ヒマリ、コタマ、マキの3人はモニターに釘付けになっていた。
「すっっっごかったね……本当にアテム先生みたい……」
「えぇ……雰囲気は全然違いますけど、声もアテム先生の声にそっくりです。」
「え? 声は全然違くない?」
「そっくりですよ。もちろん声の高さに違いはありますが、声質は非常に似てます。」
「ふふ……なんにせよすばらしい戦況結果ですね。これでケテル相手は問題ないと言えるでしょう。さぁ、ケテルは先生にお任せして、私たちももうハッキングに取り掛かりますよ。」
「はい……でも、本当に良かったのですか? 総指揮から外れてしまって……」
コタマが少し不安そうに問いかけると、ヒマリは微笑みながら答えた。
「もちろん賭けの部分もあります。でもきっと、ノアさんなら大丈夫ですよ。」
正直、ヒマリは最初は難しいだろうと思っていた。
親友が倒れ、心が折れているかと思っていた。
でも、今朝連絡をとってきた彼女は違った。
その瞳の奥の闘志は、まだ残っていた。
「そもそも私の役割が多すぎたのですよ。工場のハッキングに、離れた現場の指揮まで……いくら私が『天才美少女ハッカー』だからといってもその前に『病弱』が付くんですからね?」
「……それも、そうですね。部長がそうおっしゃるなら、きっと大丈夫ですね。」
「ねぇねぇ、ハレ先輩とチヒロ先輩はどこ行ったの?」
「あぁ、その2人なら……あ、来ましたね。」
マキの疑問に答えるように、大きめの箱を2人がかりで持ったハレとチヒロが入ってきた。
棺桶くらい大きくて、黒い。
2人ともかなり重そうに持っている。
「ヒマリ、えっと、なんか届いたんだけど……なにこれ?」
「あぁ、ありがとうございます♪ 間に合いましたか。とりあえず開けてもらえますか?」
「う、うん。」
ハレとチヒロの2人で箱を開ける。
「よいしょっと……え?」
「ん゛〜ーー!!! んんむぅう〜〜〜!!」
「ええ!? 人!?」
「え? この子って……」
箱の中には、ピンクの髪に、白のバニースーツを着た少女がぐるぐる巻きにされていた。
口は猿轡で縛られて、何かを訴えているのか必死に声を出そうと唸っている。
みんなで縛られた縄や猿轡を解いてあげる。
「はじめまして、黒崎コユキさん。お噂は予々聞いていますよ。」
「ぶはっ! いやッ! やめてくださいッ! 近づかないでくださいッ! いったい私に何する気ですか!」
出会い頭に拒絶。
すっかり怯えている。
「あらら……こんなに怯えてしまって……時間的にノアさんからなんの説明もなく連れてこられたのですね。」
「そ、そうですよ! 反省部屋で気持ちよく寝てたらいきなり笑顔のノア先輩が現れて、わけもわからずぐるぐる巻きにされたんです! ここどこですか!? というかあなたたち誰ですか!?」
「ここはヴェリタスの部室ですよ」
「ヴェ……!!」
くぐもった声を上げたと同時に、コユキは何かを諦めたように項垂れ、シクシクと泣き出した。
「ど、どうしました?」
「どうしたもこうしたもないですよぉ……矯正局送りになるのかと思ったらセミナーと仲良くないヴェリタスにいきなり放り込まれてぇ……いったいなんなんですかぁ……!? 私どうなっちゃうんですか!?」
「落ち着いてください。ノアさんからの伝言で、今回の件でそれなりの功績を残せば、矯正局送りにはせずに釈放だそうですよ。」
「ほぇ……? しゃくほう……? いやいや、ノア先輩にかぎってそんな美味い話が……っていうか今回の件ってなんですか?」
「ヒマリ、もうあんまり時間ないかも。」
「そうですね。とにかく、今はあなたのその天賦の才が必要です。軍事工場のコンピュータシステムの暗号等、お任せするものが沢山ありますので、ぜひ力を貸してください。」
「え、え? 状況があまり飲み込めないんですけど……」
「詳しい事は作戦を実行しながらお話しします。」
「ほら、セミナーの制服も箱に入ってたよ。バニー姿のままだと気が散るから着替えて。」
