実際先生がいなくなったらキヴォトスの生徒ってどうなっちゃうんですかね……?
アリスはあの時、暗闇の中にいました。
大切な友達を傷つけて。
世界を滅ぼす魔王と呼ばれ
勇者の証も消え去った。
消えてしまいたかった。
このままアリスがいたら、魔王がいれば、この世界は滅びてしまうから。
でも、そうはならなかった。
世界を滅ぼす魔王であったはずのアリスを、仲間達が助けてくれたから。
なりたい自分になっていいんだと、言ってくれたから。
モモイと
ミドリと
ユズ
そして
『先生。』
どんな時も決して仲間を見捨てず、さまざまな人と結束し、困難に立ち向かう人。
そして、貴方はみんなと一緒になって、
『魔王』という名の呪縛から
アリスを救い出してくれた。
だから、今の、もう一度勇者になったアリスがいます。
あの時の貴方は、アリスにとっての勇者そのものでした。
それからの日々は、なんと夢のような時間だったのでしょうか。
大好きなゲーム開発部の仲間と、先生と再び一緒に過ごせた、あの頃。
特に先生と一緒にゲームをしている時間は、アリスにとって最高の時間でした。
先生のゲームの腕はどこまでも強く、プレイングは、私が出会ってきた他のどんな人よりも煌めいていて。
いつしか貴方は、アリスにとって憧れになって。
アリスは、貴方みたいになりたいと、本気で思いました。
そんな貴方と一緒にゲームができて、アリスは幸せだったって、本気で思えるんです。
だから、先生……
アリスは……
もう一度、貴方とゲームがしたいです……
先生……
量子キューブによって僕がこの次元に飛ばされてから2時間余りが経過した。
僕は先ほど自分と対戦した『ARIS』という対戦相手を待っていた。
常識的に考えれば、待っても来ない可能性が高い。こちらの居場所は教えていないのだから。
(でも……)
【先生ですか?】
どうしてもあの言葉が頭に引っかかる。
あの言葉にどれだけの想いが込められていたのだろうか。
ARIS、そして先生と呼ばれる人物が、僕が元の世界に戻る鍵を、何か握っているかもしれない。
そう考えると、なぜかこの場所を離れようとは思えなかった。
僕はゲームセンターの入り口近くに待機し、出入りする客を観察している。
先ほどから何名かの人間(犬やロボット)が出入りしているが、ARISと思われる人物は入ってこない。
僕は ARISの姿を知らないが、ARISは先生を探しにゲームセンターに来る。
ということは明らかに人を探しにきている素振りをしている人物が、おそらくARISなのだろう。
アリスちゃん……!
まって、はや……!
「……?」
外から人の声が聞こえる。遠くから誰かに向かって叫んでる声だ。
すると1人の少女が、息を切らしながら入ってきた。
「はぁ……はぁ……」
透き通っている。
僕がその少女を見た時、思ったことがそれだった。
人間ではないかような整った顔立ち。白い肌。空色の瞳。
地面まで優にある、長く綺麗な髪の毛。身長は僕と同じくらいだろうか。
この子が……
「君が……」
「……!!」
ダッ!
「……へ? なに……ちょ、うわぁ!」
ドサッ!
その少女と目があった途端、彼女は猛スピードで僕のところへ駆け寄り、すごい力で抱きついてきた。
あまりに強い力だったので、僕は支えきれずに後ろへ倒れる。
「やっと、やっとお会いできました……先生。寂しかったです。貴方がいなくなってから、ずっと……」
押し倒されながら、僕たちは顔を合わせる。吸い込まれるような綺麗な空色の瞳から、涙が溢れる。
「でも、アリスは信じてました……先生は絶対、パーティーメンバーのことを見捨てたりしない。アリスたちのところへ戻ってきてくれるって。」
それでもアリスはとびっきりの笑顔を咲かせる。
でも僕はその笑顔に見惚れるどころではなかった。
(この子がアリス……!? っていうか何この凄まじい力……!)
