NIKKE ―ガメラ超決戦― 作:ヒモトラマン・ロープダーク
あけましておめでとうございます。なんとか書けました。
新年早々に大変なことが続いていますが、頑張っていきましょう。
今年もよろしくお願いします。
……アークは混乱の最中、街中にはギャオスとその変異体たちが暴虐の限りを尽くす。
無論、アークに残るニケはいたものの…地上の作戦に編成された者たちと分断された形になり、未知なる異形の群に不意をつかれたことも相まって被害は拡大しつつあった。
『『『『グルルル…』』』』
「わ…あわ…あああ……」
今、街角のひとつでまさに追い詰められるニケがひとり。
ビスケットは犬型ギャオスの群ととエリマキトカゲのような変異体『ジーダス』にビルの壁際まで追いやられブルブルと震えていた。運悪く、自分たちの部隊が管理する動物保護施設のドックフードを買いだしに来ていたがため襲撃に巻き込まれてしまったのである。
勿論、まだ幼さが残る外見ではあるが彼女もニケ…武器を持てば相応の強さはあるが、買い出しに銃火器を持ち歩くわけがないし、カウンターズのように肉弾戦も心得ているわけでもない。異形を前に最早、玩具も同然だった。
「あ、あの……取り敢えず、お話して……」
『グルルル…!』
ビスケットの固有能力は犬との会話…なのだが犬型ギャオスに通じるわけもなく、ジーダスと共にジリジリと食いちぎるために近づいてくる。絶対絶命…その時
「伏せて!」
「!」
カラン、と地面に転がるスタングレネード。咄嗟に目を閉じたビスケットの耳に炸裂音と激しい銃声……あとおぞましい断末魔が続いた。少しして目を開けるとそこには無数の犬型ギャオスの死骸とゆっくり崩れおちていくジーダスの姿が。
視界を横に移すとサブマシンガンを構えるリサ…それとプリバディにアドミが立っている。どうやら彼女たちがこの窮地を救ってくれたようだ。
「大丈夫ですか?」
「は、はい…! あれ、ニケじゃ…ない?」
リサは腰を抜かしたビスケットを起こしにかかり、プリバティとアドミはジーダスと犬型ギャオスを銃口で小突いて状態を確認する。
「対象の沈黙を確認。」
「プリバティ、ギャオスは鳥ではなかったんですか?どう見てもこれらは蜥蜴に…犬?」
「わ、私にきかないで下さいよ!?わかるわけないじゃないですか!」
むしろこっちが訊きたいくらいだと憤慨するプリバティ。
まあ、知るわけないのは元よりわかりきっているので特に追求するわけでもなくアドミは怪獣の遺骸に背を向ける。今は他に要救助者がいるかとどうかを……
『グルルルル…』
「! アドミ、後ろ!!」
「え?」
その時、プリバティの悲鳴に振り向くとムクリと頭を上げたジーダスが大口を開けていた。そして、牙がズラリと並ぶ口内から槍の如く鋭いハープン舌が射出、アドミの不意をつき小さな身体をコマのように弾きとばす。
「かは…」
「アドミ!! このぉ!!!」
『グアアアアァァァ!!!!!』
再び立ち上がるジーダス。怪獣はそう簡単には止まらない…続いてアサルトライフルを撃ってくるプリバティを食いちぎらんと…
「コード、レッドフード!」
――ズガン!!
否、それは叶わず。
今度はジーダスが不意をつかれて頭をアスファルトに叩きつけられ、脳天にアサルトライフルを接射される。流石にこれにはひとたまりもなく、血と脳髄がぶち撒けられ息の根を止められた。
…沸き立つ硝煙、その中からは異形の顎の上に立つラピの姿が。どうやら彼女に救われたらしい。
「沈黙を確認。ふぅ… ふぅ…」
「ラピ! 流石、我がライバル! あれ? あなた確か地上に……」
「プリバティ、どうしてアークにギャオスがいるの?トライアングル部隊やA.C.P.U.は何をしていたの?」
「だ、だから私に解るわけがないことを皆きくんですか!? テロ跡のエターナルスカイの大穴からこの怪鳥たちが入ってきたこと以上は何も知りません!」
――ラピ、よせ。
再会の喜び、なんてあるはずもない。アークの惨状に詰め寄られプリバティは悲鳴をあげ、慌て追いかけてきた指揮官が制止する。遅れてくる形で他のカウンターズとメティスの面々も合流し簡潔に情報を互いに交換する。
「……つまり、地上の作戦は完全に失敗したってことですか?」
アドミの容赦ない一言に指揮官らは苦虫を噛み潰したような表情をした。仕方ない、弁明しようがない事実なのだから。ただ、すぐに察したのかアドミ自身も申し訳なさそうに俯く。自分もアークに怪鳥どもの無法を許している以上は偉そうに何も言える立場ではない。
この気まずい空気はよくないと咳払いしたのはプリバティ。
「コホン、今は時間を無駄には出来ません。指揮官、助けてあげたいのは山々ですが…トライアングルはあなた方に同行は出来ません。自力でミシリス本社を目指してください。
ああ、ビスケットさんはこちらにお任せを。」
「え、そんな!?」
リサは驚愕した。まさか、明らかに消耗しているカウンターズとメティスを差し置いてどうするというのか?
