黒い兎   作:森の狐

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最終話

ビュオッ!!

音速に近いんじゃないかという速度で、千年紙魚に向かい飛来する一本の矢!

しかし相手は群体、自らをバラけさせ軽く回避・・・とその時、矢が貼られた呪符が白熱し・・・

 

ドゴオオオオ!!

 

爆発!その爆風と炎に巻かれ紙魚の一部が吹き飛び更には延焼!

 

「うおおおおおお!!こ、こんな技まで・・・!?

し、しかし・・・図書室で炎を使うなど・・・君は本好きじゃなかったのかな!?」

 

「もちろん、好きだよ・・・だから、本に被害が及ばないように細工した。

ここに居なかったの?昼間にとらいさんに呪符描いて貰って、張り巡らしたんだけど」

 

延焼した紙魚達を切り離し、距離を取り歯軋り音を鳴らし呻く紙魚。

「常時、目を覚ましてるわけではないのでね・・・しかし、通し矢以外にも範囲攻撃が出来るとなると・・ふむ」

 

体をバラけさせ、分隊規模で散開陣形を取り出す。

「今度は此方の番だ!」

 

タイムラグを置き、四方八方から襲撃を繰り返しだす紙魚の兵団!

爆炎矢を連続で打ち込むが、流石に一度見せた技は中々通用しない。

上方からの攻撃を避け続ける隙を突き、足元に突撃してきた紙魚に掬い上げられるように転倒!

巨大な飛び魚のような形態になり、次々に貫きにかかるのを床を転がりながら回避。

 

ビスッ!!

その内の1集団が、ジャケットの裾を貫き回避を止める!さらに其処から分離した数匹が、両腕の裾とスカートの股下を縫いとめ動きを封じてしまう。

「ははは、他愛無い!昆虫標本のように仕立ててあげよう」

 

他の分隊が刺し貫こうと一斉に飛来する。

「戦慣れしてないね、僕一人に集中して・・・大元叩くのに、本気で単身突撃、すると思った?」

 

黒兎がそう言い放った瞬間!

 

ガシャン!!ズドン!!

屋外から飛来したほぼ槍のような特大級の矢が紙魚の分隊を2~3まとめて貫いた!

それは図書室の端まで飛んで行き本棚に直撃!

呪符のお陰で書物に被害はなかったが、流石にその部分の結界は崩れてしまう。

 

 

 

~第二校舎・屋上~

据付けられたバリスタの射出し終え、くろうさぎは額の汗を拭う。

「す、すごいね・・・これ・・・攻城用でしょ?・・これ・・・」

 

「ひええ」という顔をするくろうさぎに、もの凄まじいドヤ顔をするとらい。

「だろう、まあコレの場合・・・対大型妖魔用にカスタマイズされた奴だ。

思い出すなあ、戦国時代に凍てついた夜城てあってな・・寒いし氷で滑って攻略しにくいわってんで。

コイツを30基そろえて、爆発術付与してな・・城ごと崩してやったのさ!はははは!!」

 

「うわあ・・・そういうのって正面から、城に乗り込むんじゃ・・・」

 

「正攻法なぞ阿呆のする事よ!しかし流石は弓姫だな・・力を封じられててその命中精度か!」

 

「えへ・・・えへへへ・・・」

 

「うん、やはり笑顔が怖い!!よしそのまま撃ち込んでやれ!間違ってもあいつらには当てるなよ!」

 

「う、うん、わ、わかっ・・た!!」

 

「しかしまあ、これ以上関与する気はなかったんだけどなー・・・アレ引き合いに出されちゃなー

やさふろの奴も呼んでやるかなーーー・・・・ああ、でも尊死するかもな。」

 

 

 

どんどん飛来する大矢に次々に撃墜される紙魚の群れ、黒兎は小型紙魚を引き抜きそそくさと射角外へ。

爆砕音に紛れて、微かに階段を駆け上る爆音が聞こえてくる。

「そろそろフルメンバー揃うよ・・・・なんだよ、黒幕の割には、大したことないな」

 

そう一人ごちながら、ふと黒兎は疑問に思う・・・先ほどから、くろうさぎが凄い勢いで撃墜している。

力を封じられていなかったら、さぞかし強力な式姫だったろう。

しかし、その猛攻を以ってもそれでも・・・・・。

 

「なぜだ・・・紙魚が減ってる気が全然しない・・・・」

こいつもリジェネ持ちか?ならば、天邪鬼達が合流したら生断を使ってもらったら良い・・・

そうこうしてる内に、天邪鬼そして体を再生したハバキリが到着する!

