黒い兎   作:森の狐

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第十三話

あんぐり口を開けたまま、くろうさぎを指差しその指を振るわせる天邪鬼

警戒心全開の眼差しで天邪鬼と黒兎を交互に見つつ、ジリッと後退し逃げるタイミングを計るくろうさぎ。

そして、二人を交互に見ながらアウアウ言うだけの黒兎。

微妙に固い空気の中、邂逅した三者三様・・最初に口を開いたのは天邪鬼だった。

 

「お、お前・・・くろうさぎ・・か?い、生きてたのか!」

「く、来るな!!」

近づこうとする天邪鬼を牽制し、バッと飛びずさり距離を取るくろうさぎ。

「ま、待ち構えられてたか・・・しかも、天邪鬼・・ぼくの友人、の姿に化けて!どうせ部下の、亡霊かなんか、なんだろ!」

激昂した声で二人を睨み付けハバキリの刀を抜こうとし・・

 

「・・?ぬ、ぬけな・・・い?」

いくら力を入れて引っ張っても鞘から抜けないハバキリの刀・・と、刀身から声が聞こえる。

『落ち着いて、くろうさぎちゃん・・そっちの天邪鬼は初見だけど、そっちの黒兎ちゃんは私の教え子よ』

ギョッとして、刀を眺めるくろうさぎ。

「せ、先生!?い、生きてた・・・んだ・・よかった・・・いやでも、先生さっき全力で騙されてなんじゃ・・・?」

『あ、いや、それはそうだけど・・・今度は確実よ、何故なら・・・』

「な、ぜなら・・・?」

『・・・つい昨日にハグして全力で黒兎ちゃんスメルを吸収したからよ!

この私が、抱きかかえた子供の匂いを間違うわけがないわ!!!』

 

「・・・・・。」

「・・・。」

「・・・・・・・・・・・。」

緊迫した空気を全力でブチ壊す変態、ここに。

完全に通報案件の眼差しを刀身に向ける三人にハバキリは。

『え?あの?・・・もしかして、私また何かやっちゃいました・・?』

なろうめいた声で、そうつぶやいた。

 

 

「えーーーっと・・とにかく現状を整理しよう、そうしよう!」

軽くこめかみを押さえ、眉にしわを寄せながら天邪鬼が一先ず場を切る。

ハバキリの仲介があっても、何処と無く警戒を解いていないくろうさぎだったが、場に流される感じでガクガク頷く、黒兎とハバキリも異論がないようだった。

一頻り、各位が置かれた状況と情報交換を行う3人と一振り。

 

「な、なるほど・・・・君、が・・・昔事件の被害にあった生徒で・・・その、た、大変だったね・・・」

「あ、う、うん・・・すごい、辛かった・・・ええと、あの、君も狙われてたのか、その、災難だったね・・・」「あ、うん・・・ええと、その闇式姫もクロウサギで・・」「うん、でもなんで、友達作りたいのに、あんな事・・」「そう、だよね・・・その、あ・・あ!あのね、夢というか、その寝てたらシンクロとかして、その」「そ、んな事あったんだね、でもこんな事、されたら、同情とかできない」「うん、だよね・・・」「・・・。」「・・・・。」「・・あ。」「・・・あ。」「いや、ごめん先、どうぞ」「あ、先に言っ」「・・・。」「・・・。」

 

鉄片を噛み込んだ錆びた歯車が如し会話、空気が潤滑剤でも求めてるようにギシギシ言うような錯覚に囚われる。

・・・黒兎同士が顔を合わせると、こうも凄まじいことになるのか・・・。

 

「・・・あ、アタシも大概会話とか苦手なんだけどさ・・・これは・・・・」

『あら、割とこなれてるじゃない?会話だけ聞いてれば、天邪鬼って分からないわよ』

「まあ、アメリカで鍛えられたからなあ・・あの国、ちゃんと意思明言しないとやってられない国だから。」

『貴女も苦労したのね・・・しかし、それにしても・・・話が進まないわね、後香り以外で見分け難いは、あ、でも貴女と同級生のくろうさぎちゃんは、二の腕の斜め上に黒子があってね』

「いや、先生・・・そういう発言ふつうにキモいから・・見分けにくい・・確かになあ、ああ、そうだ!」

 

