NIKKE ―ガメラ超決戦―   作:ヒモトラマン・ロープダーク

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 ガメラと列車、無事に済むわけもなく…



覚醒Ⅳ

 

「……うっ」

 

 霞む視界……なんとか意識を取り戻したマクスウェル。

 

 ここは何処だ?

 

 身体はろくに動かない。痛みはないということは痛覚センサーが切れているのか?

 

 

「! 指揮官、マクスウェルが目を…!」

 

 ラピ? 少しずつ輪郭が定まってくる…傷ついたカウンターズとドレイク、項垂れている指揮官。壁が下から上へ流れている狭い鉄の箱のような空間…ここはエレベーター?

 ギャオスは? ……待って

 

「ベビー…… ラプラスは?」

 

 その瞬間、ビクッと指揮官が身体を震わせる。

 どうして? その疑問に答えたのはラピだった。

 

「マクスウェル、落ち着いて聞いて。今から、現状を説明するから。」

 

 ここまでの成り行きを話す。

 イリスによるメティス粉砕で戦線が崩壊、更に裏をつく形でギャオスの別の群れがアークに攻め込んできたこと。…そして、部隊を逃がすためにラプラスが単独で残りギャオスの群れを相手どり殿をつとめたこと。

 おかげで、辛くも地上エレベーターまで辿りついたがアークの周囲はギャオスだらけでこれ以上の侵入を阻止すべくアブソルートと量産型ニケ部隊が尚も戦っていることを。

 

「……状況は尚も悪化の一途を辿っている。私たちはアナタたちを…マクスウェル?」

 

「ラプラスを… ラプラスを置いてきたの?」

 

 ――…

 

 目を背ける指揮官。

 それに対し、彼女は声を張り上げた。

 

「どうして!? あんな数、ラプラスだって…!」

 

 怒りと嗚咽の混じった叫び。動けるなら掴みかかっていただろう。カウンターズの誰も指揮官や自身の庇護は出来ない…置いてきた事実に変わりはないのだから。そんな資格があるとしたら…

 

「よせ、マクスウェル。」

 

 同じメティスであるドレイクのみ。マクスウェルとは対照的にひどく落ち着いた様子でいつものおかしなテンションの影は無い。

 

「…元を辿ればメティスがあのイリスとかいうバケモノに不覚をとったことが全てだ。ラプラスはろくに動けないお前と私を逃がし、メティスとして責任を果たした。コイツらを責める理屈は無い。

 それに、さっきまでシュエンの罵詈雑言を浴びせられたんだ。勘弁してやれ。」

 

「…っ」

 

 ――…………すまない。

 

 

 マクスウェルだって解っている…こんなこと八つ当たりだと。力なく崩れおちる彼女に指揮官も謝ることしか出来ない。

 だとしても、今は失意に打ちひしがれる暇すら無いのだ。心を鬼にしてラピは途切れていた説明を続ける。

 

 

「…説明を続ける。マクスウェルとドレイク、アナタたちをメンテナンスするにはシュエンとミシリス本社の設備が居なくては無理。だから、エレベーターを降下した先の駅でインフィニティーレールと合流。AZXに乗り込みミシリス本社まで向かう。

 その後はアナタたちを託してから別行動、ということにはなる。」

 

「…わかった。このボディの損壊の酷さじゃ戦えないしね。全く、メティスの名が泣くよ。」

 

 マクスウェルも苦渋の決断を呑み込んだ…

 

 と同時に指揮官の端末に通信が入る。誰からだ?

 

【指揮官〜 聞こえますか〜】

 

 ――ディーゼル?

 

 噂をすれば。口調をいつものよう…だが、心無しか焦っているような?

 

【指揮官、申し訳ありません。AZXはそちらに迎えにいきたかったのですが…ちょっと厳しいようです。】

 

 ――? 何かあったのか?