豪快に超大型バイクで、扉を破砕しドリフトを決めながら紙魚を何体か轢いて停止!

その背後に相乗りしつつ「スンッ」となった顔のハバキリ。

当ててはいけない的が増えたからか・・何となく、躊躇した感じで一旦止む直接火力支援。

 

「増援参上!どうだ?戦況は!?」

 

「なんかこの子・・スサノオ様に行動似てる。あ、そうか・・大元が・・・」

 

「君達!図書室をこれ以上壊さない!!」

 

至極真っ当な意見を述べる真っ当じゃない黒幕に、顔を見合わせる天邪鬼とハバキリ。

 

「先生、無事再生できたんだね・・天邪鬼、あいつに生断つかって!さっきから数が減らない、多分再生持ち」

 

「まかせろ!」

 

「黒兎ちゃんも策士ね、役所に討伐申請受理されてから皆を誘うとか。

それに暫くとらいに頭上がらないわね・・・ふう・・・・

・・よし、腹は括りました!成らば誰一人欠けぬ様、先生が守りましょう!」

 

ハバキリが前面に出て紙魚の攻撃を一手に引き受ける!・・・そして、天邪鬼のいくすだまを打つ一撃が炸裂する!

 

「ははははは!残念、これはそんな単純な再生能力ではないよ?

・・・私の体はね?私が喰らった文字が言の葉が元で出来ている、つまり君達は・・・

この世に文字が生まれた瞬間からの、膨大な文字と戦っているといっても過言ではないのだ!」

 

気が遠くなるような話に、言葉が詰まる黒兎達。

その反応に気を良くした様に再度集約!水見に姿を取り始める、そして手に持つ書を展開させ。

「サービスだ、もう一つ見せてあげようか・・・喰らった物語の再現。」

 

書を掲げる。

 

「百鬼夜行の物語を此処に!!」

 

怖気が走るような圧が水見を中心に迸る!・・瞬間、学校全域は妖の群れで溢れかえった。

 

「・・・な!?」「お、おいおいおい・・」「これは、無茶苦茶ね・・・」

 

「山で遭難したある少女が山中の廃村に迷い込みました、夜が明けるまで廃屋を借りようとしましたがまともな家屋は、かつて学校であったらしい木造校舎しかありませんでした、しかし、そこは身の毛もよだつ化け物の巣だったのです!

少女は囚われ闇の奥へと連れ去られ劇終・・もう少しで逃げ延びれたが詰めが甘かった。」

 

出没した妖達は一斉に黒兎達に襲い掛かる!

妖に撃ち込んだ矢が眉間にめり込む・・・と、その姿は無数の文字の羅列へと変わり消滅していく。

「これは、まやかしだね・・」

 

「ええ、でも・・一撃の重さは本物よ!」

 

妖の猛攻を弾き返しながらハバキリは言う、その横で大凪に得物を振り回しまとめて吹き飛ばす天邪鬼!

「これは、ちょい不味いぞ・・このままじゃジリ貧だ!」

 

「ジリ貧、ならアイツを一撃で仕留めたら・・多分あの赤い魚が本体、黒い魚は多分・・喰らった文字で、攻撃しても意味が無い・・・今は人型で本体がどこか、わからない」

 

一つだけ、思い当たる技がある・・しかし、アレは一度も成功した試しがない。

「でも、でも・・・・やるか・・やれるか?僕に・・・」

 

と、ハバキリの防護を抜けてきた妖が黒兎に迫る!思い悩み虚を疲れた黒兎の喉元に鋭利な爪が迫り・・・

 

ズドンッ!!