着実に空気を錆び付かせている二人にツカツカ近寄る天邪鬼。

「あのさ、二人とも同じ種族の式姫で見分け難いからさ・・・これ、付けておいてよ。」

そう言うと、黒兎の右耳に赤いリボンをくろうさぎの左耳に白いリボンを結ぶ天邪鬼。

「よし、これで見分けがつく・・それに、アイツが入れ替わろうとしてもやり難くなるはずだ。」

「あ、う・・うん・・・どうも・・」

「あ、ありがとう・・・なんか、こう・・・髭切と膝丸みたいだね、これ」

照れながらそういう二人、そんな二人を見て熱く激しくカタカタ刀身を鳴らすハバキリを一旦無視。

「どういたしまして・・・そして・・それでな?・・・ええと、くろうさぎ生きてて良かった、此処には敵討ちで来たけど、本当生きてて良かった!ごめん、ごめんな!ずっとこんなんなってるって気が付かなくて!」

「そんな!そんな事・・・ぼくこそ、最初疑ってごめん・・・来てくれて、嬉しい・・!」

数十年ぶりの再会、自然と固く抱き締めあう。

もはやブレイクダンス状態で床を跳ね回るハバキリをソッと手に取り、こっそり教室の外に出る黒兎。

 

「し、しばらく・・・二人きりにしてあげよう・・・ね?」

『そ、そうね・・・・ええそれが良いわ。』

「と、ところでさ・・・ハバキリ先生、だよね?・・・刀だけじゃ今一実感湧かないけど、それでさ・・

そ、その状態で生きてるってどういう事?あ、あと・・・先生居なくなってから、一週間立ってる、よ・・?」

『・・・・・・・・・え?一週間・・・じ、時間の流れが違うの・・・?

ああ、私がまだかくりよに帰還してないのはからくりがあってね・・・ちょっと柄頭を捻ってくれない?』

「こ、こう・・・?あ、取れた!・・・あれ・・これって・・・式紙!?」

『ええ、先生色々荒事な任務多くってね、いざと言う時のために式紙はそっちに移動させてるのよ・・・まあ、あの姿は失われたけど・・ええ、見事に喰われたわ・・あの、赤い亀裂・・アイツの眼だったのね』

「き、亀裂・・?アイツって闇式姫の?」

『いいえ、この案件の黒幕・・・闇式姫になったクロウサギを誑かした張本人、まがつ神アシモノヌシよ・・』

「アシモノヌシ・・・と、とらいさんが・・・言ってた・・・でも、棄てられた者を守る神なんでしょ?・・・そんな悪い奴に思えなかった・・」

 

『・・そうね・・・その行為自体はね、でも手段が問題なのよ。

アイツは棄てられた者を自分の領域、遺棄者域に誘うのそこで彼らが手に入れられなかった、誰にも差別されず偏見を持たれず、誰かに必要とされる、そんな平凡で平和な日常をそこであげると・・棄てられた人々はそれこそ喉から手が出るほど欲しいでしょうね。

でも、それが罠・・・あいつはその為の対価を要求するわ、その人が現世で得たもので、金銭などの物品以外の全て・・つまり、培ったパーソナリティ全てとそこで得た人や社会との関りよ、世間から棄てられた人々には心底どうでも良い物に思えるでしょうね・・・。

遺棄者域に流れていった人々は、姿形も自分自身も記憶さえも消失して・・・そこでアシモノヌシが見せる夢を見続けながら彷徨うの、遺棄者域以外の全てから切り離されるから、天界の神も冥府の神も・・仏ですら最早手が出せなくなる。

棄てられた者達が集う地は、色々あるわ・・おそらく遺棄者域はその中で最悪ね。』

 

「・・・アルカディアみたいだ・・・あ、ゲームの話・・・メガテンっていって・・・あ、今は関係ないね・・・そうか・・じゃあ、闇式姫はどう、なんだろ、僕の見た夢と、くろうさぎの話からの、推測だけど・・友人を作ることに執着してて、それが遺棄者域へ流れていくのを阻んでて・・・アシモノヌシはとにかく一人でも友人作らせて、執着を解消させて・・遺棄者域へ誘おうとしてるって事・・・?」

 

『どうかしら、友人が出来ればその友人が絆になって、遺棄者域へ行くのを拒むでしょうし、まあ、あんな方法で友人なんか出来るわけが・・・・もしかしてつり橋効果狙い?』

 

「か、かもね・・・・後、気になるのが・・・くろうさぎが言ってた、友達を作る方法を教えた人っていうの、くろうさぎも逃げる時に闇式姫の、つぶやき聞いただけって・・詳しいこと分からないけど・・怪しい・・・」

 

『効果的にクロウサギを世間から追い出されるように仕向ける為に、アシモノヌシが化けてたのかもよ?

