ガンダムビルドダイバーズ 〜お狐メイド長のGBNライフ〜 作:真莉藻
前回に引き継ぎ、困ったちゃんな迷惑G-TUBER、リリムちゃんとの戦闘回になります。
今回も最後までお付き合いいただけると幸いです。
建物の残骸に背中から激突し動けなくなってしまったユウくんのディランザに、リリムのブラックナイトスコード・カルラがトドメをさそうとしたその時、突如間に入ってきてカルラが持つ対MS強化刀を弾き飛ばした赤と銀に彩られたイフリート。
私はその機体とカラーリングに見覚えがあった。
「久しぶりだな、マリモ。
随分と手酷くやられてるじゃないか。」
そのイフリートから聞こえてきたのは忘れもしない、少なくとも今一番聞きたくない声だった。
「…やはり貴方でしたのね、ガイキ…!」
ユウくんを助けた赤と銀のイフリートのダイバーは、私のGPD現役時代からの因縁の相手にして腐れ縁、ガイキだった。
「
お前ともあろう者がこのザマとは情けないな。
少し鈍ったんじゃないか?」
「…っ!
開口一番に嫌味とは、貴方らしいですわね…!」
相変わらず、気に入らないヤツである。
しかし、現に私はユウくんとハルを護るどころか、動けなくされた上に何も出来ないままあっという間に倒され、地に伏してしまっている。
ガイキの言うことはもっともだった。
正直なところ、そんな自分が情けなくて恥ずかしくて顔から火が出そうである。
「お前のことだから咄嗟に近接戦に持ち込んだんだろう?気持ちはわかるが、あの手の相手に不用意に近づくのは悪手だな。
とはいえ、今ここでお前を責めても仕方ない。
あとは俺が引き受けよう。」
ガイキはそう言うと、イフリートの背中に装備されている『機動戦士ガンダムSEED Destiny』の主人公機、インパルスガンダムのソードシルエットから既に右手に持っているものと同じレーザー対艦刀"エクスカリバー"を引き抜く。
「人気G-TUBERだかなんだか知らんが、ここまで派手に不正行為を働いたんだ。
もう炎上程度では済まないぞ?」
ガイキがエクスカリバーの切先をリリムのカルラへと向ける。
せっかく気分良く遊んでいたところに水を差されたのだ。
リリムはすかさずガイキに噛み付く。
「何よ!
このつよつよリリムちゃんを邪魔した上に偉そうに説教だなんて、おじさん何様のつもり!?
こうなったら、おじさんもそこのおばさんたちと同じようにボッコボコにしちゃうんだから!」
リリムは残った対MS強化刀を右手に持ち直し、ガイキのイフリートへと突っ込む。
ほぼ瞬間移動とも言えるようなスピードで一気に距離を詰め、その勢いを乗せたまま右手の対MS強化刀を袈裟斬りに振り下ろす。
ガイキはその攻撃を両手の対艦刀で受けるが、あまりの威力にイフリートが一瞬押し込まれる。
「なるほど、この尋常じゃないスピードとパワー…、そのガンプラの完成度から見るに、機体のパラメータをかなり弄っているな?
チートありきの強さなど、何にもならないぞ?」
「ふーんだ!おじさんには関係ないでしょ!?
リリムはリリムが楽しければそれで良いの!
他の人なんて所詮、リリムが楽しむための"おもちゃ"でしかないんだから!」
リリムはガイキの言葉にそう吐き捨てると、今度は左手のクローも使って連撃を見舞う。
流石にさっきの一撃ほどではないものの、それでも凄まじい威力の攻撃が馬鹿げた速度で繰り出される。
ある程度高ランクのダイバーでも、一瞬でバラバラにされてしまいそうなその猛攻をガイキは一撃ずつ丁寧に捌いていく。
どれだけ攻撃しても受け流されたり、いなされたりするばかりでリリムもだんだん焦れてきたのか、勝負を決めようと"あの手"を使う。
「キーッ!こんなに抵抗するなんて、おじさんのくせに生意気!!こうなったら、"闇に堕ち…」
「残念だが、その手は食わん!」
痺れをきらせたリリムが、私のマルコシアスを動けなくしたあのコマンドを使おうとしたその時、ガイキは左脚に装備された6連装ミサイルポッドを斉射した。
完全に不意を突かれてしまったため、リリムはミサイルを至近距離でまともに食らってしまった。
ブラックナイトスコード系の機体にはフェムテク装甲のアビリティがあるうえにチートで防御力も強化されているので、ダメージ自体は与えられなかったもののリリムのカルラは大きく態勢を崩してしまった。
「こうまで簡単に崩れてくれるとはな。隙だらけだぞ?」
「ちょっ、きゃあぁぁっ!!」
大きく隙を晒したリリムのカルラに、ガイキは対艦刀を思いっきり横薙ぎに振るった。
リリムは咄嗟に左腕のガントレットに搭載されているビームシールドでガードしたものの、ほぼ苦し紛れの防御だったためそのまま吹き飛ばされてしまった。
「まったく、相変わらず無茶苦茶な強さですわね。」
「すごい…。
あの赤いガンプラのダイバーさんは一体…。」
ガイキがバトルしている姿は今まで散々見てきたのでわかっていることなのだが、つい口に出てしまう。
ユウくんもガイキに見惚れてしまっているようで死ぬほど悔しいが、今それを言ってもどうしようもない。
「ぐっ…、ガンプラの性能はリリムのカルラの方がずっと上のはずなのにどうして…って、左腕が無くなってる!?