バリスタの大矢で妖は打ち抜かれる!・・・と、床に突き刺さった矢を見ると。

 

「あ、あはは・・・あはははは・・・・ぼ、ぼく・・・さんじょう・・」

 

くろうさぎがしがみ付いていた。

 

「え・・・?え??」「くろうさぎ!無事だったか!」「な、何て無茶な・・だ、大丈夫なの?」

 

「え・・あお・・・うん・・・大丈夫、いきなり、屋上に・・いや、学校中に、妖が湧いて、

そんで、とらいさんが、無差別攻撃で、消し飛ばすから、こっちに行ってろって・・・あう・・」

 

ふと、屋上を見やると闇色のドームが広がって行くのが見えた、一気に闇は収束・・・屋上ごとごっそり抉り取られている。

 

「うわあ・・あれ、ブラックホール・・・・?」

 

「さ、流石ヤマ生まれのTさんとか言われただけは・・・山生まれって凄い」

 

「もう、アイツだけでいいんじゃないかな・・・いやまあ、そういう訳には行かないのだけどさ」

 

校庭にひしめく妖目掛けて撒き散らされる、マイクロブラックホール群を呆然とみやる三人に黒兎は意を決したように声をかける。

 

「あ、の!あ、アイツを一撃で吹き飛ばす技、試してみる!でも、い、一度も成功したことなくて、それで、その、二人ならどうかなって、だから、くろうさぎ・・手伝って!」

 

「あ、あうん・・で、でも・・・僕は何のちからも・・・」

 

「それでも、手伝って!それに矢の精度、君の方が上だから」

 

「え・・・あ、うん・・・わ、分った・・・」

 

その二人の前に立ちはだかり防衛網を築くハバキリと天邪鬼!

「何かやれる事があるならやりなさい!失敗しても、それは糧になるから!」

 

「そうだ!デカイのかましてやれ!」

 

二人の言葉に頷き、そして妖の群れの背後で高みの見物を決め込む水見を睨み付け・・・

 

「掛けまくも畏き高御産巣日神の子、八意思兼命の智恵以って諸々のまがつ事罪穢れ、有らむをば祓いたまえ清めたまえと白す事聞こし召せと、大国主命が眷属黒兎、祈り願い恐み恐み申す・・・」

 

自らの弓の師への祝詞を唱えると共に、弓の形状が変化していく。

一見湾曲した杖のように見えるソレ、黒兎が構え標的を定めると銀糸のような弦が張られる。

智恵の神にて弓姫の最高峰の一柱の、その神器を借り受ける大秘術。

ここまでは、いつも出来る・・・肝心の弓を引ききる事が出来ない。

渾身の力で引き絞る・・少しだけ動くがそれ以上はビクともしない、慌ててくろうさぎが駆け寄り弦に手を掛け引く、もう少しだけ動いた。

 

「う、うごいた!もう少し、いける・・・いける!」

 

「う、うわあああああ!!!!うごけええ!!」

 

その光景に、流石に脅威を感じたのかさらに書を開く水見。

「ふむ、事を成らせはしません・・・重ねて物語りの再現「貴女達の物語」!!」

圧が再度展開され・・・黒兎達の目の前に自分達が現れた!

 

黒兎、くろうさぎ、天邪鬼、ハバキリ、とらい・・そして、アシモノヌシ。

 

「こ、これは・・・なんという・・・」

「まずい、これは、まずい・・は、早くしてくれ・・」

「おや?クロウサギが・・・ふむ・・・まあ、一人くらい良い。

さあ、耐久性能以外は貴女方と同等です、耐え切れるかな!?」

 

水見が気取った仕草で指を鳴らす。

それを皮切りに妖の群れに混ざり、自らの影法師が一斉に襲い掛かる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来ましたね」

静かに、そして厳かな声が冥府に響き渡る。

法廷に立つのはクロウサギ、裁定を下すは冥府の最高責任者である夜摩天。

項垂れ判決を待つクロウサギに夜摩天は静かに言い放つ。

 

「クロウサギよ、冥府というものは人を裁く場所です。

式姫である貴女は神の眷属、大国主命の膝元に座すれっきとした神遣なのです、故に此処は貴女を裁く場所ではありません。」

 

「え!?」とした顔で頭を上げるクロウサギ、続けて言う夜摩天。

 

「良いですか、貴女もそして私達も神仏やその眷属に位置する者は。

自らの行いの裁定を、他に委ねる甘えは許されないのです。

己が罪を赦すのも貴女、裁くのも貴女なのです。」

 

「え・・え・・!?でも!ボクは、それじゃどうしたら・・・!

