命をォォォォオ燃やせェェェェェエ!!!(ガチ)   作:ツーカーさん

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カカリアは学生時代、セーバルと共に問題児として扱われ変な発明を沢山していたことと、熱血な性格であったことはストーリーで明かされています。本日はそんな話。




第5話 熱血(ガチ)

 

 借家の鍵を閉め、家を出る。

 街に行き交う人々に軽く挨拶をしながら、上層部と下層部を繋ぐケーブルカーに乗る。

 

 ケーブルカーに揺られている最中、乗っているのは己と老人だけだと気づく。

 自分もまだ頭が覚醒していないらしい。うつらうつらと老人が舟を漕ぐように、自身の舟も揺られ心地のいいケーブルカーの中で一緒に遊覧船と行きたいところだが、完全に眠る前に上に着いたようだ。

 

 本日は、一週間のうち唯一の休息日である。

 ケーブルカーから降り、通路に従って階段を上る。

 

 本日も相変わらずの晴天であるが、肌寒いと感じるのはベロブルグ故の気候だろう。街中の温暖装置が起動しているのは日々の鉱夫達の苦労の賜物だろう。最近は地髄の枯渇が懸念されているが…まあなんとかなるだろう。階段を上り終えればそのまま右方面へ身体を向け、外縁通路へと足を運び出した。本日の目的地はちょっとしたカフェで生徒と待ち合わせだ。

 

 道中、鬼ごっこをしてはしゃぐ子供や、荷物の整理をしている中年の男性、客寄せの溌剌とした声、掲示板を読む男の畝る音、ポストマンの疾走姿を見て今日も活気に満ちているなぁと年寄りのような思考になる。

 

 外縁通路を進み、行き当たりの角を6度くらいは曲がる。

 とかくここは、少し迷路のように複雑なので、迷う者もしばしば居る。

 最近では裂界の侵食もベロブルグへと入ってきているそうで、次はこの外縁通路なのでは無いかとも言われている。そのおかげが人通りも少ない。

 

 

 10分程か歩いて、ようやく小洒落た喫茶店に着いた。

 客足は少なかったので、お目当の人物をすぐに発見出来た。

 それに何より、その人物は良い意味目立つのだ。

 

 「待たせたな、カカリア」

 

 机の上には先に頼んでおいたのかコーヒーが二つ置かれており、湯気が揺れている。

 

 「それ程待っていませんよ蚩尤先生…朝早くに呼びつけて申し訳ありません」

 

 出会い頭に謝罪をする彼女の姿は随分とカジュアルだ。制服との印象がまるで違う。軽い雰囲気といえば良いか、服について特に詳しい表現はよく分からないが、似合っていると感じた。やはり、女性はそういうのに気遣う者なんだろう。因みに薬師にお洒落という感覚は無く、いつも同じ格好であった。

 

 「そう、敬語で喋る必要もないだろう。今日はどちらもオフの日だ。軽く話しでもしよう」

 

 「じゃあ…先生に聞くけど、これって本当に大丈夫なのかしら?奥さん何か言ってなかった?」

 

 「何か言える距離でもなし。それに、やましい事など一つたりとてないだろう。男女の密会でもあるまい」

 

 「そうね。私もこんなジジ臭い事を言う若い姿の彼氏なんて扱いがどうすればいいのか分からないわ」

 

 「なかなかに言うな。君は…」

 

 「それじゃ、早速本題を話すわね」

 

 気分を切り替えたようで、その目が少しばかし細くなる。

 実は、彼女からの要件は事前に聞かされていない。会った際に伝えるとは聞かされたが…。

 既に、セーバルとの誕生祝いの品はエレキで済ませたので、プレゼント相談という訳でもないだろう。他にも、勉強について、進路についてと学業方面で考えてみたが、将来ベロブルグの大守護者になる事が決定しているカカリアにとって、進路の心配は無し、勉学の方も大守護者たる自覚あってか本人の努力もあり学院内でトップを維持している。学業方面では何の相談事もないだろう。ジェパードの様に軍事的な参考話を聞きに来た様子でも無し。

 一体、何の話だというのか?

