ガンダムビルドダイバーズ 〜お狐メイド長のGBNライフ〜 作:真莉藻
毎度お待たせして申し訳ありません。
久しぶりにメインヒロイン(?)のユウくん登場回です。
アカネが押しかけてきてから数日が経った店の定休日。
今週は色々あった所為で疲れていたのか、いつもの休日より起きるのが少し遅くなってしまった。
「んー…、はぁ、怠いですわ…」
なんなら昨日、次の日は休みだからとバーでお客さんと一緒になって飲んでいたお酒が少し残っているような感じもある。
しかし、いつまでも寝ているわけにはいかない。
私は怠重い身体に鞭を打ち、のそのそと寝床から這い出て身支度を始めた。
仕事の日は家の用事が殆どできないため、休みの日に済ませておく必要がある。
用事は午前中にさっさと片付けて、午後からはゆっくりGBNでもやろうかと考えながら朝食を摂っていると、机の上に置いてあったダイバーギアに着信があった。
「…? 珍しいですわね。」
見てみるとメッセージが届いているようだった。
私がGBNでフレンド登録しているのは数人なのでダイバーギアの方に着信が来ることはあまりない。
店の子たちならスマホに直接連絡してくるので、マギーちゃん辺りかと思い内容を確認すると想定外の人物からだった。
【いきなりメッセージ送っちゃってごめんなさい。
ユウです。
この前は助けてくれてありがとうございました。
今日、あのとき言っていた友達とGBNで遊ぶんですけどお姉さんも一緒にどうですか?
お返事待ってます。】
なんと、差出人は私が前にGBNで初心者狩りに襲われていたところを助けた少年、ユウくんだった。
「…たたた大変ですわ!
ユウくんからGBNのお誘いですわ!!」
あの日、別れ際にまた一緒にやりませんかと言われて確かに内心期待していたが、まさか本当に誘われるとは思っていなかったので少し取り乱してしまった。
「…コホン。
こうしてはいられませんわ、早く用を済ませないと…!」
嬉しすぎて、さっきまでの身体の怠さもどこかへ吹き飛んでしまった。
私は逸る気持ちを抑え、ユウくんのメッセージにOKの返答と午後からログインすることを返信すると食べかけだったパンを口の中に押し込み、早速部屋の掃除から取り掛かった。
ーーーーーー
「…何だか緊張してきましたわ。」
用事を済ませ、GBNにログインした私は待ち合わせ場所であるセントラルエリアのロビーにいた。
遅刻してはいけないと早めに来たので、約束の時間までまだ余裕がある。
なのでロビーにあるカフェで時間を潰しているのだが、店の子たちかマギーちゃん以外とGBNをプレイするのは初めてということもあり、どうも落ち着かずさっきからずっとそわそわしている。
「そういえばユウくん、お友達と一緒だと言っていたけど、どんな子なのかしら?
ユウくんと同じ、可愛らしい男の子だと良いですわね…。」
ユウくんが一緒に遊ぶと言っていた友達についてよからぬ妄想をしながらふと時計を見ると、約束の時間5分前になっていた。
「あらやだ、もうこんな時間!
私としたことが、少しぼーっとしていましたわ!」
せっかく早めに来たのに、時間を潰していたら遅れましたなんてことになっては元も子もない。
私はカフェを出て急いで待ち合わせの場所に戻ると、そこにはもうユウくんが待っていた。
「あっ、お姉さん…!」
「こんにちは、ユウくん。
待たせてしまってごめんなさいね。」
「こ、こんにちは…。
大丈夫です、僕も今来たばっかりだから…。
それより、この前は助けてくれてありがとうございました…!あと、今日はいきなり誘っちゃってごめんなさい…。」
「いえいえ、気にしないでくださいまし。
私の方こそ、誘ってもらえて嬉しいですわ。」
ユウくんは申し訳なさそうに俯いてもじもじとしていたが、私がそう言うと表情が少し明るくなった。
「…ほ、本当ですか…?
それなら、良かったです…!」
「ふふふ。
…ところで、ユウくんのお友達も来るんでしたわね?」
「あ、はい。
もう少しで来るはずなんですけど…。」
てっきりユウくんと一緒にログインしているものだと思っていたのだが、まだ来ていないらしい。
しばらく2人で周囲を見渡していると、どこからともなくユウくんを呼ぶ声が聞こえてきた。
「お〜い、ユウちゃーん!」
声のする方を見てみると、手を振りながらこちらにぱたぱたと駆け寄ってくるダイバーがいた。
しかし、その姿を見て私は一瞬固まってしまった。
「あっ、ハル姉ちゃんやっと来た…。」
「ごめんね、ちょっとガンプラ弄ってたら遅くなっちゃった〜。」
(…えっ? 女の子? ユウちゃん?? しかもどことは言いませんけど、デカいですわね…。)
目の前でユウくんと親しげに話している、動きやすそうなインナーの上から鉄華団のロゴが入った大きめのパーカーを羽織った、胸部装甲の豊かなグレーの髪の女性ダイバー。
おそらく、この子がユウくんの言っていた友達なのだろうが、アバターなので実際のところはわからないとはいえ明らかにユウくんより年上に見える。
私が何が起こったか分からず、呆気にとられていると例の女性ダイバーが話しかけてきた。
「お待たせしてごめんなさい…!
