黒い兎   作:森の狐

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第五話

黒兎は田舎特有の、街灯などほぼ皆無な道を全力疾走していた。

こういう場所なので強力な光源は必須なのだ、もっとも今はそれよりも。

 

「折りたたみ傘くらいもっとけば良かった・・・!なんでだよ、今日、白峰さん晴れるって・・・!」

 

正直、折りたたみ傘程度じゃ一撃で捲られる豪雨だ、風も相当なものできつめのシャワーの如く全身を叩く雨粒で、視界がかなり悪く黒兎の鋭敏な聴覚が仇となり雨音も正直騒音LVだ。

 

(これはもう、どこかで雨宿りするしか無いかなぁ・・・・・)

 

式姫は基本どのような姿でも一人暮らし、もしくは式姫同士で賃貸などをシェアし過している。

この近辺でも式姫が住む家はチラホラあるが、コミュ障の黒兎にとっていきなり他者の家に上がり込む行為は。

正直な話、百鬼夜行にソロで挑むよりも難題なのである。

 

・・・と、路地と路地の間に小さな鳥居。

時々見かける路地裏の神社やお堂そういった類のものだろう、堂に入り込めば少なくとも雨風を凌げる。

間髪居れず、鳥居を潜り奥へ。

 

結構長く、そして以外に右に左にと曲がりくねった路地裏を小走りにたどり着いたのは、路地裏の神社にしては比較的大きめの社だった。

もはや無人のようだが、かつては管理する者が居たのだろう・・小さな社務所まである。

周囲も雑木林でそれが境内全体を覆うようになり空が見えない、お陰で風雨がかなり軽減されている。

社務所の扉は開かない、施錠されてるというより中から何かがつっかえて開かないようだ。

黒兎はDQNではない・・扉を破壊してまで中に入り込む気にはなれなかった。

 

「ええと・・ここの神様、少しの間だけ雨宿りさせてください」

 

白兎から変質したとはいえ黒兎も神の眷属だ、賽銭と二礼二拍一礼。

最低限の礼儀は行い、軽く衣服を絞ってから拝殿の中に転がり込む。

幸いというか荒れているのを嘆くべきか・・拝殿は開けっ放しというか戸が無くなっていた。

 

フラッシュライトで周囲を照らす、散乱するパイプ椅子に壊れた祭器がそこらに散らばっている。

その光景に哀しくなりつつも、ふと一点に光源を集中させる。

 

それは所謂木版画というものだった、1mくらいの大きさで木版画は天上付近の壁に3枚ほど飾られている。

拝殿がこのような有様だ、保存状態もかなり悪いがそこに描かれていたのは所謂妖怪画であった。

描かれている状態からしてそこまで古いものではない、舞台はおそらく学校。

 

1枚目。

闇の中から無数の手やそれ以外のナニカが迸り、生徒達を捕え闇に引きずりこんでいる。

闇の中心には、真っ赤な逆さ三日月状の笑みを浮かべた女子生徒。

『**之心、闇****禁足地にて**と**を**。**学び舎にて悪逆***』

 

2枚目。

陰陽師一人と式姫二人で妖を追い詰める、式姫は天之羽々斬、天邪鬼・・・しかし二人とも満身創痍で膝を突いている。

式姫の背後では陰陽師が符を振りかざし、妖を封じつつあるという光景だ。

『**、討つ事叶わず、**改心させる***ず、出来た*は封じる***平穏は取り戻せ**敗北***』

 

3枚目。

最後の一枚は他二枚と比べて非常にシンプルなものだ、ただ一冊の書物が書かれているのみ。

『転*の術*応用しこれに二体を***、この書決して*むべからず封は危うく、あれらは***を封*引*****』

 

どうやら、かつてあった事件の事が記されてるようだ。

式姫的にこれらが廃神社に放置されている理由が分からない、普通なら妖との戦闘記録・・しかも未討伐となれば陰陽師なり各種施設なりで、厳重補完されているはずだ。

 

