ラブライブ!アナザースクール‼︎   作:早乙女・天座

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第37話 lets コラボレーション!

 昔からボクは1番になるように教えられた。ボクが1番になれば、いつもムスッとしている母が笑ってくれる。

 

 ボクは昔から一流になることを教えられた。それと同時に三流以下の存在がどれほど醜いかを何度も説かれた。それを語る母の言葉はいつも耳にキーンと響いていたことを、よく覚えている。

 

「葉月、アナタは(わたくし)の才能を色濃く受け継いでいるわ。それにあの人の見てくれの良さもね」

「はい、お母様」

「アナタは一流の役者になるのよ。環境も申し分ない。今の(わたくし)なら必要なものは何だって揃えてあげられる」

「はい……」

「後はアナタがいかに稽古に励むか、分かっているわね?」

「はい」

 

 母との思い出は厳しい思い出だ。ボクの体が役者として適応するまで、何度も叱られた。何度も稽古を強制された。

 けど、それがイヤだったとか、辛かったとか、そんなことは不思議と思わなかったんだ。それが、仕事ばかりの母と繋がっておける唯一の手段だったから。

 

 母の教え通りボクは役者以外の点でも1番であり続けた。小学校のころ徒競走やテストの点数で1番になれば、母の他にも多くの人がボクをスゴイと褒めてくれた。それが嬉しくて、ボクも1番であり続けようと誓った。

 けど、1番は孤独なんだ。誰も寄せ付けないほど差をつけてずっとボクが1番を取り続ければ、羨望の眼差しはやがて僻み(ひがみ)へと姿を変える。そのうち、誰もボクを見ようとしなくなるしむしろ攻撃的になる。

 

 だったらとことん異質であれ。ボクは孤独から逃げるために偶像になることを選んだ。

 憎悪や敵意もヒラリと受け流してやろうじゃないか。英刈葉月とは誰もが羨む完璧な存在。立ち振る舞いも、容姿も、何だって取り繕える。キザなセリフで身を隠し、誰よりも異質な存在になってしまえば、人は同じ物差しで測ろうとはしないだろ?

 

 それが役者としてのボクだ。No.1のボクだ。母が望んだボクなんだ。

 

 ※

 

 スプリングフェスにてスプリングリミテッド賞といういわゆるMVP賞を取った結花凛たちエンシードは目に見える実績を得た。それにより学校からは部室が支給され、同時に校内で一躍その地位を向上させる快挙をあげる。

 MV撮影や配信などの小さな活動で徐々に積み重ねていた校内の立場も目に見えて良くなったと言えるだろう。

 

 そんな結花凛たちの活動も大きな区切りを経て、平穏な日常を取り戻していた。

 次に大きな目標をあげるのであれば9月あたりにあるラブライブ地区予選だろうか。いや、それまでに何かイベントを起こしたいな。結花凛たちが、そんな会話を部室でしていると何者かによって扉が数回小突かれる。

 

「すみませ〜ん!」

 

 そんな声に反応して部室にいたエンシードの5人は扉の方に注目した。そして、美烏が返事をして、その扉は開かれる。

 

「ども〜、お邪魔しますね〜」

 

 そう言って入ってきたのはテンションが高めな茶髪の少女。丸いメガネをかけていて左側の髪の毛だけを三つ編みにしている。若葉と同じ色の制服のアクセントから、その人物が3年生であることが見てとれた。

 

「えっと……どういったご用件でしょうか?」

 

 美烏が席を立ち、その人物の対応をする。その裏で葉月は備えのパイプ椅子を取り出して客人が座れる席を作っていた。

 

「えっとね〜、アナタたちスクールアイドル部にちょっとしたお願いに来たんだよね」

 

 三つ編みの少女がそう言うと、葉月はさりげなく出来上がった客席に少女を案内する。そして、少女は席に着き改めて机を囲み話しは展開される。

 

「ありがとう。で、えっと〜。まずは自己紹介からかな。私は白鳥陽夏(しらとり ひなつ)。演劇部の部長をしています」

 

 そう言うと陽夏はフンス、と鼻息を鳴らして胸を張った。同じ3年生でも若葉と比べてフレンドリーというか、見た目はお姉さんだが上級生の圧は感じない。

 

「白鳥先輩ですね。私は瓜谷美烏です。よろしくお願いします」

 

 丁寧にぺこり、と頭を下げる美烏を見て陽夏はクスリと笑う。

 

「うん、知ってる。そんなにかしこまらなくてもイイよ。仲良くしようぜ」

「ありがとうございます。それで、私たちにお願いって何なんですか?」

「あ、そうそう! キミたちスクールアイドル部のみんなと私たち演劇部でコラボレーションをしたいのだよ。ぜひ、私たちの劇に出てくれないかい?」

 

 真剣な瞳と少しニヤけた口元で陽夏はそんな提案を持ちかけた。対して真っ先に反応を示したのは、それまで大人しく話を聞いていた結花凛である。

 

「劇⁉︎ 私たちが舞台に立つんですか‼︎」

「お! キミは結花凛ちゃんだね。噂通りの元気っ子だ! たしか若葉のお気に入りちゃんだよね」

 

 陽夏がそう言うと結花凛は小首を傾げて不思議そうな顔を見せた。若葉、という今となっては聞き慣れない名前に引っかかったのだろう。そんな結花凛を遮り夕輝が割って入はいってくる。

 

「あー、ですです。で、白鳥先輩。どうしてアタシたちが劇なんです?」

「うん。キミたちの活躍が目覚ましくてね〜。この前のフェスの配信を見てたらビビっときたんだ〜! 新しい風吹かせちゃる、ってね!」

 

