NIKKE ―ガメラ超決戦―   作:ヒモトラマン・ロープダーク

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覚醒 Ⅲ

 

 場所がわからない蜂の巣をさがす時、どうするのか?

 

 

 伝統的な探し方のひとつとして、働き蜂に布切れなどで目立つ印をつけそれを追うという方法がある。地道だが巣に戻る蜂の習性を利用したものだ。

 

 

 エーテルはギャオスに侵蝕されたニケが現れた時、これと同じことをギャオスがしたのではと危惧した。ラプチャーはどういうわけか地中のアークに手を出さないが、もしも人間と同等で狡猾な知能を持つ獣ならどうだ?

 全うな生き物の理屈から外れ、貪欲に人間やニケにすら牙を剥き襲いかかる…そんな奴等に人類の居所がばれたなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の仕事はここまでじゃの。」

 

「お疲れ様ッス。なんとか工期以内には終われそうッスね。」

 

『ワンワン!』

 

 アーク直上……エターナルスカイにまで穿たれた大坑。マイティツールズはアーク崩壊を企む不届き者によって開けられた人類最後の砦の穴を塞ぐ工事の最中だった。幸い、人的被害は様々なイレギュラーが重なりつつも最小限に抑えられたのは不幸中の幸いだが、それでもダメージは軽視出来ないもの。故に、建築担当のマイティツールズふたりはアークの隅から隅まで…果ては地上まで行き来するクソ忙しい日々が続いていた。

 

「終わるのはいいんじゃが……ええい、本当に仕事を増やしてくれた奴は四、五時間は説教してやらんと気が済まん。もともとワシらはただでさえ忙しいというのに。」

 

「師匠、気持ちは解りますが…ウチらにはそんな余裕すら無いッス。」

 

 リターの不満が洩れるの無理もない。弟子であるセンチも同意するわけだが、それに耳を貸してくれるほどアークは優しくはない…特にニケには。

 

「やれやれ、どんな道具だってちゃんと手入れをしなくては壊れてしまうというに…」

 

「その通りッス! 一流の職人たるもの道具の手入れから……」

 

 

 

 

 

『グルルル…!』

 

「? ボルトが何か唸ってるッスね?」

 

 どうしたというのだろう? 愛犬ボルトが唸るなんて滅多に無い…ラプチャーが近い時か、シュエンが目の前にいる時くらいで基本、愛想は良いロボット犬の彼。それが、牙を剥いて空へ向かって威嚇の姿勢をとっている。

 

「コレコレ、ボルト。一体、どうしたと言うんじゃ?」

 

「ん? 何か通信が入ってるッスよ?どれどれ……」

 

 愛犬を宥めようとするリターの傍ら、通信端末を確認するセンチ。ふむふむと操作が苦手な師匠に代わって通達を確認…ちゃんと内容を理解しているかは謎だが。取り敢えず、事を簡潔に纏めて伝える…それが、仕事を効率的に進めるには大切だ。

 

「師匠ッ! なんか『鳥』が来るみたいだから退避しろって来てるッス。」

 

「鳥ィ?」

 

 簡潔に纏め過ぎである。

 

「センチ、もう少しわかりやすく説明せんか。『鳥』だけで避難しろと言われてもじゃな…」

 

「………あ。」

 

「なんじゃ、その『あ。』は?呆けた顔でだらしな…」

 

 

 愛弟子が間抜け顔で空を指さしているのでつられて見上げるリター……そして、自らの目を疑った。曇天の雲の合間に不吉な黒い影が浮かんでいる…そう、ちょうど『鳥』のような。見かけは幼いリターだが、対照的に長い間ニケとして生きてきた身。積まれた長年の勘が告げる……あれはヤバいと。

 

『ワンワンワンワン!ワンワン!』

 

「お〜 何かおっきいッスね。もしかしたら、タイラント級のラプチャーくらいはあるような……疲れてるんですかね?」

 

「呑気なこと言う取る場合か! はよ、逃げるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ギャアァァァ!!!』

 

 

 

 その時、頭上を滑空していくギャオス。マイティツールズの頭をかすめ、何かを見つけたように雄叫びをあげるや次々と他の個体たちが飛来し群がりはじめる。

 

『ギャアギャア!!』

 

『ギャア!!』『ギャアギャア!!』

 

 

「ひぃぃぃぃっ!? 確かコイツら『ギャオス』ッスよね!? なんでこんなところに…」

 

「わ、ワシがわかるか!! ……いや待てよ?」

 

 

