ガンダムビルドダイバーズ 〜お狐メイド長のGBNライフ〜   作:真莉藻

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毎度お待たせしております。
今回もよろしくお願いいたします。


第十三話

「…ふぅ、やっと終わりましたわね。

やはりこの手の作業は辛いですわ…。」

 

トライジュエルとのフォースバトルからしばらく経ったある日の夜、喫茶「ありあんろっど」の店内奥にある事務室。

閉店後の掃除や片付けの後、最近忙しかったからと後回しにして溜まっていた事務作業を終えた私はPCの電源を落とすと、椅子に座ったまま軽く伸びをする。

壁に掛かっている、今どき珍しい振り子時計の針は23時を過ぎていた。

タナカさんや他のメイドの子たちは既に帰宅しており、今残っているは私だけだ。

 

「あらやだ、もうこんな時間ですわ。

すっかり遅くなってしまいましたわね…。」

 

椅子から立ち上がった私は、帰り支度をするため更衣室へ向かい、自身のロッカーを開けて荷物を取り出す。

メイド服のポケットに入れていたスマホとダイバーギア、そして腰に着けていたマルコシアスが入ったケースをバッグに仕舞おうとした時、ダイバーギアにメッセージが来ているのが目に入った。

 

「あら?いつの間に…。」

 

どうやらずっと仕事をしていて気づかなかったらしい。

私はダイバーギアを起動すると、届いていたメッセージを開く。

差出人のところを確認すると、ユウくんからだった。

 

『ユウです。お仕事の日にごめんなさい。

今度の日曜日、僕のディランザを強くするためにハル姉ちゃんとお台場のガンダムベースに行くんです。

それで、もし都合がよかったらマリモお姉さんも来てくれませんか…?

ハル姉ちゃんにお姉さんも誘っていいか聞いたら、大丈夫だよって言ってくれました。

お返事待ってます。』

 

ユウくんからのメッセージはいつものGBNではなく、リアルで自分のガンプラを作るのに私にも来て欲しい、というものだった。

 

「なんと…!

ユウくんからのリアルでのお誘いではありませんか…!」

 

ユウくんとハルの2人とフォースを組んで以来、いつかはリアルでも会ってみたいと思っていたのだが、まさかユウくんの方から誘ってくれるとは、これは願ったり叶ったりである。

 

「ハルさんも来るということですが、これはユウくんとの距離を縮めるまたと無い機会…。

やはり、実質ハルさんだけに独り占めされている現状は面白くありませんもの…。」

 

我ながら大人気ないとは思うが、私だってハルに負けないくらいユウくんのことを大切に思っているし、ハルのようにユウくんとたくさんGBNで遊んだり、スキンシップしたりしたいのである。

 

「ふふふ。日曜日が楽しみですわ♪

とはいえ、もう夜も遅いですし返信は明日の朝にしましょうか。」

 

こんな時間にメッセージを返して、寝ているところを起こしてしまうようなことはあってはならない。

私はダイバーギアをバッグの中に仕舞ってメイド服から普段着に着替えた後、もう一度戸締りと火の元を確認してから家路についた。

 

ーーーーーー

 

「やはり、随分と早く着いてしまいましたわ…。」

 

約束の日の日曜日。

私は2人との待ち合わせ場所であるお台場のガンダムベースが入っている複合商業施設の前、実物大ユニコーンガンダム立像のある広場に来ていた。

遅刻してはいけないと早めに家を出たこともあり、約束の時間より30分以上早く到着してしまった。

とはいえ、時間を潰しに何処かに行くには中途半端な時間である。

 

「以前のように時間ギリギリになってはいけませんし、このまま外で待っていましょうか。」

 

今日はお天気も良いですし、と近くにあったベンチに腰掛けてダイバーギアを起動し、私たち3人のグループチャットを開くと待ち合わせ場所に到着したことを書き込む。

 

「これで良し、と。

さて、G-TUBEで動画でも観ていましょうか。

…あら、クオンさんがライブ配信されていますわね。」

 

おすすめ欄に上がっていた一つの動画に目が留まる。

それは私がG-TUBEでチャンネル登録をしているG-TUBER、クオンのものだった。

彼女のチャンネルには、仕事の休憩中やガンプラ製作の時など日頃からお世話になっているのだが、今日は自身のリスナーたちと対戦会をしているらしい。

 

「先ほど始まったところのようですわね。

これにしましょうか。」

 

