展示品を再度チェックしつつ軽くミーティングをした後、施設を後にする二人。
「それで、次はどうするんだ?」
バイクのエンジンを掛けつつなにやらブツブツ呟いた後、黒兎に問う天邪鬼、彼女はしばし考え・・・
「えっ・・と・・・先ずは、例の本・・見つけなければ行けないんだけど、多分、ハバキリ先生がもってるから・・・でも、家じゃないと思う・・・僕も、もってたけど、家じゃ襲われなかったから、多分、学校に居ることが、条件の一つ・・ええと・・つまり・・・」
「ハバキリ先生が、あの本の中に入ったなら本はそのまま学校にあるはず、未帰還で調査もされてる形跡ないんだよな?・・てことは、本も使われた場所から移動してない、そう言いたいのか?」
うんうんとガクガク首をふり肯定を示す黒兎。
「あ・・・で、も・・もしかしたら・・・本だけ誰か見つけて回収されてるかも・・でも・・学校の本だから・・・もしそうなら・・・図書館・・・あ、あ!それと、その何で、闇式姫かもって思ったのは、その、夢でね・・」
この圧倒的、出遅れ感漂う情報の出し方であるその様まさにコミュ障!
「お、おう・・・夢というより完全にシンクロだな、アタシが長く居たネイティブアメリカンの術にも、そういうのがあるんだ。
・・何か、気に掛けてるぽいから先に言っておくぞ、そいつはアタシの友人の仇だ絶対にぶっ殺す。
それに闇式姫になった奴は元に戻らない、心は戻る事はあるんだ・・でも、闇に染まりきるまで侵食された性質は戻らない。
逆に中途半端に戻った奴が悲惨だ、心は式姫のままで衝動のままに悪行を繰り返す・・討って輪廻に戻してやり直させてやるのが一番だ。」
「な・・んか・・・そういう事があっ・・・・あ・・・いや・・・なんでもない・・・で、でも・・・」
もしかしたらこの日記は見せないほうがいいのかも知れない、しかしワンチャン希望はあるかもしれない
(う~~ん・・・でも、あんな化け物じみた感じで討ったら・・あれは式姫でもなく闇式姫ですらなく、もはや妖怪な印象があった・・というか、そもそもこれを見せても、元に戻るか・・・うう~~ん・・)
「まあ、とりあえず学校に行こうか・・・ここでまごまごしてても始まらない。」
「・・・う、うん・・・・あ!で、でも!あ、安全運転、おねがいね・・・・?」
「お、おう・・・・おう。」
そして、執拗なまでに法廷速度を遵守した超大型バイクが、街道をのんびりひた走る・・死ぬほど煽られ軽くキレる天邪鬼を宥めるのに必死だった。
学校の駐車場にバイクを置き、校舎を歩く二人・・・時間は夕刻。
運動系やコンクール間近の文科系部活は土曜でも休みは無しだ、そのお陰でまだ校舎は施錠されていない。
三年生が引退した今となっては2年生が主軸となり修練に励んでいる、そんな快活な掛け声を聞きながら一先ず図書室へ。
流石に利用者は居ないのか、二人以外無人だ・・貸し出しの窓口から奥を覗いても誰も居ない。
「お・・おお・・・珍しい・・顧問の先生もいない・・・好都合・・・あ、水見先生ていってね・・・図書委員の顧問・・・ずっと図書室に居て職員室にも、顔出さない・・ある意味、名物先生・・・」
「へえ・・・いや、ここに篭っててその先生なにを担当してるんだよ・・・授業とかもしてないの?」
「三年生担当・・・らしいけど・・・そこまで、詳しいことは・・・」
適当な雑談をしつつ、ダメ元半分で貴常月村封土記を探す二人。
やはりと言うか本棚には無い、ならばと貸し出し窓口の中に入り物色する・・と奥のほうに小さな本棚。
「水見私用書籍、私物なので貸し出し厳禁の事」そう、書かれてある。
「いやいやいや、学校に私物持ち込むなよ・・・中々ドラ先生だなそいつ」
「あはは・・・こんなのあったんだ・・・へえ、どんな本持って・・・・あ!!!あった!あったよ!!」