・・・さて、そろそろ再会を満喫したかしら?』

 

ハバキリに促され、ソッと扉を軽く開け・・・すぐさまソッと閉める黒兎、彼女はハバキリを抱え雑に矢筒の中に放り込むと。

 

「・・・百合が咲いています、大切、に・・・育てましょう・・・一先ず、書置き残して・・先、調査済ませちゃわない?」

 

『そ、そう・・・そうね!それがいいわ!でも、あまり遠くへは駄目よ。

そうね・・・先ずくろうさぎちゃんが言ってた、幸せな思い出がある部屋を探すのは?そういう部屋が増えるほど、クロウサギの追跡が弱まって行ったらしいし・・・おそらく、増やすほど弱体化するんじゃないかしら?』

 

「だね、じゃあ・・行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヌハハハハ!おいおい、あいつらいきなり意気投合してるぞ!いやあ、我も間に挟まりTAI!・・・しかし酷いわなあ?お前だけ仲間はずれだぞ?何十年も待ったのになぁ?あいつらとは30分かかってねえぞ?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

アシモノヌシが見せる光景を、鈴鹿御前ですら息を呑みそうな形相で凝視するクロウサギ。

その内、フッ・・・とため息を付き項垂れる。

そして、再度その顔が上がったときそこには何の表情も無かった。

 

「ああ、分かった・・・そうか、そういう事か・・つまりあいつも学校の奴らや天邪鬼と同類だったんだ、そうかそうか、はは!ボクは馬鹿だなぁ・・・ははは!!

・・・・・・・・・。

アシモノヌシ、あいつらは殺す・・・全員、全員だ!ハバキリも粉々に砕いてやる!」

「そうかそうか、やつらもお前を棄てた者か・・・殺した後はどうする?」

「また待つよ・・・・・・まだ半年しか経ってないんだ、すぐに今度は、こんどこそともだちがみつかるよ」

「そうかそうか、我としては祟り代行さえするなら後は好きにするが良い・・まあ、しかしだ。」

 

ここで一旦言葉を切るアシモノヌシ。

 

「お前が、本当に完全完璧、心底この世に嫌気が差したなら・・我が領域はいつでもお前を歓迎するぞ」

「いらない・・ぼくは、ともだちをみつけるみつけて・・・ともだちつくって・・・ともだちをつくってほめてもらう、せいちょうしたってみとめてもらう・・・?」

 

小首をかしげクロウサギは自問する。

 

「・・・・・だれ、に?」

「誰だろうな?」

「しってる、の?」

「知らん、というか神はそういうの興味ない」

「・・・・・・・・・・・・そう・・・・・・・・まあ何にせよ」

 

クロウサギの周囲に闇が集まる、そしてそれらはプレス機にでも掛けられたような搾り出すような絶叫を上げ集約していく、集まる先はクロウサギ自身とその持つ弓。

その姿は、赤黒い外套を纏った様な姿だった矢も禍々しい長弓へと変質している。

外套のフードをバサリと下ろすと、さながら弓持つ死神が如し。

 

「オーゥ!チュウニビョーゥ!!」

「ははっ!なにそれ?チュウニ?まあ、何でも良いや・・・ころしにいくよ」

 

そして、その姿はその場から掻き消えた。

 

「ヌハハ!精々気張れよ現代の式姫共・・・WW2時代の式姫は、半端ないぞぉ・・・何なら戦国の世を掛けた式姫に匹敵する・・・ヌハハ!!死ぬなよぉ、死んだら計画おじゃんよ?」

・・・しかし、しかしだ・・・どーも、なんかしっくり来ぬな?あやつ、褒める?認める?・・友人を作るのは誰か意中の相手の気を引くためか?ならば、何故そやつを忘れている?後、半年?もう何十年も経ってるが・・・式姫でも若年性てあんの?」

 

「何やってるの・・・アシモノヌシ・・・行くよ・・・」

 

虚空から声が聞こえる。

 

「へいへーい、只今~」

そして、まがつ神は考えるのがめんどくさくなり・・声に従い、バターが溶ける様に廊下に染み込んで行った。

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