ランク上位のダイバーのガンプラですら傷一つ付けられないレベルにまで強化してるのに…!」
「…そろそろ効いてきたか。"フィオ"、どんな感じだ?」
[侵食率100%、チートツールの無効化及びステータスのリセット完了です。
随分と派手に弄られていたので時間がかかってしまいました。]
"フィオ"と呼ばれたのは、ガイキのイフリートに搭載されているAIである。
戦闘中のサポートはもちろん、"自分の周囲にいるガンプラの、スキルやシステム(チート等の不正行為も含む)でのステータス強化を無効化する"という特殊能力を持っている。
ウィルスのようなもので即効性は無いとのことだが、ガイキの技量をもってすればあってないような弱点である。
リリムのカルラの左腕が無くなっているのは、おそらくさっきの対艦刀での一撃を防いだ際にチートによるステータス強化が弱まっていて、それで負ったダメージだろう。
「リリムとか言ったか。
君の使っていたチートだが、こちらで無効化させてもらった。これで君のガンプラは本来の状態に戻ったということになるな。」
「はぁ?
何を言って…って嘘、ステータスが全部元に戻ってる!?」
どうやらチートツールの無効化が完了したらしい。
自分のガンプラの状態を見て取り乱すリリムに、ガイキは淡々と続ける。
「さて、大人しくしてもらおうか。
もうわかっているとは思うが、これ以上続けても意味はないだろう。」
「…やだ。」
「何?」
「やだって言ったの!!
ここまでコケにされて、はいそうですかってやめられるわけないでしょ!?
リリムは宇宙一可愛くてつよつよなんだからぁ!!」
もう引き返せないと言わんばかりにリリムが叫ぶ。
そしてカルラの背中に装備されたドラグーンを展開し、ガイキのイフリートにオールレンジ攻撃を浴びせる。
「まったく、困ったものだな…。
こうなっては仕方ない、落とさせてもらうぞ。」
ガイキはドラグーンによる攻撃を最低限の機動で躱しながらリリムのカルラへと肉薄する。
チートが生きていた時と打って変わってイフリートの動きを追いきれておらず、ビームが掠りもしない。
8基のドラグーンのうち、4基が先端からビームカッターを展開しイフリートの進路を阻もうと飛来するが、ガイキはまるで羽虫でもはたき落とすかのように4基全てを対艦刀で叩き斬ってしまった。
「なんで…!なんでよ!?
なんで一発も当たんないのよ!リリムだってSランクなのに…!!」
「どうした?
さっきまで散々偉そうな口を聞いておいて、チートがなければこの程度か?
俺の知っているSランクのダイバーたちは、もっと強かったぞ?」
「〜っ!!黙れオッサン!!!」
ガイキの煽りに、ついにキレてしまったリリムがカルラの胸部に装備されている超高インパルス砲"アドゥロ・オンジ"を最大出力で放つ。
ガイキはそれをすぐには避けず、当たる寸前のところで残していた右脚の6連装ミサイルポッドをビームの奔流に向けて斉射し、その爆発に紛れて一気にリリムの背後へと回った。
一瞬のことだったので、リリムにはイフリートにビームが直撃し、爆散したように見えただろう。
「はぁ…、はぁ…。
ど、どうよ!やってやったわよ!!