 

【ええ、ちょっとAZXは『お空の旅の途中』と言いますか…】

 

 は? なに巫山戯たこと言ってんのとアニスが口を開こうとした瞬間、ネオンが先に声を上げた。

 

「師匠、もうじきアークが見えま……え?」

 

 エレベーターが硝子張りのアークが全貌観えるエリアに到達…したとほぼ変わらないタイミングで視界をAZXが横切る。一瞬、呆気をとられてしまう…なんで鉄道がレールが無い高度にいるのか?

 答えは簡単……

 

 ――そんな、AZXが…!

 

『ギャアァァァ!!』

 

 

 巨大な『双頭のギャオス』がAZXを掴み、アークを空を悠々と飛翔していたからである。インフィニティレールのニケたちが車体から身を乗り出し攻撃しているが全く意に介していない。

 悪夢のような光景だが、まだ序の口に過ぎない。

 

 

「指揮官様、アークが!」

 

 

 悲鳴をあげるアニス。眼下に広がるアークの有様は地獄の釜の底を覗いたと形容したくなるほど蹂躙の限りを尽くされていた。

 空を舞うギャオスたちがあちこちを超音波メスで破壊し、炙り出された逃げ惑う人々に次々と襲いかかる。それだけではない、ギャオスのフォルムを残しつつもアルマジロや犬のような怪獣たちも暴れて破壊と人間の捕食を行っている。

 

「…冗談よしてよ。」

 

 ――……

 

「しっかりしてください、アニス!師匠も! …ああ、まずい!?ふせて!!」

 

『ギャアァァァ!!!』

 

 混沌とした空気に打ちひしがれる彼女らに真っ直ぐに近づいてくる一羽のギャオス。すれ違いざまにエレベーターを引っ掻くと、激しく揺れて深刻なダメージを受けた警報がけたたましく鳴り響く。同時に異常を感知したエレベーターはガコン!と歪な音をたてて緊急停止してしまう。

 

 空中に取り残された丸見えの鉄の箱…これでは怪鳥たちの格好の餌食だ。

 

 ――まずい!

 

「ちっ、仕方ないか!」

 

 行動したのはドレイク。『舌を咬むなよ!』と操作盤を紅いプラズマを纏わせた拳で叩き潰すとエレベーターのシステムがダウン。そのまま、急降下ジェットコースターと化し流れ星のような勢いと火花を散らして地獄の底へ落ちていく。

 

「指揮官、手を!」

 

 ――ラピ!

 

 

 激しく揺れに揺さぶられながら手を伸ばす…そして、護る形で抱きしめられた数秒後…激しい衝撃によって指揮官は意識を失った。

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 

「はぁ… はぁ…」

 

 時を同じくして地上…。アークとは離れた地でギャオスと死闘を繰り広げていたスノーホワイトたち。弾薬もかなり使ったが、周囲は怪鳥の死骸の山。ボディへのダメージも比較的に軽微なのは唯一の救いか…

 

「いやあ、久しぶりにここまで刀を振った。そちらはどうだ、スノーホワイト?」

 

「…装備品の消耗が激しい。補充が必須だな。あとは……」

 

 スノーホワイトの視線の先……マリアンが起こそうとしている『例の怪獣』。彼女が密着し光りだしてから随分と立つが、どうにも目覚める気配は無い。仮にも人類に味方するなら手助けしてほしかったものだが…随分と寝坊助である。一応、ラプンツェルも恐る恐る祈ってはみているものの……あまり効果があるようには見られない。

 

「やれやれ、これじゃどっちが『眠り姫』なんだが…」

 

「…フン。」

 

 紅蓮のジョークを流し、銃火器をしま…

 

 

「スノーホワイト!紅蓮!」

 

「「!」」

 

 空ッ!! ラプンツェルの示した先に新たな敵影が迫る。

 曇天から一気に急降下して迫る『白いギャオス』。その巨体と異様さから群れのリーダーか?