 陽夏は大きな身振り手振りでそんな風に説明をした。

 

「ほら、3年は2学期の末には引退でしょ? 少しでも部に何か残したくてさ。他クラブとのコラボっていう新境地を開拓して後輩ちゃんたちに可能性を残してあげたいし」

「なるほど。でも、葉月はとにかく私たちは演技なんてできませんよ?」

 

 美烏がそんな心配を口にして夕輝は激しく首を縦に振る。レナも似たように賛同意見に寄り添っており、結花凛はいつも通り新しいことに目を輝かせていた。

 

「大丈夫、大丈夫! そのへんは考えてるよん。脚本ももう出来てるんだ〜。私が書いたんだぞ!」

 

 そう言って陽夏は習字の教科書ほどの冊子を取り出して机の上に出す。自分の分も含め6つ用意していて、それぞれがそれを手に取った。

 

「『月夜の下でキミと踊ろう』? どういったお話なのかな?」

 

 冊子に書かれた題名を興味深そうに読み上げたレナは楽しそうに鼻歌を歌いながらページをめくる。

 

 台本の内容はザックリ言えばファンタジー世界に登場する貴族の恋物語であった。これはシリーズものの間幕にあたるらしい。

 貴族の息子が身分の違う踊り子の娘と恋に落ちる、という分かりやすく受け入れやすい内容である。

 

「私たち演劇部で代々受け継いでる『勇者フレディの冒険譚』ってシリーズがあって、『旅立ち』、『試練』、『決着』の全3部作で構成されてるんだけど今回はそれに新しく間幕を描こうと考えたんだよ」

「ということはボクたちが担当するのは、そのフレディが出会う貴族と踊り子たちということかな?」

「そういうこと。さすが葉月ちゃん。スクールアイドル部のみんなには踊り子として実際にステージを披露してもらいたいんだよね」

 

 そう言って葉月に賞賛を送る陽夏は特に熱い瞳を向けていた。言わずもがな、子役時代から舞台に立ってきた葉月の才能に興味があるのだろう。

 

「踊り子なら役によっては、ほとんど演技しなくてもいいし、貴族とヒロイン以外のキャラは設定とか空けてあるからみんなの個性入れ込んじゃってよ」

 

 つまり結花凛たちが求められているのは劇の合間やフィナーレを歌とダンスで彩ること。そしてオマケについてくるビックネームの英刈葉月というわけだ。

 

「それとさ。コラボしてくれたあかつきには葉月ちゃんにぜひ主要人物の貴族を演じてもらいたいよね。噂に聞く実力を遺憾無く発揮してほしいな〜」

「……ああ、そういうことならばこの葉月、全身全霊でその役に挑ませてもらうよ」

 

 陽夏の提案を受け入れて、葉月は周りを確認した。もちろん、そんな葉月に待ったをかける人物はエンシードにはおらず、ラブストーリーの主人公とも呼べる重役は葉月へと委ねられる。

 

「でもこの配役だと、貴族様の相手役のヒロインはどうするわけ? ステージを披露するなら私たちの中の誰かがやらなきゃなんじゃん?」

「うん、そうだね。だから、もう1人重役を演じてもらう必要がある」

 

 そう陽夏が言うと、結花凛、夕輝、レナ、美烏の4人は互いに見つめ合った。

 

「どうする? 美烏行っとく?」

「は? なんで私なのよ」

「いや、だって得意じゃん? ミュウミュやってるし」

「アレは違うでしょ! ミュウミュは研究に研究を重ねて練習をし尽くした末の産物なの。昔、クルフルの企画でチョロっと演技したことがあるけど……改めて自分の不器用さを突きつけられたわよ」

 

 やつれ気味に言う美烏に夕輝は同情の目を向けている。

 

「ごめんて美烏……」

 

 時間をかけて練習をすれば平均以上のものを作り出す美烏だが、演技に関してはあまり乗り気ではないらしい。

 

「はい!はい!はい! 私やりたい‼︎」

 

 元気よく手をあげて主張するのは結花凛である。興味があるものには臆さず飛び込む彼女らしい行動だった。

 

「いいね結花凛ちゃん! やる気満々だね〜。よし、採用! っていうかみんなこの話自体は引き受けてくれる流れなんだね‼︎」

 

 先走り配役の話をしていた結花凛たちだったが、改めて陽夏はスクールアイドル部に対して問いかけた。5人は、主に美烏へ視線を集めて頷きあう。

 

「私ずっと葉月ちゃんが舞台に立つ姿、見てみたかったんだ〜‼︎」

「フフ、そう言ってもらえると光栄だね。ユカリの期待には120%の力で応えてみせよう」

 

 そんな結花凛たちのやりとりを見て陽夏は目を輝かせた。

 

「じゃあ!」

「はい。目先に大きなイベントもありませんし、ぜひ一緒にいいものを作り上げましょう」

 

 美烏が代表してそう言うと、陽夏はパァっと顔を明るくして手を差し出してくる。そして、その手を美烏は固く握った。

 

「ありがとう! いいもの作ろう‼︎ 演劇部とスクールアイドル部、両方の部活に私たちで歴史を刻むんだ!」

 

 高まったテンションをそのままに陽夏は大きく宣言をした。

 

 突如として舞い込んできた新たなる目標に向けて結花凛たちも再度、活動の気合いを入れる必要がある。

 

 その後、陽夏は代表の美烏と連絡先を交換して後日詳しい内容は擦り合わせようと提案して去っていった。スクールアイドルとしてさらに大きくなるために演劇という新たな舞台に結花凛たちは飛び込むので合った。

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