魔王は最初の町の宿屋にいる。   作:yosshy3304

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第十話 対魔王戦線

 『ゴブリン』一般的には醜悪な顔で子供位の身長であり、武具を装備して襲ってくる。その武具は亡くなった冒険者の物が多く、欠けていたり折れていたりする場合が多い。多産で同族同士だと1ヶ月に一人、他の種族とでは3ヶ月に一人のペースで生まれる。集落を形成して数百人規模の軍隊を指揮する能力を持つ。強さは大した事はないが、複数での連携攻撃を得意とする。

 

 冒険者の新米が先輩に教えてもらう最初の格言が『ボブゴブリンならブチコロセ。ゴブリン三匹なら逃げろ。』であることが、ゴブリン達の厄介さを物語っている。

 

 ちなみにボブゴブリンは精々が棍棒を持った一般人であり、力でもってリーダーの座に収まったゴブリンが進化した魔物である。その為か戦の時は、数十のゴブリンを率いているが、それ以外は単独行動が基本であった。

 

 西側の魔の森に多く出現するため、此の辺りの人間には当たり前の存在でもあった。

 

 そんなゴブリンが三匹、町を走っていた。身形は小奇麗に麻の布で作られた衣服を身に纏い、首から看板を下げて、東の大通りから中央広場は一直線に突っ切り、西の大道りへ。その最西に位置する大きな建物に入っていった。

 

 「…あん?なんで街中にゴブリンがいんだ?」

 

 ゴブリンの存在に気付いた冒険者の一人がそんな疑問と共に、武器を抜いた。

 

 「…いいんだよ、そいつらは。看板下げてるだろ。」

 

 もう一人が正体を知っているようで、武器を抜いた男に注意していた。

 

 「おや、何か連絡ですか?」

 

 ちょうど通りかかった、細身でメガネを掛けた男がそんな騒動に気付き、足元のゴブリンに気付いてそう問うた。この男は、このギルドの副ギルド長であり、ギルドの書類仕事全般はこの男の仕事であった。

 

 ゴブリンたちは、下げていた看板を裏返し、副ギルド長に見せた。

 

 「……これは、朗報ですね。すぐ城に早馬を出します。」

 

 あなた達もご苦労様でした。そう声を掛け、副ギルド長は奥に入っていった。ゴブリン達の下げていた看板には、宿屋《魔王城》の名前が入っていたのだった。

 

 

 

 「騎士団を派遣すべきだろうっ。」

 

 「馬鹿たれめ、そんなことをすればどれだけ犠牲者が出ると思う!!」

 

 城の会議場は今紛糾していた。ギルド長や、騎士団長を筆頭に、有事の際には軍隊を出さなければいけない高位貴族達が叫ぶ。西の魔の森に現れた四人の魔王に対する手がなかったのだ。一人で有れば、勇者を派遣して終わり。二人でも先代の勇者ジャナサンがいる。しかし現実にいる魔王は四人。対策が全く打てないでいた。

 

 「国王陛下、こうなれば騎士団を派遣し、魔王達を分断、勇者ウオイス一行と先代の勇者ジャナサンで各個撃破という手しかありませんな。」

 

 「うむ、その手しかないだろうのう。」

 

 大臣が国王に、紛糾する議論の改定案を提案する。そんな時だった。冒険者ギルドから早馬が到着した。

 

 「シャランは無事だそうだっ。」

 

 国王の言葉に静かに見守っていた者達は歓声をあげる。少しだが希望がみえてきていた。

 

 「うむ、世話になったな。」

 

 「もう少し休んでいても罰は当たりませんよ。シャランさん。」

 

 「いや、なに、これ以上寝ていると本当にベットから離れられなくなりそうでな。」

 

 シャランは礼だけ言うと、代金を払い出て行こうとする。メイズは一声掛けるも、本当に一声だけ返して、出て行ってしまった。

 

 「ふう…、頼ってくれてもいいのになぁ。」

 

 思わず口から洩れたメイズの本音。看病の様子からメイズ自身気付いていない気持ちを見抜いていた、それを聞いていた宿屋《魔王城》の従業員はニンマリと笑っていた。

 

 「おや、シャランさんはもう行っちまったのかい?」

 

 「あっ、女将さん。はい、今出て行かれました。」

 

 「なら、準備しないとね。ほらメイズもグズグズするんじゃないよ。」

 

 「へっ?」

 

 何が何だかわかっていないメイズの背中を押して、女将は裏に行ってしまった。

 

 

 