しかし、当の指揮官は…
――わかった。君たちも気をつけろ。
「!?」
特に気にしない。カウンターズもそうだ、あの野次将軍のアニスでさえ『オッケー、じゃあさっさと行こう』と流す始末。正気とは思えない。
「待ってください! 今、バラバラに行動するのは…」
――大丈夫だ。彼女たちには彼女たちの役割がある。
そして、カウンターズとメティスはトライアングルと離れミシリス本社を目指す。…リサも少し迷いつつも、意を決してその後に続いた。
取り残されたプリバティは『ご武運を。』とその背中を見送くる……その表情は複雑である。
「良いんですか、ついていかなくて?」
アドミの質問。ふん、敢えて言うまでもない…
「さ、ビスケットさんをシェルターに避難させて、分断されたユルハとの合流を目指しますよアドミ。」
自分が認めた男と、永遠のライバルがそう簡単にやられてなるものか。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「……と格好つけたものの、せめて弾薬くらいは少し都合してもらっても良かったんじゃない?」
距離が暫く空いて、ふと愚痴るアニス。まあ、工面してもらったところでプリバティと同じアサルトライフル持ちのラピしか都合出来なかっただろう。
しかし、このままメティスをカバーしながらミシリス本社を向かうのは心許ない。あちこちで銃声と爆発…ギャオスの鳴き声が聞こえる。他のニケたちやアンダーソンたちは無事だろうか。
――ラピ、アニス、ネオン…弾薬はあとどれくらいだ?
「……23%といったところでしょうか。次の戦闘が数で圧されてしまえば弾切れは確実でしょう。」
「私は1割より少しマシくらい。当たれば大きいけど、動きの早いアイツらに当てるのはサポートなしじゃ厳しいかも。」
「フフ、もうポーチの中は空ですよ!火力を使いすぎましたね!」
何故かネオンだけドヤ顔でいる様子にアニスは呆れていたが、それを見たリサが『そう言えば!』何かを思い出したように背中のバックパックを下ろしてそのチャックを開けた。
「アンダーソン副司令から気休めにでもなれば良いって持たされたんだった。カウンターズにって。」
――アンダーソンが? …これは!
その中にはカウンターズに向けて用意された弾薬が入っている。数は決して多いわけではないが、無いよりは遥かにマシだ。
――リサ、君がここまで持ってきたのか?
「はい!でも、少しだけ他のニケに渡しちゃったりしたので少なくなっちゃいましたけど…」
まじかよ。サブマシンガンを持っていることから察するに、安全であろう司令部から飛び出して、ギャオスと応戦しながらわざわざカウンターズに弾薬を届けにきたのだろう。
無謀というか勇猛果敢と言うべきか……下手なニケよりよっぽど肝がすわっている。
――感謝する。だが、無茶は控えてくれ。
「平気ですよ、元の世界ならよくあることでしたし。それに、アンダーソン副司令が『カウンターズには運命を引き寄せる力がある、心配は無い』って言ってましたし…」
それはもう妄信に片足突っ込んでいないか副司令。振り返れば歴史の分岐点のようなところに居合わせる…というより巻き込まれることが多いカウンターズだが。ラピですら微かに苦々しい顔をしている気がする。首を突っ込んでるじゃない、爆心地からこっちにやってくるのだ。
「おい、弾なら私のも使え!どうせマクスウェルを背負ってるから銃は使えないからな!」
「待って、私達の弾薬はシュエンのオーダーメイドでしょ。ネオンのショットガンじゃ使えないよ多分。」
「なんだとっ!?」
ここぞとドレイクも弾薬を渡してくる…が、マクスウェルに制止。気持ちだけは受け取っておこう…
とにかく、ミシリス本社を目指すべきだ。距離も瓦礫に阻まれなければそう遠くは………
「きゃああああああああ!!!!」
その時、劈く悲鳴が一帯に響いた。
★ ★ ★ ★ ★ ★
シュエンは今、人生に幾度目かの生命の危機を迎えていた。
「助けて! 誰でも良いから、はやく!いやぁぁぁ!?!?」
『『ギャァァァ!!』』
横転した車両に取り残され、おまけに小さいギャオスが2羽が執拗に群がっている。運転手が既に引き摺りだされ餌食に、護衛のニケは八つ裂きにされてそこらへんに転がっている。
小柄なことが幸いして、そう簡単に捕まらないが時間の問題だろう。
……しかし、彼女も悪運は尽きないようでカウンターズが到着する。
「指揮官、シュエンが!」
――まずい! 助けるぞ!!
