※動画からいらっしゃった方へ
こちらではそのシナリオの名前および内容に触れないようお願いします。ネタバレ厳禁!
「ここ、どこだろう……」
呆然とそうこぼすが、もちろん答える声はない。春樹は気を取り直して周囲を見分しはじめる。経験上、じっとしていたって状況は良くならないことは理解しているのだ。それがどんなに理不尽であっても。
手を動かしながらも、今日のことを振り返る。命の危険を感じるからこそ、春樹の脳はよく働いた。
よく晴れた冬を目前にしたある日、春樹は庶民の自分には縁遠いような豪邸に訪れていた。物珍しくてキョロキョロと見まわしたくなるのをグッと抑える。周囲には自分と似たような黒い服を着た人物が多くいて、その人々の流れに沿って歩いていく。親戚とはいえ話したこともないようなひとの葬儀にどのような顔をして参加すれば良いのか分からないが、きっと悲しんでいるであろう故人の身近なひとのためにも失礼の無いようにと姿勢を正した。
案内に従って会場に着くと、規則的に並んだ椅子に喪服の老若男女が座り、焼香の順番を待っている。春樹もその中に加わると、暖房とひとの熱気で少し暑く感じられた。
祭壇に目を向けると花々の中に遺影が飾られている。写真には、高年の男性がよく見ればそうとわかる程度わずかに笑みを浮かべていた。
故人の
思いをはせているうちに、焼香が春樹の順にまで回ってきた。祭壇の前に立ち、手元に目線を下げる。焼香を終え、目線を上げると、瞬きの間に目の前にあるはずの祭壇、遺影、棺などはすっかり消え去り、真っ白な空間が広がっていた。
そうして、思わず顔を青くして、呆然としたまま何処とこぼしたのである。
春樹が気を取り直して調べたところ、この白い部屋にあるのは机が1つと扉が2つだ。机の上には何やら物が置いてあり、扉は正面の木製のものと、背後の壁と同じ色のもの。しかし、背後の白いそれはドアノブもなく、ほとんど壁に長方形の切込みが入っているだけのような有様だ。長辺を半分に切るようにして溝が薄く彫られているが、ほかには装飾なども一切なく、押してもびくともしない。
薄々そう簡単にはいかないだろうと思いつつも、真っすぐ帰れることを祈って、まずは木製の扉を開けてみることにした。この扉はネームプレートでも掛けるのかのように釘が刺さっている以外は変わった様子はなく、鍵もないようですんなりとドアノブが回った。
「開きそうやな……。お邪魔しまーす!」
軽い調子で開いた扉の先には、照らされることない暗闇が続いていた。
「真っ暗やん。こわ」
帰り道どころか、とても足場があるようには見えない扉をそっと閉じる。見なかったことにして、次は机の上に目をやった。
小さな机の上には、3枚の絵の描かれたプレートと、便箋が1枚置かれている。まずはと便箋に目を通すと、そこには縦書きの女性らしい文字が並んでいた。
~祥華の手紙(白)~
おじいさまへ
私は三人の方を好きになってしまいました。
これは淑女としてあってはならないことです。
三人のうちどなたかへの思いが勘違いなのではないか、私はそのように不埒ではないはずであると悩みもしました。
しかし、私は確かに三人の方に同時に恋をしてしまったのです。
もちろん、三つの恋心の全てを叶えようというつもりはありません。そこで、どの恋を選ぶべきかおじいさまに決めて欲しいのです。
情けのないことに私は自分ではどうしても選べませんでした。
春樹は赤の他人が読むには気まずくなる内容に複雑な顔をして、ごまかすみたいに便箋を裏返した。すると、そこにも何か書いてある。こちらは印刷物のような無機質な文字だ。
~便箋の裏~
答えは棺桶の中 真実は闇の中 壊れた鍵は微睡み 目覚める彼女はひとりだけ
眠る白には選べない 悼む黒だけが選択権を持っている
君が選び終えたなら帰り道は頭の先に
「全然意味がわからん」
春樹は首を傾げ、ひとまずこれは置いておくことにした。必要になってから考えればよいだろう、と。
残りのプレートを手に取ってみる。長方形のこれは上部に紐がついていて、それぞれ違う柄が描かれている。恐らく麻雀牌の「
裏返すなどして吟味していると、3枚全ての側面に一周するように薄い線が2本掘られていることに気づいた。きっと意味はあるのだろうが、これも頭の隅に留める程度にしておく。それよりは試してみたいことを思いついたので、まずはそれからだ。
プレートについた紐、お誂え向きに扉に刺さった釘、掛けろと言わんばかりである。ちょうど手にしていた「一索」のプレートを釘に掛ける。しかし、なにか目に見えた変化は起こらない。違ったか、と訝しみながらも、物は試しと扉を開くと、白を基調にしたかわいらしい部屋が広がっていた。
相馬春樹(探索者)について
関西出身の大学生。探索者としては、とある新規限定2PL固定シナリオの出身(ネタバレ回避のため、どのシナリオか気づいてもご内密に)。
KP(作者)からの評価は「秩序・善の狂人」「ズルいひと」だけれども、めちゃくちゃいい奴なのは間違いない。
かつて、幼馴染の親友がいた。