「え? でもこの服結構気に入って……」
「いいから、こっちがやりづらくなるんだって」
「うぅ……は、はい……わかりましたよ……着替えますってぇ……だから取って食べないでください……」
コユキは泣きながら着替えに行った。
「だ、大丈夫なの……? あの子結構悪い噂聞くけど……」
「今は別に気にしませんよ。今回は『使えるものは全て使う』と決めてますから。」
そう
敵は、あの『預言者』なのだから。
「さて……準備はよろしいですか?」
「うん。」
「まっかせて!」
「さぁ、行きましょうか。ヴェリタスの神髄をお見せしましょう。」
ケセド軍事工場内部
「オラオラオラァッ!! 道を開けやがれッ!」
『ダダダダダダッ!!』
私たちはネル先輩の後に続いて、工場内突き進んでいた。
彼女が通った場所には壊れた機械兵が次から次へと転がる。
「わぉ、部長とっても気合い入ってるね!」
「前の作戦では突入せずに撤退しましたから、ストレスが溜まっていたんだと思います。」
「本当ならケセドに着く前はあまり暴れないで欲しいんだけど……敵に合わないに越したことはないし……」
我々の前を走るC&Cの会話。
「……フー……ッ」
その会話を聞きながら、私は深めに息を吐いた。
視界が揺らぐ
熱が、ぶり返してきたのだろう。
「……」
でもここで、止まることはできない。
私を信じてくれた、あの人のためにも。
我々の先に分かれ道。正面に進む道と左右に進む道
「分かれ道だ。ヒマリ、どちらに進めばいい?」
ウタハ先輩の問いに、通信機の向こうからヒマリ部長が答えた。
『本来なら正面の道を進むのが最短ルートですが、多くの機械兵がその道を通ってこちらへ向かってきています。右の通路を進んでください。』
「そうか、機械兵量産のプログラムに対するハッキングだけじゃなく、監視カメラのハッキングも順調に進んでいるみたいだね。」
『ええ。全ての監視カメラのハッキングができたわけではありませんが……敵の少ない方へ誘導はできますよ。弾薬はできるだけ温存してほしいので。』
今回のケセド討伐で一番懸念されていたのが弾薬の数だった。
工場の中を進む都合上、一度に持っていける弾薬には限りがある。
どれだけケセドにダメージを与えようが、持ってきた弾薬が尽きれば、私たちの負けは決定する。
途中で弾薬補給部隊を投入する案もあったが、千を超える敵がいる戦場に補給部隊を投入することは難しいと却下した。
だから、我々は戦いを最小限に抑え、ケセドまで辿り着かなければならない。
「着きました……」
目の前には、上部に『03』と書かれた大きなゲート
そして、その行手を阻もうとする、20体ほどの戦闘ドローン
「ここの部屋を突破すればケセドに……」
最深部一つ前の部屋についた。
ここを越えれば、ケセドに辿り着く。
ヒマリ部長の誘導もあってか、ここまで大きな戦闘もない。
ここまで敵が少ないのであれば、補給部隊を投入しても良かったかもしれない。
怖いくらい、スムーズに事が進んでいた。
「ねぇ……これって、おかしくない?」
私の不安を裏付けるように、エイミさんが私に話しかける。
「いくら部長たちが敵の少ない方に誘導してくれていたとはいえ、ケセド前の部屋の機械兵がこんなに少ないなんてことある?」
「それは……」
その通りだ。
敵からしてみたら、なにがなんでも守らなければならないケセドの部屋。
その前の部屋に、ドローンが20体ほどしかいないなんて……
『ビーッ!! ビーーッ!!』
「「「「……!!」」」」
突如、部屋全体に響き渡った警告音。
それと同時に入り口のゲートが塞がる。
カリン「閉じ込められたッ!」
エイミ「部長ッ! これは……!」
ノア「皆さん離れないでくださいッ! 敵が来ます!」
左右のゲート、通路、頭上から、次から次へと機械兵やドローンが雪崩れ込んでくる。
ヒビキ「て、敵がどんどん増えてく……!」
コトリ「そんな……ヒマリ先輩のハッキングが効いているんじゃ……」
ザザ……!