私がその配信を開くと、ちょうどクオンと彼女のリスナーの1人であろう挑戦者がバトルを繰り広げている最中だった。

挑戦者のダイバーが駆るシナンジュスタイン(ナラティブVer.)ベースと思しきガンプラが、クオンの竜のような姿をしたカスタムガンプラ、ジャバウォックに接近しようと試みているものの、ジャバウォックの翼から射出された無数のフェザーファンネルとサイコプレートに阻まれていた。

それでも、活路を切り開こうと右手に持った連結状態のビームアックスで自身に殺到するフェザーファンネルとサイコプレートを必死に捌いていくが、既に左腕と右脚は喪失していて本体もあちこちボロボロになっていた。

 

「このダイバー、満身創痍の状態ですのに良く動けていますわ。バトルの腕もガンプラの完成度もかなりのものですわね。」

 

私が感心していたのも束の間、ついに限界が来てしまったのか、突っ込んできたサイコプレートを斬ろうとしてビームアックスを横薙ぎに振るったものの間に合わず、持っていたビームアックスを右腕ごと弾き飛ばされてしまった。

残された頭部バルカン砲を目の前に迫るフェザーファンネルに乱射するも、その程度の攻撃で太刀打ちできるはずもなく、そのままフェザーファンネルの群れに呑み込まれて撃墜となった。

そして1人、また1人と新たな挑戦者が果敢に挑むが、善戦こそするもののジャバウォックにダメージを与えるどころか、触れることさえ叶わない。

 

「流石は"終末を喚ぶ竜"…。

ガンプラの完成度、練度共に素晴らしいですわ。」

 

この配信の主でありジャバウォックを操るダイバー、クオンはG-TUBERとして活動する傍ら、GBN内の個人ランク戦で上位を走っている、「終末を喚ぶ竜」の二つ名をもつハイランカーでもある。

アクティブユーザー2千万人を誇るGBNの中でも、あのチャンピオンに近いところにいるダイバーなのだからその強さは尋常ではない。

 

「ふふふ。いつか、一度お手合わせ願いたいものですわね。」

 

ついそんなことを考えていると、ダイバーギアがピコンッ、という音を立てた。

画面の上部には、フォースのグループチャットに新たな書き込みがあったことを知らせる通知が表示される。

 

「あら、ユウくんたちですわ。もう直ぐ到着するそうですし、そろそろユニコーンの下に移動しましょう。」

 

私は観ていた配信を閉じると座っていたベンチから立ち上がり、ユニコーンガンダム立像のところへ向かう。

 

「この辺りに立っていれば良いかしら。

なるべくユウくんたちにわかりやすいような格好をしてきたのですが、どうでしょうか…。」

 

私は写真撮影をする人たちの邪魔にならないよう、ユニコーンの正面側にある木の下に立つ。

今日は、よそ行きの時のおめかし用として着ている赤みがかった紫色の和服に黒の手袋、そして髪型はツインテールという出来るだけGBNでの私のイメージに寄せた格好をしてきた。

流石に狐の耳と尻尾は付けてはいないものの、結構気合いを入れてきたので2人とも気づいてくれるはずだが、ちゃんと合流できるのか少し不安に思っていると不意に横から声が聞こえた。

 

「…あ、あの…!ごめんなさい…。

マリモお姉さん、ですか…?」

 

声のした方に振り向いてみると、アスティカシア高専の制服のような色をしたTシャツにベージュの短パン、前髪で左目が隠れた紺色の髪の男の子が立っていた。

 

「ええ、そうですわ。

ということは、ユウくんかしら?」

「…はい、ユウです…!

良かったぁ、間違ってなくて…。」

 

私に話しかけてきた男の子、ユウくんは安心したように胸を撫で下ろす。

そういえば、初めてGBNで会った時もこんな感じだったなと、あれからそんなに時間も経っていないのに少し懐かしい気持ちになる。

 

「ふふ♪会えて嬉しいですわ。

ところで、ハルさんは一緒ではないのですか?

姿が見えないようですが。」

「えっと…、姉ちゃんにはトイレに行くから先に行ってて欲しいって言われたので…。

多分もうすぐ…」

「あ、いた!

おーい!ユウちゃーん!!」

 

一緒に来ているはずのハルのことをユウくんに聞いていると、どこからともなく聞き覚えのある、ユウくんを呼ぶ声が聞こえてきた。

少し大きめの白いパーカーに黒い短めのスカートを身につけ、ボリューミーな淡いグレーの髪をツーサイドアップにした女の子がこちらへ駆け寄ってくる。

 

「はぁ、はぁ…。ユウちゃんごめんね〜!

そっちはマリモさんですよね?私、ハルです!

