NIKKE ―ガメラ超決戦― 作:ヒモトラマン・ロープダーク
「いやあ、まさかベビーからの御指名なんて嬉しいなぁ!」
「「「…」」」
地上を走る輸送車…乗るのは指揮官とカウンターズ…それと、メティスのマクスウェル。高い戦闘能力と機械類の扱いに長け、調査能力も申し分ないニケだ。しかも、カウンターズには居ないスナイパーの役割も担える…故に指揮官が選んだのだが、当のカウンターズは…特にアニス微妙な表情をしていた。理由は単純…
「ほんと、よくシュエンが許可したわね…」
「ハハ、まあそこそこ怒り狂ってはいたんだけど。」
メティスとはミシリスの最新鋭技術を惜しみなく採用された…すなわち、シュエンが我が子も同然と可愛がるニケの部隊。そんな彼女たちを貸し出すなどシュエンからしたら腸が煮えくり返る思いだろうし、実際にカンカンだった。しかし、指揮官から指名を呑まなくてはいけない理由があった。
「今回の不始末を株主にバラすなんて言われたら流石にあのシュエンでも折れざらえないでしょう。」
「社長である故の泣き所ですよね…アンダーソン副司令も心得てますよ。」
いくら横暴とて彼女とて経営者、株主の顔色はある程度窺わねばならない。ミシリスはトップの企業であれど、人気も株価も乱高下が激しいが故に事実上の抜け駆け失敗なんて株主に知られたら彼女の頭痛と胃痛のタネが増えるだけだろう。
だからこそ、可能なかぎり穏便に済ませるためにマクスウェルともう1名を貸し出したのである。
そのもう1名とは…
「クックッ、そしてミシリス製の最新式装甲輸送車とこの最高のヴィランである私の運転もセットだ!」
「アナタ、運転出来たのね…以外だわ。」
自称・ヴィランことメティスのメンバーのドレイク。素っ頓狂な挙動で周囲を困惑させがちな彼女だが、普通に運転をこなすので感心するアニス。伊達にミシリス最強のニケではないということか。
指揮官も『ふたりともありがとう』と礼を述べるがあることが気がかりだった。
メティスのもうひとりのメンバーであるラプラスがいない。彼女だけはアークに残ったのである。
【――バードボーイ!申し訳ないが、今回は残念ながら私の同行は不可能だ!! アークでの有事がある時、メティスがいなくては人々が心配になってしまうからな! 安心しろ、そのかわり君達の帰る場所はヒーローとして全力で守り抜く!】
「…とか何とか言ってたけど、実質シュエンのお守りをかって出ただけよねアレ。いつの間にそんな気遣いなんて覚えたんだが。これもベビーのせい?」
マクスウェルはいつの間にか成長したラプラスの真意を察しつつ、アークのことを任せた。アンダーソンも目を光らせている、余計な横槍の心配はないだろう。
そして、ここで素朴な疑問。
「…ところで、なんであなたはついてきたんです?」
ネオンがドレイクに投げかけた問い。彼女も別にアーク残っていても問題ないはずなのだが……その返答は至ってシンプル。
「ククッ、決まっているだろう……シュエンが怖いからだ。」
★ ★ ★ ★ ★
「周囲に敵影なし。指揮官、こちらへ。」
ゲートキーパーが目視で確認出来る位置まで近づくと輸送車を停車し、ラピが先導する形で下車していく。一面はいつもと同じ廃墟、ラプチャーの姿もない…ミシリス製のステルス効果が高い装甲の輸送車のおかげか周囲に集まってくる気配はない。一先ず、ここからはビル街跡でとても車では小回りが厳しそうなので一時的に置いておくことに。
残りの面々も続いて辺りを見回すがいつも通りの地上の風景に拍子抜けでつまらなさそうにアニスとネオンは鼻を鳴らす。
「鳥の気配すらないんだけど。それにしても、一体どんな姿なのかしらね。映像じゃよくわからなかったし。」
「…異世界の鳥なんて掴まえて見世物にしたら見物料で丸儲け出来るかもしれません!」
「お、ナイスアイディア!ラピはどう思う?」
「……作戦で確保したサンプルは全て提出しなきゃいけないからそれは不可能よ。」
『いや、そういうことではなく…』とラピの真面目な回答に苦笑せざらえない指揮官。一応、彼女としてもそれくらいは理解しているので真面目ではない答を口にする。
「もし捕獲するにしても、量産型とはいえニケを超えうる身体能力を持つ生物だとしたら…とても難易度は高いと思います。」
「あーもう、ノリが悪いなぁ。ま、せめて可愛げがある外見であることを祈りましょ。」
更にクソ真面目な答がきたことは予想通りだったのでアニスは溜め息をつく。どうしてこう、それなりに長い付き合いなのにユーモアとか覚えないのだろうかラピは… 陽気にジョークをかますラピはそれはそれで一種のホラーなのだが。
ここで『鳥』の話題に入ってきたのはマクスウェル。
