ガンダムビルドダイバーズ 〜お狐メイド長のGBNライフ〜 作:真莉藻
更新が遅くなってしまい、申し訳ありません。
今回もお付き合い頂けると幸いです。
私がGBNでユウ君と出会った日から2日後。
久しぶりのまともな休日もあっという間に終わってしまい、またいつも通りの忙しい毎日が始まっていた。
「お帰りなさいませ、ご主人様。こちらのお席へどうぞ。」
とある商店街の一画にあるメイド喫茶、『ありあんろっど』。
そこのオーナー兼メイド長(店長)というのが私のリアルでの顔である。
「おはよう、マリモちゃん。
その"ご主人様"っていうの、何回言われてもなかなか慣れないもんだねぇ…。」
「ふふ、毎週来られてるんですからそろそろ慣れて下さいな。
今日は何になさいます?」
「いつもので頼むよ。」
「かしこまりました。少々お待ち下さいましね♪」
うちのお店、『ありあんろっど』はメイド喫茶を名乗ってはいるものの、某秋○原にあるようなメイド喫茶ではない。
確かに私の個人的な趣味で、働いてるメイド全員にはケモ耳と尻尾を着けて"ケモ耳メイド"に扮してもらっていたり(私の場合は狐の耳と尻尾)、店内には「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」に登場する武装組織「ギャラルホルン」をモチーフにしたあしらいを施したりしているのだが、本来のウェイトレスをメイドに変えただけで基本的には普通の喫茶店である。
使っている店舗自体も元々普通の喫茶店だったのを若干改装しているだけで、お店の名前こそ変えているが、外観は殆ど以前のままである。
その為、そのお店のお客さんだった人達がそのまま来てくれているのだが…、
「はい、マリモちゃん。2番テーブルさんのモーニング二つ、よろしくね。」
「かしこまりましたわ、マスター。」
その理由として一番大きいのがこのマスター、タナカさんの存在だった。
タナカさんは前のお店のオーナー兼マスターだった人なのだが、数年前ある事情でお店を続けられなくなってしまった。
その為、もう引き払おうかと言われていた時にちょうど私がこの辺りで自分のお店の為の物件を探していたので、どうせ閉めてしまうならと店舗ごと引き取らせてもらったのだ。
タナカさんとは昔からの顔馴染みだったので、快く引き受けてくれたばかりか、今もこうしてマスターとしてキッチンに立ってくれている。
「お待たせ致しました、ご主人様。
モーニング二つ、お持ち致しましたわ。」
「お、来た来た。」
「いつもありがとうねぇ。」
「どうぞごゆっくり〜。」
「マリモちゃーん、コーヒーおかわりお願い〜。」
「はーい、少々お待ち下さいな。」
モーニングからランチ前までの時間帯はこうして昔からの近所のお客さんが来られる。
私がお店を始めた当初こそ、内装が変わっていたりお客さんのことを「ご主人様」呼びになっていたりコスプレしていたりとだいぶ驚かれたものの、なんだかんだで受け入れてもらっている。
お昼頃になってくるとご近所以外の人も来られるので、朝の時間帯は私1人だがもう少しすると他のメイドの子たちも出勤してくる。
『ありあんろっど』には私とタナカさん以外にレギュラー枠のメイドが6人とアルバイトでヘルプの女の子が1人働いている。
私を入れてメイドが7人いることと、店の内装がギャラルホルンを意識していることもあり、組織のトップである7つの名家に因んでうちのお店のファンで鉄血のオルフェンズを知っている人たちからは"せぶんすたーず"と呼ばれている。
それにあやかる形で、お店には近くのゲームセンターに置いてあったGBN以前のGPDのバトルシステムを引き取って来てGBN仕様に改造したものを置いてる。
私たちメイドとのガンプラバトルイベントもしているので、それを目的に来るお客さんも少なくない。
「おはようございます。メイド長、マスター。」
「おはようございま〜す。」
「おはようございます。」
そうこうしていると、7人のメイドの内の3人、エリカちゃん、ヒメノちゃん、ユキノちゃんが出勤してきた。
残りの3人はまだ学生なので、夕方学校が終わってからの出勤になる為、午前から夕方までの時間帯はタナカさんを入れた5人で回している。
「あら、おはよう♪ 今日は3人一緒なのね。」
「おー、3人ともおはよう。」
「たまたま外で一緒になりまして。」
そんなことを話しながら、3人ともそれぞれ仕事を始める。
エリカちゃんはこのお店のナンバー2で実質の副店長、ヒメノちゃんは私を除けばメイドの中では最年長で、面倒見が良いので若手スタッフの教育係をしてもらっている。
ユキノちゃんは感情は少し乏しいものの、クールなキャラがウケたのと細かいところまで気が回るのでお客さんからも他のメイド子たちからも評判が良い。
「メイド長、今お客様少ないですし、今のうちに休憩に行って来てください。」
今日は平日ということもあり、午前中はお客さんが少ない。
