大切な人を探す物語   作:お団子大家族

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行方不明になった先生を探すミレニアム生と、心が折れた生塩ノアの話②

 

 

 

 

 先生がいなくなった。

 

 その情報を知ったのは、連邦生徒会からの連絡があったから。

 

 ユウカちゃんと一緒に詳細を聞くが、あまり耳に入ってこない。

 

(な、なんで……)

 

 動揺してる。

 

 自分でも、びっくりするくらい。

 

 連邦生徒会から招集がかかった。

 

 今回の件で各学園の代表者を呼び、話し合いをするそうだ。

 

 かろうじて電話に返事をし、通話を切る。

 

「……」

 

 どうして……?

 

 前に先生と会った時は、そんな失踪するような様子はなかった。

 

 何か事件に?

 

 でも、あの強い先生に限ってそんな……

 

「ど、どうし、どうしようノア……! 先生が……!」

 

「ゆ、ユウカちゃん……」

 

 そうだ。

 

 ユウカちゃんは、私よりも気が気じゃないはずだ。

 

「落ち着いてくださいユウカちゃん。とにかく、連邦生徒会のもとへ行きましょう。」

 

 心の中に荒立つ波を必死に沈めながら

 

 私たちは連邦生徒会へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 連邦生徒会での話し合いの結果、各自地区の未開拓の場所を探すということに決まった。

 

 トリニティの場合は、カタコンベ。

 

 ゲヘナの場合は、アビス。

 

 そして、ミレニアムの場合は、廃墟。

 

 連邦生徒会から立ち入り禁止区域に指定された、未知の地域。

 

 捨てられてしまい、長い間放置されていた都市

 

 本来は研究や調査が禁止された都市だが、今回は特別に連邦生徒会から許可が下りた。

 

 連邦生徒会からの帰り道。

 

「……」

 

「ユウカちゃん……」

 

 取り乱し、暗い顔の親友を私は抱きしめる。

 

「きっと、大丈夫ですよ。あの先生のことです。すぐに帰ってきますよ。」

 

「……そ、そう……かしら……?」

 

「そうですよ。落ち着いてよく考えて見てください。あの先生が、何かトラブルに巻き込まれたとして、なんの抵抗もなくやられる人だと思いますか?」

 

 私たちは知っている。

 

 彼の力を。

 

 いくらヘイローがなく、私たちのような身体じゃなくても。

 

 彼はそう簡単に死ぬような人じゃない。

 

「そう……そうよね。まったく、どこをほっつき歩いてるんだか!」

 

 彼は、きっと無事だ。

 

 ユウカちゃんも私も

 

 心の表面で、そう考えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とにかく、廃墟を調べるとしたらかなりの人数が必要ね……」

 

「そうですね。ヒマリ部長やC&C、ヴェリタスにも声をかけましょう……アリスちゃんは……」

 

『ピピピピピピッ』

 

 ユウカちゃんの携帯が鳴り出した。

 

「あれ? ヒマリ部長からだ……どうしたのかしら?」

 

 怪訝に思いながらも、ユウカちゃんは電話に出る。

 

「はい、ユウカです。」

 

『ユウカさん! 今どちらにいますか!?』

 

「え、えっと、今は連邦生徒会からミレニアムに帰る途中だけど……どうしたんですか?」

 

 ヒマリ部長にしては、珍しくとても焦っている。

 

『ミレニアム郊外の廃墟に超高濃度のエネルギー反応が出現したのです! 現在C&Cが原因解明のため現場へと向かっていますが……急いでミレニアムまで戻ってください!』

 

「な、なんですって!? よりにもよって廃墟に!?」

 

「ユウカちゃん、急ぎましょう!」

 

「え、えぇ! すぐ行きます!」

 

 携帯を切り、私たちはミレニアムへと走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒマリ部長!」

 