 ニュースで聞きかじっただけだが、ギャオスを人を襲うラプチャー並みに危険な生き物。それが、アークに続く穴を応急処置した脆い場所に来たという……つまり、

 

「……あ ま、まずい…」

 

 ……リターは青ざめる。怪鳥が何をしようしているのか察しがついてしまったから。

 

 

 でも、もう遅い。

 

 

 

『『『『ギャアァァァァァァ!!!!』』』』

 

 

 空から降り注ぐ幾本もの超音波メスの柱。鉄すら容易く裁断するソレらがあっという間にマイティツールズが塞いだ穴を破壊していく。

 数日かけて織った柱も装甲も何もかもをバラバラにして、やがてその先に映るのはアークの街並み。それを確認するやギャオスたちは我先にと『エサ』が待つ穴の中へ我先にと飛びこんでいった。

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

「くらえェェェ!!!」

 

「火力ゥゥ!!!」

 

 イリスに対してアニスとネオン…更にアブソルートを上乗せした一斉掃射がイリスに押し寄せる。しかし、その弾丸や砲弾は悉く触手に弾かれて本体に届かない。

 

『可哀そ。なんで、人間のために戦うの?』

 

「黙れ、バケモノが!!」

 

 コクリと首を傾げたイリスへアニスが更に砲撃を叩き込む……無論、触手に阻まれてしまうが。カウンターズとアブソルートも徐々に焦りが見えはじめていた…攻勢は緩めていないが、全くをもってビクともしないイリス。彼女の抱く微笑みはムシケラの抵抗に対する余裕と嘲りだろう。

 

『なんで? 人間はアナタたちニケには一切、報い無いのに?』

 

「その口、火力で塞いでさしあげます!」

 

 ネオンのショットガン。特性の弾丸を装填し射撃するもカンッ!!と甲殻に弾かれ無傷…また弾薬を無駄に消耗していく。

 

『可哀そ。頼まれてもないのに産み出され、使い潰される哀れな生命…ギャオスと何もかわらない。』

 

 

 

 

「貴様らのようは化け物とニケを一緒にするな!」

 

 

 その時、ラプラスが回り込みランチャーを至近距離で翳す。出力されたビームをバーナーの火のように調整し、焼き切るべく突き出すが触手が許さないと弾いて射線を逸らそうと…

 

『…!』

 

 触手が動かない…!?

 振り向いたイリスは自分の背中から伸びる触手を掴むラピを見た。髪を赤熱の色に染め、尋常ならざる腕力と高熱で触手を封じている。

 

「コード…レッドフード!」

 

『…っ』

 

「ウオオオォォォ!!!」

 

 防御を封じられたイリスに光の刃が届く…寸前に腕を剣状に変形させた手甲で防がれてしまう。堅牢な表皮はやすやすと攻撃を通さない…が、ビームの高熱がその甲殻を赤く染めていく。

 

『小癪な!』

 

 このまま灼かれてなるものか。まだ無事に動く触手をラプラスとラピに向けるイリス…その頭上に陰かかかる。

 

「ハハッ!!くたばるが良い!」

 

『!』

 

 紅い稲妻を纏うドレイクの肉薄に気がついた時にはもう遅い。彼女のバーストが炸裂し、鮮血のような電撃と爆発がまき起こった。

 寸前でラピとラプラスは離脱し、なんとか巻き込まれずには済んだものの…まだ敵を倒せたかは煙でわからない。

 

「…気を抜かないでラプラス。まだ対象は……」

 

「わかっている。ただ、ドレイクのあの攻撃でただで済むはずが……」

 

 そうだ、必殺の一撃…命までといかずとも届かないわけが……

 

 

 

 

 

『……よく頑張った…と褒めてあげましょうか。』

 

 

「「!」」

 

 ――なっ!?

 

 

 否、尚も届かず。

 煙から晴れた先…真紅の稲妻は邪神の剣に貫かれ、生きながらトロフィーのように掲げられていた。

 

「が…は……」

 

『打ち止め? まあ、もう用事はここにないのだけれど。』

 

 そのまま、手甲から乱暴にドレイクを引き抜いたイリス。怪物に目立ったダメージは無い…ラプラスの猛攻にラピまで切り札をきったというのに。

 

「まだだ!」

 

『あら、私に構ってていて良いのかしら?』

 

 尚も挑まんとするラピ…そんな彼女にイリスは邪悪に微笑んだ。ゾッと寒気を覚えると同じタイミングでシフティーから通信が入る。

 

 

【指揮官、大変です! 至急、応答を!】

 

 ――シフティー、どうした?

