ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう 〜社畜剣聖、配信者になる〜   作:熊乃げん骨

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第11話 田中、打ち返す

 俺みたいな剣士タイプにとって、迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》のような魔法使いタイプの敵は苦手な相手だ。

 

 遠距離からの攻撃に対処手段がないというのもあるが、一番は動きが読めないところにある。

 

 これは俺だけじゃないと思うが、剣士タイプは相手の僅かな動きから、相手の動きを察して動く。膝の緩みで前進を察知し、目線の動きで狙いを読む。

 相手が人間だろうとモンスターだろうと、その動きの機微から次の行動を読むことが出来る。

 

 しかし魔法使い相手だとそうはいかない。

 あいつらは杖を軽く振るうだけで多種多様な魔法を使い分けることが出来る。

 そんなのパンチを打つモーションでキックやエルボーが飛んでくるようなものだ。動きの読みようがない。

 

 まあ俺は慣れたから相手の魔素の『揺らぎ』である程度読めるようにはなったけど……それは魔法使い系のモンスターを一万体は倒す必要がある。

 

 だけどそんなことをしなくても、有効な手段を俺は確立させた。

 

「相手がこっちに気がつく前に斬れば、魔法を使われることもない……!」

 

 一瞬で距離を詰めた俺は、迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》を縦に一刀両断する。

 ローブが真っ二つに切り裂かれ、中にあった黒いモヤのような物が霧散し手にしていた杖が音を立てて床に落ちる。

 迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》はローブが本体。これに一定以上のダメージを負わせればこのように倒す事が出来る。

 

『……!!』

 

 味方がやられたことに気づいた他の迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》たちが俺に杖を向ける。だけど迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》が魔法を撃つには二秒の溜め(・・)がいる。

 

 俺は一秒もかけず接近し、スパスパと迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》たちを切り裂いていく。普通に戦うと面倒な相手だけど、魔法を使わせなければこれほど楽な相手もいない。

 

"お相手さん、魔法使えてなくて草"

"迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》ってかなり面倒なモンスターのはずなんだけど……"

"Q.相手の魔法に対処できません A.魔法を使われる前に斬る"

"それが出来れば苦労しないんだよなあ……"

"前に全然歯が立たなくて逃げ帰った迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》がスパスパやられるのを見ていると、虚無感となぜか興奮を覚える"

"なんか目覚めている奴いるの草"

"視聴者の性癖はもうボロボロ"

 

 俺が迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》を四体ほど倒すと、残りの迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》は一旦距離を取る。ちらと見たら星乃も迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》を一体倒していた。

 仲間が五体やられたことであいつらも警戒したみたいだ。

 

 俺はその隙にやられていた探索者のリーダーらしき人物に近づき、話しかける。

 

「助けに来ました、状況を教えていただけますか?」

「助けていただきありがとうございます……って、シャチケンさん!? 本物!?」

 

 そう驚いたように言うと、他の探索者たちも俺を見て騒ぎ始める。

 やっぱりもう顔が覚えられてしまっているんだな……。

 

「あの、状況を……」

「あ、すみません! つい興奮してしまって」

 

 その探索者が言うには、もともと彼ら五人は別の二組の探索者パーティだったらしい。だけど異常事態《イレギュラー》に気づいて力を合わせて脱出しようとしたらしいけど、そこで迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》の群れに遭ってしまったらしい。

 

「あと少しで上層に出られるのに、こんなこところで迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》に捕まってしまうなんて……」

「……状況は分かりました。私が道を切り開きますので、その隙に逃げて下さい」

「いや、しかし……」

「安心して下さい。迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》は嫌になるほど倒した経験があります」

 

 俺はそう言ってスーツの内ポケットに手を突っ込んで、そこからビジネスバッグを取り出す。

 

「ええ!? どこにそんなのが入っていたんですか!?」

「このスーツは特別製でしてね。ポケットの中にたくさん物を入れられるようになっているんです」

 

"は? 次元拡張系のアイテムとか超高レアだぞ?"

"売ったら数千万は下らないだろ"

"いいなあ。便利そう"

"深層でしか手にはいらないぞそんなアイテム"

"この人、深層に一人で行ってたし……"

"そういえばそうだった"

 

 ダンジョンの中には特殊な効果を持つアイテムが落ちていることがある。

 俺の持ち物にはそれを利用した特殊な物がいくつかある。ちなみに須田に報告したら取られるので、あいつには内緒だった。

 

『ウゥ……ラァ!』

 

 痺れを切らした迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》の一体が、こちらにめがけて巨大な火球を放ってくる。避けるのは簡単だが、俺が避ければ他の探索者に当たるかもしれない。

 

 俺は火球の正面に立つと、手にしたビジネスバッグでその火球を打ち返した(・・・・・)

 

「せいっ」

『ギャギャ!?』

 

 まるでテニスボールのように打ち返された火球は、迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》に命中。自分の炎で焼き尽くされた迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》は、消し炭になってしまう。

 

"[悲報]迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》さん。ビジネスバッグに負ける"

"勝てるやつがいないだろむしろ"

"あの炎、数千度はあるはずなんだけどなんでバッグ無事なの?"

"ていうか炎って打ち返せるの? まず"

"シャチケンを普通の人間の尺度で考えちゃ駄目だから……"

"田中ァ! ナイススマッシュゥ!"

"あんな方法があるのか。試してみようかな"

"悪いこと言わないからやめとけ……"

"※彼は特殊な会社で働いていました"

 

 他の迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》たちも氷や雷などの魔法を撃ってくるが、それらを全てバッグで打ち返す。

 この超高硬度ビジネスバッグ、『AEGIS(イージス)』はタイラントドラゴンの炎にすら耐えることが出来る優れものだ。迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》の魔法では傷一つつかない。

 

 あっという間に迷宮魔術師《ダンジョンソーサラー》の数は残り数体まで減り、俺は上層への道を切り開く事に成功するのだった。

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