 特異現象捜査部の部室の扉を開け、中に入ると、車椅子に座ってモニターを見るヒマリ先輩と、その傍らに立つエイミさん。

 

「ユウカさん、こちらを……」

 

 ヒマリ部長が廃墟のリアルタイム映像を見せる。

 

「なんなの……これは……」

 

 映像の内容に、私たちは息を呑んだ。

 

 

 

 

 

 

 映っているのは、地面が見えなくなるほど、一帯を埋め尽くす機械兵の大軍だった。

 

 

 

 

 

 

 廃墟には前から複数の機械兵がうろついていたが、これほどまでの大軍は見たことがない。

 

 すると大軍のうちの一体がカメラに気付き、銃を向ける。

 

 そこで映像が途切れた。

 

「こちらを視認するや否や攻撃を開始しました。もう一台のカメラの映像もあります。」

 

「これは数分前の映像だよ。」

 

 エイミさんが再生ボタンを押すと、映し出されたのはC&Cの部員たち。

 

 ネル先輩、アスナ先輩、カリンさん、アカネさんが、この機械兵の大軍を相手に戦っている。

 

『くっそ! なんなんだこいつら! どこから湧いて出てきやがった!』

 

『あっはは! うじゃうじゃいておもしろーい! どれだけ倒せるか競争しよ!』

 

『言ってる場合じゃありませんよ! 囲まれたら終わりです!』

 

『倒しても倒してもキリがない……一旦引こう! 攻撃の手が届かないところまで!』

 

 4人とも流石エージェント。持ち前の戦闘能力でカバーしているが、焼け石に水だ。

 

 敵はほぼ無尽蔵ともいえる軍隊。

 

 原因はわかっている。

 

「ヒマリ部長、これって……」

 

「えぇ……デカグラマトン8番目の預言者『ケセド』ですね。」

 

 デカグラマトンの預言者

 

 キヴォトスを襲撃し続ける災厄たち。

 

 『Division』と呼ばれる兵器工場がデカグラマトンと呼ばれるAIによって預言者とされ、それこそ無限の兵力を生み出すことができる。

 

 その兵器工場のAIが『ケセド』と呼ばれている。

 

「いったいどうしてケセドの力が急に増したの!?」

 

「部長。これも、先生がいなくなったことになにか関係があるんじゃ……」

 

「わかりませんが、偶然とは思えませんね。」

 

 映像を停止したヒマリ先輩は、改めてこちらを振り向く。

 

「今も機械兵は増え続けています。このままでは廃墟は機械兵で埋め尽くされ、ミレニアムの郊内へと侵入してくるでしょう。」

 

「そんな……」

 

「ヒマリ部長は、一度先生と共にケセドと接触してるんですよね? 何か対策はないんですか?」

 

「ええ……しかし今のケセドの兵力は、ザッと見ても私たちが接触した時の100倍以上……これではケセドに近づくなど……」

 

「……うん、不可能だよ。」

 

「幸いなことに、あの機械兵の群れが廃墟から出ようとしてくることはありませんでしたが、このペースで増え続けるとなると、それも時間の問題でしょうね。」

 

 あの量の兵がミレニアムに押し寄せてきたら、いったいどうなってしまうのか

 

 考えるだけで恐ろしい。

 

 

 

 こんな時、先生なら……

 

 

 

「……」

 

 

 

 せんせいなら……?

 

 

 

 どうする?

