NIKKE ―ガメラ超決戦― 作:ヒモトラマン・ロープダーク
すまねえ、ルビコンに籠もってたのと家族がコロナでぶっ倒れたのが重なっちまったんだ。
「ちぃっ!」
『ギャァァ!!』
けたたましい警報が鳴り響く研究棟を逃げ回るエーテル…流石に万一のために持ち込んでいた弾丸では足りず、苦戦を強いられていた。
侵蝕されたニケは鋭い爪に口が裂けて牙まで生え揃いかけ、半分はギャオスの身体と化している。幸い、不格好な形態故に飛行したりは出来ていないが…既にエーテルのショットガンの弾丸全てに耐えきった上に、施設のセキュリティーに任されていた量産型ニケたちすらものともせずに引き裂くなど充分すぎる暴挙を働いていた。
「冗談、キツいんですけどッ!?」
正直、早々に逃げ出したかったがニケである以上は人間を見捨てることが出来ない性…この研究棟にいる人間たちがいる限りはそんなことは出来なかった。今ほどニケになった自分の身を呪ったことはない。
一方の研究員をはじめとした人間はというと……エーテルが逃げようとする先で壁のレバーに手をかけている。確かあれは手動で下げる緊急シャッターの……って…!?
「…ちょ、ウソウソウソ!? 待っ…!?」
――ビーーッ!! ガシャン!!
非情。…分厚い鉄の壁が退路を断つ。
いくらニケだって、素手で突破は無理。そんな見捨てられた彼女に侵蝕されたニケが迫る…!
『ギャァァァァァァ!!!』
「あー、こんなことになるなら早めに辞表出しときゃよかった!!」
――ダダダダダダ!!!
『?』
「おい、こっちだ!」
突然、後ろからの銃撃に振り向く侵蝕されたニケ。
視線の先に立つのはリサ…道中、倒れた量産型ニケから拝借したサブマシンガンを構えている。そして、ポーチからスタングレネードを取り出し投げつける……
『!』
…が、反射的に翼を盾に眼を守る侵蝕されたニケが閃光をやり過ごし、今度はリサへ狩りを邪魔された怒りを向けた。『やば!?』と逃げようとする彼女だったが、その頭上を黒い影が乗り越え目の前に着地すると素早く銃を構えた。
「…下がって。」
冷たく静かな声…その主が突き出す獲物はショットガン。闇に溶けるような黒づくめのニケは突然現れるなり、バン!!バン!!と無慈悲に強力な弾丸を無造作に近づいてきた敵へと叩き込む。
頭、胸、脚、翼、無駄なく次々と部位を吹き飛ばしていき、ついには無様にバランスを崩したその背中を踏みつけトドメに脊椎を完全に粉砕して破壊する。
「……すごい。」
驚嘆するリサ。彼女の鮮やかさは黒尽くめ衣装にマスクから覗く白い肌も相まってまるで死神のようだ。ニケは強いのは知っていたが、このように息を呑むような動きは思わず魅入られてしまう…
「ふぅ、任務完了。あ、お怪我はないですか?生身の人間が無茶しちゃ駄目ですよ。」
「は、はい……」
―――メイデン!
「! 指揮官…」
同時に駆け寄ってくる指揮官に彼女は反応した。
リサが知る由もないが、彼女は『メイデン』…イレギュラーと化してしまったニケを処理するエクスターナー部隊のニケ。その存在は都市伝説・怪談のように扱われているが、しっかりと指揮官と交流もある人物。
――ありがとう、おかげで助かった。
「い、いえ。びっくりはしましたが、アナタが連絡してくれなければ被害はもっと深刻になっていたでしょうし……」
因みに彼女を手配したのは指揮官。アンダーソンが受けた一報をすぐにエクスターナー部隊に流し、たまたま近くにいたメイデンが対処にあたったのである。
「それにしても、このニケは一体……」
ただ、いくらイレギュラー狩りをするメイデンであってもこの侵蝕されたニケは異常だった。汚染コードをラプチャーに打ち込まれたり、悪意がある改造を受けた者たちなどは最低限は人間の形を留めている…が、この個体は明らかに有機的な翼やギャオスに近づいた肉体の変形をしている。
リサもこんな異常事態は経験が無く、死体をマジマジと観察していた。
「…ニケって確か純粋な人間ではない、だよね? ギャオスの体組織を捕食した生物が変質した事例は知っているけど…こんな急速に………」
「…」
その傍らでエーテルの顔はシナシナになっている。
理由を察した指揮官はなんともタイミングよく持っていたエナジードリンクを無言でそっと差し出す…。今回、被害者であっても研究員である彼女がさらなる徹夜から逃れられる理由が出来るほどアークは甘くない。実に無慈悲。
せめてもの気休め程度に渡された缶を受け取るとエーテルは溜め息をついた。
「…また徹夜か。ほら、皆散った散った。報告は明日の朝に上げるから待ってて。」
「え、でも……」
「気にしないで、アーク…いや、ミシリスなら普通だし。」
