NIKKE ―ガメラ超決戦―   作:ヒモトラマン・ロープダーク

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稀人 Ⅰ

 

 …それから、数時間後

 

 アークの会議室にて、アンダーソンの元に各社の社長が集まっていた。シュエンをはじめ、エリシオンの女傑イングリットにテトラのエンターティナーのマスタング…この面々が揃えて顔を突き合わせるのはアークの行く末に関わる重要事項の採決か、余程の緊急事態の時のみだ。

 アンダーソンとしてはいずれこの形になるにしても段取りを踏んでからといきたかったが…どうやら目論見通りにはいかず、ふぅ…と溜め息をついていた。

 

「…カウンターズとメティスは?」

 

【無事です!ラプラスとその他イレギュラー2名のニケによる援護が功を奏したようです。そして、来訪者とおぼしき女性を1名と行方不明の量産型ニケ部隊の生き残りを1名を保護したと報告を受けています。】

 

 ふむ、アクシデントこそはあったが…まあ結果的に事態の悪化を阻止出来たなら咎めはしまい。シフティーからの通信が比較的良い知らせだったことにホッとしながら彼は待ち構える社長たちに向き直る。

 

「すまない、現場に混乱があったようでね…」

 

「聞いている、プリパティが意図せず首を突っ込んでしまったようだな。謝罪するのはこちらのほうだ。」

 

「責任の所在については後回しにしまショウ。今は来訪者たちの情報を共有することが先決デス。」

 

 イングリットの謝罪からマスタングの機転で素早く本題に。アンダーソンが端末を操作するとテーブルにホログラムが浮かびあがり、先のカウンターズとメティスの作戦行動の映像…その一部始終が流される。

 ニケに襲いかかる怪鳥が主で弱った仲間への生きながら鳥葬、切断ビームなどなど…軽く流しただけで質も量も吐きそうになる情報は社長たちの気分を害させるには充分だった。いつもハイテンションなマスタングが眉を寄せて黙っているあたり内容の凄惨さは察せられるだろう。

 

 通信越しのシフティーも正直、こんな空気はたまったものではないがオペレーターとして情報の補足を行う。

 

 

【…今回の任務で獲られた情報によれば、怪鳥の名は『ギャオス』。性質はいたって凶暴かつ狡賢く残忍。群れを為し、好んで人間や家畜を襲う肉食性で、成長すれば100メートルに匹敵する個体もいるそうです。】

 

「待て、映像の個体はそこまで大きくなかったように見えたぞ?まさか、あれが雛鳥だとでも?」

 

 驚愕するイングリット。あれだけの凶暴性と巨体でまだ成長すると…?

 ニケ単体ならエサ同然のギャオスが更に大きくなるとは考えたくもないが、驚かされるのはここからだ。

 

「ねえ、あの口から出すビームみたいなやつは?切断する力の割に爆発がショボいし熱も無いみたいだけど?」

 

 シュエンが指摘したのはギャオスの攻撃手段。怪鳥の一番特徴的で異様な点…その正体は…

 

 

【ご指摘の通り、熱線やビーム兵器の類では無いそうですが…発せられる寸前にニケですら行動を阻害されるほど超音波が観測されていると報告があります。】

 

「…超音波? …空間が歪んでビームに見えるほどのものを口から出しているとしたら……あれは空飛ぶ高周波ブレードみたいなもんってこと?」

 

 しれっと言うが恐ろしいことだ。あの切断能力はニケどころかアークに既存する装甲で耐えられるかどうか。おまけにニケの銃火器に耐える耐久性に数の暴力…もし真正面から戦えば甚大な被害が出るだろう。

 

「現状、アークへの危険性はどうなんデス?」

 

 なら当然出るマスタングの疑問。この危険極まりない怪鳥どもがアークに牙を剥く可能性を視野に入れなくては…

 それに対して、シフティーの顔は微妙だった。

 

【まだ情報が少なく明言は出来ません。解析チームに回したサンプルと今後の活動を注視しなくてはなんとも…。】

 

「取り敢えず、警戒するに越したことはないデショウ。コチラが有効な対抗策が見い出すまでノータッチでといった方向が賢明デスかネ?」

 

 今は静観。アンダーソンやイングリットも『やむを得ない』と頷く…いずれ来るべき時に相応な対処をする。藪をわざわざつつく必要は無い。その分、地上での活動は大きく制限がかかるだろうが…

 

 ただ、ひとつ嬉しい情報がシフティーが伝えられる。

 

 

【ただ、ギャオスはラプチャーと争っているという報告もあがっていまして…理由はわかりませんが、両者は敵対関係にあると推測がされています。】

 

「へぇ? なら、いっそ両方とも潰しあってくれれば楽なのに。」

 

 シュエンはつまらなさそうに鼻を鳴らすがこれも重要なことだ。どちらも人類にとって脅威となるなら、敵対していることは理由はどうあれせめてもの救いになる。人食い怪鳥と殺人マシン軍団が大挙して押し寄せようものならアークは今度こそ崩壊待ったなしだろう。

 

 さて…一通り情報の共有が終わりアンダーソンが纏めにかかる。

 

「当面、ゲートキーパー周辺の地域は監視を続け部外者並びにニケたちの侵入を禁止。その後の対処は追々決めるということでよろしいかな?」

 

「そうだな。今はゆっくり腰を据えるべきだ。」

 

「ハイハイ、ミシリスも異議なーし。」

 

「OKデース。では、これでお開きデスね!」

 

 社長たちは頷いた。突いたところで自社やアークにも何の利益もないのは間違いなさそうなので無駄なことはしない彼彼女たち。どうせ独自に詮索は始めるだろうが、もうシュエンのような抜け駆けは誰もしまい。

 

 …ただ、アンダーソンには気がかりなことがあった。

 