振り解くのは絶対に不可能と思わされる力。
まるで万力に絞められているような感覚だ。
この小さい体のどこからこんな力が出るんだ。
明らかに人間の力じゃない。
敵意がなさそうというところに本当に安堵する。
「……と、とりあえず、君がアリスで間違いないのかな?」
「……? はい、アリスはアリスです。先生のよく知る、アリスです。」
「いや、えっと……僕は……」
「せ、せんせ……」
「……え?」
上を見ると、今度は3人の女の子たち。
2人はおそらく双子なのだろう。金色の髪に色違いのお揃いのヘッドホンと、制服から出ている猫の尻尾のようなアクセサリー。
片方がピンクでもう片方が緑を基調とした制服の色。
そしてもう1人はぶかぶかのパーカーを着ている真紅の髪の色をした女の子。
全員先程のスケバンの人たちのように、全員頭に輪っかを付けている。
3人の少女は、アリスと同じように、僕の姿を見るや否や、目に涙を浮かべた。
何故か、嫌な予感がした。
「え、ちょ、ちょっと待っ……!」
僕が言い終わる前に
3人が僕を目掛けて腕を広げて大ジャンプ。
「「「せんせぇ〜〜〜〜〜〜!!!!」」」
そのまま自由落下に従って、僕の体へ全体重を乗せて落ちてきた。
ドスン!!!
「グハァ!!」
「もう! 先生のバカ! 一体どこに行ってたのさ! 心配かけて!」
「ほんとうに……どこに行ってたんですか!? ずっと、ずっと心配して……!」
「で、でもよかった……先生が、ご無事で……」
「ぐぅ!……あ……はぁ……はぁ……」
僕は気合を入れて、飛びかけた意識を何とか保つ。
「えっえっと……」
どうしよう。
大人になった僕からしてみたら、こんな幼い女の子たちに抱きつかれるのは別の意味で心臓に悪い。
悲しい事に身長は僕とそんなに変わらないけど。
兎にも角にも、一旦落ち着かせないといけない。
「ご、ごめん。君たちが誰と勘違いしているのかわからないけど……僕はその……君たちが言う先生では……」
「残念ながら、その方はあなた達の知る先生ではありませんよ。」
「「「「!?」」」」
ゲームセンターの前に止まった黒塗りの車。
そこから出てきた1人の女性が、ゲームセンターに入ってきた。
「……!」
(エルフ……?)
白のコートと制服を見に纏っている、エルフのように長い耳を生やした女性。
「あなたがキヴォトスに……いえ、この世界に来るのをお待ちしておりました。武藤遊戯さん。」
「……え?」
どうして僕の名前を……
「私は連邦生徒会という場所で首席行政官を務めております、七神リンと申します。以後お見知り置きを。」
リンと名乗る女性が来てから、僕にしがみついていた女の子たちは慌てて立ち上がる。
「れ、連邦生徒会がなんでここに!?」
「し、しかも首席行政官って……あ、あの恐くて有名な……」
「あなた方はミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部の皆さんですね。申し訳ないですが、そちらの方の身柄は連邦生徒会が預かります。」
黒塗りの車の運転手が、こちらへどうぞと後部座席の扉を開ける。
「どうぞ、お乗りください。」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 先生じゃないってどういうこと!? 私たちにも説明してよ!」
「そうですよ! というか後から来てなんなんですか? 私たちが先に先生を捕まえたんですから!」
「……」
ギロッ