 

 「今日、先生に来てもらったのは他でもない。私は外に行きたいの」

 

 少しだけ、持っていたコーヒーが揺れる。

 

 「ベロブルグ郊外の観測隊ならあると思うが…」

 

 「私はそこに入る前に大守護者になってしまうわ」

 

 横目で周りの客を見やる。それ程大きな声で言った訳でもないので聞こえていない様だった。距離も離れているのも一つの要因だろう。

 

 「そもそも、許可なしに郊外に出ることは犯罪だ」

 

 「先生だって、最初はその罪を犯したんでしょう?」

 

 「俺は…」

 

 「とにかく、一目でいいから外の現状を見てみたいの。城内の人達は話にならないわ。自覚を持ちなさいカカリア。貴方は近い未来大守護者になるのですよカカリア。そんな危険な事をさせられる訳がないでしょうカカリア。…もううんざりよ。大守護者になったらデスクワークが常になるに決まってるわ。もう、後がないの」

 

 「あと3ヶ月で大学部も卒業だったな。そういえば」

 

 「これから大守護者になる為の手続きやら儀式で学校にもまともに通えなくなるわ。勿論この事はセーバルだって知ってる。…お願いよ先生。今日だって色々なレッスンを前倒ししてようやく手に入れた休暇なの」

 

 「何故そこまで外に拘る?」

 

 「それは…」

 

 「大守護者故に、外の現状を知るべきだとでも思ったか?そんなものは君が専攻として扱っている軍事史で腐るほど読んだだろうに。外は過去の民家と開墾の跡地が氷雪に埋まっている。現在であればその極寒に加え、裂界生物達の巣がそこらと出来上がっておる。氷像となった人も裂界生物もいるだろう。悍ましくもな…。人類は1時間として生きていけん。特別な訓練をしてなければな…その訓練してるもの達ですら怪しいが…」

 

 「蚩尤先生もそんな事言うのね…でも特別な訓練なら私も受けたわ。これでも私は軍人よ。幼い頃から受けた英才教育の中で槍術の扱いを受ける物があったわ。勿論、今もそれを続けているし、並のものには負けない自信もある。実際、シルバーメインの小隊との作戦にも参加して無事作戦を終えれた経験もあるわ。自分の身だって自分で守れる」

 

 「第一、君の言う城内の人間のように私も1人の引率者だ。危ない橋を渡らせるわけには…」

 

 「先生は、元々星渡の民。大守護者様から与えられた仕事の筈、未来の大守護者たる私に言える義理はないんじゃないかしら?」

 

 「無茶苦茶だ」

 

 それ程までに行きたいのか。

 

 どうしたものかと頭を悩ませる。

 カカリアが何故そこまで外に興味を持っているのかはよく分からない。

 だが、俺を頼る理由ならばおおよそ見当はつく。講談から、俺にある程度の戦闘能力がある事を知っているのだろう。何より、長く生きたことで柔軟な対応をしてくれるんじゃないかという希望性、ベロブルグ外の者であるという比較的フットワークが軽い立場。…それらを加味しての思い切りの良さだろう。

 

 大守護者の後継者をそんな危険なところへ連れて行くなど、グレーシャが聞いたらどんな極刑を言い渡されるものか…銃殺刑もあり得るかもしれない…その程度で殺される祝福ではないが。

 だが、引率者としての立場を捨てるならカカリアの案には乗っても良い。なにせ、借家を借りる前までの俺の住居は外だった。ある程度の地図なら頭に入り込んでいるし、それ程危険な裂界生物もいないルートならば知っている。

 

 果たして、可愛い生徒の願いを聞き入れるべきか…引率者としてもらった立場を優先すべきか…答えは案外簡単であった。

 

 「……このコーヒー代を奢ってくれたら良しとしよう」

 

 「やった!先生ならそう言ってくれると信じてたわ!」

 

 「極寒の大地で少しとはいえ活動するんだ。十分な防寒具は身につけておけよ」

 

 「勿論よ!」

 

 オレグに見つかった際になんと言おうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほんっとに寒いわね!」

 

 その言葉とは裏腹に明らかに声のトーンが変わっている。随分と興奮しているようだ。

 本当に外への羨望があったんだろうか。

 

 「私、先生の言われた通り随分と厚着してきたのに、先生は相変わらずの服ね…寒くはないの?」

 

 「前も講談で話したが、とある灼熱の世界で少しばかし面妖な技を手に入れてな。それ以降寒さにはとことん強くなった」

 

