NIKKE ―ガメラ超決戦―   作:ヒモトラマン・ロープダーク

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覚醒Ⅱ

 

 

 ……時計の針を戻してもう少し前の話

 

 大体、カウンターズがリサと初めて出逢う直前あたりの頃。

 

「はぁ… はぁ…」

 

 ギャオスの群れを掻い潜りながら走るニケがひとり。シュエンに捨て石同然にゲートキーパー調査へ派遣された部隊の生き残りで、なんとか生き延びはしたものの仲間とは逸れ孤立。合流の目処もたつわけがなく、廃墟をネズミのように駆け回っていた。

 

「どうして…! 来訪者はコミュニケーションが出来るはずだって…!」

 

 話が違う。簡単な任務、ラプチャーの相手より命の危険は無いだろうとM.M.R.はほざいていたが結果はどうだ?現れたのは人間ですらない不気味で凶暴な怪鳥で現れるな否や、数名が食いちぎられ犠牲になった。

 

「ふざけるな… こんな…ところで!」

 

 とにかく、無我夢中で走り続け近くの建物の中に滑り込む。取り敢えず、ここでなら怪鳥の眼から隠れることも…

 

『…』

 

「!」

 

 その時、後ろに気配を感じて振り向いた。

 薄暗い影の奥………なにかいる?

 

『…』

 

「なに、コイツ?」

 

 サイズは大型犬くらい…ギャオスとは似ても似つかないアンモナイトのような貝殻を背負う生き物がいた。つぶらな黒い瞳が輝くデフォルメした恐竜のような頭がついているが口はない…

 よく見ると可愛くも………いや、やっぱり気持ち悪い。

 生物としては異質な姿、警戒するのは当然だった。

 

「ハッ、どうせアンタもあの鳥でもみたいなバケモノなんでしょ!? この際、死骸でも良いから持ち帰ればシュエンも満足するはず!」

 

『…!』

 

 ジャキッと銃を構えると奇妙な生き物は触手で防御し怯えるような姿勢をとった。まるで自らの非力さを訴えるような仕草に思わず怯む彼女…これでは動物虐待をしているようではないか。

 

 

「こ、この! 騙されないっての! アンタみたいな奴が人畜無害なわけ……」

 

『…』

 

 この一瞬が運命を分けた。

 

 さっさと引き金を引いていれば、全てはもっと早い幕引きになっていただろう。彼女なりの良心が僅かに引き留めた時間が死角である背後にカチリと刃を展開した触手を忍ばせられるのを許してしまい……

 

 数秒後、腹を貫かれ『ニケ』としての彼女は絶命した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………そして、『私』は自由な身体を手に入れた。

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 

「……やっぱりこんな展開になるの!?」

 

 まあ、無事で終わるわけないと思っていたアニスが悪態をつく中、前線へ向かうカウンターズ並びにアブソルート。メティスが陣取る前線で爆発が起こったこと、そこから指揮系統に混乱が生じ陣形が崩れつつあった。

 その影響でここぞとギャオスたちが勢いを取り戻し、超音波メスで切り裂かれたり大空へ連れ去られて喰いちぎられるニケたちの悲鳴があちこちから聞こえてくる。まさしく地獄絵図。もう目をつむり耳を塞ぎたいくらいだが…止まってはいられない。

 

 

 ―――彼女たちを助け…

 

「さがってろ!」

 

 ウンファを先頭にしたアブソルートが指揮官の前へ出ると彼女たちが放つ砲撃が一気にギャオスを薙ぎ払う。移動しながらでも指示なくとも怪鳥の群れを散らさせていく様は流石、メティスと並び立つ部隊なだけあるということか。

 

「お前は集中して、前だけ見てろ! 周りはアブソルートがなんとかする!」

 

 ――任せた!

 

 そして、走り抜ける先……

 

 尚も爆発が起こる最前線で待ち受けていたのは……

 

 

 

「…指揮官、あれを!!」

 

 ラピが示した先…そこには満身創痍になったメティスと対峙する『ナニカ』がいた。

 

 ニケのように女性的だが、その肉体は貝のような鋭い甲殻と剥き出しの筋肉のような表皮…あと身体の随所が不気味な発光器官になっている。ヘレティックとは違う、寧ろ真逆と言って良いほど有機的な禍々しさを放つ。

 

 

 ――ニケ? …でも武装が無い?

 

「似てはいますが、恐らくは別の存在かと。」

 

 『ナニカ』を強くニケではないと否定するラピ。

 基本、理屈っぽい彼女だが今は肌で感じるとしか表現は出来ない。微かにニケの残滓のようなものは感じるが、誰も知り得ぬ邪悪な存在と混ぜあわさってしまった別モノだ。

 状況から見るに、メティスを追い込んだのはコイツに違いない。

 

 

 すると、『ナニカ』はこちらに気がついたのか顔を此方に向けた。

 

 

 

『新シイ ニケ…ト 人間カ。』

 

 

 ――!

 

 その顔は1枚の貝殻をノッペリと貼り付けたようなのっぺらぼう。ただ額に爛々と輝く単眼と奇妙なカタコト喋りが更に嫌悪感を更に際立たせ、指揮官は怯んでしまう。

 デビルハンターやアンドロイドといったかつての来訪者とはあまりにかけ離れた異形の姿…だが、知性はある様子。言葉も通じるなら意思疎通は可能だろうか。

 

 ……警戒しつつ、ラピがコミュニケーションを試みる。

 

 

「アナタは何者? メティスをやったのは……!?」

 

 しかし、言葉は最後まで紡ぐ前に襲いかかってきた触手に遮られる。鋏のような先端が切り裂こうとして唸りをあげ、銃撃と格闘でいなすラピだが…ビュン!!と死角から鞭のようにしなってきた触手に弾き跳ばされてしまう。

 

「くあっ!?」

 

 ――ラピ!