「「「「ヒッ!」」」」
双子の反発にリンがひと睨みすると、少女たちは僕の後ろへと隠れてしまった。
僕から見ても普通に恐い。
「……どうして僕の名前を知ってるの?」
「それも後ほどお話ししましょう。」
「……」
僕の名前を知っているということは、他にも情報を持っている可能性が高い。元の世界に帰る方法も知っているかも……
僕が車に向かって一歩踏み出そうとすると
「……!」
袖を引っ張られる感覚。
振り返るとアリスが僕の服の袖を引っ張っていた。
その青い瞳がかすかに揺らいでいるのがわかる。
他の子たちもだ。
行かないで欲しいという気持ちが、表情から伝わってくる。
「……」
これは、流石に……
「えっと……この子達も一緒に行くことはできないかな?」
「……わかりました。ただし、話が拗れるとややこしいので、あくまで話をするのは私と遊戯さん2人のみです。ゲーム開発部の皆さんは、話が終わるまで別室で待機という形にさせてもらいます。」
リンが携帯電話を出し、もう一台車を出すように指示する。
「もうすぐ連邦生徒会の車がもう一台やってきます。その車にゲーム開発部の皆さんは乗ってください。」
リンは道を開け、僕を車の中へと誘導する。
「それでは車にお乗りください、武藤遊戯さん。私の知っている情報を、全てお教えしましょう。」
車で連れられ、今、僕とリンはサンクトゥムタワーと呼ばれる建物のエレベーターの中にいる。
「急に連れてきてしまって申し訳ありません。あのゲームセンターにあなたがいるという通報を受け、駆けつけた次第です。」
「通報?」
「ええ。あなたの容姿は、このキヴォトスではとある事情でとても有名ですので。」
エレベーターで上へと上がっていく。
案内されたのは、レセプションルームと呼ばれる部屋。
僕は案内された椅子に座り、リンはしばらくすると2人分の紅茶を持ってきた。
「どうぞ。」
「……お構いなく。」
リンはテーブルを挟んで僕の向かい側に座る。
ピシッとした姿勢の良さから、この人の生真面目さが伝わってくるようだ。
「えっと、それで君は何を知っているの?」
「そうですね……申し訳ありませんが、私が情報を提示する前に、まずは遊戯さんがこの世界に来た経緯を教えてください。貴方から聞いた情報と、私が持っている情報を整理した上で、貴方にお話ししたいので。」
「……わかった。」
僕は一から説明した。
スペースセンターがハッキングされたこと。
そして量子キューブと呼ばれる次元領域の扉によって、この世界に来てしまったこと。
「……なるほど、ありがとうございます。」
リンは少しの間思案した後、口を開いた。
「まず最初に申し上げておきますが、おそらく遊戯さんが一番知りたいであろう『元の世界に戻る方法』は、私は知りません。」
「……そっか。」
「私もなぜ遊戯さんがこの世界に連れてこられたのか知らないのです。なぜ、量子キューブとやらの次元領域の扉がこの世界と通じたのか?それすらも。」
そんな簡単に物事が進むわけないとは思っていた。
「ですが、誰があなたをこの世界に連れてきたのか? その人物に見当はついております。」
「……! それはいったい誰が……?」
リンが席を立つと、机の引き出しから一枚の写真を取り出し、僕へと渡した。
「こちらを」
「……これは!」
「ご存じですね。先ほどからあなたの事を『先生』と呼ぶ女の子たちがいたでしょう。この写真がその理由です。」
知っているどころの騒ぎではない。
(……なぜここに彼の写真が!?)
