ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう 〜社畜剣聖、配信者になる〜   作:熊乃げん骨

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第4話 田中、配信事故に気づく

『ブウウウウウ……』

 

 タイラントドラゴンは口いっぱいに炎を溜める。

 こいつの吐息《ブレス》の火力は凄まじい。くらえば俺は炭すら残らず燃え尽きてしまうだろう。

 そうならないためにも、俺は剣を一旦鞘に収めてタイラントドラゴンを迎え撃つ姿勢に入る。

 

"何してんだこいつ!?"

"逃げてー!"

"死ぬわアイツ"

"ほう、居合ですか。たいしたものですね"

"相手はあのタイラントドラゴンだぞ!?"

 

 次の瞬間、タイラントドラゴンは溜め込んだ炎を放つ。

 視界いっぱいに広がる巨大な炎。俺はそれめがけて思い切り剣を振るう。

 

 すると剣から衝撃波が放たれて、タイラントドラゴンの炎を一刀両断してしまう。そしてそのまま衝撃波はタイラントドラゴンの堅牢な鱗を切り裂き、絶命させてしまう。

 

"は、はああああ!?"

"今時の剣って衝撃波出るの!?"

"んなわけねえだろ!"

"それよりタイラントドラゴンが一撃でやられる方がヤバいだろ!"

"作り物の動画だって言ってくれ……"

"このサラリーマン誰か調べろ!"

"企業戦士はやっぱり強いな(呆然)"

"かっけeeeee!"

 

『グ、ウウ……』

 

 タイラントドラゴンが倒れると、他のモンスターたちは攻撃をやめ、俺から距離を取り始める。

 どうやらタイラントドラゴンはこいつらのボス的な存在だったみたいだな。ボスがやられたことで戦う気がなくなったんだ。

 どうせ倒しても素材は会社に取られる。ノルマはもう達成したしこれ以上戦う理由は俺にもない。

 

「行け。見逃してやる」

 

 剣を鞘に収めそう言うと、モンスターたちは我先にと逃げ出していく。

 ふう……思ったより早く終わったな。さっさとノルマの分のモンスターの素材を取って帰ろう。

 

「……と、その前に時間だけ確認しとくか」

 

 俺はスマホを開き、現在時刻を確認しようとする。

 だけどその瞬間、俺はありえないものを見てしまう。

 

「……は? 通知9999件?」

 

 なんとスマホの通知が埋まっていた。

 確かに電話はしょっちゅうかかってきてたけど、9999件は明らかに異常だ。

 

 俺は急いでスマホを操作して通知の内容を確認する。

 するとそこには「Dチューブで『〇〇〇〇』というコメントを頂きました!」という通知で埋まっていた。訳が分からず俺は混乱する。

 

「なんでDチューブの通知が……って、なんで俺の動画にこんなコメントがついてるんだ!?」

 

 Dチューブの画面を開くとそこには俺を撮っている映像の横に爆速でコメントが流れていた。

 い、意味が分からない。どうなってるんだ!?

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺はたしかに配信設定を会社のみに……なって、ない」

 

 まさかの設定ミスに気づき、俺はサッと血の気が引く。

 う、嘘だろ!? じゃあ俺の今までの行動は全部全国に配信されてたってことかよ!

 

「で、でも俺のダンジョン配信なんてそんな大人数は見てないよな?」

 

 そう祈りながら、俺は動画の視聴者数を確認する。

 するとそこに出ていたのは驚きの数字だった。

 

「ど、同接1億人……!?」

 

 その規格外の数字に俺は気を失いそうになる。

 使っているのが会社のアカウントだから登録者が2千人くらいはいるので、その人数分くるなら分かる。

 だけど実際はそれどころじゃなかった。

 だって有名配信者でも同接100万もいかないのがほとんどのはずだ。それなのに1億て……。

 

"お、やっと気がついた!"

"見てるー?"

"かっこよかったぞ!"

"これより業務《しごと》を始める……だっておww"

"本当にかっこよかったです! お名前を教えてくれませんか?"

"SNSトレンドに『社畜剣聖』って載ってますよ!"

"うちのギルド入ってくれませんか!"

"どうやってそんなに強くなったんですか!?

 

 爆速で流れていくコメントを、俺は呆然と見つめる。

 こ、これはもう誤魔化しようがない。今俺がなんと言ったところで事態が収まることは絶対にないだろう。

 

 遠くなる意識の中、俺はもっとも面倒くさいことを思い出し、呟く。

 

「はあ……これ、始末書を書かされるのかな……」

 

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