ラブライブ!アナザースクール‼︎   作:早乙女・天座

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第14話 黒の幼馴染

 淡く黄色い街灯の光は揺らめきながら、そこら一帯で夜の住宅街を照らしている。比較的新しいモダン的な一軒家から、古めかしい木造の平家まで、様々な家が立ち並ぶなか、そのマンションの外装は所々に風化の跡があり決して綺麗だ、とは言い難い見た目をしていた。

 6階建ての小規模な、そのマンションの2階端の一室には緋花(ひばな)、という表札がかけられている。

 

 そこは青と白が特徴的な女の子の部屋。壁の古さは隠せずとも、青いカーテンやシーツ、カーペットに白い家具たちが清潔感を演出していた。ベッドに勉強机、中央には小さなテーブルがあり、カレンダーには筋骨隆々なプロレスラーの写真が採用されている。他にも、棚の中には総合格闘技の選手図鑑や任侠映画にヤンキー漫画があり、彼女の意外な趣味が伺えた。

 

「あ〜、もしもし。聞こえる、レナ?」

 

 背もたれのある青い回転椅子の上に膝を抱えて座る夕輝(ゆうき)は自分のスマートフォンをスピーカーモードにして机の上に置き、遠い目をしてそう言った。

 

『う、うん。聞こえてるよ、ユッちゃん。どうしたの?』

 

 スマートフォンから聞こえてくるのは、可愛らしい少女を思わせる、おどおどとした声である。震えた声は何かに怯えているようで、その声を聞く夕輝は、何かに耐え忍ぶようなしかめっ面を見せていた。

 

「あのね今日、若ノ芽の生徒会長に呼び出されたんだ。それでね、レナのこと相談されたの……」

 

 本人を目の前にしているわけでもないにも関わらず、夕輝は髪の毛をいじったり、顔をかいたり、と落ち着かない様子を見せる。

 

「今月中に登校してこなかったら、学業に対する意欲がないって判断されて、退学になっちゃうかも知れないんだって……」

『そうなんだ……ご、ごめんね。わたしのせいで迷惑かけちゃって……』

 

 そう、心から申し訳なさそうに言うレナに対して、夕輝は1人でにハッ、とした顔になりすぐさま首を横に振った。

 

「そんな! 迷惑だなんて思わないでよ……アタシの方こそ毎回、心配してるって口だけでレナのために何も出来てなかったんだからさ」

『ううん、ユッちゃんにはいっぱい助けられてるよ。たくさん話し相手になってくれるし、いつまでも、わたしを見離さないでいてくれる』

 

 純粋無垢な少女を思わせる声色に夕輝は胸を押さえて苦しそうに顔をしかめる。

 

「そ、そんなの当たり前じゃん……」

『えへへ、ありがと』

 

 ただただ嬉しそうで照れくさそうな笑い声。それに引っ張られるようにして夕輝も表情筋を動かして苦く微笑んだ。

 

「レナの気持ちは分かるけどさ。せっかく入学したんだからおいでよ、学校」

『でも……』

「怖くないよ。アタシがついてるじゃん? それにアタシ高校に入って友達もできたんだよ。葉月(はづき)美烏(みう)、前にも話したでしょ?」

『うん……確か、一緒にスクールアイドルをやってる仲間だよね?』

「そう。葉月はね、ちょっと変わってるけど気配りができて、すごく優しいの。見た目や言動は気取ってて、イタタ〜ってなるんだけどね」

 

 自分の話しをして凝り固まった心がほぐれたのか、徐々にいつもの調子を取り戻し夕輝は、にこやかに言葉を連ねる。

 

「美烏はね〜、バカマジメで面倒なところもあるんだけど、イジると反応が面白いんだ。それに、結構情に厚かったり、憎めないんだよね」

 

 すっかり調子を取り戻し笑顔を見せて、そう言った。

 

「今はね、グループ名を考えてるんだ。結局、いい案が思いつかなくて難航してるけどね。決まるまで、まだ結構時間かかりそうかも」

『ふふ、ユッちゃん楽しそう。よかったね、いい友達ができて』

「うん。でも、あの2人ならレナともきっと仲良くなれる。それに、この子が楽曲を提供してくれてるんだよ、って紹介したら、美烏なんて泣いて喜んでくれるんじゃん?」

 

 そう言うと、スマートフォンの向こう側からクスクスとカワイイ笑い声が聞こえてくる。

 

『でも、わたし、()()()()どんな顔して会えばいいか、分かんないよ……』

 

 それは彼女の心に根強く染み付いているかのように、不安な感情が込められた一言であった。

 

「大丈夫! レナは自分が()()()()()()()って思ってるかもしんないけどさ。レナのことを責める人なんていないよ。だって、レナは何も()()()()んだから。もちろん、アタシだって責めたりしないし、それに――」

 

 言葉を続けようとして夕輝は口をつぐんだ。そして、少し考える時間をとって、次の言葉を喉の奥へと飲み込む決断をした。

 

「ううん――とにかく、今月はまだ2週間あるんだし、ゆっくりでいいから覚悟固めといてよ。アタシはレナがそうやって殻に閉じ籠り続けてるの、見てらんないよ」

『う、うん。わかった、頑張ってみるね』

 

 弱々しくも前向きな声の響きが伝わってくる。

 

「うん、困ったことがあったら、いつでも言って。ぜったいに助けになるから」

『ありがと、ユッちゃん』

 

 それから2人はお互いに『おやすみ』、の挨拶を交わして布団の中へと入っていった。

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