ヒマリ『嵌められました……!』
ノア「ヒマリ部長! これは……」
ヒマリ『ケセドは我々のハッキングにより、機械兵を超スピードで量産できなくなったことを把握した時から、工場内部にいた兵をこの部屋に集めていたんです。』
少しずつ兵を向けさせるのでは相手にならない。
だから、できる限り時間をかけ、兵を一箇所に集め、仕向けてきた。
カリン「ざっと見ても100……いや、200体以上はいる……我々をここで消耗させる気だッ!」
ネル「……チッ! ケセド一歩手前って時に……! 舐めた真似してくれんじゃねぇか!」
戦力的には、問題ない。
たとえ敵の数が100や200を越えようとも、こちらにはC&Cもいる。この場にいる全員で相手をすれば、楽々と倒すことができるだろう。
しかし、問題なのは弾薬の数。
ここで弾薬を大量に消耗しては、間違いなくケセドを倒す前に弾薬が尽きる。
敵もおそらく、それが狙いだろう。
ノア「ヒマリ部長ッ! ケセドへの扉を開くにはどれくらいの時間がかかりますか?」
ヒマリ『……最短でも1分半はかかります! それまでどうか……!』
200体の敵の攻撃を、弾薬を使わずに耐え切ることは、いくらなんでも不可能だ。
機械兵やドローンが我々に銃を向け
我々も銃を構えた。
ノア「……」
……これはもう……仕方がない。
ノア「……やむを得ません……ユズちゃん!」
ユズ「は、はい!」
ノア「お願いします!」
ユズ「わ、わかりました! せ、先生ッ!」
ユズちゃんは通信機に向かって先生を呼び
自分のポケットから
一枚のカードを取り出した
「『光の護封剣ッ!」』
「「「「……!!」」」」
ユズちゃんの言葉に、空中に大量の光の剣が出現し、工場内へ降り注いだ。
光の剣は行手を阻むように機械兵たちを囲み
機械兵の動きを、完全に封じた。
エイミ「こ、これは……?」
ノア「これで機械兵たちは暫く動くことができません。本当ならケセド戦で使いたかったのですが……ヒマリ部長、今のうちに扉のハッキングをお願いします。」
ヒマリ『わ、わかりました……』
アカリ「……お、驚きました。これって……」
ウタハ「……ユズが、M&Wのカードを使ったのか」
ノア「はい。ゲーム開発部の4人には1人一枚ずつカードを渡されてあります。」
アスナ「すごいすごい! ユズちゃんもカードを使えたってことは、私たちも使えるの?」
ノア「いいえ、発動するのは遊戯先生の意思でないと不可能です。なので、ゲーム開発部の4人と先生は基本的に通話を繋ぎっぱなしにして、合図を送れば、外にいる先生が発動してくれる仕組みです。」
ケセドと戦うにあたって、効力を最大限に発揮できそうな4枚のカード。
そのカードを出発前に選び、持たせてもらった。
ノア「しかし、欠点は『一度発動したカードはしばらくの間発動できない』ということです。」
エイミ「と、いうことは……」
ノア「はい、今発動した『光の護封剣』は、おそらくこの戦いの間はもう使うことはできないでしょう。」
エイミ「そっか……これをケセドとの戦いで使えたら、とても強力だっただろうね……」
ネル「いや、ここで使わなきゃ弾薬が足んなくなってた。いい判断だったと思うぜ。そんで……」
ネル先輩は親指で後方を指差す。光の護封剣で動けなくなっている兵たちだ。
ネル「どうするよ? こいつら。」
モモイ「え? このまま無視して良いんじゃ無いの?」
ノア「そういうわけにもいきませんよモモイちゃん。光の護封剣が消えた時に、この数の敵が一気にケセドのいる最深部へ雪崩れ込んできます。」
『光の護封剣』はもちろん永続じゃない。
このままケセドと戦うことになったとしても
光の護封剣が切れたら、すぐに追いつかれて、結局ここにいる大量の機械兵とはまた戦わなければいけない。
だから……
ネル「……足止めが必要だな。」
ノア「そうですね……」
トキ「わかりました。それなら、私が残ります。」
ネル先輩の提案に、私が呟いた瞬間、トキさんが手を挙げた。
ノア「ありがとうございます。トキさんが足止めに残ってくだされば心強いです。ですがこの数の足止めは最低でも3人は必要です……他にもどなたか……」
トキ「いえ、私1人で十分です。」
ノア「は、はい!?」
アカリ「トキちゃん!?」