 すかさず、対艦ライフルを起動するスノーホワイト…まだ距離はある内に切り札で一撃で粉砕を狙う。だが…

 

『ギャァアア!!』

 

「なに!?」

 

 白いギャオスが翼を力強く拡げるとバリアのような障壁に覆われ、対艦ライフルの砲撃を容易く弾いてしまった。ロード級ラプチャーでさえまともに喰らえば一溜りもない一撃を払い除け、悍ましい怪鳥は未だに目覚めぬガメラへ超音波メスの狙いをつける。

 

「させるか!」

 

 ならば、斬る。

 刀を走らせ斬撃を飛ばす紅蓮だが、これも障壁を貫通出来ない。

 

 

 ――キィィィィィィィン!!!

 

「いかん! 逃げろ、マリアン!ラプンツェル!」

 

 もう迎撃は間に合わない。スノーホワイトが叫ぶもマリアンは目を閉じ、ガメラの元を動こうとはしない。

 

「マリアン!」

 

 咄嗟に庇うラプンツェル。

 その時、静かにマリアンは呟く…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――目覚めてください、最後の希望。」

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 超音波メスが炸裂し、爆発が起こる。

 一撃ではない、執拗に爆撃し粉々になるだろうまで続けられた。

 

 

 勝った。

 

 いや、その表現は正しくはないだろうが獲物は爆発四散し戦わずして全てが終わった。白いギャオスは勝利を確信し、地面に着地すると天高く雄叫びをあげる。仲間はまあ死んだが、必要な犠牲だ。それに、どうせまた増える。

 なんにせよ、気分がいい…怨敵が何も出来ず粉微塵になる姿はなんと痛快なことか。

 

『ギャァアア!! ギャァアア…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ボォォゥ!!

 

 

 

 

『!?』

 

 なんだ!?突然、火球がとんできて翼が灼かれた…!?

 無防備にバリアを解いていたせいで穴が空き、傷口が炭になっていく。これではもう飛べない…いや、それよりも!

 白いギャオスがもし人間なら恐怖で顔を強張らせていたといったところか。

 

 

『グルルル…』

 

『!』

 

 まさか…仕留め損なっていた?

 立ち昇る炎と煙から憤怒を滾らせ、巨大な影がズン…ズン…と足音を立てながらゆらりと現れる。ああ、まずい…

 

『ギャァァァァ!!』

 

『…』

 

 来るな!来るな!?と超音波メスを死にものぐるいで乱射するも、強靭な表皮は傷つかず、怯ませることすら出来ない。虚しい抵抗は間近に距離を詰められても尚も続けられたが、とんできた鉄拳に下顎を砕かれ殴りとばされる形で終わった。

 白いギャオスは錐揉み回転し、廃ビルに叩きつけられると朦朧とした意識で眼の前の…自らに迫る死を見た。

 

 

 鋭い牙が並ぶ口が火球を生成し、パチパチとプラズマ音を鳴らしながらこちらに狙いを定めている…。翼が焼け落ちた以上、バリアは使えない。

 

『ギャァァァァ…!!』

 

 ならばせめて…!

 無駄と解りつつも、超音波メスで一矢報い……

 

 

 

 ――ボォォゥ!!!

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

『グルァアアアァァァ!!!!』

 

 また獣の雄叫びが焼け野原になった廃墟に木霊し、敗者の閃光が空に掲げられる。

 

 超音波メスは最後の最後に当たることすら無く、虚しく空へ放たれ…やがて、白いギャオスが燃え尽きるとともに途切れ途切れになり…やがて切れた蛍光灯のようにプツリと消えた。

 

 圧倒…そして、圧巻の戦いにスノーホワイトは息を呑む。

 恐らく、どんなニケやラプチャーであろうとこれに早々この焔に匹敵する高熱や威力は出せまい…ヒリヒリと頬を撫でる空気がそう思わせる。

 

「……これが…」

 

 異世界にて『最後の希望』と名前を託された怪獣。――ガメラ。

 

 

 

『グルァアアアァァァ!!!』

 

 そして、ガメラは腕を翼に変形させ、脚からジェットのように炎を吹かし曇天へ飛び立つ……

 

 目指すは災いの陰に蹂躙されるアークだ。

 

 

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