 「そう言えば最初の講談で言っていたわね。もう二年も前の事だから忘れちゃってたわ」

 

 2年とは記憶が霞むほどに長いか…やはり認識が異なる。

 

 「それで、どうなんだ?待望の外へ連れてこられた気分は?」

 

 「イイ気分だわ…やっと、叶ったんですもの」

 

 カカリアは燥ぐ。童心を取り戻したかの様に。だが、決して遊びだけで済ましてはいない。何か別の目的があっての事らしい。

 最初こそは雪の感触を確かめ笑い、少し走っては転げては笑い…と普段の彼女からは想像出来ないほど無邪気で純粋な顔を見せていた。

 だが、遂に辿り着いた過去の惨状を見た途端に、雰囲気が一変した。

 過去の家屋に手を掛け物思いに耽り、誰かの遺品を見ては目を閉じて何かを黙祷する。

 死体となって裂界生物に変容するも、氷像に閉じ込められた戦士の名残にも敬礼をした。

 ベロブルグの次期大守護者として行動か、カカリア自身の考えがあっての行動か…それは分からないが、彼女は…長に立つべき人間だ。傲慢にもそう思った。

 やがて、決心したように面を変えて、俺に向き直って軽くそんなことを言う。

 

 「ね、先生、あっちに行ってみない?」

 

 「何?おい、待てそっちは…」

 

 小走りで行くカカリアの後を追う。

 突然の独断行動に少し焦りが募る。

 

 「わぁっ、綺麗…」

 

 幸い、裂界生物は居なかったようだ。

 カカリアの眼前にはベロブルグの全景が観れており、夕陽が蜜柑色に街を装飾していた。街中では絶対に見れないほど綺麗な構図だった。これを絵として名付けるとしたら『落陽』だろうか。

 

 「綺麗だな…」

 

 当たり障りの無い言の葉を紡ぐ。絵画的表現には慣れていないし、何かを事細かに捉えると言うのも自身は不向きだった。

 

 「……守ってみせるわ。絶対に。この景色も、人々も。皆が幸せに暮らせる様に…」

 

 綺麗な景色に心動かされてか、いつぞやの屋上でした決意を再び口に出した。

 俗に言うセンチメンタルと言うやつか。

 

 「決意は持てたか?」

 

 「ええ…」

 

 「もう十分だろう。戻る…」

 

 「待って!」

 

 「…何故だ?」

 

 「まだ、ここに居させて…少しだけでいいから…」

 

 「…いいだろう」

 

 すると、カカリアはどうしたことか、踵を返して何やら地面に視線を移し始めた。

 二歩、三歩とゆっくり歩き、何かを探しているようだった。

 

 「…この辺りの筈なのに…」

 

 暫くその様子を眺める。

 そして理解した。彼女はなにも大守護者たる決意を持ちにきたわけでも、ただ遊びに来たわけでもない。

 探し物をしに来たのだ。

 思えば、ここに来てから前よりも地面を注視していた様に思う。ただ吹雪の風が強く、下を向いているだけかと思ったが、そうではなかったのだ。

 家屋に入ったのも、念の為この風で飛ばされてないか散策したかったのだろう。

 

 「一体、何を探しているんだ?」

 

 実際に、問いかけてみる。

 

 「そうね…ここまでしたら流石にバレちゃうわよね。…とあるイヤリングを探しに来たの」

 

 「イヤリング?高価なものだったのか?」

 

 「いいえ、買ったのはちょっとした骨董品店でそこまで高くもなかったわ。ただ、セーバルと一緒に買ったペアルックで、今まで大切にしていた物よ。私が月でセーバルが太陽を象ったイヤリングだった。ただ…ここに来る前のカフェで言った、シルバーメインとして参加した作戦中に裂界生物に襲われてね。いつのまにか無くなってたわ……アレは、私の守り神みたいなものでね…不思議とそのイヤリングを付けていると不幸に見舞われないの」

 

 「そうか…そんな大切な物を探すのに、チャンスはこの日しか無かった訳か…」

 

 「ええそうよ。なんとしてでも今日探すの。例えこの腕が凍りつこうとも、先生が呆れて先に帰ろうとも探し出すつもりだったわ!」

 

