とりあえずとんでもねぇもん書いてんなとは思った。
何がいけなかったのかわからない。
地面に流れる血と酷く煩い声を聞きながら思う。
変わったのはツヴァイウィングのコンサートに響を誘ってしまってから。
ツヴァイウィングのコンサートでノイズが現れて多くの人が亡くなった。響も生きてはいたけど大怪我を負ってしまった。
だけどリハビリを経て無事に退院も出来た。ここまでは怪我をしたけど無事だったからよかった、で済んだはずなのに。
響に待っていたのは世間からの悪意。
ツヴァイウィングのコンサートの被害者の総数役一万人のうち、 ノイズによる被災で亡くなったのは全体の1/3程度であり、 残りは逃走中の将棋倒しによる圧死や、 避難路の確保を争った末の暴行による傷害致死であることが、 週刊誌に掲載されると、一部の世論に変化が生まれ始めた。
死者の大半が人の手によるものであることから、 生存者に向けられたバッシングがはじまり、 被災者や遺族に国庫からの補償金が支払われたことにより、 苛烈な自己責任論が展開されていった。
週刊誌の記事内容の気持ちを煽る華美な修飾語の数々に踊らされた人々は、 正義を振りかざし、主にインターネット上に持論を繰り広げた。 それはやがて、この事件に関係もなければ興味もない人間までも巻き込み、 ある種の憂さ晴らしとして狂熱的に扱われることとなった。
心ない中傷も、 マジョリティという後ろ盾に支えられることで正論と化し、 自分の意見でなく、 「他のみんなも言ってるから」という正体を失った主張がまかり通り、正義の暴力として吹き荒れた。
善良な民衆が懐く市民感情は、 どこまでもねじまがり、肥大化し、ただ「生き残ったから」という理由だけで、 惨劇の生存者たちを追い詰めていった。
響もそんなくだらない理由で悪意を向けられた。
ライブ会場の被害者のひとりに、 私達の通っていた中学校の1人の男子生徒がいた。 彼はサッカー部のキャプテンであり、将来を嘱望されていた生徒であったが、 なぜ彼が死んで、取り立てて取り得のない響が生き残ったのかと責め立てる。 少年のファンを標榜する一人の女子生徒のヒステリックな叫びから始まった攻撃は、 やがて、全校生徒にまで広がっていった。
響のお父さんはある日、会社に行くといったまま行方をくらませた。
響がコンサートの生き残りだと知った取引先の社長が契約を切ったらしい。そこから会社での立場が悪くなって、お酒をよく飲むようになってたらしい。
学校でも家庭でも、 抱え込むには大きすぎる理不尽に苛まれた響。
そんな響に私は寄り添う事しか出来なかった。響への悪意を止めることも響の代わりになる事も無力な私には出来なかった。
そんな日々が続いていた時だった。両親が引越しをすると言い始めた。
私は響と離れるのが嫌だった。あんな状態の響を置いて行くことなんて出来ない。
だから私はここに残ると両親に行ったけど。もちろんただの中学生の私が残るのを両親は良しとしなかった。
私はそれでも残りたいと言って両親と喧嘩した。そんな喧嘩をした時の両親の発した言葉が信じられなかった。
『あの殺人犯と付き合うのはもう辞めて』
その言葉が両親と私の訣別を決めた。
私は家を飛び出していた。今まで愛していた両親が疎ましいものに見えた。響に悪意をぶつけるあのものたちに見えた。
そこからは何処をどう走ったかは覚えていないけど響の家の近くにまで来ていた。もう両親の所に帰りたくないと思った私は、迷惑になると思いつつも響の家を訪ねることにした。
でもそこで見たのは燃える響の家だった。訳がわからなかった。
だけどこれが事故では無いのはわかった。燃える響の家を見ながら灯油が入っているであろうポリタンクとジッポライターを手に持って笑っている人達がいたからだ。
―――此奴らが響を
そう思った時には駆け出して一番近くにいた男の人を殴っていた。
でも、私は中学生で女性だ。大人の男性に勝てるわけがなかった。でも、それでも、響を返してと叫ばずにはいられなかった。
私のお日様を奪わないでと。
そんな私の思いも虚しくすぐに殴り返された。そして
『此奴もあの人殺しの仲間に違いない』『こいつも仲良くあの世に送ってやろうぜ』『ここだと面倒だからあそこに連れくぞ』
そういう言葉と共に私はスタンガンを当てられて気を失った。
気付いた時には何処かもわからない森の中だった。
そして私を取り囲んで鉄パイプを持っている男達がいた。
『お?起きたぜ』『じゃあ始めるか』『録画もしてやろうぜ!』『お!良いな!』
もう何を言っているのかわからなかった。同じ人に見えなかった。
だけど一つだけわかったのは私がこれからどんな目に合うかだけ。
そして私の予想どうりに事は起きた。私を取り囲む男達からの蹴りや鉄パイプの振り下ろし、焼けた鉄をお付けられもした。
たぶん出来る限りの人を痛め付ける方法を試されたと思う。私にはとにかく傷が刻まれた。
そんな中で思う。どうしてこうなったのか。
でもどう考えてもなんでこうなるのかが分からなかった。
いや、分かろうと思えばわかる。だけど理解が出来なかった。どうして、響を悪く言うのか。
響は誰も殺していないのに。響も被害者なのに。響も苦しんだのに。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして……どうして
私も響も何も悪い事なんていてしないのに苦しんで苦しめられて。どうしてもわからなかった。
そう思ってた時だった。朧気になる意識の中で私の視界の中に一本の錆び付いた剣が見えた。小さな社に封印される様に置かれたそれが妖しい光を発しながら佇んでいるのを見た。
剣が光るなんてありえない。きっと死に際の幻覚のはずなのに酷くそれに惹かれた。そして気付けばそれに向かって必死に這っている自分がいた。
私をなぶっていた男達は這う私の事が面白いのか笑っていたがそんな事は気にならなかった。
そしてその剣を手に取った私は、立っていた。さっきまでの痛みが嘘のように引き、力が湧き上がって来た。
そして気付いた時にはその剣で男達を刺していた。刺して斬って抉ってくり抜いて。
刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して
男達だったものが肉塊になるまで滅多刺した頃に私の持っていた剣はいつしか綺麗な刀身になっていた。
でもそんな事は重要じゃないの。だって気付いたの響を苦しめる物を無くしてしまえばきっと響はまた昔みたいに笑える。悲しい顔をさせずに済む!また二人で笑い合える!!
そう思ったら笑みが零れた。そして笑い声を上げた。
そうだ!そうしよう!!響を苦しめるものはみんなみーーんな、
早速行こう!そうしましょう!
私は手に持った血濡れの剣を携えて森を出る。いつの間にか私の体を黒い服と真っ黒なお面をつけているのにも気付かずに。
だってそんな事はさじだもの。
さぁさぁ!行きましょう!響を苦しめるもの全てを