突如大声を出す黒兎にビクリとしつつ天邪鬼も本棚を見る、古い紐綴りの本タイトルは貴常月村封土記。
「いやあ・・・あるもんだねえ・・・なるほど、本だけ見つけてこの先生が回収して・・ガメたのか?」
「い、いや・・さすがに・・・多分、ほかの生徒とかが見ないようにしたんだと、おもう・・でも・・水見先生、ハバキリ先生から話聞いてたのに・・・先生が未帰還なの、人づてに聞いた風だった・・・この本を先生が見つけたんなら・・・疑問に思わなかったのかな・・?」
「もしくは、ほかの誰かが勝手にここに入れたのかもな・・・まあ、とにかくこれで本の中に行けるんだろ?早くいこう!」
「う、うん・・・じゃあ・・・転遊つかえる、人・・呼ぶね・・・」
そう言い、生神神社に連絡を入れる黒兎。
「あ・・はい・・・黒兎です、朝は色々ありがとうございました・・・それで、その・・・とらいさん・・・・え?もう来てる?・・・ええええ・・・本気で脱獄したのぉ・・・警察が・・・そうですか・・・はい・・・はい・・・分かりました・・・そ、それでは、失礼します・・」
ギギギギとぎこちなく首を天邪鬼の方に向け・・
「あ、のね・・・夜まで何処かに隠れてって・・それで・・図書室で落ち合おうって・・・」
「いやあの、脱獄とか警察とか聞こえたんだけど・・ええと、その術使える人ってヤバイ奴?」
「・・・しっとマスク準備集合罪てほんとに、あるんだね・・・うん、何かこう・・多分反社系の人・・・」
「あ、アタシら後で凄い額請求されたりフロに沈められたりしないよな・・・・・」
色々想像を膨らませガクブルしつつ・・・一先ず二人はそのまま貸し出し口の奥で大人しくしている事にした。
~夜20時~
額に軽い衝撃を受け二人は目を覚ます、どうやらそのまま寝落ちしていたようだ。
目の前には、ダブルデコピンの構えのまましゃがみこみ二人を覗き込む長身の女性。
「よお、目が覚めたか・・・そっちの式姫は始めてみる顔だな?私はとらい、宜しく。」
「あ、ああ・・・天邪鬼だ、よろしく・・・」
「あ、の・・・脱獄・・・大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫、どのみちポリ達も私を長いことブチこんでおけないのさ・・・長く生きてると色々、コネとか貸し借りが出来てなぁ?」
完全に、そういう世界の者みたいな笑みを浮かべとらいは言う。
「あ、あああああの!その・・・この件での料金とかは・・・・」
天邪鬼が、完全にそのスジの者を見る目でとらいに尋ねる。
「金?んなもん要らん、この案件にアシモノヌシが関わってる以上私は奴を邪魔せねばならん、それが良き事でも悪し事でもだ。」
「・・・お・・・・・おう・・・・・・」
そして転遊の儀式は始まる。
教室の上に机や椅子がふわりと浮いているのが落ち着かない、がら空きになった床に陣が書かれた布を敷きそこに二人を寝かせる、ちょうど枕元的な位置に本を置き・・。
「ああ、この術は複数まとめて送る際は絆ってのが大事でな・・・ちょい恥ずかしいかとは思うが・・」
「・・思うが・・・?」
「手を恋人繋ぎにして見詰め合ってくれ。」
「・・・え・・・ええ・・・」「まじか・・・・」
オズオズと指を絡ませ見詰め合う、自然と頬が赤くなる。
「な、なんだか落ち着かないな!?」「・・・う・・・おあ・・・う、ん・・・・」
「はい、そのまま・・よいしょっと」
おもむろに数枚激写決め込むとらい、そのまま抗議する二人を涼しい顔でガン無視しつつ呪を唱え。
「え・・・あ?」「わ・・・あ・・・」
突如落下するような感覚を覚え、二人は忽然と消えた。
「良いのが撮れた、やさふろの奴に自慢してやろう・・くくっ!きっとアイスブランド顔になるだろうさ。
・・・そういやハバキリの奴は、どうやってここに入った?わざと取り込まれたか?