お待たせしちゃってごめんなさい…!」

「…僕は大丈夫だよ…?お姉さんともちゃんと会えたし…。」

「ええ、私がマリモですわ。ハルさんも、会えて嬉しいです。

まだ約束の時間より少し早いくらいなのですから、気にしないでくださいな。」

 

それに、長い時間待っていたのは早く着きすぎてしまった私の責任である。

ユウくんたちに会えるからと、少々張り切りすぎてしまった。

 

「ありがとうございます〜!

マリモさん、ほぼGBNでのイメージ通りで、私びっくりしちゃいましたよ〜!」

「うん…。お姉さん、リアルでもすごく綺麗です…!

何だか、アニメとかゲームに出てくるキャラみたい…。」

「ふふふ、ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいですわ。

ユウくんとハルさんも、GBNでのイメージ通り2人ともとても可愛らしいですよ。」

 

正直なところ、今日の格好は電車に乗っている最中や歩いてる時も結構目立っていたので、引かれたらどうしようかと思っていたのだが、幸い2人には好評だったようで安心した。

ユウくんに関してはアニメやゲームのキャラクターみたいだとまで言ってくれて、もう最高の気分である。

朝早くから、メイクに着付けにと頑張った甲斐があったというものだ。

 

「…あの、マリモお姉さん。

今日はわがまま言っちゃってごめんなさい…。

どうしてもお姉さんに、僕のディランザを強くするのを手伝って欲しかったんです…。

いつまでも、お姉さんたちに助けられるばっかりじゃダメだって思ったから…。」

「ユウちゃんはこのままディランザが使いたいらしくて、最初は2人で色々考えてたんですけど、私は砲戦用のタンク型しか使ったことないから良いアイデアが浮かばなくて…。

それで、マリモさんにも一緒に考えてもらおうと思って誘ったんです〜。」

「なるほど。そういうことなら、お安いご用ですわ♪」

「やった…!ありがとうございます…!」

 

申し訳なさそうに少し俯いていたユウくんが、顔を上げて心底嬉しそうにしている。

私も、ユウくんのガンプラに関してはそろそろどうにかしなければと思っていたのだが、やはりユウくん自身、前のフォースバトルの時に思うところがあったのだろう。

ユウくんが、今より強くなりたいと思ってくれていることはとても良いことだし、そのことで私を頼ってもらえるのであれば嬉しい限りである。

しかし、一つ伝えておかなければいけないことがある。

 

「…ただし、私はあくまで手伝うだけですわ。

ユウくんのガンプラなのですから、ユウくんが完成させること。良いですわね?」

 

ユウくんに、こんな突き放すようなことを言うのは心苦しいのだが、これだけは譲れない。

もちろん、GBNのプレイスタイルは人それぞれであるし、GPDが流行っていた時も実際にガンプラを操縦してバトルするファイターとガンプラを製作するビルダーで役割分担しているチームもあったので、人の作ったガンプラを使うことを否定するつもりはない。

でも、私個人としては自分で作ったガンプラで戦うからこそ、ガンプラバトルは楽しいのだと思っていて、ユウくんにも自分専用に作ったガンプラを動かしてバトルする楽しさを知って欲しいのである。

 

「お姉さん…。

…はい!僕、頑張ります…!」

 

ユウくんは私をまっすぐに見据えてそう答えた。

意を決したような表情もなんと可愛いことか。

リアルで見るユウくんは、GBNのアバターより数倍可愛く見える。

 

「ふふふ、良いお返事ですわ♪

もちろん、全力でサポートしますから安心してくださいましね。

…さて、そろそろ参りましょうか。」

「そうですね〜!

時間無くなっちゃいますし、行きましょ〜!」

「はい…!」

 

そうして私たち3人はガンダムベースへ向かうべく、ユニコーンガンダム立像の前を後にした。




ユウくんのディランザ強化計画、始動です。

Tips:
・クオン
ダイバーランクSSS、個人ランキング24位を誇るハイランカーにして「終末を喚ぶ竜」の二つ名を持ち、フォース「エターナル・ダークネス」のリーダーを務める半人半竜のような姿をした女性ダイバー。
G-TUBERとして動画配信等の活動もしている。

・ジャバウォック
クオンの使用する竜のような姿をしたカスタムガンプラ。
MGユニコーンガンダムのボディユニットを軸にハシュマルやサイコガンダムMk-II等のパーツを組み合わせて製作されている。
背中の大型ウィングに内蔵されているフェザーファンネルやサイコプレートを始め、強力な武装を多数搭載しており、その完成度も相まって凄まじい強さを持つ。

※クオンさん及びジャバウォックは青いカンテラ様作「サイド・ダイバーズメモリー」よりお借りしております。
ありがとうございました!
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