トキ「ここで3人や4人も足止めで人数が減るのは、ケセド討伐においては致命的です。私1人が残ります。」
ヒマリ『トキッ! いくら貴方でも、その数を相手に1人で耐え切るのは不可能です!』
カリン「200対1だぞ? しかもその『アビ・エシェフ』の性能は、我々と戦った時よりも格段に落ちているはずだ。」
この数を1人で止めるのは自殺行為に等しい。
しかし、我々の反論を、ネル先輩が手を挙げて制した。
ネル「……任せていいんだな?」
アカリ「ぶ、部長ッ!」
ネル「……新人の言う通りだろ。ここに人数を割いていたら、ケセド本体を倒すときに絶対に行き詰まる。多対1の戦闘にこんなかで1番向いてんのはコイツだ。」
アカリ「ですが……!」
ネル「あたし達がここに何をしに来たのかを考えろッ!」
「「「「……!」」」」
一喝。
ネル「ケセドを倒してミレニアムを救いに、そして先生を探しにここへ来たんだろうが。」
我々は遊びに来たわけでもないし、仲良しごっこをしに来たわけでもない。
ミレニアムを救いに。
先生を探しに来た。
生死もわからぬ状態で3ヶ月近く行方不明になっているアテム先生を。
もし、生きてキヴォトスのどこかにいるのであれば、一刻も早く、見つけなければならない。
ネル先輩の言葉に全員が押し黙った。
ネル「無理そうならすぐに無線で助けを呼べ。」
トキ「私を誰だと思ってるんですか? 最強のメイドですよ。」
ネル「……」
いつものトキさんの軽口に、ネル先輩は何も言い返さなかった。
光の護封剣が発動されて、2分が経過した。
ヒマリ部長によるハッキングが完了し、それと同時にトキがアビ・エシェフの機関銃を敵に向ける。
ヒマリ『……皆さん準備ができました。ケセドへ続く扉が開きま……』
チヒロ『ヒマリッ!』
チヒロ先輩の声。
チヒロ『この映像! ハッキングしたカメラの映像見て!』
ヒマリ『……!!』
それと同時に
ネル「……!!」
ネル先輩が、勢いよく振り向いた。
私たちがこの部屋に入ってきた、今は閉じられている『入り口』に向かって。
アスナ「部長? どうしたの?」
ネル「……気配がする。」
カリン「気配って……」
ネル「なんかが、あの扉の向こうにいるぞ。」
何者かが、この部屋の『入り口』の外側にいる。
ネル「おいヒマリ、前の部屋でなんかあったのか?」
ヒマリ『……いえ、トキ、もうあなたがその場に残る必要は無くなりました。』
トキ「……? はい?」
トキは構えていたトライポッドを下ろす。
ヒマリ『今、入り口のゲートを開けます。』
入り口の固く閉ざされていた扉が、開いた。
『本当に……あの下水道は……』
ノア「……! これは……」
目の前の光景に、我々は目を見張った。
開かれた入り口から、大量のドローンが押し寄せてきた。
でもケセドの機械兵とは、デザインがまるで違う。
白を基調にしたボディに、大きめのタイヤが一つだけついてる。
そして、そのすべてのドローンの身体に、同じ文字が刻まれていた。
『AMAS』
そう呼ばれるドローン群は、まだ光の護封剣で動けていない機械兵に攻撃を開始した。
モモイ「え!? あのドローンって……」
かつて、アリスちゃんを襲撃してきた時も、アリスちゃんを奪還する時も、立ちはだかってきたドローンたち。
アリス「……! リオ、先輩……」
ヒマリ『本当に、いつこちらの作戦日時を知ったのか……あとでセキリュティを強化しなければなりませんね。』
呆気に取られた我々の前の、ゲートが開かれる。
ヒマリ『さぁ、進みましょうノアさん。その悪趣味なドローン達が、足止めの役割を担ってくれます。』
ノア「……はい♪ 皆さん、ゲートが開きました。ケセドのいる部屋に入りましょう! 光の護封剣が消える前に!」
私たちは急いで次の部屋へと駆け出す。
ネル「おら、ボサッとすんな後輩! 行くぞ!」
トキ「……! は、はい。」
行きなさい
トキ
トキ「……!」
声が、聞こえた気がした。
トキは思わず立ち止まり、振り返る。
そこには一体だけ、戦闘に参加せずにこちらを見守るドローンがいた。
「……」
トキさんは深々と頭を下げる。
「……感謝申し上げます。」
そしてゲートが閉まる前に、踵を返し走り出した。
『……』
トキさんのお礼の言葉は、あの人に届いたのだろうか。
ノア「着きましたね、ここが、最深部。」