 

 

 

 貴方の顔も、声も、なんでも思い出せるのに

 

 それらは全部

 

 過去のもの

 

『今』貴方ならどうするか

 

『これから』みんなにどんな声をかけて

 

『その後』どんな作戦を立てるのか

 

 ……わからない

 

 

 

『常に冷静に大局を見ることができ、状況を分析して周りをサポートする。ノアは、凄いやつだ。』

 

 

 

 ……

 

 大丈夫。

 

 

 

 こんな時こそ、余裕を持ちなさい。

 

 

 

 こんなことで取り乱すなんて、『生塩ノア』らしくない。

 

 

 

 リオ会長が失踪した後でも、私とユウカちゃんでやり遂げてきた。

 

 

 

 今回も、きっと……

 

 

 

 

「ヒマリ部長、とにかくC&Cには一時撤退してもらいましょう。このまま正面から闘い続けても弾薬の浪費になるだけです。ミレニアムに戻らせ、作戦を考えましょう。」

 

「……そうですね。ノアさん。」

 

 たとえ、先生がいなくても

 

 みんなを、ユウカちゃんを

 

 私が、支えなければ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「現状を分析したレポートを作成しました。」

 

 翌日

 

 ミレニアムの会議室に一同が招集された。

 

 私とユウカちゃん、特異現象捜査部にトキさん、ヴェリタス、C&C、エンジニア部まで

 

 ケセドを倒すため

 

 そして先生を捜索するために

 

 ヒマリ部長がレポートを片手に説明する。

 

「まず今のケセドに近づくためには、2つの関門を突破しなければなりません。」

 

 ヒマリ部長が操作したモニターに映ったのは、先日の機械兵の大軍。

 

「一つ目は夥しい数の機械兵。これを突破するためには、おそらくミレニアム全ての兵力を投入しなくては不可能でしょう。」

 

 ヒマリ部長の作戦にC&Cのアカネさんが手を挙げる。

 

「ですが、ただ兵力を投入するだけじゃ厳しいと思います。あの数で守られてはたとえ突破できてもこちらの体力も消耗しますし……」

 

「そうだな。ケセドに辿り着く頃には力尽きてしまうはずだ。」

 

 カリンさんも同意する。あの大軍を実際に目で見たからこそわかるのだろう。

 

「おっしゃる通りです。ですので向こうから攻撃の手が届かず、こちらから一方的に攻めることができるアウトレンジ戦法を持ち入ります。」

 

「……空か。」

 

「その通りですカリンさん。飛行船や戦闘機を使い、空から敵を蹂躙する作戦を取ります。」

 

 映像を見てみたところ、敵は機械兵、ドローン、ゴリアテ等の兵隊のみで、ヘリコプターや戦闘機などの空を飛ぶ兵器はいなかった。

 

 その穴をついた作戦だ。

 

「飛行船から大量の爆弾を投下し、工場の外に出ている多くの機械兵を掃討したあと、トキさんを含めたC&Cの皆さんを筆頭に工場内に潜入し、戦いを最小限に避けながらケセドを目指します。」

 

「……なるほど、力技ですが、その作戦ならあの大軍を突破できるかもしれませんね。」

 

「とにかく必要なのは爆弾等の兵器です。今回でリオの遺産の兵器も全て使わせてもらいます。それ以外の兵器集めの担当は、セミナーとエンジニア部にお願いします。セミナーにはできるだけ兵器を集めていただき、エンジニア部にはより多くの機械兵を倒すことができる武器を大量に作成して欲しいです。」

 

「わかりました。」

 

「いやリオ会長は死んでないけど……わかったわ。」

 

「うん、マイスターの名にかけてとっておきの物を作るよ。」

 

「ただ、この作戦は仮に実行しても、あの様子だとすぐに兵を補充され、数時間もすれば元通りになってしまうでしょう。なので突破するべき2つ目の関門は、軍用工場のネットワークのハッキングです。」

 

「そう。そこで私たちヴェリタスの出番ってわけね。」

 

 チヒロさん率いるヴェリタスが手を挙げる。

 

「軍用工場のネットワークは外部のネットワークと完全に遮断されていますし、あの誇大妄想癖の作り出した……それも前回から圧倒的に強化された、預言者の城ですから、これをハッキングするのは至難の業ですが……ハッカーとしてのありとあらゆる手段を使います。天才清楚系病弱美少女ハッカーである私と、ヴェリタスにお任せください。」

