戦闘狂キャラってめっちゃいいよね…
なら好きな作品に戦闘狂を放り込んだらもっと好きになるのでは…?
という理論からできた勢い100%の作品です
なんなりとご容赦を…
「さてと、なんで呼ばれたかわかるか?」
学校の一室
職員室に隣接する生徒指導室で机を挟んで問いただす教師、その対面には何の悪びれも無く無表情で椅子に腰をかける生徒がいた
「今年度に入って13回目、まだ5月だぞ?
この短期間で何回喧嘩すれば気が済むんだ」
「俺が満足するまで」
「おま―――はぁ…」
その教師は呆れ返っていた
勿論、目の前の男が反省してない事もまたやらかす事も承知の上だった。しかし、この男は学外での素行という一点に目を瞑りさえすれば学業やクラス係もそつなくこなす優等生である故に他の教師は強くは出られなかった。
「まったく、そんなに腕っ節に自信があるならお前もヒーローにでもなったらどうだ、
「ヒーロー?助けるのとか面倒いしヤダ」
「だよなぁ…」
教師は元ヒーローだった
この世界においての『異能』もとい『個性』を用いて犯罪者を捕らえるのが元々の教師の仕事だったが訳あって今は教職へと変わっていた
「いやでもなったほうがいいぞ?
給料良いし、ほら…例えばな…えっと」
「わざわざそんな良いとこ捻り出そうとしても心変わりする訳ねーだろ」
「ならなんでお前と喧嘩するやつは悉くいじめやリンチの最中の奴らなんだよ」
「知らねーよ、ンなもん俺が聞きてえよ!
たまたまだよ、たまたま!」
本人も何故かは分からないが喧嘩でボコした相手は基本的に弱いものいじめやら追い剥ぎやらのやらかしていた奴らが殆どだった。
本人からすれば戦いたいから喧嘩をしたのに何故か感謝はされるわ贈り物を貰うわで常に鶴の恩返し状態が続きまくっていた
「いや、もうそんな事はどうでもいい
それで今回呼ばれた件だが…お前進学先の紙出せ」
「出しましたよ、それを先生が返してきたんでしょ」
「考え直せ、お前もヒーローにならないか?」
「うわぁ…何この先生横暴すぎだろ…」
勿論、教師としても生徒の進路を縛るのは良くないことだと百も承知だった。しかし、仮にこのままこの戦闘狂をヒーロー以外に進学させれば必ず問題を起こしかねないと考え、何とかそれを修正できないかと執拗にヒーロー科へ入るように迫っていたのだ
「保護者は何も言わないのか?」
「おじさんか?やりたいようにやれってさ」
「マジか…何でストッパーがいないんだよ…」
離人の両親は彼が幼い頃に交通事故で死亡
元より育児放棄気味だったため本人は大してショックは受けておらず、その後親戚の叔父が彼を引き取り男手ひとつで育てていたのだが良くも悪くも自由主義な彼は離人のやることに特にいちゃもんは付けずにやりたい事は本人に任せていた、勿論これは育児放棄ではなくある1種の親のあり方だと本人は思っている
「一先ずだ!もう一度考え直せ、そして来週までに提出しろ」
「えー…失礼しました」
「えーじゃない!」
生徒指導室からA4のプリントを片手に鞄のある教室へと戻る、彼の元々の進路はそこそこ偏差値の高い高校だった。
戦闘狂の離人も流石に戦いだけの為にヴィランになるほど親不孝ではなかった、今の親代わりの叔父には感謝してるし学費も高校に入ってからはバイトで自分で出そうとしている。しかし、その日常は自分にとって満たされるものでは無いと自覚はしていた
「おい離人」
「あ?…んだよ、懲りずにまたボコられに来たか」
振り向くとそこには顔にガーゼやら負傷の跡を残した少年とその取り巻き達がいた、数日前に離人にボコられた彼は数で力の理を覆そうと考えたようだ
「ちょっとツラ貸せ、理由はわかるよな」
「ああ、その前にカバン取りに行かせろ」
「お?逃げるのかなぁ?」
逃げと判断した少年は取り巻きと揃いも揃って煽り出す、それに離人すら呆れた様子で言い返す
「ほざけ、どうせすぐ終わるだろ
なら鞄くらい持ってた方が何かと都合はいいだろ」
「ッ!テメェあんまり舐めるなよ?
