黒い兎   作:森の狐

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第三話

「うそだ・・・ウソダウソダウソだ!!!」

 

くろうさぎは、目の前に広がる光景に絶句していた。

正面玄関から外に出たはずだ、外に出れば助かるはずだ。

 

黒兎が居たのは「アイツ」と遭遇した場所・・・図書室だった。

振り返るも、そこにあるのは正面玄関ではなく図書室の入り口・・・そして、その窓からくろうさぎを凝視する濁った眼光、黒紫色の澱んだその目線がくろうさぎと合った。

 

「ドン!!!!」

 

扉が叩き折るように破られる、迸る無数の腕・・・怒り狂っているのが分かる・・指を食いちぎったから。

力任せになぎ払われた腕が、くろうさぎを弾き飛ばす。

間髪居れず別の腕が胸倉を掴み持ち上げ叩き落す、四肢に巻きつき、限界まで大の字に伸ばす。

そこに殺到する無数の腕、いやそれ以外のモノも混じっている。

 

くろうさぎの絶叫が図書室中に響き渡る。

暫く凄惨極まりないリンチが続き、やがて絶叫が悪態にそして命乞いにかわり・・やがて微かなうめき声になった頃、くろうさぎは耳を持ち上げられ引きずりこまれ・・・その姿は消えた。

 

 

 

 

ソレは、フラッシュライトを手に校庭をうろつく黒兎を上階から凝視していた。

黒紫色に澱んだその目は、彼女のトンチキな騒ぎを一しきり観察した後・・・・彼女から視線を外し「ジュッ・・ジュッ・・」と水の入り込んだ長靴のような足音を響かせ、どこかへ移動していく。

 

 

「うわっ・・・!!」

ビクリを背を仰け反らせて、黒兎は目を覚ます。

かなり嫌な夢を見た気がするが・・・・ハッとなり時計に目をやる。

寝落ちした時より10分くらいしか経っていない。

服はまだまだ乾いておらず、さてこの暇になった時間をどう潰そうかと思案する黒兎。

 

・・・。

・・・・何か違和感を感じる。

別段、何か極端な変化があるわけではない、しかし何かがぬぐいきれない。

 

「そういや、前にプレイしたフリーホラゲとか、過去の校舎に飛ばされるんだよね・・そこでコープス・・・・まさか、ね?」

 

何となく不安になり、再度用務員室を調べだす黒兎。

別段何かが変わってるわけではない「まあ、流石にね」苦笑を浮かべ・・ふと、ブックラックに目が行く。

彼女は本の虫だ、概ね小学校の頃の担任であった思兼の影響が大きいのであるが。

 

何か面白い本でもないかと物色していたが、そこに卒業アルバムが混ざっているのを見つける。

昭和60年卒・・相当昔だ。

自分達の先達がどんなだったか、興味をもった黒兎はパラパラを写真を眺め始める。

卒業時の集合写真の中に、いわゆる居なかった子的な丸いアレ自分と同じ黒兎だ。

 

「今も昔も僕らはぼっちか、まさか卒業時までとはね・・・・ま、良いけどね。一人の方が色々動きやすいし」

 

何時ものシニカル気取りの一匹狼ならぬ一匹兎ムーブ。

そうこうしているうちに、衣服も乾き着替えようとジャージを脱ぐ黒兎。

 

「ガチャ!!!ガチャガチャ!!」

 

用務員室の出口のノブが、回される・・もちろん施錠はしていたが。

書置きを残した教師達が帰ってきたのだろ。

 

「あ!・・・ま・・・まって、くださ、い!い、いま・・き・・がえてるから・・・」

しどろもどろに、外に向かい声を掛ける黒兎。

ノブをガチャガチャする音は収まり・・・・・・突如「ドンッ!!!」と鈍器でも叩きつけたような音!

防犯上スチール製なのでよく響く、思わず耳を押さえる黒兎。

 

「え・・・・?あ、うお・・・・・」

そんなにブチ切れたのか?もしくは、着替え云々で不純異性交遊でも疑われたか?

一瞬思考が停止する黒兎・・・しかしそうだとしたら、怒声の一つも聞こえると思うが、無言でドンッ!ドンッ!!と叩きつける音が聞こえる。

 

先ほどの違和感が強くなると同時に、恐怖を感じ始める黒兎。

取りもとりあえず乾いた服を慌てて回収し、それで裸体を隠すように用務員室を飛び出る黒兎!それと同時に扉が叩き破られるような音!

本格的に危機感を感じた黒兎は、再度校内の暗闇を駆け始める。

 

 

 

「女子更衣室」

一先ず、そこに逃げ込み手早く着替えを済ます黒兎・・・全裸で校舎をダッシュとか、いかなパリピ連中でもやった事はないだろう。

 

「ふ・・ふふ・・・・一歩リード・・・って違う・・・!馬鹿か僕は・・・」

 

セルフ突っ込みを入れ、緊張を解そうと試みつつ外の物音に意識を向ける。

なにも聞こえ・・・・いや・・・微かに・・・ほんの微かにだが・・・「ジュッ・・・ジュッ・・」という水が入った長靴で歩くような音が聞こえる。

 

「ま、また・・・・不審者か・・な・・?も、しかして・・・・あいつらがリベンジしに来た・・・?」

 

DQNの行動パターン的にはありうる、式姫相手には訓練を受けてない人間が集合しても無意味だが・・・

 

「まさかとは・・・思うけど、あいつら妖怪と契約してたり・・・・スチール製のドアブチ破るくらいならありうる」

 

深く深くため息を付く黒兎、仮に妖怪でなくともさっきのアレは明らかに異常事態だ。

そもそも、用務員は人間だ・・・あいつらに鉢合わせしたら無事じゃすまない。

しばし天を見上げ、何かに決別するようなしぐさをする黒兎。

 

「・・・グッバイ、僕の大事な深夜の読書タイム・・・・」

 

スッと手を前に突き出すと、愛用の赤桃色の弓と人参を模した矢筒が顕現する。

 

「陰陽庁への報告は後回し、今は・・・アレをどうにかする」

 

そして、まなじりを吊り上げ女子更衣室から颯爽と躍り出る!

 

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