 

 かなり難しい状態でのハッキングだが、それでもヒマリ部長がいれば、どうとでもなるような予感がするのは、彼女の実力があってこそだろう。

 

「こうしている間にもケセドによって機械兵は増え続けています。ユウカさん、準備にはどれほどの時間がかかりますか?」

 

「そうね……幸いリオ会長が残してくれた兵器がたくさんあるから、そんなに時間はかからないと思うわ。飛行船の準備もあるけど、3日もあれば十分だと思う。」

 

「わかりました。それでは作戦実行は4日後としましょう。」

 

「ちょっと待て。」

 

「あら、ネル先輩どうしましたか?」

 

「部長? 作戦に何か……」

 

「いや、作戦は別にこれでいい。だが、1つだけ言いてぇのは……」

 

 

 

 

「なんでチビどもがここにいねぇんだ?」

 

 

 

 

「「「「……!」」」」

 

 ネル先輩の言葉にみんなは顔を見合わせる。

 

 ネル先輩の言うチビどもとは、ゲーム開発部のことだろう。

 

「なるほど、ネルさんはここのところ任務続きで、アリスさんの様子をご存知なかったのですね。」

 

「様子?」

 

「ええ。アリスさんは先生がいなくなったと知って、精神的に不安定になっているんです。あの様子を見るに、ここに来れるような精神状態ではありません。」

 

「……」

 

「部長……」

 

「チッ……わかったよ。」

 

 ネル先輩はまだ納得のいっていない様子だ。

 

 言いたいことは、なんとなくわかる。

 

 アリスちゃんの力は絶大だ。

 

 今回の危機でも、もし来てくれたら相当な戦力となる。

 

 でも、それができるほど我々は冷酷ではない。

 

「それでは、他に意見はなさそうなので、最後に私から一つだけ言わせていただきます。」

 

 全員がヒマリ部長に視線を向ける。

 

「今回の戦いは、ミレニアムを守るための戦いでもありますが、『先生を探す戦い』でもあります。」

 

「「「「「……!」」」」」

 

 先生という言葉が出た瞬間、場に緊張が走る。

 

「今回の事件、急にケセドの力が増したことと、先生が行方不明になったのはなにか関係があるのではないかと私は考えています。」

 

「……それは、推測ですか?」

 

 この会議が始まってから、ヒマリ部長の背後で一度も口を開いていなかったトキさんが聞いた。

 

「その通りですトキ。ですが、先生が行方をくらませたと同時にデカグラマトンの預言者がこうも力を増したとなると、タイミングが合いすぎています。」

 

「……そうですね。」

 

「これまで我々は、彼に幾度となく力を貸してもらい、支えられてきました。」

 

 その通りだ。

 

 彼がいなかったら、解決できていなかった事件もたくさんある。

 

 私も

 

 ユウカちゃんも

 

 ここにいるみんな、彼によって少なからず助けられている。

 

「先生を助けるためなら、私は全力を出します。それはここにいる皆さんも、きっと同じですよね?」

 

「「「「「……」」」」」

 

「この戦いで、我々の全てを賭けましょう。」

 

「「「「「はいッ!」」」」」

 

「それでは、解散しましょう。各々4日後の作戦に備えてください。」

 

 ヒマリ部長の声に、みんなはゾロゾロと会議室を出て行った。

 

 ユウカちゃんと私はヒマリ部長に近づく。

 

「さすがヒマリ部長。この短時間でここまでの情報収集と作戦を考えるなんて流石ね。」

 

「え? ……あぁ、いいえ?」

 

 ユウカちゃんの言葉に、ヒマリ部長はキョトンとした顔をする。

 

「この作戦を考えたのはノアさんですよ?」

 

「え……?」

 

「いいえ、私は発想だけで、形にしてくださったのはヒマリ部長です。」

 