「帰ってきたニケの証言によれば、外見に関しては羽毛は無いみたい。体躯は小型ラプチャー並みで角もあるし、牙もあって凶暴……あれだね、翼竜みたいな姿なのかも。」
「「翼竜!?」」
翼竜とは…恐竜と同じ時代に存在していた空飛ぶトカゲの仲間。プテラノドンやケツァルコアトルなどが代表的な例としてあげられ、人々の人気としてはTレックスなど比較しても遜色ない。
もしだ…
「翼竜…もし捕まえられたら……」
「私達、お金どころか教科書に名前が載ってもおかしくないくらいですよ!」
「なにっ!?その話を詳しくきかせろ!」
とうとうドレイクまで話に食いつき、ラピは何回目かの深い溜め息をついてマクスウェルは頭を抱えた。悪ノリ担当の2人に目立ちたがり屋のドレイクという真面目組なニケにとって厄介な掛け算だ。せめて、ラプラスが居ないのが救いか。
「ベビーごめんね。ラプラスが居ないからもう少し段取りよくいくとは思ったけど…」
げんなりしたマクスウェルに『ラプラスはヒーローのことにしか興味はないと思う』と指揮官は微笑み、すると彼女も少し驚いた顔をしたあと…それもそうかと頷いた。
「「「いざ、翼竜!!」」」
「はぁ…3人とも行方不明のニケとゲートキーパーの調査も任務に入っていること忘れていない?ピクニックじゃないのよ。」
一方、そろそろラピが本格的な任務開始の前に消耗してしまいそうなので、指揮官はフォローにまわることに。
…………その時
――ガラガラ…
「!」
不意な物音にマクスウェルは咄嗟にスナイパーライフルを構えた……しかし、銃口の先は瓦礫の山で生き物らしいシルエットは無い。自然に何か崩れたタイミングと重なっただけか?
指揮官も『どうした?』とこちらへ顔を向けた…
「…ううん、なんでもない! 行こうか!」
気が張りすぎたか…笑顔で誤魔化し、皆へ合流する。
こうして、瓦礫の影に隠れたニケの無惨な残骸は誰にも気がつかれることはなかった。
★ ★ ★ ★ ★
それから数十分後…
廃墟のビル街をフォーメーションを組みながら進むカウンターズ+αは周囲の索敵を行いながらゲートキーパーへ接近の道を辿るが…残念なが『鳥』らしい姿は影もかたちも無く、痕跡すら見当たらない。どういうわけか、ラプチャーの残骸が偶に転がっているくらいで退屈な時間が続く…
「ねえ、本当にここのポイントなの?」
アニスが悪態をつく中、ふと指揮官は足を止めた…。
ラプチャーの残骸…一見、ニケとの交戦で敗れたのかと思っていたがよくよく見ると奇妙な点がチラホラ。ニケは極一握りを除いて銃を扱うので殆どが穴だらけか破砕された形が大半であるが、この一帯にある残骸は随所に引きちぎられたような痕跡はあるものの、致命的な一撃はボディをスッパリとバターのように両断された傷ばかり。
首を傾げているとラピが近くに歩いてきた。
「気がつきましたか、指揮官。散在するラプチャーの残骸…まるで刃物で斬られたようなものばかり。何故でしょう…」
『紅蓮だろうか…』指揮官の頭に真っ先に思い浮かんだ唯一の刀を武装とするニケ。彼女ならこんな芸当はお茶の子さいさいだが…ゲートキーパーや『鳥』なんかより専ら酒のほうに興味を示しそうなものだが。
「紅蓮の線は低いと思います。私達がアンダーソン副司令の話を聞いている間、前哨基地に酒を漁りにきたところをプリパティに見つかり…暫く追いかけっこをしていたそうですから。」
マジかよ。…聞かなかったことにしよう。
どう足掻いてもプリパティに紅蓮が捕まえられるわけがないのでそこは心配無いとして…じゃあ、この残骸は?
「私の知る限りミシリスの武装で該当するものは無いかなぁ。なんにしても、興味深いね。」
マクスウェルも把握出来ないらしい。
ゲートキーパーに近いということは『来訪者』の仕業か…或いは……
――『鳥の仕業?』
「それはないよ、ベビー。ラプチャーの装甲をこんなに綺麗に斬り裂ける生物なんてありえないよ。頭がどデカい刀になっている生き物とかだったら話は別だけど?」
「マクスウェル、異世界の来訪者の可能性がある以上は私達の常識が必ず通じると思わないほうが良い。」
ラピの言い分は最もだが、流石に頭が刃物の生物なんて存在しないだろう。
…あれ、そういえばデビルハンターのひとりって確か頭がチェンソーの奴がいたような。
うん…やっぱり、常識に囚われてはいけない。
「うん? ……これは…」
そんな時、ドレイクが何かを見つけた。手招きされるがまま彼女の方向へ集まる一行が目にしたのは…
――ミイラ化した量産型ニケの死体だった。
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