あの程度の大きさなら…と思った一行だが、それを嘲るように頭上に影がかかる。そして、立ちはだかる双頭のギャオス。AZXを襲って空への旅を凶行した奴の名は『ネオギャオス』…ギャオスの中でも奇形にあたりながらも、アークを襲う災禍の怪物たちのリーダーたる個体だった。
『『ギャァァァアア!!!』』
「このっ、どきなさいよ!」
アニスのランチャーを皮切りに、次々と弾丸の雨あられと浴びせられるが…ネオギャオスは全く怯まない。その強固な外皮はロード級のラプチャーすら凌ぐとでもいうのか?
「きゃああああ!?」
奥ではついに超音波メスで車体を両断して引き裂いた小さいギャオスたちがシュエンに迫っていた。このままでは間に合わない。
「私が行く! 援護しろ!」
――!? よせ、ドレイク!
マクスウェルを投げ出し、ドレイクが駆け出す。
怖いだのなんだの言っても、親と相違いない彼女を見捨てることなど出来はしなかった……されど、これすら許さないというようにネオギャオスは着地して暴風を巻き起こし文字通りの壁となる。
「ぐっ!?」
「ドレイク、逃げて!」
――全員、火力集中! 頭を狙え!!
マクスウェルの悲鳴、ドレイクを救わんとカウンターズが攻撃するが…無慈悲にネオギャオスは2つの頭で超音波メスの発射態勢へと入った。通常個体とは比較にならない高周波は次々と周囲のビルといった窓硝子を破壊し、ニケでさえセンサー類が狂いはじめろくに銃火器を持つことすら出来ない有り様になってしまう。
頭から破裂するような激痛と高音…人間である指揮官とリサはそれだけで気を失いかけていた。
――駄目だ、ここで…倒れたら……!
『『ギャァァァアアァァァァ……』』
空間が歪む
人類救済を託された希望の火が今、吹き消されようとしている
ラプチャーですらない、異界のケダモノに
「指揮官…!」
「指揮官…さま…」
「…師…匠!」
「ガメ…ラ……」
最後の望みが…潰え…
『グルアァアアァアアアアアアアアァ!!!!!!』
『『!?』』
絶望に折れようとした時、『諦めるな!』と叫ぶような咆哮がアークの中に轟いた。
同胞とは全く違うその声に暴虐の限りを尽くしていた怪物ども動きを止めて偽りの夕焼け空を仰いだ。唸り、鳴き、羽ばたき…自分たちが侵入した空の穴から轟音を立てながら向かってくる存在へ威嚇し始める。
…… 敵 が く る
…… 仇 が く る
『奴』 が く る
その怨みは忘れない。受けた痛みは忘れない。その全てが世代を経ようとも褪せることなく遺伝子の一片一片に刻まれ受け継がれているのだ。ギャオスやその系譜である以上、戦うことは絶対に避けられない宿敵が。
……憤怒と祈りを携え、『最後の希望』が来る。
――ドゴォォオオオーン!!!
エターナルスカイの穴から炎と共に巨大な存在が飛び出した。戦闘機のようにジェット噴射しつつも、遥かに大きい巨大な亀のような怪獣が……
彼もまた怪鳥たちの因縁に惹かれるようにこの世界にやってきていた。
『グオオオォォ!!!!!』
………守護神ガメラ、ついにアーク到着。
設定解説
★ネオギャオス
双頭の巨大なギャオス。元ネタはPS1のゲーム『ガメラ2000』のエリアボス怪獣から。奇形の個体だが通常個体を遥かに上回るその強靭な身体能力で群れのリーダーの座につき、アークを襲撃。AZXを襲う暴挙に出たが、車両の安否はインフィニティーレール共々不明。
恐らく、成長の度合いからしてゲートキーパーにより転移してきた個体。
★犬型ギャオス
文字通り、猟犬のような外見をした四足歩行のギャオスの変異体。元ネタは同じく『ガメラ2000』の雑魚敵から。ただ、今回は人間大から通常のギャオスに匹敵するまでの大きさが存在。俊敏かつ執拗に群れで獲物を追い詰める。一応、翼は前脚に格納されているがろくに飛ぶことは出来ない。小さい個体ならニケのサブマシンガンなどで充分に対処可能。
★ジーダス
イグアナとエリマキトカゲをかけあわせた恐竜のような怪獣。元ネタは映画『小さき勇者たち~ガメラ~』から。厳密にはギャオスではないが、ギャオスの死肉を喰らった爬虫類が遺伝子汚染され変異したもの。物語冒頭でスノホワが万一、口に入れていたらコイツの仲間入りしていた可能性が高い。アークには複数の個体が侵入している。
リサの世界ではジーダスをはじめとした汚染変異体が大量発生しており、被害がかなり大きいらしい。