大切な人を探す物語   作:お団子大家族

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行方不明になった先生を探す聖園ミカと戦う、ゲーム開発部と武藤遊戯の話④

「ブラックマジシャンだ……少しだけ、私の知ってる姿と違うけど……」

 

「あ、アテム先生の……本当に、遊戯先生も、アテム先生と同じ力を……」

 

「す、すごい! 遊戯先生もそんなことができたの!?」

 

「……」

 

 僕は手に残ったブラックマジシャンのカードを見る。

 

 もちろん僕にこんな力はなかった。

 

 何故、僕にいきなりモンスターの実体化ができるようになったのかはわからない。

 

 でも……

 

「遊戯先生……」

 

 僕は抱き寄せたアリスを後ろへと下がらせる。

 

 この力があれば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうして?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミカの呟きに、僕は顔を上げた。

 

「なんで貴方なんかが、先生と同じ力を持ってるの?」

 

 ミカは信じられないものを見るかのように僕の方を見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、私を……救ってくれた力を……こ、これじゃ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!」

 

「……ダメ。」

 

 ミカは手に力を入れて握りしめる。

 

「貴方がその力を持つなんて許せない……その力は、先生だけの……」

 

「……ミカ、君は……」

 

 少しだけ、ミカの心が見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女は今、暗闇の中にいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大切な人がいなくなり

 

 ミカの世界は輝きを失った。

 

 暗い暗い闇の中で

 

 怖がって

 

 泣き叫んで

 

 もうどうしたらいいかわからないんだ。

 

 だから、こうして暴れている。

 

「……」

 

 僕は、この子を止めなくてはならない。

 

 叫び、傷つき、泣いているこの子を。

 

 この力があれば、ミカと戦うことができるだろう。

 

 

 

 

 

 

 でも……

 

 

 

 

 

 

 

『カタ……カタ……』

 

 ミカは今、怯えている。

 

 この力は、かつてミカを救った力。

 

 大好きだった人が使役していた力。

 

 だが今は、その力の矛先がミカ自身に向いている。

 

 それが彼女にとって、どれだけの絶望なのだろう。

 

 ミカを止めるには、この力でミカを攻撃しなければならない。

 

 傷つけなければならない。

 

 それで、ミカを止めたとして

 

 

 

 

 

 はたしてミカが救われたと言えるのだろうか?

 

 

 

 

 

 僕は、アテムが残してくれていた物を思い浮かべた。

 

 さっき、シャーレのオフィスで見た、『彼が残したノート』

 

 僕は……

 

 ミカを……

 

 

 

 

 

 

「先生。」

 

 

 

 

 

 

 

「……!」

 

 横を向けば、この世界でできた初めての生徒たち。

 

 ゲーム開発部4人は、僕の意をわかっているかのように、僕より前へと出てくれた。

 

 ボロボロなのに、その瞳はまだ諦めていない。

 

 

 

「……ありがとう、みんな。」

 

 

 

 

 僕は生徒たちに感謝の意を述べ

 

 ブラックマジシャンを消した。

 

「ミカ……僕は君とは戦わない。」

 

「……!?」

 

「君も言っていたよね。先生の役目は、生徒を守ること。だから僕は、ここで誓うよ。僕はこの力を生徒を攻撃するためには使わない。」

 

「……面白いことを言うね。じゃあどうやって私を倒すつもりなのかな?」

 

「それは……」

 

「アリス達です!」

 

 アリスが叫ぶ。

 

 それに呼応するように、モモイも、ミドリも、ユズも声を上げた。

 

「そうだよ! 私たちがあなたを倒す!」

 

「これ以上好きにはさせません!」

 

「せ、先生は、私たちが守るんです!」

 

「みんな……」

 

「……戦う力は手に入れたのに、自分の手は下さずに、生徒に戦わせるんだ。」

 

「知ったふうなことを言わないでください! アテム先生だって、自分の力で生徒を傷つけたことはなかったはずです!」

 

「ミドリの言う通りだよ! それは遊戯先生だって同じ! たとえ貴方みたいな生徒でも、先生が生徒を傷つけたりするわけないじゃん!」

 

「……私は、ソイツの生徒になった覚えはないよ。」

 

 

 

 

 

「みんな。」

 

 

 

 

 

 僕の声に4人は振り返り、僕へと向き直る。

 

「ありがとう。僕を守ってくれて。」

 

 こんなに傷ついてまで

 

「僕の想いを汲んでくれて。」

 

 僕を守ってくれた生徒たち

 

「お願い。ミカを止めてほしいんだ。」

 

 そんなみんなに、もう一度だけ戦ってもらわなければならない。

 

「これからは、自分の身は自分で守るから。」

 

 僕はひどい先生なのかもしれない。

 

 けど

 

「僕が、精一杯戦術をサポートするから。」

 

 もう守られるだけじゃない。

 

 僕は僕のやり方で、生徒を守ってみせる。

 

 

 

 

 

 

「存分に戦って。」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

 

 

 

 

 彼女たちは笑顔で頷いてくれた。

 

 4人は武器を構え、走り始めた。

 

 ミカを止める戦いへと。

 

(もう先生を守る必要がなくなったから、4人で攻撃に来た……)

 

「戦う相手が3人から4人に増えたところで、何も変わらないけどね。」

 

 4人はミカを包囲するように移動する。

 

(4方からの攻撃……でも、結局黒髪のおチビちゃん以外は私に決定打を与えられない。なら、私は黒髪のおチビちゃんにさえ注意をして戦えばいい。)

 

「アリス!」

 

「はい!」

 

 僕の掛け声で、アリスは走り出した。

 

「……? どこへ……」

 