・・・まあ良い、とにかく術式の維持だ、転遊術と人払いの結界術の多重維持かぁ・・・久々に疲れるなこれ、ああ・・あとついでに・・・」
一瞬、貸し出し室の方をチラリと見やり・・・術の維持に集中し始める。
その背後を守るように、妖が一体湧き出てきた。
「ヌハハハハハハハ!!揃った、揃った最後のパーツ!!」
暗闇の中で呵呵大笑するアシモノヌシ。
「ヒトの心の輝きはぁ!ヒトの心の闇を深くするぅ!光で囲め光で覆え式姫達よ、黒い兎を白く染めろ!
奴はそれを耐え切れまい、奴はそれに抗いきれまい!そして、思い出すがいい!キラキラ輝く自分の光を!そして省みるがいい!ジクジク腐った自分の闇を!そうしたら・・・そうしたらそうしたらぁ!!」
ギュリ・・・横にのたくったミミズのような目が縦にのたくるような目になる。
「きっときっと、奴はもう、うつしよの何もかもが厭で嫌でしかたなくなるだろうさ、友達とかもどうでもよくなるだろうさ・・その時再度、誘おう。
・・・おいで・・・オイデ・・・うつしよに棄てられた者の地へ・・・オイデ・・・おいで・・・うつしよを棄てた者の地へ・・遺棄者の域へ。
御代一つ、金も魂も要らないよ、ただただ、うつしよで得た全て、もはやお前に必要なくなったそれらをヨコセ・・ぬは、ヌハハハハ!!」
黒兎と天邪鬼は真昼のように明るい教室の中に居た、どことなく古めかしい感じがする。
机の配置やそこに残された議事録・・おそらく生徒会室だ、そこと対照的に窓から見える廊下の景色は暗く重ったるい雰囲気が充満している。
「おー。懐かしいな・・・アタシが中学生だった頃は、こんな感じだったんだ・・いやあ、教室にエアコンとかなんて無くってさ、夏場とか地獄だったよ」
「へ、へえ・・・も、ものすごい環境だね・・・僕ならたぶんへばる・・・」
「実際、保健室送りになる奴も割りといたかな・・・さて、探索開始するか。」
「あ、そ、その前に・・・手記・・読んでみな、い?」
鞄から陰陽師の手記を取り出し、内容を確認する二人・・・・軽くドン引きするほど、非常に業が深かった。
具体的に言うと・・てぇてぇと、んほおおいっぱいしゅきと、prprprprと、クンカクンカが主な内容だ、ある意味陰陽師らしいといえばらしいが。
「・・・・・。」「・・・。」
居たたまれない顔で手記から目を離し、そのままゴミ箱に叩き込みたくなる衝動を抑えソッと手記を閉じる。
「あ、あの爺さん・・・凄い・・言葉選んだんだな・・・」「そ・・・うだね・・・・」
黒兎は、内心なぜ式姫本人に手記を託さなかったのか、疑問に思っていたが・・その謎が解けた瞬間だった。
こんなもん、本人に渡すとか普通にメンタル系の拷問である、戦死しなくても陰陽師は死んでいたであろう。
「さ、最終手段に・・しよう・・・ね?」「・・・だな・・・・・」
そして微妙な雰囲気を後に引いたまま、二人の探索がはじま・・・・・
ガラリ!!!
突如、扉が開き一振りの刀を胸に抱えた少女が飛び込んで来た、くろうさぎだ。
「・・・え・・・?」「へ!?」「お・・・おうあ・・・」
三者三様に固まるコミュ障、三人・・・胸に抱えられた刀が「カタリッ」と揺れた。