NIKKE ―ガメラ超決戦― 作:ヒモトラマン・ロープダーク
……これは…一体…?
苦痛に歪み断末魔をあげた顔の死体に指揮官は目を逸らし、ラピとマクスウェルも険しい表情。明らかに真っ当な死に方ではない…ニケが死ぬのは多くの場合はラプチャーに撃ち抜かれたりしてなどの戦死だ。しかし、この中身を吸い出されたような遺体は銃撃による傷は無い…あるのは腹への深い傷。多分、鋭い何かで穿かれたか?
「ラプチャーにやられたわけではなさそうね。」
ラピの冷静な分析。異常さは戦場を幾度なく駆けてきたアニスやネオンさえ絶句しているのを見るにどれだけ異常かは明らかだろう。
一方、マクスウェルは静かに膝を折り手を合わせると指揮官へ告げる。
「ベビー、これからこの子を調べなくちゃいけない。少し離れてたほうが良いかも。他の皆も周囲の警戒をしてくれないかな?」
調べる…要は死体に触れる作業ということだろう。本格的な調査はアークに連れ帰らなくては無理だろうが、獲られる情報は早めに集めておくべきだろう『わかった。ここは任せる。』と指揮官はこの場を託し、ラピにアイコンタクトを送って彼女を置いていく形で他の面々を連れていく。
さて、残ったラピとマクスウェル…
「ラピは行かないの?」
「万一のことがあったら、カバーする。だから、作業に集中して。」
「…ありがとう。」
ラピの気遣いに感謝しつつ、手を合わせたマクスウェルは少しの間だけ祈りを捧げる。せめて、君の死がより多くの誰かの生を繋げられるようにと…
そして、手際よくゴム手袋をはめてと検体採取キットが入ったトランクを開けると作業をはじめる。
「…ごめんね、きっと無駄にはしないから。」
★ ★ ★ ★ ★
「お前、大丈夫か?」
少し離れて、指揮官に心配の声をかけたドレイク。予想だにしないあのニケの死体にきっと動揺しているだろうという気遣いだろう…実際、取り繕うとしても顔から噴き出す脂汗が雄弁に心情を語る。ラプチャーに撃たれたニケは何度も見てきた……でも、今回は…あの異様な死に方が脳裏に焼きついて離れない。
「無理もない、私も正直ビビったぞ…少しだけ。だが、安心しろ。どんな奴だろうと、鳥ごときに遅れをとるメティスとカウンターズではないだろう?フハハハ!」
ドレイクに励まされてしまった。やれやれ、部隊を担う指揮官として情けないが嬉しくもある。『そうだな…』と頷くとアニスとネオンも気をとりなおしてと自らを鼓舞しはじめる。
「ドレイク…そうよね。そうよ!何を今更、鳥なんて!私達は無敵のカウンターズ! 今までどんなラプチャーもヘレティックだってやっつけてきたんだから!」
「そうでした師匠! わたしの火力の前にフライドチキンにしてやりますよ!!」
「その意気だぞ!フーハハハハハ!!!」
『――ギャァアアアアア!!!!』
――!
しかし、その心を挫くようにこの世のものとは思えないつんざくようなおぞましい鳴き声とけたたましい銃声が響いてきたのだった。
★ ★ ★ ★ ★
――ダダダダダダ!!
『グルルル…!』
「このおぉおおお!!」
迫りくる影にサブマシンを撃ちまくる量産型ニケ。後ろには右腕を食いちぎられた仲間と『護衛対象』がいる…彼女たちを餌食にするわけにはいかない。生かしてアークに届け、人類へ迫る新たな脅威について伝えなくては…例えこの自分の命に代えてでも……
…そんな彼女の意思を嘲笑うように、蝙蝠のような異形の翼は弾丸を弾き続ける。このままでは、弾薬は尽きるだろう。ランチャーやショットガンによる突破が出来れば良かったが、扱える部隊員も武装ももう奴等にバラバラにされたあと…打破することは不可能に近い。
「私も戦う…!」
「無茶だよ、そんな武器じゃ!」
護衛対象が見かねて銃を抜く。扱いが最低な量産型かつ最悪なミシリスのニケより旧くて酷い装備に勇気だけで飛び出そうとするのを制される。それとほぼ同時に弾薬が切れ、カチッカチッと乾いた音…そして、翼に隠していた異形の顔が攻撃が止んだのを悟り顔を出す。
『グルルル……ギャァア…!』
鳥―――
されど、羽根もクチバシも赤銅色の表皮。平たく反った2又のトサカに鋭い牙がズラリと並ぶ口……既存の鳥類とはあまりにもかけ離れた全貌。翼竜が確かに近いだろうが、あまりにも悪魔に寄った血肉に飢えた獣は『怪鳥』と称するべきだろう。
体調は恐らくゆうに10メートルは超える…渇望に狂った眼はラプチャーでは与えられない生物だけが放てれる恐怖を獲物に晒し、弾薬が切れた彼女へジリジリと迫る…
「り、リロード…… あっ」
相対すべく手を伸ばしたポーチは空。
もう抵抗の手段は無い。
「走って…」
――バクリ
次の瞬間、彼女は怪鳥に頭からカブりつかれ、数回の咀嚼されてから丸呑みにされた。
その命と引き換えに出来た僅かな隙、逃げるべく傷ついた量産型ニケと護衛対象は一目散に走りだすが、怪鳥はまだ満たされぬ渇望が命ずるまま哀れな獲物目掛けて飛び立つ。次はお前たちの番…
――ドッ!!