「あら? 私に作戦を提案してくださったときには、もうほとんど完成していたではありませんか。 機械兵の増えるスピード、皆さんの役割まで全てが記載された資料も作って。よくこの短時間で考えついてまとめてくれました。」

 

「ノアが……!? い、いつの間に? というか一体どうして……?」

 

 

 

 

 

 

 

「それほどまでに、親友のために先生を見つけ出したいんですね。」

 

 

 

 

 

 

 

「え……」

 

 その言葉に、ユウカちゃんは目を開いて私を見た。

 

「ノア……」

 

「大丈夫ですよ、ユウカちゃん。」

 

 ユウカちゃんのためにも

 

 私のためにも

 

「絶対に、先生を見つけ出しましょうね。」

 

 そう、絶対に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 決戦当日

 

 上空を飛行船や何機もの戦闘機が廃墟上空を飛ぶ。

 

 突入部隊はC&C、トキさん、エイミさんで編成されている。

 

 エンジニア部は戦闘機へ

 

 私はユウカちゃんと共に飛行船へと乗り込んでいた。

 

「……本当に、凄い数ね。」

 

「ええ……」

 

 空から見れば機械兵の数の多さが良くわかる。地面をぞろぞろと移動し、徘徊する兵たち。

 

「それでは……ユウカちゃん。」

 

「ええ、やるわよ。」

 

「「投下。」」

 

 私たちの合図で、戦闘機や飛行船から爆弾が投下された。

 

『ドドドドドドドド……』

 

 空から降り注ぐ大量の爆弾。

 

 数十分も続く爆撃。

 

 吹き飛んでいく機械たち。

 

 街に落とせば、一帯をすべて焼け野原にできるほどの爆弾の数だ。

 

「……あり得ないと思うけど、もし先生がこの辺りにいたらヤバいんじゃない?」

 

「……」

 

「ねぇノア?」

 

「その可能性は考えないようにしましょう。」

 

 飛行船に積んだほぼ全ての爆弾を落とし終えた頃

 

 横たわる機械の山が積み上がっていた。

 

「……凄まじい光景ね。」

 

「……そうですね。」

 

 でも、これでまだ作戦は半分も遂行されていない。

 

 しかもこれが数時間後には元に戻るというのだから恐ろしい。

 

「地上にいる機械兵の大方は片付きましたね……」

 

「ええ、ヒマリ部長に連絡しましょう。」

 

 

 

 

 

 ミレニアム特異現象捜査部部室内

 

「ユウカさん、ノアさん、ご苦労様です。それでは突入部隊の皆さん、工場内へと侵入してください。爆破を免れた機械兵が何体かいますので、ご注意を。」

 

『おう。』

 

 ネルさんの返事を聞き、私たちも準備をする。

 

 侵入後、工場内とネットワークを繋ぎ、私とヴェリタスのハッキングが行われる。

 

 それで機械兵を量産するスピードを少しでも遅らせることができれば……

 

『ヒマリ部長ッ!』

 

「……?」

 

 ユウカさんとノアさんからの通信が再び繋がれた。

 

「どうしました?」

 

『上空から確認しましたが、何かが超スピードで突入部隊へと向かっています!』

 

「……!」

 

 私は急いでレーダーを確認する。

 

「このエネルギー反応は……!」

 

 私には、それに見覚えがあった。

 

「ネルさん! 今すぐその場を離脱してください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃墟地帯

 

「あ? 何言って……」

 

 ネルが聞き返そうとした時

 

 それは、やってきた。

 

『ヒュンッ!』

 

「……先輩方、伏せてください!」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

『ドガァアアアアアアン!!!!』 

 

 トキが発した声の直後

 

 突如薙ぎ倒されていく、積み上げられていた機械兵の山。

 

 その奥から現れた

 

 キヴォトスに住む者たちと同じように、自らの頭上にヘイローを身につけて

 

