ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう 〜社畜剣聖、配信者になる〜   作:熊乃げん骨

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第15話 田中、告白される

「ごちそうさまでした!」

 

 スープを全てたいらげた星乃は、満面の笑みを浮かべながらそう言った。

 覚醒者にとって魔素は重要な要素。魔素抜きスープで全部抜けたら逆に危ないから心配だったけど、星乃の体調に問題はなさそうだ。

 どうやら彼女の体には想像以上に魔素が溜まっていたみたいだな。それだけ貯めて平気だったってことは、彼女の許容量が大きいということ。

 

 戦い方はまだ荒削りだったけど、鍛えれば凄い探索者になるかもしれない。

 食事の片付けを終えた俺は、その才能に興味を持ち話しかける。

 

「星乃は誰かに戦い方を習ったことはあるのか?」

「いえ、誰かに習ったことはありません。そもそも他の探索者さんとダンジョンに入ったことも数回しかありませんので……」

「何度かはあるのか。その人たちとはもう疎遠になったのか?」

「えっと……その人たちは男女混合パーティだったんですけど……、なぜか私が入ったら険悪になってしまって。それで女性の方から『あんたが入ったせいでめちゃくちゃだ!』と怒られて逃げるように抜けました」

 

 悲しげな目をしながら星乃は語る。

 彼女は気づいていないようだけど、何があったかは想像がつく。

 

"あっ"

"パーティクラッシャー星乃"

"オタパーの姫"

"こんなかわいい子来たらそりゃ好きになるわ"

"悪意がないのがつらい"

"抜けて正解だな"

"野郎どもがゆいちゃんにばっか構って女性陣がどんどん機嫌悪くなるのが想像つくわ"

"ゆいちゃん優しいから男は『この子、俺に気があるな』って思っちゃうんだろうな"

""

 

 コメントにも流れているが、こんな感じだろう。

 優しくて気遣いも出来るし、ボディタッチも多い。気があると思ってしまうのも無理はない。

 

 俺は歳も離れているし、そもそもこんな目が死んでいる社畜を好きになるわけがないから勘違いしないけど、もう少し歳が近かったら勘違いしていただろうな。

 まあでもここは大人の俺がこれ以上被害者が増えないよう諭しておくべきだろう。

 

「いいか星乃? 男はな……優しくされるとすぐに好きになっちゃう生き物なんだ。特に星乃みたいなかわいい子に優しくされたり触られたりしたら即効だ。即死技だ」

「え!? かわ……っ!?」

 

 星乃は顔を赤くする。いったいどうしたんだろうか。

 

「あ、あの。私のことかわいいと思ってくれてるんですか……?」

「え? そりゃあそうだろ。星乃みたいなかわいい子はそうそういない。同じクラスにいたら確実に好きになっていただろうなあ」

「あ、わ、わ」

 

"ゆいちゃん顔真っ赤でかわいい"

"この社畜、攻略速度速すぎだろ"

"自己肯定力低いから他人を褒めることに抵抗ないの草"

"ゆいちゃん顔へにゃへにゃでかわE"

"ぷにぷにホシノさん。かわ"

"これで付き合ってないってマジ!?"

"それどころか会ったの今日だからな……"

"社畜になればかわいこちゃんを落とせると聞いて。黒犬《ブラックドッグ》ギルド入るか"

"もう潰れた定期。社員も全員逃げたってよ"

"黒犬《ブラックドッグ》ギルド入っても病むだけだゾ"

 

 なにやらコメントが騒がしいけど無視する。どうせ下らない論争をまたやっているんだろう。

 そう考えていると、なにやら意を決したように星乃が口を開く。

 

「じゃあ……えっと……田中、さんも……私のこと、好きになってくれますか……?」

 

"告白キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!"

"大胆な告白は女の子の特権"

"本日の祭り会場はこちらですか?"

"ゆいちゃんファンだったけど……俺、祝福するよ……うう"

"田中ァ! 男見せろよ!"

"おじさん胸がきゅんきゅんしちゃう。動悸かな?"

"病院行こ"

"砂糖吐いたわ"

"ゆいちゃんかわいすぎる"

"**した"

"なんて答えるんだろ? 流石に断らないよな?"

"鈍感王田中を無礼《なめ》るなよ。どうせ気づかないゾ"

"えっ。そんなことない……よな?"

 

「はは、面白いこと言うなあ星乃は。俺じゃないと勘違いするぞ?」

「あ。えっと……すみません……」

 

"ぎゃああああああ!"

"やりやがった!! マジかよあの野郎ッ!!"

"グロ注意"

"鈍感すぎる……"

"吐いた砂糖飲んだ"

"ゆいちゃんしゅんとしちゃったじゃん"

"落ち込んだ顔もかわいいね、ぺろぺろ"

"通報しました"

"鈍感な田中でも流石に気づく。そう考えていた時期が俺にもありました"

 

 俺は平静を装いながらも「気をつけろよ?」と星乃に言う。

 だけど心の中では結構危なかった。もう一押されたら俺もパーティクラッシャーに心を奪われていたかもしれない。

 星乃、おそろしい子……!

 

「えっと話を戻そうか。星乃は今まで戦い方を教わってないって言ったよな? それはあまりにもったいない。星乃には才能がある。それを活かした戦い方をしないと宝の持ち腐れだ」

「私に才能がある、ですか?」

 

 星乃はきょとんとしながら首を傾げる。

 いちいち動作がかわいいなこの子は。

 

「ああ、純粋なパワーファイターとしての素質だったら俺よりも才能があると俺は見ている。だけど今のままじゃ駄目だ。足りないものを教えるためにまずその剣で俺に思いっきり斬りかかってみろ」

「え!? 田中さんに斬りかかるなんて出来ませんよ!」

「大丈夫だって、ほら。信頼してくれ」

「信頼、ですか。分かりました……」

 

"ゆいちゃん覚悟決まってて草"

"信頼し過ぎ!"

"まあでも大丈夫やろなって安心感はある"

"最悪当たってもシャチケンなら大丈夫だろ"

"言えてる"

 

 星乃は思い切り剣を振りかぶると……俺に向かって振り下ろしてくる。

 俺はその大振りの一撃を、正面から片手で受け止める。

 

 するとガキッ! という音と共に星乃の剣はぴたりと止まる。

 

「え……っ!?」

 

 まさかこんな風に止められると思っていなかったのか、星乃は目を丸くして驚く。コメントも"マジかよ?" "素手で止めてて草" "シャチケンやっば"と盛り上がっている。

 

「星乃は力こそあるけど、力に振り回されて体の芯がぶれている。そこさえ直せばもっと強くなるはずだ」

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