約を立てたろう。」

 

「ハッ!それで? またタダメシ食わして済まそうってわけ? アンタたちは頭お花畑なの? ラプチャーの脅威に晒される昨今、未知なる技術や物質・エネルギーがどれだけの価値を持つか……」

 

 自らのスタンドプレーを悪びれることは絶対にしない。それに、彼女の言うことにも一理はある…結局、デビルハンターの一件で賭けたコストのわりに獲るものはあまりに少なかったのは事実。まあ…

 

「――で、その獲られる技術をミシリスで独占したかったんでしょ?」

 

 そんな見え透いた建前なんてアニスの煽り文句にされてしまうし、もちろん図星。

 

「おい、鉄屑風情が勝手に口を開いてじゃない!」

 

「あれ〜 もしかして図星〜? 怒ちゃった?」

 

「アニス、それくらいにして。話が進まないわ。」

 

 ラピにたしなめられる形で矛をおさめる両者。確かに内輪揉めをしている暇は無い…現にこのあと量産型ニケ部隊は命からがら逃げ帰ってきたひとりを除いて消息不明になっているのだから。実害が出た以上、慎重に立ち回らなくてはならない。

 

 いつもは割りとふざけているあのネオンですら手持ちの資料を静かに眺めている。

 

「映像から見るに…今回の来訪者は私達に友好的ではなさそうですね。…というより、意志疎通が可能なのかどうか。もしかしたら、デビルハンター御一行様のケースが運が良かっただけかもしれません。ラピ、他に情報は無いんですか?」

 

「唯一の帰還したニケは混乱した状態で、『鳥』と狂ったように叫んでいたようよ。」

 

「じゃあ、今回の来訪者は『鳥』ですか?それなら、意志疎通は不可能でしょうけど…鳥って人間やニケを襲って食べたりします?」

 

 ネオンの疑問は最も。本物を見たことなんてないが、鳥類最大級の猛禽類でも人間を自ら狩りの対象にすることはないだろう。もしくは、鳥型の新型ラプチャーの線もワンチャンあるが…それなら銃火器を扱ってこない点が奇妙だ。

 

 なんにせよ…と話を纏めにかかるアンダーソン。

 

 

「相手がなんであれ、調査は必要だ。データを集め、それから判断する。そのための情報収集を君達、カウンターズに任せたい。」

 

 もうある種の様式美。無理難題や厄介事は取り敢えず、カウンターズ。まあ、アンダーソンならまだ良いほうだ…迷惑をかける分、バックアップしてくれるからありがたい。一方、そこのクソガキはバックアップどころか恩を仇で返すなど日常茶飯事で今までどれだけの苦労をかけさせられたことか。

 

「…なによ?文句があるなら面と向かって言いなさいよ?」

 

 『別に…』と指揮官は顔を背けた。

 文句と恨み辛みは多々積み重なれど、清算させる場所はここじゃない。取り敢えず、拒否権は無いので依頼を了承した指揮官にアンダーソンはさらに続ける。

 

「いつものことながら、面倒をかけて済まない。そして、今回の任務には通常より高い危険性を孕む以上、私の権限で誰か他のニケを支援につけさせてやろう。要望はあるか?」

 

 『…他の部隊のニケを?』…指揮官は考える。

 カウンターズでも充分な実力持ちだが、作戦の危険性を鑑みて誰か支援をつけてもらえるなら?ありがたい話だが、一方で中々の悩みどころだ。

 

「指揮官、アブソルートはどうでしょう?こういった作戦は得意分野です。」

 

 ラピからの提案。アブソルート…エリシオンの最強部隊で殲滅力はラプチャーの大群だろうと一瞬で塵にしてしまうほど。何より、ラピの元々所属していた部隊で彼女たちとは気心が知れた仲でカウンターズとも作戦行動を共にした経験がある…条件としては悪くない。…ううむ。

 

 でも今回はあくまで調査で敵の殲滅・制圧ではない。ある程度の高い戦力を持ち、調査といった能力に優秀なニケ…

 

 

 【――ワトソン、私をお呼びでしょうか!】

 

 ノベル…うーん、何か違う。

 

 

 【――肉体労働はんたーい…】

 

 エクシア…脳内イメージで既に拒否。

 

 【――調査? 成る程、私の刑事としての勘が…… は?誰がイヌですか!誰が!】

 

 ポリ……うーん、警察の仕事がある手前頼み辛い。

 

 そんな何でも出来るニケなんて早々都合良くいるわけ…なんて思っていたら指揮官の目に映ったシュエン。――そういえば…

 

「指揮官様、ここはアブソルートで決まりじゃない?」

 

 アニスからも勧めが入る…しかし、『いや』と指揮官は別の選択肢を選ぶことにした。そうそう、いるじゃないか。調査や研究が出来て、戦闘も申し分ないニケが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 ゲートキーパー…その円型の巨体が鎮座する廃墟に『繭』が形成されていた…

 

 

 糸の代わりに肉で紡がれ、半透明な膜から絡めとられた量産型ニケたちの哀れな亡骸が覗き…グロテスクなそれはドクンドクンと胎動を続ける。繭というより、もう子宮といった様相のそれは』邪悪なもの』を孕む。

 

 

 かつて為せなかった宿願を…

 

 忌まわしき仇敵へ報復を…

 

 

 

 ―――約束されし、再誕を

 

 

 赤い月が照らす肉体のゆりかご。中からおぞましいものが這い出してくる時は刻一刻と迫りつつあった…

 

 





ギャオス「ラプチャーだっけ?この世界の人類ちゃんそんな奴等に滅ぼされかけられてるんだってねぇ〜? 可哀想だからトドメを刺してあげる。」

人類「」

 大体、こんな話です。
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