 

「指揮官様、さがって!」

 

 咄嗟にアニスが指揮官を引っ張り、立て続けに襲いかかった触手は空を切る。直後、アブソルートが大火力を手に向け叩きつけ鎮圧を試みる……が…

 

『…』

 

「……嘘だろ?」

 

 唖然とするウンファの視線の先には煙から姿を現す無傷の敵の姿。どうやら、一瞬で触手を盾にして攻撃を凌いだのだろう…なんて奴だ。

 クスクスと仮面の下でムシケラの抵抗を嘲笑う彼女……その時、バシュッと後ろから金色の弾丸が掠め顔面を粉砕した。

 

 ――マクスウェル!

 

「ベビー、ソイツがギャオスの親玉だ! 援護を……」

 

『ァ゙……失セロ。』

 

 一瞬、悶えたが反射的に触手がマクスウェルに向き超音波メスを掃射…直撃を受けて爆発が起こる。悲鳴が聞こえたが、視界は遮られ無事かどうか定かではない。

 

『…イタイ。』

 

 ダメージを受け、顔を砕き灼かれた異形は触手を瀕死のニケやギャオスたちに伸ばし先端を突き刺した。すると、彼女らの体液を生きながら吸い上げていき干からびたミイラの山をこさえてみせる。

 それを見て指揮官は気がつく。

 

 

 ――あの時の死体と同じ!?

 

 

 最初のゲートキーパー捜索時に発見した干からびた量産型ニケの死体と同じ……彼女も『捕食』されてしまったのだろう。

 それを理解した時にはもう異形はさらなる犠牲に同胞であるギャオスすら容赦なく選び、ダメージを修復する養分を『補填』していく。その内に異形の焼け爛れた顔に……人間のような顔が形成されはじめた。

 

『ァ゙… ァ゙… フゥ… このほうが喋りやすい。発声器官なんて余分の極みなのだけれど。』

 

 屍人に近い肌…黄金色の瞳…妖しさ漂う黒髪… よりその姿と喋り方はニケに近くなった。指揮官やカウンターズが知る由もないが、元々は犠牲になったニケの物なのだから当たり前。ただ、オリジナルより遥かに常世ならざる雰囲気はさながら吸血鬼だ。

 

 ――お前は何者なんだ?

 

 

 彼は異形に問う。

 

 …………そして、彼女は答える。

 

 

「朱雀……いや、こんな仰々しい名前は好みじゃない。そうだ、あった…おまえ等から人間から与えられた一番新しい名前……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ――『 イ リ ス 』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

「なによ!なによ!なによ!? 何なのよアレはァ!?!?」

 

 平常時の数倍の怒りがこもったシュエンの発狂が響く作戦指令室。映し出されるメティスを捻じ伏せた異形の存在にプライドすらもズタズタにされ、もう彼女は思考らしい思考が出来る状態ではなかった。

 

「ちょっとアンタ!?あんなのがいるなんて一言も聞いてないんだけど!?」

 

「やめないか、シュエン!」

 

 勢いのまま『ウソ…なんで…』と放心するリサに掴みかかるもバーニンガムに引き剥がされ、なんとか抑えるべく羽交い締めに。ただ、制止に入ったバーニンガムも内心は慌てふためきたいのも事実で、その気持ちを抑えて質問をする。

 

「リサくん、あれが何かわかるか?」

 

「………私の知る情報と差異はありますが…」

 

 前置きをした上で彼女は語る。

 

「あれは『イリス』。ギャオスの変異体で…その群の長にあたるタイプだと推察されてます。でも、こんな人間に…ニケみたいな姿じゃなかったはず……」

 

 

 

 

【あー、やっぱそういことね。】

 

 

 

 その時、通信で割り込んできたのはエーテル。

 作戦会議の場に不用意に顔を出した彼女へすぐさまシュエンの八つ当たりの矛先は向けられた。

 

「オイ、お前呼んでないぞ!」

 

「M.M.R.か。構わん、話してくれ!」

 

【了解ですバーニンガム副司令官。この『イリス』とかいうふざけたニケモドキはニケとギャオスの変異体が融合したハイブリッドである…それと同時にギャオスを生体兵器足らしめる指令塔とも言える存在なのではないかと推察されます。言ってしまえば、ギャオス版ヘレティック…悍ましいこの上ないですが。】

 

「馬鹿言え! ギャオスはラプチャーではない!!そんなこと…!」

 

 

 バーニンガムの認識はアークの常識としては正しい。生物兵器だろうが純粋な有機体の粋を出ないギャオスでニケを乗っ取り融合など不可能なはず。

 しかし、エーテルの回答は震えるほど冷たい。

 

【それが出来たんですよ。そのギャオスの侵蝕されたとおぼしきニケがこのアーク内で既に確認されたんです。

 

 つまり……敵はアークの存在を把握していると見ても良い。このあと起こりうることはエニックに聞くまでもないと思いますが…】

 

「「「!」」」

 

 まさか。

 人喰い怪鳥の群れが人類最後の砦を把握しているとなれば……起こりうることはひとつ。

 

 

 

【間もなくでしょうね? 押し寄せてきますよ…ギャオスの大群が。】

 

 

 

 





☆邪神イリス
 (イメージCV.大西沙織さん)
 ガメラ3に登場したギャオスの変異体であるイリスが転生を経て、ニケと融合した姿。いわば、ギャオス版ヘレティック。幼体であるがための戦闘能力の低さをニケのボディを手に入れることで補っている。『本来の姿』のミニマム版だが、その戦闘能力はメティスすら上回る厄災の神。
 発声器官も(不本意ながら)獲得しており、喋る事はできるが人類と対等に話すことはない。



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