やっぱり、この宇宙一可愛くてつよつよなリリムちゃんにかかれば、あんなオッサンなんて…」
「俺がなんだって?」
「…えっ?」
ガイキの声が聞こえ、背後に気配を感じた時にはもう手遅れだった。
リリムのカルラは振り返る間も無く、対艦刀で頭から縦に真っ二つにされ爆散、テクスチャの塵になった。
ーーーーーー
リリムが撃墜されたことで私たちはようやくミッションから解放され、セントラルエリアのロビーに戻ってくることができた。
受注していた「オルドリン自治区防衛」はというと、ミッションを途中放棄した形になったらしく残念ながら失敗になっていた。
「いや〜、酷い目にあっちゃいましたね〜。
ユウちゃん、大丈夫〜?」
「うん…、僕は大丈夫…。」
「2人とも、私がついていながらこんなことになってしまい、申し訳ありません。
ユウくんにはまた怖い思いをさせてしまいましたね…。」
「いやいや、マリモさんが謝ることじゃないですよ〜!
私なんて気づいた時には落ちてましたし…w」
「ハル姉ちゃんの言う通りです…。
ズルした人が悪いのに、マリモお姉さんが謝らなきゃならないなんておかしいです…。」
ロビーに戻って来たところで私は今回のミッションのことでユウくんとハルに謝ったのだが、ありがたいことに2人には「相手が悪いんだから謝らないで」と言われてしまった。
ハルももちろんだが、やはりユウくんはとても良い子である。
「ふふ、2人ともありがとうございます。
とはいえ、このまま何もしないのでは私の気が収まりませんので、2人さえ良ければ後ほどカフェでご馳走させてくださいな。」
「本当ですか!?やった〜!!」
「ちょっ、ハル姉ちゃん…。
お姉さん、ありがとうございます…!」
「ふふふ、良いんですのよ?」
「どうやら、3人とも無事に戻れたみたいだな。」
少し空気が和やかになったところに、1人の男性ダイバーが近づいて来た。
「ちっ、貴方はいつもタイミングが悪いですわね…。」
「ん?何か言ったか?」
「何でもありませんわ!」
私たちに近づいて来たのは、ミッション途中に突如介入してきたイフリートのダイバーにして私の腐れ縁、ガイキだった。
私とガイキの突然のやり取りに2人ともポカンとしてた。
「あぁ、すみません。2人は初対面でしたわね。
彼はガイキ。さっきの赤いイフリートのダイバーで、私の昔からの知人ですわ。」
「改めて、2人とも初めまして。
あのカルラ、ピンクのガンプラのダイバーは行動が過激になった辺りからずっと追っていたんだが、なかなか尻尾が掴めなくてね。
駆けつけるのが遅くなってすまなかった。」
「いえいえ、こっちこそありがとうございました〜!
あ、私ハルっていいます〜!」
「初めまして、僕はユウです…。
助けてくれてありがとうございました…!
悪いダイバーさんをやっつけてるおじさん、かっこ良かったです…!」
「ははは、面と向かって言われると照れるな…。」
「…コホン。ガイキ、それであのリリムとかいうダイバーはどうなったのですか?」
ガイキが2人に、というかユウくんにチヤホヤされているのが気に入らなかったので私は少々強引に話題を変えた。
もちろん仕方ないことなのだが、ガイキだけに良い格好をされるのが面白くなかった。
「おっと、そうだな。
彼女はうちのフォースメンバーが確保、運営に引渡してある。
不正ツールを使えばすぐに見つかるはずのGBNで、なんでしばらく逃げれていたのかは気になるが…。
まぁ、タダでは済まんだろうな。」
「なるほど、そうでしたか…。
運営の厳格な対応に期待するしかありませんわね。」
「どうだかな。」
出来ることならこの手で張っ倒してやりたいところだが、そういうわけにもいかないのでここは運営を信じるしかない。
「と、ところでその…、今回は助かりましたわ…。
ありがとう…。」
「なんだ?
お前にしては、珍しくしおらしいじゃないか。」
「…ガイキ、貴方はいつもいつも一言多いのですわ!」
昔からそうなのだが、この男は何故こうも嫌味なヤツなのだろうか。
これで妻子持ちなのだから、世の中本当にわからない。
「さて、俺はそろそろ失礼させてもらおうかな。
こわーい般若もいることだし。」
「だぁれが般若ですってぇ!!?」
「おー、怖い怖い。
ハルさんにユウくん、それじゃあまたどこかで。」
ガイキはそれだけ言い残すと、そそくさとロビーの奥へと消えていった。
というわけで、マリモちゃん、ユウくん、ハルさんの波瀾万丈(?)な3人での初ミッションでした。
次回は平和にミッション攻略になる予定です…。
それではまたよろしくお願いいたします。