こちとら30はいるんだぜ」
「…へぇ」
相手の数を聞いた離人はここで初めて口角を上げた、前よりも歯ごたえのあるやつに会えるかもしれないという期待を込めて
「門の前で待ってろ、楽しみにしてるぜ」
「…お前ら弱い、弱過ぎる」
先程の場面から数分後の路地裏
そこには無傷の離人とその周りに30人以上が倒れ呻き声を上げていた
「高校生は勿論、近所のチンピラまで連れ込んでこのザマか?」
「す…すいません」
「いや、すいませんじゃなくてだな?もっと歯応えのあるやつを連れてこいって言ってんだよ」
即落ち二コマという言葉がこれ以上なく当てはまる状況に離人も溜息しか出なかった、個性を使う人間もいたが所詮はチンピラ、ただの飾りでしかなかった
「クッソ…腹が立つ。もっとマシな奴でも連れてこい、話はそれからだ」
煮えたぎる苛立ちを抑えながら路地裏を出て自宅への帰路につく、今の離人は周りから見れば明らかにイラついておりそれ故には誰も触れることはできなかった
「おらおら!どけぇ!」
「ん?」
「引ったくりだ!誰かヒーローに通報してくれ!」
声のした方を振り返ると無数のカバンを持ったひったくりがすぐそこまで迫っていた、今までのイラつきからか離人はつい引ったくりの進行上に足を添えた
ドシャァ!
「いっでぇ!?テメェ!」
顔面から受身もなしに倒れた引ったくりは主犯の離人へと怒りの視線を向けるが当の本人は表情を崩さない
「よくも俺の邪魔をしたな、ぶっ殺してやるよ!
へへへ、ここのヒーローは今サボリの時間だ
助けが来るなんて思うなよ!?」
「…はぁ」
引ったくりは個性を発動させ右手首から先をドリルのように変形させる、仮に人体に当たれば致命傷になりうる防御不能の技に離人もカバンを地面に置く
「おい、引ったくり
喧嘩売る相手はちゃんと選べよ雑魚」
「ンだとテメェ!」
挑発の言葉に右腕を構えながら突っ込んでくる引ったくり、ここで離人は周りからは分からないようにひっそりと『個性』を使った
(…鈍いな、個性はいらなかったか?)
バキィ!
「い"っ!?」
個性によって強化された動体視力により、容易に引ったくりの腕をつかみ、肘に膝蹴りを叩き込む
この時点で既に関節は外れていたがさらに追い打ちを行う
「そぉい!」
ドガッ!
顔面を掴み、地面に背中からたたき落とす
この流れるような追い打ちに引ったくりは断末魔すらあげずに意識を飛ばした
「ったく、おいアンタらのだろこれ」
「…え、あ、ありがとうごさいます!」
「良かった…中身は無事だ
本当になんて礼を言ったらいいか…」
引ったくりをそのままに盗品を返していく
離人もそのままその場をあとにしようとする
「そこの君!待ちなさい!」
「あ?ヒーローか?引ったくりならあそこで―――」
「危ないだろう、ヴィランと戦うだなんて!」
「…は?」
遅れてやってきたヒーローは引ったくりを鎮圧した離人に対して感謝の言葉どころか犯人を捕らえもせずに説教を始める始末である、これには離人どころか周りの野次馬すら困惑していた。
「いや説教の前にやることがあるだろ?」
「そんなことは後だ!だいたい――」
「おい」
有無を言わさぬヒーローの言い分についに離人もキレた。腹の底から出たドスの効いた声にヒーローもたじろぐ
「アンタ何様のつもりだ?
あの引ったくりを逃せとでも言いたいのか?」
「そうじゃな―――」
「なら聞くが、その時お前何してたんだよ
通りすがりの引ったくりにすら抜け穴見つけられるくらいズボラじゃねぇか」
「君、さっきからいい加減にしないか!?」
「そんな顔近づけるなよ
酒臭くてかなわん、まさかさっきまで飲んでたのか?」
「な、こ、これはだな!」
「まだ言い訳すんのかよ
俺は構わねえけど周りはどうだろうな?」
「ッ!」
その言葉にようやくヒーローも冷静になる
周りを見渡すと野次馬がスマホをかざして動画を撮ったり、ほかの連れとヒーローに懐疑的な視線を向ける者など様々な反応を見せているがそのどれもがヒーローに対する負のものであることは分かり切っていた
「…以後気をつけるように」
「あいよ」
そこで諦めたかのようにヒーローは様々な感情を押し殺し、いつの間にか来ていた警察の方へと歩いていった
これで帰れるとも思った矢先
パトカーからヒーローと入れ替わりになる形で1人の警察官が離人の元へと向かっていった
「ちょっといいかな?ヴィランを取り押さえた学生っていうのは君のことかな?」
「だったらなんだ?」
「一応周囲の聞き込みで君が個性を使用している様子はなかったと聞いているけど念の為本人にも確認したくてね。…あ、仮に使用していても今回の件は我々の落ち度だから君に責任はないよ」
「…いや、そのまま殴った
喧嘩は慣れっこだったからな」
「そ、そうか…一応学校と親の連絡先だけ教えて貰ってもいいかな?」
「これでいいか?」
「ありがとう…それとあと一つ」
「あ?」
今度こそ帰れるとカバンを肩にかけて帰路につこうとした時、警察官は少しだけ雰囲気を柔らかくして言った
「本来立場上、今回君のやった事は誇れるものだとはあまり言えない…それでも、ありがとう」
「…あそ」
制帽を脱ぎ、頭を下げる警察官を尻目に現場をあとにする。数分間歩き家の近所に来る頃には頭の中の話題は既に進路希望書になんて書くかですげ替わっていた
「はぁ…あんなのがいると思うとますますヒーローになりたいとは思わねぇよ…だいたい戦いすら―――待てよ?」
その時ふと、彼の悪い癖によってある謎の方程式が脳内で完成していた
(ヒーローには免許があるって先生言ってたよな
つまりヒーロー科なら戦える…そして卒業後も合法的に個性を使いながら死なない範囲で相手と戦える!)