 「豪胆な女傑か君は。流石、未来の大守護者様と呼べばいいか?」

 

 「好きに言ってちょうだい!」

 

 「ははは!まあ、その気概は気に入った。その覚悟に免じて手を貸してやろう」

 

 「本当に!?」

 

 「ああ、では早速、俺の秘技を見せるとしようか」

 

 「秘技?」

 

 「まあ、そんな大層なものでもないが…」

 

 灼熱の世界で得たという生命の業火だ。もっとも威力は本来の物と比べると大層低い。

 精々、ここら近辺の雪を一気に融解させる程度のものだ。

 掌から火種()を取り出し空に掲げる。右手にその火種を握り込ませ、少し大袈裟にばら撒いた。

 

 するとどうだ、みるみるうちに銀世界は消え失せ、残ったのは久しく見ていなかった土の色の地面だ。

 

 「それが先生の言っていた。灼熱世界の炎……暖かい…」

 

 「これで、見えもしやすい。活動もしやすいだろう?存分に探せ」

 

 「ありがとう…蚩尤先生」

 

 そこから2人で、ありとあらゆる場所を探した。

 光り物ということで光源である炎も出して、反射光がないかと2人で目を張り探した。

 探している途中、気温が高くなった状態で厚着で行動していたため、汗を掻き、服を脱ぎ始めたカカリアの着脱は極力見ないようしながらもイヤリングがないか探して、少しばかしお小言を貰いつつも探した。

 徐々に捜索範囲も拡大していき、小一時間ばかしの時間が経った頃。

 漸く、カカリアの方から吉報が届いた。

 

 「あった…!!あったわ!!先生!」

 

 「何!本当か!」

 

 「ええ。ただ、月の形をした部分が綺麗に欠けている状態だったけれど…」

 

 装着部分のみが残り、大切な装飾部分は何かに切り取られた後の様に無かった。

 一体誰が…と考えたところで直ぐにあの永冬の災影の仕業だろうと察しがついた。戦闘中に落としたということなので、その可能性は高い。なにより、カカリアがしているイヤリングはノンホールイヤリングだった。これでは激しい動きを必要とする戦闘をすれば落ちてしまうだろう。まあ、それも分かっていたんだろうが、魔除けの意味もあってつけていたんだろう。

 

 「……そうか…でも近くにあるかもしれない。まだ探してみよう」

 

 「そうね。まだ、私だって諦めてないわ」

 

 

 その後、結局月の形をした部分は見つからなかった。

 最後まで諦めず汗だくになって探していたカカリアの姿が脳裏に焼き付いている。

 

 明日の朝にまで探す勢いだったが…流石に異変に気付いたシルバーメインに見つかり、共に大目玉を食らった。

 

 特に、グレーシャの怒りは凄まじく俺でも萎縮したものだ。

 お陰で、2週間の謹慎処分を喰らい、俺は暫く下層部の人たちと共に暮らすことになった。

 

 カカリアが珍しく目を腫らした姿は…多分、今後見ることは無いだろう。

 

 

 




スタレの主人公組との触れ合いは何十話か後になりそうです。
まあ、何しろベロブルグ民との交流をメインにした小説ですからね。
開拓者達に付き添うまでの前日譚でもありますので、主人公組との掛け合いを楽しみにしている方がいればすいません。

一応、仄めかして言うと、蚩尤と主人公の相性は良いです。

因みに、イヤリングは現在、セーバルが付けてる物です。というか、そっから今回の話の種を貰いました。
まあ、あのデザインで太陽はこじつけ過ぎたかなと反省中。

そういえば、なんで大守護者版カカリアさんの左耳には、クッソ痛そうなイヤリングないんだろね。ブローニャにあげたとか…?



あとから気づいたんですが、設定ミスってました。星穿列車に来た時のブローニャが姫子のコーヒーを飲んだ時に言っていたんですが、ベロブルグではコーヒーが飲みたくても飲めない代物の様で、あるにはありますが、ベロブルグの貴族たちが買う様な超高級希少品だそうです。…この小説では普通に喫茶店で出してますが…まあ!きっと店主が貴族と仲良くて未来の大守護者であるカカリアに融通を利かせたって事にしましょう!!うん!無理やり!

頑張って姫子のコーヒー飲もうと自己暗示してたブローニャが可愛かったです。
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