(アークのニケはこれで大丈夫だろうが、問題は地上のピルグリムたちだな。こればかりは『彼』を頼るしかないか。)

 

 ピルグリム…アークに属さず地上を放浪する特異なニケたち。

 彼女たちも此度の異変は感知しているだろうが、出来ることならしっかり警戒を呼びかけたいところ。…といっても、まともな繋がりがあるのはカウンターズの指揮官しかいない。

 

(毎度、酷使して悪いが…もう少し頑張ってもらうぞ。)

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ〜、あれは凄い。ざっとラプチャーの数は100は下らんのじゃないかい?」

 

 場所は変わり、地上。廃墟の上にて紅蓮は物見遊山と洒落込んでいた…足元には斬首されたギャオスの死体があるが呑気なものである。ピルグリムで尚且つ刀を扱う彼女にとって取り敢えず首を跳ねれば死ぬ怪鳥なんぞ空飛ぶフライドチキン程度のものだった。

 そんな彼女の視線の先は…ゲートキーパーの鎮座する場所。今まさにギャオスとラプチャーが小競り合い…いや、最早戦争状態と言えるまで苛烈な戦いになっていた。数で上回り弾薬を雨霰と撃ちまくるラプチャーに、数では劣るが優れた飛翔能力と切断光線で立ち回るギャオスたち。地を這う無機物どもなど容易く蹴散らし、空を飛ぶ輩も脚の爪で引き裂いてやれば他愛もない。ロード級だろうが、皆で群がり装甲を食いちぎればあっという間に倒せる。…戦況は明らかにギャオス川へ傾き、その凄惨な光景に顔をしかめる紅蓮。

 

「ロード級ラプチャーですらろくに手も出せないとは…坊っちゃんも迂闊に近づくなと警告してくるわけだ。にしても、ラプチャーは何が狙いなんだろうねぇ?」

 

 …基本、人間か人間の創造物を中心に攻撃をするラプチャー。最初期は動物なんかも狙っていたらしいが、それは今のバージョンのラプチャーは基本しないはず…なのに、どうしてギャオスにあれだけ執着して排除しようとするのだろうか。

 

「あれは異世界から来た怪鳥らしいぞ。ギャオスと言うらしい。」

 

「――スノーホワイト? 来ていたのかい?」

 

 おや、来客か。旧友であるスノーホワイトがいつの間にか背後に立っていた……

 

 ……ん?

 

「…マリアンはどうしたのかね?」

 

「ああ、ラプンツェルが見ている。問題ない。」

 

 そうか…彼女に任されたマリアンに万一のことがあればカウンターズと指揮官にあわせる顔がない。取り敢えず、ラプンツェルなら安心だろう。

 

「…それで、状況は?」

 

「ああ、とても酒の肴には出来ないねぇあの有様は。さながら、地獄絵図だよ。あとついでに一羽を捌いてはみたが…私の経験上、コイツの肉は食えたもんじゃない。」

 

 スノーホワイトが隣に腰掛け、紅蓮の報告に『そうか…』と頷く。残念ではない、いくら食い意地を張る彼女だろうと、流石にこの得体の知れない怪鳥の肉を口に放り込む気にはならない。毒とは違う、何か身体に入れたら危険で悍ましいものだと肌で感じる…それは紅蓮も同じなんだろう。

 

 異界から来た凶鳥…この世界にいるべきではない存在。人やニケを襲い喰らう怪物はどうして現れたのか?皆目検討もつかないが、スノーホワイトにはある危惧があった。

 

「紅蓮、この鳥についてだが…アークが介入する前に私たちで処理しよう。」

 

「なに? 坊っちゃんが手を出すなと……」

 

「完全な殲滅は厳しいだろう。だが、ラプチャーが破壊されつくせば奴等は人を襲いにアークやエデンを狙う可能性がある。手は打つべきだ。」

 

 今こそ拮抗しあう両者だが、時期にギャオス側が優勢になるのは見えている…そうなれば、あの巨体が飛翔する範囲は普通の鳥なんて比較にならないだろう。地下にあるアークといえど嗅ぎつけられようものなら地上でのニケたちの行動は大きく制限されてしまうのは明白。しかし、難色を示す紅蓮。

 

「言い分は解る。しかしだ、我々だけではどうにもならん。あの中に飛び込めば蹴散らされるのが関の山だろうよ。」

 

「だとしてもだ。怪鳥が護っている『ナニカ』をどうにかしなくては…」

 

 

 

「――何を言い争いしているのですか?こちらは祈りを済ませたばかりだというのに。」

 

 

 そこへ割って入ったのはラプンツェル。ヒートアップする前にナイスフォロー…と思いきやスノーホワイトがあることに気がつく。

 

「ラプンツェル、マリアンはどうした?」

 

「え?『呼んでいる』と言っていたので、てっきり貴女がたのところに向かったものかと…」

 

「いや、此方には来てないぞ。」

 

 任せたはずのマリアンがいない。そもそも、彼女を呼んでいない……ということは行く先は誰も知らないというわけで。3人は顔を見合わせる。

 

「…迷子か。ええい、こんな面倒な時に。」

 

「落ち着け、スノーホワイト。まだ遠くへは行っていないはずだ。手枠をして捜そう。」

 

「でも、あの娘が行きそうなところなんて前哨基地くらいしか……いや、もしかして…」

 

 嫌な汗が背中を伝う。ラプンツェルの予想は怪鳥飛び交う戦禍の嵐に向けられる視線が全てを物語っていた。紅蓮もそれを察し『おいおい、まさか…』と戦慄する。スノーホワイトも同じタイミングで蜂の巣にされ落ちていくギャオス数羽を遠目に目撃する……もう疑いようがない。

 

「マリアンはあそこか…」

 

 

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