ウタハ「あれが……ケセド。」
フロア最奥に鎮座する、数多の機械兵に守られた球体。
オレンジ色の光を放ちながら、白い保護壁に身を包まれ、姿を消した。
ノア「ケセドが保護壁を開いている時間はおよそ18秒。その間に、いかにケセド本体にダメージを与えることができるかが、勝利へと鍵となっています。」
モモイ「じゅ、18秒の間しか攻撃が通らないの?」
ノア「そして、ケセドの保護壁を開くためには、ケセドを守っている全ての機械兵倒さなくてはなりません。」
ユズ「こ、この数全てを……」
先ほどの200体などとは比べ物にならない数のドローンだ。
ノア「はい、今まで温存していた弾薬を全て使ってください。」
『ブーーーーン……』
ノア「来ます! 皆さん作戦通りにツーマンセルで行動してください!」
私の掛け声で、それぞれが事前に決めていたペアと共に行動する。
この数を相手にすると、時間が経てばどうしても囲まれてしまう。
ツーマンセルで行動することによって、お互いの背後を守ることができるからだ。
ネル先輩とトキさん
アリスちゃんと私
モモイちゃんとミドリちゃん
カリンさんとアカネさん
ウタハ先輩とコトリさん
ユズちゃんとアスナ先輩
エイミさんとヒビキさん
これらのペアで、お互いをカバーしながら敵を倒していく。
ネル「遅れんなよ新人。」
トキ「別に、好きに動いてくださって結構です。合わせられますから。」
ネル「ハッ! 言うねぇ。臨むところだッ!」
ネル先輩とトキさんを先頭に、各々のペアが機械兵へと突き進む。
アリス「ノア先輩! よろしくお願いします!」
ノア「はいアリスちゃん♪ よろしくお願いしますね。」
アリス「はい! ノア先輩、体調が良くありませんよね。アリスが守りますから、安心して、皆さんを指揮してください!」
ノア「……!」
体調のことも、お見通しですか……
ノア「……ありがとう、ございます。アリスちゃん、早速ですが、先生にケセドのいる最深部まで到着したことをお伝えしていただいてもよろしいですか?」
アリス「はい!」
アリスちゃんが通話している間に……
ノア「アスナ先輩、ユズちゃん。」
ユズ「は、はい!」
アスナ「うん! どうしたの?」
ノア「一つ、お願いがあります。」
「突入部隊は無事、ケセドがいる最深部まで辿り着いたみたい。」
僕は報告されたことをミカへと伝える。
ケテルのミサイルが、アリスと通話している僕に向かって発射された。
「……ッ! 先生ッ!」
「……! うわ!」
『ドガンッドガンッドガン!!』
ミサイルが当たる直前
少し離れたはずのところにいたミカは目にも止まらぬ速さで僕を抱え、ミサイルを避けた。
そのまま僕を肩に背負いながら片手で銃を持ち、走りながら反撃としてケテルの装甲を撃ち抜く。
『ダァン! ダダダッ!!』
「……」
やっぱり凄いなこの子……僕を抱えながら……
「あ、ありがとうミカ。助かったよ。」
「いやー危なかったね。でも一応先生って銃弾1発でも喰らったら終わりなんだから、もうちょっと危機感もった方がいいと思うんだけど……」
「でも大丈夫だよ。」
「そう言ってるけど、今だって私が助けなかったら……」
「でもミカがいるから。」
「……!」
ズルッ!
「うわっ!」
ミカの足元がいきなりおぼつかなくなり、転びかけた。
足に力を入れてなんとか体勢を立て直す。
「だ、大丈夫ミカ?」
「もー……なんで先生と同じ顔でそんなこと言うのかな……?」
「へ? 何?」
「ううん、なんでもない⭐︎」
ミカはケテルの背後に向かい、攻撃が来ないことを確認して僕を下ろした。
「はい! 次から気をつけてね! 何かあったら助けてあげるけど!」
「うん! ありがとうミカ!」
僕の背中を、ミカはじっと見つめていた。
そんなミカに、ケテルは2基の機関砲を向ける。
銃弾が放たれた瞬間
ミカは真上に飛んで弾丸を交わし
空中を舞いながら、ケテルに銃口を向ける。
あぁ
身体が軽い
遊戯先生と、アテム先生
2人は、全然違うのに
遊戯先生と共に戦っていると
まるで、アテム先生と共に戦ってるみたい
そんな感覚に陥る。
不思議な感じだ
先生と共に戦うという、全能感
目の前には、デカグラマトンの預言者
でも、全然怖くない。
多分だけど
今の私は、誰にも負けない。