『!?』
しかし、喰らいつこうとした直前に砲弾が直撃し失速。何奴と首を向ければ、ランチャーを構えるアニスと走って向かってくるアニスとドレイクの姿。
「このっ、バケモノがァ!!」
「いきましょう!火力でねじ伏せます!!」
「了解だ!」
もう捕獲なんてヤワなことは言ってられない。銃火器が火を噴き、おぞましい怪鳥の肉を間髪入れず削っていく。たった3人のニケといえど、アークの上位戦力の一角を担う彼女たちの攻撃を受ければ一溜りもなく怪鳥は空へと逃げ出した。
一先ず、これで脅威は去っただろう。状況を窺いつつ指揮官は量産型ニケたちに近づき『大丈夫か?』と様子を確認する。
「か、カウンターズ? 私達を助けに…?」
『ああ。』と頷く指揮官。しかし、彼は気がつく…もうひとりいる少女はニケではない。年齢はラピあたりと近そうだが、栗色の髪に素人眼でもわかる旧式の銃器…彼女は何者なんだ?
「指揮官さん、この娘が『来訪者』です!カブラギさん、もう大丈夫。この人たちは味方だよ!」
「は、はい!『鏑木リサ』って言います!!ええっと、来訪者がどうとか……」
―――ギャァァァ…!! ギャァア!!ギャァア!!
「「「!」」」
しかし、猶予は無い。再び邪悪でおぞましい鳴き声がけたたましく廃ビルの向こうかは木霊してくる。どうやら、あの怪鳥とおぼしき存在がこちらに向かってきているらしい。
「ウソ!? あんなのまだいるの!?」
「ここに留まるのはまずそうです!そちらの方々を連れてラピたちと合流しましょう師匠!!」
アニスとネオンに『そのようだな。』と返事をし、傷ついた量産型ニケとリサと名乗る少女についてくるように促し走りだす。それと同時に空へ不吉なシルエットが浮かび上がる…怪鳥の群れが獲物を逃さんと迫ってきていた。数は5…特に一羽はボスなのか特にデカい。
「輸送車へ急げ!」
ドレイクがショットガンで牽制しつつ、一行は輸送車へ急ぐ。途中、騒ぎを聞きつけとこちらへ向かおうとしていたラピとマクスウェルとも合流し、『撤退だ!』と指揮官の叫びと頭上から滑空して獲物に狙いを定めた怪鳥たちを見てすぐさま共に駆け出した。
装甲輸送車まで逃げ切ればあとは振り切るなりなんなり…
『ゴォォォ……!!』
しかし、獲物を逃さんとする怪鳥の口に光が灯る。同時につんざくどころか鼓膜が破裂しそうなキィィィン!と高音が発せられ指揮官やニケでさえ悲鳴をあげて足がもつれてしまう。
「な、なに!?」
「頭が割れる!?!?」
メティスであるマクスウェルやドレイクでさえ動けない。その隙に怪鳥は滑り降りるように一気に迫って…
「グレネード!!」
『!?』
直前、リサが怪鳥の眼前へグレネードを投げた。すると、眩い光が炸裂し怪鳥が怯んで頭をあげた…同時にその口から一筋の光線が放たれ瓦礫の道、果ては廃ビルをド真ん中から切断しガラガラと音を立てて崩れ落ち退路を塞いでしまう。
「嘘でしょ、何なのアレ!? 生き物がビーム出したの!?」
ラプチャーどころか、仮にもまともな有機生命体が行った攻撃ではないと驚愕するアニス。だが腰を抜かしている場合ではない…逃げ場を失った獲物を嘲笑うように後続の怪鳥たちが頭上で円を描く。
「指揮官、どうやら応戦するしかないようです…」
ラピからの進言。指揮官も腹を括る…このまま無理に逃げても全滅は必至。相手はタイラント級ラプチャーに匹敵する大きさの怪鳥の群れ…それでもやるしかない。ニケたちは命令を待っている…
―――総員、戦闘準備!
号令と同時に、即座にフォーメーションを組むニケたち。
迫りくる怪鳥
各々が引き金に指を添え、ラピの声が開戦の狼煙をあげる。
「エンカウンター!!」