最後に出会った時と何も変わらない、いまだに学生服を着ている彼の姿だった。
「彼の名はアテム。3ヶ月前まで、このキヴォトスで先生をしていた人物です」
「どういうこと!? どうして彼が!」
僕は取り乱して席を立つが、リンに手で制され、冷静になる。
「アテム先生の事を話すには、まずはこの世界のことについて理解する必要がありますね。少々長い話になってしまいますが、一からご説明しましょう。」
リンはわかりやすく説明してくれた。
学園都市キヴォトスのこと
そこで暮らしている生徒達のこと
連邦生徒会のこと
連邦捜査部シャーレという部活のこと
そして連邦生徒会長が失踪し、その連邦生徒会長がもう1人の僕を推薦して、先生としてシャーレに配属させたこと。
なぜ一度は冥界に還ったはずの彼の魂が、この世界に呼び起こされたのかはわからない。
でも、どうやら彼……もう一人の僕がこの世界に存在していたということは事実みたいだった。
「……ということです。理解していただけましたか?」
「……なぜ彼がこの世界に来たのか、それはわからないんだね?」
「はい、私は彼がここに来た経緯を知りません。」
「アテムは、今はどこに?」
「ここにはいません。今からおよそ3ヶ月前。アテム先生は忽然と姿を消したのです。」
「……!」
辻褄が合った。
ゲームセンターであった、アリスを含む女の子たち。
あの子達が僕を見て泣きながら駆けつけてきた理由は、先生であるもう1人の僕が急にいなくなったからだったのか。そして僕を、もう1人の僕と勘違いしたんだ。
「アテム先生は失踪する数日前、あなたの事を私に話していたのです。」
「僕のことを?」
「はい……」
『リン、今から俺がいう言葉を胸にとどめておいてくれ。』
『いつになるかはわからないが、俺に似た、武藤遊戯という名の男がこの世界に現れるはずだ。』
『もし俺の身に何かあったとき、ソイツがきっと力になってくれる。シャーレの権限を全て渡してくれ。』
「……と、私に語っていました。」
「もう1人の僕は……アテムは、僕がこの世界に来る事を予期していた……? さっき言ってた僕をこの世界に連れてきた人物が、アテムだって言いたいの?」
「そうです。あくまで私の推測でしかありませんが……しかし、その推測を裏付けるものもあります。先ほど貴方の世界の宇宙センターがハッキングされた時、モニターに『Crate of Shittim』と書かれていたのですよね?」
「う、うん……」
「それは『シッテムの箱』という意味です。」
「シッテムの箱……それはいったい?」
「シッテムの箱とは、失踪した連邦生徒会長が、アテム先生に残した一台のタブレット端末です。現在はアテム先生と共に行方不明になったままです。」
「……!! つまりアテムが、そのシッテムの箱を使って、海馬コーポレーションのスペースセンターをハッキングし、量子キューブを利用して僕をこの世界に呼んだって事?」
「一番可能性が高いのはその仮説でしょう。なにせシッテムの箱を起動させることができるのは、アテム先生のみですから。」
「で、でも海馬コーポレーションは僕の世界ではトップクラスの大企業……いや、もしそうじゃないにせよ、タブレット端末一台でスペースセンターをハッキングできるとは思えない。」
「シッテムの箱は見た目はただのタブレット端末ですが、正体のわからないものです。システム構造も、動く仕組みも全てが普通のタブレットとは違います。」
「……」
もし、その仮説が本当なら
もう1人の僕が、僕をこの世界に……
「今話した内容が、私が持っている情報の全てです。先ほども言ったように、なぜアテム先生が貴方をここに連れてきたのかはわかりません。」
「……わかった。教えてくれてありがとう。」
リンは僕に有益な情報をたくさん教えてくれた。
この世界のこと
アテムのこと
でも、結局のところ、僕は元の世界には戻れない。
「そこで、提案なのですが……」
「……?」
「アテム先生の言伝通り、遊戯さんにシャーレの全権限をお渡しします。遊戯さんにはこれから、先生としてキヴォトスに着任し、シャーレの活動を続けながら、行方不明になったアテム先生を捜索してほしいのです。」
「僕が……キヴォトスの先生に……?」
「はい、シャーレの超法規的権限があれば、キヴォトスの様々な場所を無許可で探索できます。このままでは遊戯さんは元の世界に帰れません。ですが、私の仮説が正しければ、あなたが元の世界に戻れる方法は、おそらくアテム先生が知っているはずです。」
「……確かにそうかもしれない。」
彼がシッテムの箱を使って、僕をこの世界に呼び寄せた。
ということは、僕を元の世界に戻すことも可能かもしれない。
なぜ僕をこの世界に呼んだのか。
どうしてこの世界にいるのか。
聞きたいことはたくさんある。
なにより
もう一度、彼に会いたい。
元の世界に戻りたいよりも、その想いの方が強かった。
「わかった。」
君にもう一度会えるなら、僕は……
「僕は、シャーレの先生になるよ。そして、もう1人の僕を探し出す。」
「……はい。よろしくお願いします。先生。」
「一つ、聞いてもいいかな」
「はい、どうぞ」
「彼は……アテムはいったい、ここでどんなことをやっていたのか。」
「……良いでしょう。私が知っている、彼の物語をお聞かせします。ただし、私はあくまでその場にいたわけではないので、ザックリとですが。」
リンは席につくと、自分の紅茶を一口飲んだ。
「こちらも少々長い話になりますので、お飲み物を飲みながら話しましょう。」
そこから、彼の物語で僕たちは会話に花を咲かせた。
アビドス高等学校
要塞都市エリドゥ
エデン条約
その他多くの事件や問題が、彼によって解決されている。
彼が活躍した話の数々。それを聞いて、僕は少しだけ誇らしい気持ちになった。
「今お話ししたことも、私は詳しく知っていると言うわけではありません。当事者ではありませんので。」
「そっか……」
「詳しくは私に聞くよりも、あの子たちに聞く方が早いでしょう。」
「あの子たち?」
「そこにいるのはわかっていますよ。聞き耳を立ててないで、入ってきなさい。」
え、バレ……!