 シャランは、ギルドにて討伐隊の編成をしている副ギルド長に面会を求めていた。しかし中々捕まらず、受付嬢と口論になっていた。

 

 「…だから、有象無象の者達を集めても、唯数を集めるだけじゃ駄目なんだよ。」

 

 「しかし、王国政府が決めたことですから。」

 

 この手の文句は何度か聞いているのか、定型的な文句で返される。それがまたシャランの平静を奪い、シャランが再び口を開こうとしたとき。

 

 「シャランさん!!来ていらしたんですか!?」

 

 副ギルド長が出てきて、シャランに声を掛けてきた。

 

 「副ギルド長!!」

 

 「まずは無事でよかったと言っておきましょう。時間がありません。付いてきてください。途中で説明します!!」

 

 シャランが何か喋る前に、副ギルド長はギルドを出ていき、西門に集結していた冒険者達をかき分け、前の方に歩いて行った。

 

 副ギルド長が説明を始める、その説明によれば、今回の作戦では騎士団が魔王達を分断。分断された魔王を足止めしているすきに、勇者二人による各個撃破するという物だ。この作戦の為に集められた騎士達に代わり、門の警備を冒険者がするというものであった。

 

 門を出て、魔の森の手前に整然と並ぶ騎士達の前に何人かの人影が見える。

 

 「よう、シャラン。無事で良かったよ。」

 

 「ジャナサン、お前にそんな笑顔は似合わないぞ。」

 

 ジャナサンは安堵した笑顔で話しかけてきたが、シャランの辛口にバッサリ切り捨てられた。

 

 

 

 「へぇ~、やるじゃん。まさか分断されるとはねぇ。」

 

 「ちっ、全く動じてねぇ。」

 

 「当たり前でしょ。相手は一人でも俺達を相手できるんですから。」

 

 深い森の木々がこの作戦の助けになって、魔王達の分断には成功していた。しかし、魔王達は分断されたことが弱みに等ならないと、圧倒的に強気であった。そのことに、ジャナサンは舌打ちをし、ウオイスは魔王を警戒しながらそういった。

 

 「それじゃ、暇つぶしに相手してやるよ。俺はジャガン、簡単に負けちゃ困るよ。」

 

 ジャガンが名乗り、腕を振るった。

 

 

 

 「意識をそらすな!!むやみに攻撃したりするな!!我々の目的は時間稼ぎなのだから。死ぬのは馬鹿らしいぞぉ!」

 

 シャランは声を張り上げていた。騎士達の指揮官として任命されたからだ。シャランの言っていた有象無象では魔王には勝てない。確かにその通りだろう。だが、負けない戦いはできた。ましてや、そういう事が得意な騎士達がそういう戦い方をするのだ。膠着状態にもちこんでいた。

 

 「うぐっ!!」

 

 「……こういう場合は指揮官を狙うのがクリアの鍵と聞いた。」

 

 シャランは突然飛んできた斬撃を自身の幅広の大剣を盾代わりにして防ぐ。シャランの前に魔王が一人立っていた。

 

 「……こういう場合、名乗るのが様式美と聞いた。アクレツ、お前頑丈か?」

 

 アクレツが殴りかかってきた。

 

 

 

 「さて、どうする?ウラミー。」

 

 「うん、邪魔だよね?ツラミー。」

 

 他の魔王達と違い、同じ顔をした魔王達は、目の前で盾とランスを構える騎士達を見てウンザリしていた。

 

 「さて、少しは強い人居る?」

 

 「うん、居ないと思うよ?」

 

 動き出した彼らは完全に同期していた。騎士達の被害が最も多いのも、此処であった。

 

 

 

 「少しはやるね。暇つぶし第二弾発動ってね。」

 

 「何、何をする気だ!?」

 

 ジャガンがそう言い、腕を上に上げ、炎の魔弾を打つ。訝しむ勇者ウオイスを余所に、森の一部から地鳴りが聞こえてきた。

 

 「なっ、何だっ!!」

 

 「おっ、おい。あれを見ろ!!」

 

 ジャナサンが気付き、指さす方向には、城壁に向かう部隊と、自分達の方へ向かってくる部隊がいた。それらは黒い影のような者達で、様々な形をしていた。

 

 「シャドウナイトにシャドウマジシャン。上位のカオスシャドウも居やがる。」

 

 ジャナサンがそれらの魔物の正体に気付き、声をあげた。

 

 「あっははははは、君達が、最初に僕達に気付いてから何日経っていると思っているのさ?僕達も準備させてもらったよ。」

 

 心底楽しそうに笑うジャガン。戦いは佳境を迎えていた。

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