ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう 〜社畜剣聖、配信者になる〜   作:熊乃げん骨

5 / 36
第5話 田中、電話に出る

「うわぁ……めっちゃ話題になってる……」

 

 配信事故翌日。

 いつも通り会社の椅子で起床した俺は、SNSやネットニュースを見ながら呟く。

 

 ネットニュースの見出しはこうだ。

 

『深層をソロ攻略する謎の探索者現る!?』

『社畜剣聖、S級モンスタータイラントドラゴンをソロ討伐する』

『初配信で同接1億人達成。ギネス申請するか』

『黒犬《ブラックドッグ》ギルド、探索者労働基準法抵触か』

『話題の動画、捏造されたものかどうか有識者は語る』

 

 そしてSNSは、

 

"あの人強すぎる! なんで今まで話題にならなかったの?"

"黒犬《ブラックドッグ》ギルドあんなの隠してたのかよ。そりゃ政府の仕事たくさん受けれるわけだ"

"あの人、俺と社畜《どうし》な気がする……目が死んでたし……"

"釣られてる人多すぎw 嘘を嘘と見抜けない人はネットしない方がいいですよw"

"めっちゃかっこ良かったんだけど! 誰か連絡先知らない!?"

"普通にうちのギルドにスカウトしたいんだけど、どこに連絡すればいいんだ……"

"なぜ黒犬《ブラックドッグ》ギルド辞めないんだろ。絶対もっと高待遇のところ入れるのに"

 

 などとどこも俺の話題で持ちきりだった。

 これがいわゆる"バズった"ってやつだろうか。仕事漬けの日々を送っていた俺はそういうのに疎い。ネットに強い人の意見がほしい。

 

「確かにソロで深層に潜る頭のおかしい奴は俺くらいだろうけど……そんなに話題にすることか?」

 

 俺は首を傾げる。

 確かに最近はソロでしか潜ってないから他の探索者のレベルはよく知らない。

 

 俺はダンジョンが世界に誕生してからすぐに潜り始めたから、そこそこ強い方だとは思ってたけど……こんなに騒ぎになるほどだろうか。

 

「んー、考えられるとしたら、俺の見た目が冴えないサラリーマンだからか? スーツ来てるし、見た目は普通のサラリーマンだからな。目のクマ凄いし、とても探索者には見えないよな」

 

 だからそのギャップでみんな騒いでるんだ。

 そう納得した瞬間、俺のスマホが振動する。

 

「ちょわっ!?」

 

 俺は驚いてその場で飛び上がり、思わず天井に張り付く。

 昨日のことがあるのでスマホのバイブレーションに恐怖を感じてしまった。あの通知まみれになった体験はしばらく忘れられないだろうな……。

 

 もうDチューブとの連携は切ってあるから、同じことは起きないはずなのに。

 

「なんだ今度は? えーと、ん?」

 

 天井から降りてスマホを確認すると、そこには「足立満・着信」と表示されていた。

 足立は俺の数少ない友人だ。昔はよく遊んでいたけど、最近は全然会ってないな。忙しすぎて存在すら忘れていたというのが本音だ。

 

 今このタイミングでかけてきたのは、間違いなく昨日のこと関連だろう。正直そのことはあまり話したくないけど、相談できるのが足立《こいつ》しかいないのも事実。

 俺は少しだけ躊躇《ためら》ったあと、通話アイコンを押す。

 

「もしも……」

「田中ぁ! 見たよあれ! ひーひっひっひ! 超笑ったわ! ねえ今どんな気持ち!?」

「切るぞ」

 

 俺はぶちっと通話を切る。

 さて、始業の準備をするか。そう思って机にスマホを置き直した瞬間、また着信の音が鳴り響く。俺は「はあ」とため息をついてもう一度スマホを手に取る。

 

「なんだよ」

「ごめんごめん! もういじらないから切らないでくれよ……ぷっ」

「また切られたいのか?」

 

 脅すように言うと、足立はなんとか切られまいと謝り倒してくる。

 全く、調子がいいのは変わってないな。

 

「分かったよ、切らない。しょうがない奴だな」

 

 正直今は足立の知恵を借りたい。通話が切れるのは俺にとっても都合が悪い。

 足立は話し上手で交友関係が広い。それに確かSNSにも詳しいはずだ。足立なら今の対処方法を思いつくはずだ。

 

 足立は通話が切られなかったことに礼を言うと、さっそく本題に切り込んでくる。

 

「見たぜ動画。相変わらずすげえ強さだな。前より磨きがかかったんじゃねえか?」

「おべっかはいい。それより俺はどうしたらいいと思う?」

「どうしたらいい、か。その前にお前はどうしたいんだ、それを聞かせてくれよ」

 

 足立に逆に問いかけられて俺は悩む。

 うーん、そうだな……。

 

「ひとまず出回っている動画を全部消したい」

「はは、そりゃ無理だな」

 

 足立は俺の願いを一笑する。ひどい。

 

「お前の無双切り抜き動画の数は100や200じゃ利かねえんだぞ? それにもう海外にも拡散されてる。『日本に本物のSAMURAIがいる!』……ってな。俺が確認しただけでも五カ国語で既に翻訳されてたぜ。諦めるんだな」

「……そんなことになってたのかよ」

 

 日本だけならなんとかならないかなと思ってたけど、海外までとは。

 そういえば配信してる時、海外からっぽいコメントもついてたな……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。