ちょっとお姉ちゃん聞こえない……!
いや、いま……あ!
ガチャ!
バタバタ!
「うぎゅう!」
「痛!」
レセプションルームの扉が突然開き、先程のアリスを含む4人の女の子たちがバタバタと倒れ込んできた。
リンが席をたち、彼女たちの前へ。女の子たちを見下ろす形になっている。
「「「ひ、ヒィ!」」」
その威圧感に双子の片割れのピンク色の子以外は完全に萎縮してしまった。
「あ、あはは……ぎょ、行政官! これはその……」
「なんですか? 盗み聞きしたことなんて、別に怒っていませんよ?」
(いや、完全に怒ってる……)
「こちらでのお話は終わりました。先生も貴方たちにお話を聞きたいそうなので、あとはミレニアムサイエンススクールでお話ししてください。」
「え!? ちょっと待って! 私たちに説明は!?」
「盗み聞きしていたのですから、必要ないでしょう。」
「い、いやでもあんまりよく聞こえなくて……」
「それでは皆さんがおかえりです。ミレニアムサイエンススクールまで送って差し上げなさい。」
「「「「「ハッ!!!」」」」」
扉の外で待機していた部下に命令し、彼女たちの腕を掴んで立たせる。
「先生、また後日お会いしましょう。」
「ちょっとおおおおおおおお!!!!!!」
ピンクの子の叫びがこだまする中、僕たちは連邦生徒会の部下に連れられて、サンクトゥムタワーを後にした。
「……」
遊戯たちがいなくなったレセプションルーム。リンが紅茶のカップを片付けようと手を伸ばした。
「酷なことするね、先輩も。」
急に声をかけられたことで、リンは手を止め視線を向ける。
「……貴方も盗み聞きですか? モモカ。」
扉のところに寄りかかるようにして、いつも通りお菓子を食べながらモモカが立っていた。
「あのアテム先生の後任なんて、死んでもやりたくないよ。アテム先生がいなくなったことで、今のキヴォトスの生徒がどんだけ不安定になってると思ってるの?」
「……それでも、遊戯先生に賭けるしかありません。あのアテム先生が、なにより信頼を置いていたのですから。」
モモカの言う通り、キヴォトスの生徒たちは今、心が不安定な状態だ。
それはあのゲーム開発部も、きっと同じだろう。
数々の事件や問題を解決してきたアテム先生という、頼りになり、信頼できる先生がいなくなり、そこにまた代わりとして新しくやって来た先生。
それを果たして、キヴォトスの生徒が受け入れてくれるのか。
「……幸いなことに、アテム先生が行方不明になっても、連邦生徒会長が行方不明になったときのように、サンクトゥムタワーの制御権が失われるということはありませんでした。我々は引き続きキヴォトスを統括しつつ、連邦生徒会長の捜索を続けましょう。」
「はーい」
モモカの気のない返事を聞きながら、リンは遊戯がこれから、先生としての責務を全うできることを祈るのだった。