「これ、持って帰ったほうがいいかな・・・?今回の遭遇したのも・・・いやでも、女子生徒も腕も居なかったよね?怪力で・・・風を使って・・・う~~ん・・・」

 

版画は大きく、この豪雨ではかなり持ち運びしにくい。

考えた末、黒兎は一先ず版画をスマホで撮影しマップ機能で場所を記録・・明日これも先ほどの件と一緒に報告する事にした。

 

・・・と、少し周囲が静かになりつつある。

豪雨は弱まり、小雨ほどではないが通常の雨になっているようだ。

 

「・・・ん。これなら、帰れるかな」

 

拝殿を出て、再度振り向き。

 

「ありがとうございました。」

一礼し、また雨脚が強まる前に全力で帰路に着く黒兎。

 

 

 

 

 

くろうさぎは、一先ず教室の明かりを付ける事にした・・何となく、今までと違う行動をした方が良い・・何となくそう感じたからだ。

多分付かないとタカを括っていたが、意外にすんなりと明かりは付く

一先ず「貴常月村封土記」を再読してみる、様々な式姫による妖討伐譚が描かれている・・・が、くろうさぎが気になっていたのは。

 

「ええと、確か・・・すごい不自然な奴があったんだ・・・手書きで即興で書きなぐられたみたいな・・・あった!」

 

まるで時間制限でもあったかのような走り書き。

それも1ページに簡易に記しただけのもの、他のちょっとした小話LVの話と比べて余りに粗雑。

 

『事の発端は1柱の闇式姫也、その者禁足地にて大妖と契る、闇式姫と大妖学び舎にて生徒達に害を加える、被害者の数甚大なりて半数を失う』

 

『私の契約する式姫では足元にも及ばす、しかして2柱の式姫が助太刀を申し出る、2柱とも剛の者也』

 

『禁足地に闇式姫と大妖を追い詰める、しかしそれが限界討つ余力もなく、我が声闇式姫に届かず、封じるが限界也』

 

『我が一族に伝わる秘技を応用し、この書物に封じる、しかし緊急時の簡易の極みの封なれば其れ極めて不安定也、しかし再封の為この封を解けばどうなるか分からない故にこの書を封じる為にさらなる封を重ねる』

 

『それらの固有名詞は記さず名が縁となり封が弱まる可能性あり、また名を皆が忘れる事によりそれらが弱体化もしくは消滅する可能性有り、闇式姫は無念だが大衆を守るためには致し方なし」

 

『決してこの書読む無かれ読めば目が合い縁となるだろう』

 

『これを目にして居る者が居たならば、読んでしまったのだろうそして呼んでしまったのだろう。

その時が来ない事を祈るが、もしそうなったのなら明かりを絶やさないようにしなさい、君が居る場所の明かりも、心の灯火も』

 

正直、くろうさぎは最初呼んだとき所謂「話を聞いたらヤバイ系」の怪談を、誰かが悪戯で差し込んだのだと思った。

江戸風味の糸で括ったタイプの書だ、器用な者ならそういう悪戯もできるだろうと踏んだのだが・・まさかのガチモノ。

 

「校舎中に明かりを灯せば・・?でも、心の灯火か・・・・まあ、僕がこうしていられるのも・・うーん、そんな感動のエピソードとか無いんだけどなあ、平凡全開だよ?うん、この状況が平凡とは言いがたいけど。」

 

一人ブツクサ呟きながら、とりあえず明かりを灯すために行動を移そうとし・・・・

 

 

            ドゴォ!!!!

 

 

教室を揺るがすような物音にハッと振り返る!瞬間、教室中の蛍光灯が一斉に割れた。

一瞬で暗闇と化す教室・・・そして「ジュッ・・」「ジュッ・・・」例の足音が聞こえてきた。

 

 

「ちょ・・・!!これ、光源全部破壊されたら詰むじゃないかぁぁぁ!!??」

 

悲壮な叫び声を挙げるくろうさぎの逃亡劇が再度始まった。

 

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