元より地頭そのものは良い方だったが
己の欲望にはある意味忠実な彼は目標達成までの段取りの取り方が異常なまでに下手くそだった、ゆえにこのようなIQが一時的に猿レベルにまで下がったかのような謎の方程式が出来上がったのである
「…ハハハ、これはまた楽しくなりそうだ」
離人はまるで新しい悪戯を思いついた子供のような気分と足取りで自宅の扉を開いた
翌日、また離人は担任ともに生徒指導室に進路希望書を机の上に広げて話をしていた
「俺もお前が心変わりしてくれたのは嬉しいよ
でもさ?もうちょっと明確に書いて欲しかったなぁ…」
「書いたろ、ヒーロー科って」
「学校を書けよォ…一番大事なとこだろ?」
「いや、俺全然わからんし
それなら俺が調べるより元ヒーローの先生の方が情報としては信頼出来る」
「それはそうかもしれんけどさぁ…」
教師は担任としてもちゃんとした道に行ってくれそうな教え子に最初こそ嬉しかった、だがこの適当加減からしておそらく自分が思うような心変わりではないと察した
頼られるのは嬉しいがそれと並行するように不安も積み重ねっていた
「そもそもなんでお前は戦闘狂なんだ?
多分ヒーロー科に鞍替えしたのもそれ目当てだろ?」
「先生はスポーツ選手がなぜ過酷な練習に耐えれるか知ってるか、楽しいからなんだってよ。俺にとってそのスポーツが戦いなんだよ、しかも戦いは点数による引き分けもなく明確に勝敗が決まるだろ。他にも理由はあるがシンプルに工夫や小細工の幅も広い」
「思ったよりしっかりした理由だな…」
戦闘狂の理由を自分なりに説明する離人にどこか腑に落ちそうになる教師、すると離人は気になっていた疑問を口にする
「なら聞くが、先生はなんでヒーローやめたんだよ?」
「理由か…まぁ、疲れたんだよ。
やっぱり当然助けられなかった人はいるし、その家族や友人から来る言葉ってのは体についた傷よりずっと痛いもんなんだ」
「そうか…なんか悪いこと聞いたな」
人の感情に対してあまり興味を持たない離人も担任のそのあからさまに沈んだ顔を直視出来なかった
「ヒーロー科を薦めたのもお前ならそんなの気にしないし、俺みたいに助けられないやつなんて出さないと思ったからなんだ」
「…先生、ひとつ聞いていいか」
「…?なんだ?」
担任の言葉を聞き席を立ち上がる
先ほどまでの暗い雰囲気も露知らず、あくまでも新しいおもちゃを見つけたような悪い笑顔で問いただす
「ヒーロー科の中で1番の所はどこだ?」
「一番…士傑も悪くないがそれなら雄英だろうな」
「雄英…そうか」
雄英高校
その言葉にいつもの口角を上げた笑顔で離人は言う
「そこに行けば、退屈はしねえよな?」
いつものようなワクワクを隠しきれなきような顔
担任はそれが自分の不安を払拭するための振る舞いだと直ぐに気づき、笑みを零す
「言っとくが雄英は国内一ハードルが高い
…簡単には行かないぞ?」
「ハッ…上等だよ」
ここで戦闘狂は、ようやく本来のスタートラインへと足を掛けることとなった
■主人公設定
・
風格は絵に書いたような不良だが文武両道の才能マンであり、基本的に優等生レベルのスペック
タイトル通り戦闘狂だが見境がない訳では無いし、弱い奴には振られない限り喧嘩は買わないというスタンス
ことある事に喧嘩すると誰かしらが助かるというヒーローの勘的なものが備わっている
モデルは呪術の鹿紫雲一
・個性『エネルギー』
体内で生成または蓄積したエネルギーを様々な用途で使用可能、今回は動体視力のみを強化して出番は終わり
詳しくは次の回でわかるよ