ボクは、おぞましい罪を犯しました!つ、罪を犯した者がそれを許したり裁いたり、そ、そんな事出来るわけが・・・」

 

「ならば、此処より左に進みなさい・・ならば貴女は輪廻の渦に還るでしょう。

全て忘れ、いつか新たな貴女として生まれ出ずるでしょう。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「自らに何が出来るのか。

自らをどう裁きどう赦すか、問い続け行い続けるならば、此処より右に進みなさい。

しかしこれは、地獄の責め苦など生易しい道行きになるでしょう。」

 

「・・・ボ、ボクは・・・・」

 

再度項垂れるクロウサギを見下ろしそこで言葉を切り、クロウサギの決断を待つ夜摩天。

沈黙の時間が延々と続く・・・そして、クロウサギは顔を上げ、夜摩天に告げる。

 

「や、夜摩天様!ボクは!!」

クロウサギの宣言に静かに頷き、夜摩天は杓をさっと振るう。

 

「宜しい、成らばその通りにしなさい・・・では、これにて閉廷とする!」

 

カンッ!

閉廷を告げる木槌の音が冥府に響き・・・そして、クロウサギは己が選択した道へと駆け出す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天邪鬼の影法師の超重量の一撃を受けきれずハバキリが吹き飛ばされる!

ハバキリの影法師の無音の剣撃で得物を裁断されさらに深く切り裂かれる天邪鬼!

倒れ付す二人に一斉に群がって行く妖の群れ!

未だ弓を引ききれない二人の目の前で、言うに憚られるおぞましい宴が開かれようとしている。

それを愉悦の極みの眼差しで眺める水見・・・そして、とらいとアシモノヌシの影法師が黒兎とくろうさぎに近づいてくる。

それは、ゆっくり・・ゆっくりとまるで追い詰められた得物を嬲るかのような足取りで。

 

スッと、とらいの影法師の指が黒兎の頬に触れる。

何やら尾てい骨がゾワリとするような艶然な笑みを浮かべ、指をツッ・・と頬から喉元、胸元に届き。

シャッ!と爪を一閃!ビスチェを締めこんでいた革紐が絶たれ、パサリとそれは足元に落ちる。

白い肌に縦一文字に刻まれた赤いスジ、しかし当の黒兎は羞恥にも痛みにも反応している余裕が無い。

その無反応に苛立った表情を浮かべ、浅くそして無尽に切り刻み始める。

 

トサッ・・その責め苦を受け、ジャケットの内側から何かが落ちる。

8割方裂かれた式符と古びた手帳。

ヒラヒラと頼りなげに式符は手帳の上に落ち・・・突如手帳が開かれ凄まじい速度で、ページが捲り上げられていく!

何事かと、一旦距離を置くとらいとアシモノヌシの影法師・・ページが捲り上げられ、千切れていく。

千切れた紙片は式符に触れるとスッとそれに溶け込んでいく。

何枚も、何枚も、その度にジワリジワリと式符が修復されていく!やがてフワリと浮き上がる式符。

 

「・・・・お前、そ、そう・・そうか・・・」

「・・あ・・うん・・・こ、今回は、敵、じゃないよ、ね?」

 

そして、それは銀色の閃光を放ち一人の式姫を形作る!

 

「五雷射!」

召喚直後に間髪居れず放たれた雷の連矢は、アシモノヌシの影法師を吹き飛ばす・・再生能力は・・無い。

素早く身を翻す!そこに着弾するマイクロブラックホール!

それが広がりきる前に、再度雷の矢!相殺!そして一気に距離を詰め跳躍からの首を刈り取るような蹴撃!

ゴキリッ!首が妙な方向に捻じ曲がり、とらいの影法師はそのまま文字列と化し消滅。

 

着地し、黒兎達の方に向き直る。

「こ、こんな事で・・ボクのした事が、許されるなんて思っていない・・思ってないけど、でも・・・」

 

駆け寄り弦に手を掛ける。

「ボ、ボク・・なんかで、良ければ・・・手伝わせて・・・!」

 

黒兎とくろうさぎは、弦を苦しげに維持しながらそれでも顔を合わせ頷く。

「頼む!あいつを、討とう!」

 

「ぼくたち、色々あったけどさ、でも、だからこそ・・・・うん、今は良いや、手伝って!」

 

三人の式姫が、渾身の力で引き絞る・・徐々に、徐々に弦は絞られ・・やがて其処に一つの矢が顕現する。

 

「な、なにをしてるんだ!!アイツを止めろ!総員で!行け!!」

ハバキリと天邪鬼から離れ、一斉に襲い掛かる影法師達と妖の群れ!

 

ゴシャアアア!!!