 

【アークの中にギャオスが…! かなり…の数が、……(ザザー……) 至急、戻…!】

 

 

「なっ…!?」

 

 アークにギャオス!? 折り重なる最悪の事態にラピでさえ硬直し、その隙にとイリスは虹色の翼を拡げ空へ舞い上がる。

 

「ま、待て! …くっ!?」

 

『ごきげんよう、哀れなニケたち。そろそろ、『奴』も来るだろうから相手をしてられないの。』

 

 追いかけようにも切り札をきったラピは消耗し、致命傷を負ったマクスウェルにドレイク…それをカバーするアブソルートとカウンターズでは追撃なんて不可能。寸分と乱れぬ嘲笑を歯噛みし見送ることしかかなわず、邪神は怪鳥の舞う彼方へ去っていく。

 

 ――アークに戻らなくては!

 

 唯一残された選択。しかし、振り向いた帰路は絶望の一色…

 

 メティスの敗北とイリスによる逆襲により瓦解した戦線は地獄絵図そのもの。ダメ押しのアーク襲撃の一報で完全に混乱に陥った量産型ニケ部隊がギャオスの群れに蹂躙されていく中を突っ切り戻るのは困難だろう。ましてや、彼女たちを放っておくことは出来ない。出来ないが……

 

「指揮官様!」

 

「師匠…!」

 

「指揮官…命令を…」

 

 カウンターズも命令を待っている。

 きっと、どんな残酷な内容でも受けいれるだろう…もう情を入れる余地などないのだから。

 

「おい、はやくしろ。量産型だろうともニケだ。人類を護ることが存在意義である以上、本分が全うされるだけだ。」

 

 ウンファが更に後押しする。

 同胞が酷い死に方をしていくのは彼女とて耐え難い思いだろうが、アークそのものが破壊されれば全てがおしまいだ。そして、ニケである以上は最後の決断は指揮官に委ねられる。

 

 ――…

 

 選ばなくては。全てには手が届かない。

 

 行かなくては。帰る場所が無くなっては戦う意味がない。

 

 

 ――全員… 

 

 

「待て、バードボーイ! ここは私が受け持とう! 貴官らは私に任せて全ての部隊を撤退させるのだ!」

 

 

 !?

 苦渋の決断を下そうとしたその時、割り込んだラプラス。その発言は正気を疑うに全員が全員…アブソルートまで驚きを隠せずにいた。

 全てを受け持つ…つまり、この場にいるギャオスを彼女ひとりで相手どらせるということ。要は殿をかって出たことに他ならない。無論、指揮官は反発する。

 

 ――駄目だ、君を置いては…!

 

【アンタなに巫山戯たこと言ってんの!? アンタたちはメティス、アーク最強のニケ! 殿なんてそこの鉄くずどもで…!】

 

 通信でシュエンも割り込み反対する。当然だろう、手塩にかけた最愛のニケがそんなことをするとなれば……しかし、ラプラスはキョトンとした顔で…

 

「何を言うのだシュエン。私はヒーロー、アークの最高の科学者が作った最強の最高傑作のニケ…こんなところで倒れるわけないだろう?」

 

【…!】

 

「怪鳥程度に遅れをとることなどない、必ず追いついてアークの危機を救ってみせる!」

 

 ――ラプラス…

 

 最強のヒーローは決して挫けない。たとえ、どんなにボロボロだろうとその信念は揺らぐことなく、行くべき道を照らす。

 

「一時の別行動だ、マクスウェルとドレイクを頼む。」

 

 ――…

 

 ならば、照らされた道を進むのみ。

 

 

 

 ――撤退だ。

 

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …カウンターズとアブソルートが前線を去り、量産型ニケたちも続いて撤退していく様をラプラスはひとり見送る。そう、これで良いのだ。あとは自分がうまくやれば良い。

 無茶だろうが無謀だろうが、ヒーローパワーで全てを解決してきた。だから、今回もきっとどうにかなる。

 

「さてと…」

 

 

『ギャアギャア!!』『ギャア!!』

 

『ギャァァァ!!ギャアギャア!』

 

 頭上で円を描く災いの影の群。大中小…併せて100は下らないだろう。

 貫かれ、切り裂かれた身体では少しこたえるがこんな野蛮な獣なんぞヒーローの敵にあらず。仮面を被りなおし…

 

 

「さあ、今一度だ。 エンカウンター…」

 

 

 





 ニケ側追い詰めすぎたか…
 でもまあ、ギャオスだし…(白眼)
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