悲壮感あふれるエーテルを残しつつ、その場を後にする指揮官とリサ。メイデンはいつの間にか既に姿を消しており、残るはエーテル自身と貴重なサンプルになった侵蝕されたニケの骸のみ。
「―――さ、やるか。マクスウェルが言っていた『予感』が当たらなきゃ良いんだけど…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「くそ、マリアンどこだ!!」
…場所は変わり、地上。
スノーホワイトら一行はマリアンを捜してギャオス勢力圏を突っ切っていた。
無数に散らばるギャオスの残骸を越えて、声を張り上げるスノーホワイト…されど返事は返ってこない。仮にもヘレティックである彼女が怪鳥に負けることはないだろうが、単独行動は危険であることには変わりない…はやく見つけなくては。
「いやあ、これは全部あの娘がやったのかい?凄い光景だねぇ。」
「一体、なにがあの娘の事線に触れたのでしょう。最近は精神的にも大きく成長したと思っていたのに…」
紅蓮やラプンツェルも骨の折れる捜索に溜め息を洩らす。マリアンが殲滅したであろうギャオスの肉片の山は腐敗し、凄まじい悪臭を放つ故に嗅覚センサーを切っておかなければ頭痛と吐き気で倒れてしまいそうだ。
それにしても、彼女はどうしてこんな所に…
………そんな時、スノーホワイトの視界が人影をとらえる。
「――見つけた! マリアン!!」
「? …スノーホワイト?」
瓦礫の先…不自然に聳える『岩山』の麓にマリアンはいた。不思議そうに首を傾げて、自分が捜索対象だとは夢にも思わない様子。
スノーホワイトは無事だった安堵ときかん坊への怒りとでごちゃ混ぜになりながら彼女へ駆け寄った。
「捜したんだぞ。どうして、こんな…」
「呼んでいたんです。『助けてほしい』ってこの子が。」
……この子?
追いついた紅蓮とラプンツェルも辺りを見回すが自分たちしかいない。幽霊でも見えているのか?
「触ってみてください。」
すると、岩山を触るように促すマリアン。
まさか岩山が喋るとでも?ヘレティックは無機物とも会話できるのかと半信半疑になりながら手をあててみたスノーホワイト……すると、
「! ……あたたかい。 生きているのか?」
岩山は熱を帯びている……機械や地熱なんて無機質はものじゃない、生物としての温もりに近くてそれよりも遥かに強靭な鼓動を感じる。紅蓮とラプンツェルもスノーホワイトのリアクションに驚いて触れてみると…確かにと理解する。
しかし、紅蓮は顔を険しくした。
「驚いたね、これは… 鯨なんかの比じゃない大きいこんなものが生物なんてね。これ、もしかして異世界からの来訪者なんじゃないのかい?例の『ギャオス』と同じような……」
「違います! 『ガメラ』はそんな子じゃありません!」
危険性を勘繰る彼女に対し、強く否定するマリアン。
それに、ラプンツェルはあることに気がつく。
「ガメラ…? それが、名前なんですか?」
「はい、教えてくれました!」
教えて…ということは、マリアンとこのガメラなる巨大な生き物は意思疎通が出来るということか? ヘレティックという規格外な属性の彼女だが、まさか怪獣と対話が出来るとは驚きだ。
それでも、スノーホワイトは背負う対艦ライフルに手をかける。
「しかし、人類の味方というわけでもないだろう。動けないのなら、今のうちにここで駆除すべきだ。」
「駄目です、スノーホワイト! ガメラがいないとアークが危ないんです!」
「なに?」
アークが危険?どういう事だ?
確かにギャオスは脅威だが、ラプチャーとは敵対関係にある上に一個体一個体は弱い…余程、大きい個体でもなければさして脅威にはならない。災禍の根源もゲートキーパーと検討がついている以上は遅れをとることなどない筈。
されど、マリアンの顔には滅多にださない焦燥が見てとれる。
「ガメラは『強い敵』を倒すためにこの世界に来たと言ってました! むかし倒したけど、この世界で蘇ろうとしているから…それを止めないといけないって!」
「…敵? ギャオス以外にもまだ何かいるのか?」
「! スノーホワイト、紅蓮!!」
その時、ラプンツェルが声をあげた。
振り向くと、彼方から空に散らばる不吉な影…ギャオスの群がこちらに向かってきている。ピルグリムが狙いなのか、はたまた脅威となるガメラを潰しに来たのか定かではないが、迎撃しなくては。
「ええい、まだ来るか! マリアン、一先ず話は……」
「スノーホワイト、わたしはガメラを起こします。それまで頼みました。」
「ま、マリアン!?」
危機的状況にまさかのマリアン離脱。引き留めようとしたスノーホワイトだが、紅蓮の叫びが制止する。
「止せ、スノーホワイト!こうなったら、我々でやるしかない! ……来るぞ!」
「…っ ええい、エンカウンター!!」
ガメラリバース楽しみですね。
ネトフリ契約するか…