 凄いスピードできたことがわかる、急に止まる際に火花を散らしている四足歩行の脚

 

 頭と両肩に電磁兵器を装備した、多脚戦車。

 

 それが、ネル、アスナ、アカネ、カリン、トキ、エイミの前に立ち塞がった。

 

「なんだ……コイツは?」

 

「……ケテル」

 

「あ?」

 

「エイミさん、知ってるのですか?」

 

「うん、デカグラマトンの一番目の預言者だよ。」

 

「すごーい! あの頭につけてるのなんだろ? 武器じゃなさそうだけど……電磁兵器?」

 

「見たところそのようですねアスナ先輩。エイミ、ケテルの能力は説明できますか?」

 

 トキがエイミに聞く。

 

「うん、このtypeは確か電磁波で周りの機械兵の攻撃力や命中率を上昇させるものだったはずだけど……」

 

「ということは、生き残った機械兵がパワーアップするってこと?」

 

「うん……でも、なんでここにケテルが……? ケテルが出現するはずの水没地区からはかなり離れてるはずなのに……」

 

「……今は考えてる余裕はない。リーダー。」

 

「そうだな、とにかくこいつが邪魔してくるってんなら、さっさと突破して……」

 

 全員がケテルに対して銃を構える。

 

 すると

 

『ヴーーーーーン……』

 

「……くるぞ!」

 

 カッ!!!

 

「「「「「……!!」」」」」

 

 ケテルが電磁兵器を展開し、あたりに青白い眩い光を放った。

 

 突入部隊には何も影響はない。

 

「この電磁波が、さっき言ってた機械兵の力を増幅させるやつか!?」

 

「うん! そのはず……」

 

 しかし

 

 

 

 

 

 

 

 ガッ

 

 ガガガ……ッ

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

「「「「「……!?」」」」」

 

 エイミの驚愕した声と、目を見開く突入部隊の面々

 

 その視線の先に映った光景。

 

 そこには倒れていたはずの機械兵たちが、立ち上がろうとしていた。

 

 無論壊れた部品、吹き飛んだ体のパーツ

 

 それらを鑑みたら、この機械兵たちがもう動けるはずがない

 

 それなのに

 

「え、エイミさん……これは……」

 

「機械兵たちを回復した……? そんな……ケテルにこんな力はなかった……!」

 

 足が吹き飛んでいた動けないはずの機械兵がエイミに対して銃を向ける。

 

「ボサっとしてんな! 来るぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒマリ部長! 一体何が……!」

 

「どうしてケテルがこの廃墟に……それに、エイミさんの話を聞くところによるとケテルに機械兵を回復させる能力はなかったみたいですが……」

 

 上空で一部始終を見ていたユウカちゃんと私はヒマリ部長に通信する。

 

『強化された……と考えるほかないでしょうね……』

 

「それって……」

 

『えぇ、ケセドが兵力を強化されたように、ケテルは移動範囲と能力を強化されたようです。』

 

「なにそれ!? めちゃくちゃじゃない!」 

 

「せっかくあれだけの機械兵を倒したのにまた復活してしまいました……ヒマリ部長、どうしますか?」

 

『ユウカさん、ノアさん、残っている爆弾はどのくらいですか?』

 

「も、もうあまり残って……」

 

『……そうですか。』

 

 ヒマリ部長が目を瞑った。

 

『これは……もう……』

 

「で、でも今の作戦で用意した兵器のほとんどを使っちゃったわよ!? ここで引いたら……!」

 

『……今の我々に、復活した機械兵の大軍とケテルを倒す術はありません。』

 

「そ、んな……」

 

 ヒマリ部長がネル先輩に指示を出す。

 

 ネル先輩も納得していないのか、なにか言い合っている声が聞こえるが、我々の耳には入ってこない。

 

 私たちが先生を探すために、希望をもち、全てをかけようとした作戦。

 

 その作戦は、完全に破綻したのだ。

 

 

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