あなたが初心者狩りからユウちゃんのことを助けてくれたダイバーさんですよね?
初めまして。私、ハルっていいます!」
「え、ええ。こちらこそ初めまして。
マリモと申します、よろしくお願いいたしますわね。(何者なんですの、この子…?)
女性ダイバー、ハルは丁寧に挨拶をしてくれた。
人当たりの良さそうな子で良かったと少し安心しつつも、ユウくんとは一体どんな関係なのだろうか…。
こっちから聞くのも気まずいので、どうしたものかと考えているとユウくんが口を開いた。
「…お姉さん、ごめんなさい…。
ハル姉ちゃんは僕の幼馴染なんです…。
幼馴染のお姉ちゃんと一緒にGBNをやっているって言うのがちょっと恥ずかしくて、友達って言ってました…。」
なるほど、そういうことか…。
2人の接し方が友達にしては随分と親しげだったので、幼馴染なら納得がいく。
それにしても、隠していた理由が"幼馴染のお姉さんと遊んでいると言うのが恥ずかしかったから"とは、年頃の男の子らしくてなんとも可愛らしい。
「なるほど、2人は幼馴染でしたのね。
ユウくんからはお友達と聞いていたので、少しびっくりしてしまいましたわ。(…幼馴染のお姉さんなんて最強のポジションではありませんか!リアルおねショタですわ….!)」
私はユウくんとハルの関係に興奮してしまい、ついつい心の声が漏れそうになる。
照れて黙ってしまったユウくんを差し置いて、ハルが食いぎみに被せてきた。
「むー。ユウちゃんたら、友達だなんて恥ずかしがり屋さんなんだから〜。
私たち、確かに幼馴染だけどユウちゃんは"私の"可愛い自慢の弟だよ?」
「…ちょっと、ハル姉ちゃん、やめてよ…。
マリモお姉さんもいるのに…。」
「えー。良いじゃない、減るもんじゃないし。
ほらほら、お姉ちゃんに弟成分を補給させろ〜!」
「あらあら、激しいですわね〜。(見せつけてくれますわね!あぁ、羨ましい…!)」
恥ずかしがるユウくんに容赦なく抱きついてスリスリしだすハル。
若干蚊帳の外になっている上になんだか予防線を張られたような気がするが、そんなことはさておき周囲の視線が痛くなってきたので、私は本題を切り出す。
「…コホン。さて、そろそろ何か始めようと思うのですが、2人は今日何か目的はありまして?」
私が2人に今日の予定を聞くと、充電完了とばかりにハルのスキンシップ攻撃から解放されたユウくんが、疲れた様子で答える。
ハルに元気を吸い取られてしまったようである。
「…はぁ…、その、今日は僕のDランク?に上がるまでのミッションをやりたいなって話してて…。
マリモお姉さんも、ついてきてくれたら嬉しいです…。」
「私はBランクなので問題ないんですけど、ユウちゃんはこの前始めたばかりだからDランクになったらフォースが組めるようになるし、そしたら一緒に組もうねって言ってたんです〜。」
GBNでは、気の合う仲間や友達同士などでゲーム内にて"フォース"と呼ばれるチームを組むことが出来る。
このフォースを組んだり入ったりするにはダイバーランクをDまで上げる必要があり(最初はFランクからスタート)、そのためにミッションを進めてユウくんをDランクにまで上げようということらしい。
というか、ハルがBランクだったことは少し驚いた。
ユウくんより先に始めていたとのことだったが、結構前からプレイしていたらしい。
「ランク上げですわね。
わかりました、そういうことならお安い御用ですわ。」
「…あ、ありがとうございます…!
よろしくお願いします…!」
複数人のダイバーと協力プレイをするのは、店の子たちがGBNを始めた時に少しだけミッションを一緒にやったきりなので、少しわくわくしてしまう。
とはいえ、あくまでユウくん達が主役であり私がはりきっても仕方ないので、ある程度は自重しなければなるまい。
「よしっ、そうと決まれば早速ミッションカウンターに行きましょ?
ほら、ユウちゃんにマリモさん、早く早く〜!」
「…ちょっと、ハル姉ちゃん…!
わかったから引っ張らないでよ…。」
「ふふ、あらあら。」
ユウくんとハルが戯れながらミッションカウンターに向かうのを、やはり微笑ましいやら羨ましいやら複雑な感情で見ながら私も2人の後ろをついて行くのだった。
というわけで、新キャラ登場です。
果たしてユウくんは無事にDランクに上がれるのか…。
次回もお付き合いいただけると幸いです。