壁を吹き飛ばし現れたドス黒い三つの巨腕がそれらを吹き飛ばす。

ミミズののたくった様な目をした贅肉の塊が如き巨獣。

その背に騎乗するは、とらいだ。

 

「おのれとらいおのれ!!お前!かつての主を式として使役するかぁ!!??」

 

「喧しい、お前だって体よく利用されたままじゃムカつくだろう?・・なら手ぇ貸せ。

なら此度の一件、イザナミ様への報告は無しにしてやる。」

 

「ぐぬーーーー!!!・・ま、まあ良いわ!子兎共!この我が道を開いてやるのだ!

確実にし止めよ!」

 

「はは、い、言われなくても」

「分って、るよ!」

「バーカ!バーカ!」

 

「天邪鬼の真似とかーーーー!!!」

 

引ききった神の弓、装填されるは叡智の矢。

「く、くそ!!まさか・・まさか背後に・・・天津の・・・!!」

 

慌てて魚群に戻りその小柄を利用して逃げ去ろうとする水見、しかしそれは許されない。

 

「三人・・」「寄らば・・・」「文殊の、智恵」

「「「三合・智賢征矢!!」」」

 

神代の時代、その神は遥か未来におけるその事件を予見した。

それを正すためにその神は、何時かそこに下る矢を放った。

過去から未来に向け放たれた矢は、未来が現在になったその瞬間・・其処に在った。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・お・・・・・・・・・」

 

元より其処にあり、すでに自らを貫いていた矢に茫然自失の体で身を震わせる、ちっぽけな小魚。

弓を引ききり、矢を放ったのは其れがそう在るべきという号令にすぎない。

 

「ああ、なんという事だ・・・こんな事が・・・これが、神の、奇跡か・・・」

 

それが千年紙魚、文字が生まれた時より在った大妖の最後の言葉だった。

その矮躯に見合わない膨大な文字群を吐き出し、そして消滅していく。

 

その瞬間、呼び出された影法師や妖は瞬きの時間も無く消滅し・・・周囲は静寂に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっほ!えっほ!えっさほいさ!」

珍しく陽気に包まれた昼の校庭に、威勢の良い掛け声が響く。

大量の資材を運搬するはアシモノヌシ、そして20ほどの山の妖が半壊した校舎の修理を行っている。

「此花建設」そう書かれた黄色いヘルメットを被り現場指揮を行うのはとらい。

 

「お、おはよう!」

黒兎がとらいに声をかける、校舎がこんなのだ・・・授業は暫くの間オンラインにより行う事になり。

歓声を上げるもの、落胆するものと生徒達の声は様々だ。

 

「おう、もう怪我は良いのか?・・・てか、今1限目だろ?さぼんな」

 

「あ、あはは・・いやまあ、ちょっとはいいじゃない」

 

「やれやれ、そういえば・・・他の連中はどうなったんだ?」

 

「あ、うん・・・くろうさぎは今の時代になれる為に陰陽庁でカリキュラム受けるって・・そんで、力の封も解くみたい。

天邪鬼は、しばらく、くろうさぎの傍に居るって・・多分、しばらくじゃなく、ずっと居ると思う・・

ハバキリ先生は、今回の顛末のなんかこう、色んな書類とかエライサンへの説明とかで大変みたい、後で顔出してみる。

それで、ええと・・・クロウサギは・・・いつの間にか消えてた・・書置きがね、あったの「危機には駆けつける」だってさ」

 

「はーん、まあ良いんじゃないか?何かこう、お前らまた集合してなんかやるんじゃないか?」

 

「あ、うん・・まあ、また組んだら、面白・・・あ、いや!僕は単独行動が向いてるから、余程のことがないと、ね?」

 

「はっ!まあ、そういう事にして置こう・・ところで、例の約束・・ちゃんと果たせよ?」

 

「え、うん・・・ええと、スタジオで色んな衣装着て撮影するんだよね?・・え、えっちなのは!駄目だよ!?」

 

「当たり前だ、そんなんしたらハバキリに暗殺されるよ!・・よし、じゃあ放課後でな!」

 

一頻り話し込んだ後、黒兎は作業中の校舎を離れ。

 

「よし、お、思兼様に・・・報告と、お礼にいこう、そうしよう!」

グッと伸びをすると、彼の神が住まう山の庵へ一気に駆けていくのだった。

 

 

――黒い兎・完――

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