エリカちゃんは私のところに来ると休憩に入るように言ってくれたので、お言葉に甘えることにした。
「ありがとう。それじゃあちょっと出てくるわね。あぁ、ユキノちゃん、これを4番テーブルのお客様に持って行ってくれるかしら?」
「かしこまりました。」
近くにいたユキノちゃんに、4番テーブルさんの注文の品を持って行ってもらうようにお願いしていると、
「おはようございます。ヨウマル洋菓子店ですー。本日分のケーキ、お持ちしましたー。」
店の入り口から1人の男性が荷物を持って入って来た。
この人は同じ商店街にある、『ヨウマル洋菓子店』のご主人だ。
うちのお店はこのヨウマル洋菓子店さんからケーキを仕入れていて、こんな感じでいつも午前中にご主人が届けてくれている。
昔ながらの小さなお店なのだが、商品であるスイーツはどれも美味しくて、うちで出させてもらっているケーキも絶品と評判である。
「は〜い、いつもありがとうございます〜。
ヒメノちゃん、受け取りをお願いしても良いかしら?」
「わかりましたぁ。今行きますね〜。」
「エリカちゃん、あとお願いね。」
「承知致しました、メイド長。」
「さてと。マスター、ちょっと出て来ますわ。」
「了解、いってらっしゃい。」
私はヒメノちゃんとエリカちゃんに後を任せ、キッチンにいるタナカさんに声をかけると、店の奥の事務室へ向かった。
ーーーーーーーーーー
「ん〜、さて、そろそろ戻りましょうか。」
早めの昼食と食後の一服を済ませると、私は仕事に戻るべく、事務室を後にする。
これからランチの時間であり、夜にはバーの営業もあるのでまだまだ先は長い。
「ただいま戻りましたわ〜。」
「あ、マリモさぁん! ちょうど今呼びに行こうと思ってたんですよぉ!」
「まったく、店の前で迷惑なこった。」
店の中に戻ると、何やら慌てた様子のヒメノちゃんと少し呆れたタナカさんがいた。
「…何かあったのですか?」
私が2人に聞くと、キッチンから出て来たユキノちゃんが店の入り口のところを指差す。
「"アレ"です。さっきからエリカさんがずっと相手をしてくれているのですが、一向に終わる気配がなくて。」
ユキノちゃんが指差した方を見てみると、店の入り口の所で、エリカちゃんと真紅のゴシックドレスを身に纏った赤髪ツインテールの女の子?が何やら話をしているようだった。
「…なんだかよくわかりませんが、とにかく行って来ますわね。」
私は3人にそう言うと、エリカちゃんと例の女の子のところへ向かった。
「エリカちゃん、何があったの?」
「あ、メイド長…。実はこの方が…」
「あー! 出て来たわね、マトイ・マリモ!!
随分と探し回ったけど、やっと見つけたわ!
ここで会ったが100年目よ!!」
「…え? あの、どちら様でしょうか…?」
ここで会ったが100年目はともかく、何故この女の子は私の名前を知っているのか。
何より人の店の前で騒いだ挙句に、初対面の人間にいきなりタメ口とは失礼にも程がある。
そんなことを考えていると、女の子はさらに捲し立てる。
「ムキーっ!! この私を忘れるとはどういう了見なの!?
私はこの15年間、ただのひと時も忘れたことないのに!!」
15年。目の前の女の子が言ったその言葉で、私の中の何かがカチッとはまった。
赤いツインテールの女の子で私との因縁といえば"あのこと"くらいしかない。
「…もしかして貴女、15年前のGPD地区大会の準決勝で私と闘った…」
「そうよ、ようやく思い出したようね!
私はあの時のアンタの対戦相手、シジョウ・アカネよ!!」
なるほど、そういうことか。
私がまだ高校生でGPDの現役ファイターだった時、毎年開催される全国大会に出場する為にとある地区の大会に出ていた。
それの準決勝で、私は確かに彼女と闘った。
彼女は当時1年生にして期待のルーキーとして騒がれていた。
余程自信があったのか、だいぶ生意気な態度をとられた記憶があるが、実際に対戦してみるとあまり大したことはなかったというのを何となく覚えている。
当時から容姿が殆ど変わっていないのは驚いたが…。
「…やはりあの時の"小娘"でしたか。
それで?こんなところまで来て私に何の用かしら?」
「こ、小娘ですってぇ!? バカにしてぇ!!」
当時生意気な態度を取られたことと、今の失礼な態度で少し虫の居所が悪かったのでついつい煽るようなことを言ってしまった。
「アンタがそのつもりなら丁度良いわ!!
あの時の屈辱、今こそ晴らさせてもらうわよ!
マトイ・マリモ! この私とガンプラバトルよ!!」
「…はい?」
アカネは私をビシッ!と指差すと、いきなりガンプラバトルを申し込んで来た。
というわけで、今回はマリモさんの日常と少し昔のお話でした。
因縁?の相手からいきなりガンプラバトルを挑まれたマリモさんは果たして…。
今回のお話の中で登場した「ヨウマル洋菓子店」はデルフィ様からお借りしました。ありがとうございます。