 アリスはミカの右側から大きく回り込み、走りながらミカの背後へと移動する。

 

 銃口は常にミカに向いたまま。

 

「……いくら私の死角へ回り込んだとしても、私は貴方への意識は外さないよ。」

 

「はい。わかっています。」

 

「今だ! 3人とも!」

 

「……!」

 

『ダダダダッ!』

 

『ドン! ドン!』

 

 合図で放たれた他3人の、3方向からの攻撃。

 

 ミカは避ける。

 

 ミドリのスナイパーライフルを避け

 

 避けた先を狙ってきたユズのグレネードをダッシュで躱す。

 

「……!」

 

『ダダダダダダッ!!』

 

 ダッシュで躱した先で銃を構えていたモモイ。

 

 モモイの銃弾が何発かミカの体を捉えた。

 

「痛……」

 

 またアリスがミカの背後へと回り込んでいた。

 

(なるほどね……)

 

 ここでミカは相手の作戦を理解した。

 

 アリスの攻撃をチラつかせながら、他の3人の攻撃で少しずつダメージを稼ぐ。

 

 攻撃が通じないなんてことはあり得ない。

 

 ほとんどダメージはないけど、それでも蓄積はし、スタミナは削れる。

 

 機動力を奪えば、あわよくばアリスの攻撃を狙えるかもしれない。

 

(黒髪のおチビちゃんに意識を向けさせて、ほかのおチビちゃんがチビチビダメージを与えてくるって作戦かぁ……でも……)

 

 

 

 

 

「その程度かぁ……やっぱり。」

 

 

 

 

 

「……!」

 

 ミカは一瞬、僕に侮蔑を含んだ眼差しを向けた。

 

 そして次の瞬間

 

 ミカは自分の銃を空高くに放り投げた。

 

「「「「……!?」」」」

 

 ゲーム開発部4人が空に舞うミカの銃に気を取られた一瞬。

 

 ミカは凄いスピードでモモイに詰め寄った。

 

「……へ? ふぐぇ!!」

 

 制服を片手で掴んでモモイの体を持ち上げる。

 

「ちょ……きゃ!!」

 

 その状態で今度はミドリに詰め寄り、もう片方の手で制服を掴んでミドリを持ち上げた。

 

「モモイ! ミドリ!」

 

「へ!? ちょっと待っ……!」

 

「ま、まさか……」

 

 2人の制止に耳を貸さず

 

 ミカはモモイとミドリを持ち上げながらユズの方へと振り向き

 

 2人をすごい力でユズに向かってぶん投げた。

 

「「きゃあああああああ!!!!」」

 

『ドゴ!!!』

 

「「「ぐぅ!!!」」」

 

 3人の体がぶつかり、鈍い音を響かせる。

 

「も、モモイ! ミドリ! ユズ!」

 

「「「う、うぅ……」」」

 

 そのタイミングでミカの銃がミカの手元に落ちてきた。

 

 落下地点も全て計算に入れて、銃を放り投げたのだ。

 

「この程度の作戦で、私に勝てると思ったの?」

 

 ミカが3人へと銃口を向ける。

 

 アリスのスーパーノヴァの銃口は、完全にミカを捉えている。

 

 しかし、アリスは引き金を引けない。

 

(ダメ……! まだこの人のアリスへの意識が途切れていない……! このままスーパーノヴァを撃っても、避けられる確率は、ほぼ100%……!)

 

「めんどくさいから、3人とも少しの間眠っててもらうよ。」

 

(でも……! ここで撃つしか……!!)

 

 アリスが引き金に指をかけた。

 

 その時

 

  

 

 

 

 

 

 

『カッ!』

 

「「「「!?」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 モモイのポケットが眩い光を放った。

 

「へ!? なにこれ!?」

 

 モモイ自身も驚いている。

 

 それはそうだ。

 

 さっきモモイ本人にも気づかれないように、こっそりポケットに忍び込ませておいたんだから。

 

 

 

 

 

 僕は、僕のやり方でみんなを守るよ。

 

 

 

 

 

 モモイが自分のポケットを探る。

 

 取り出したのは、輝きを放っている一枚のカード。

 

 モモイはそのカードを見て呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジカル……シルクハット……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間

 

 突如空から4つのシルクハットが飛来した。

 

「!?」

 

 シルクハットがモモイたち3人の姿を隠し、高速でシャッフルされた。

 

「こ、これは……!!」

 

 あまりの光景にミカは呆然として動かない。

 

「アテム先生の……! 貴方が……!」

 

「3人が入っているシルクハットを当てるんだ。当てられたら、君の勝ちだよ。」

 

「……ッ! こんなもの……!」

 

『ダダダダダダダダダッッ!!!』

 

『ドガァン!!!』

 

『ドガァン!!』

 

 ミカはシルクハットを端から順に攻撃していく。

 

 銃弾が数発当たり、爆発していくシルクハット。

 

「あと一つ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく、意識が別のところへ向いてくれたね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……! やば……!」

 

「……」

 

 破壊されたシルクハットの影に隠れたアリス。

 

 全部読まれてた。

 

 3人のおチビちゃんで攻撃すれば、私がまずは3人を戦闘不能にしようとしてくることも。

 

 そこからシルクハットを使えば、私の意識が黒髪のおチビちゃんから逸れることも。

 

 相手の行動を先読みし、裏をかいて仕掛ける駆け引き。

 

 その姿は

 

 まるで……

 

 

 

 

「せん……せ……」

 

「光よ!」

 

 

 

 

 

 エネルギーはもう溜まっていた。

 

 眩い光に体が包まれ

 

 ミカの意識は、そこで途切れた。

 

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