魔王は最初の町の宿屋にいる。   作:yosshy3304

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第十一話 町民の反撃

 「おい、あれ何だ?」

 

 「うん?…黒い影?」

 

 「…違う。魔物だ。影の魔物の大群だぁっ!!」

 

 実はカオスシャドウ達、魔王達が用意した魔物の大群に最初に気付いたのは、西門の上で戦況を見守りつつ、哨戒していた冒険者であった。

 

 直ぐに哨戒をしていた冒険者は危険を知らせる鐘をならした。その他の冒険者達が西門の扉を閉める。いまでこそ町の入口の一つであったが、元々は城門であり城壁であるその門はそう易々とは破られることはなかった。

 

 冒険者達は城壁だった塀の上から矢や砲撃魔法で攻撃をする。しかし矢は擦り抜け、魔法は当たっているものの、根本的に魔力不足であった。次第に城門であった大きな門が破れかける。瞬間、門が外側に向かって弾けた。

 

 

 

 冒険者と聞いて、あなたは彼らの力量がどれ位だと思うか。一般的には魔物を相手に大暴れする荒くれ者。一般人とは隔絶した実力の持ち主と思っている人が多いはず。

 

 大体は当たっている。彼らは人と言う種族よりも格上の相手と日夜、死闘を演じているのだ。そんじょそこ等の実力では生きてはいけない。

 

 では、そんな冒険者相手に商売をする人々の力量はどれ位だと思うか?実は下手をすれば冒険者よりも遥かに高い実力者がゴロゴロと存在した。

 

 この最初の町限定等と言うなかれ。確かにメイズ等、特殊な立場の者達もいる。破られかけた門を内側から破壊したのも彼だが、それでも、強者はいた。

 

 メイズの魔法攻撃によって半壊した影の魔物軍団に跳び込む者がいた。両手に日本刀に似た長刀剣と呼ばれる武器を握り、魔物を次々と切り殺す。

 

 「今宵の経脇は血に飢えてるぞ。」

 

 その前に朝だし、勇者側の援軍の筈なのに怖いことを言う彼は武器屋の主人であった。彼は元々冒険者であった。しかし、ある時後生一本と決めていた自身の剣が折れてしまった。名工に頼み込み、何とか修復してもらおうとするも、どんな名工でも無理だと言われてしまった。そこで彼は自分で治してしまおうと考えた。一人の名工に弟子入りをし、自身の腕を鍛えている所に、その腕を見込まれ武器屋の親父に収まった経歴の持ち主だ。

 

 「必殺、『ボールヒット』、まだまだ、あんた達これをくらいなぁ。目玉返し。」

 

 また、隣で恰幅のいい女性がお玉とフライ返しを持ち戦っている。まぁ、誰かは言わなくても判ると思うが、宿屋《魔王城》の女将であった。彼女は大した経歴を持っているわけではない。しかし、日夜メイズという魔王と暮らしているのだ。高密度の魔力に晒されている体は、耐えられるように進化していた。

 別に必殺技でもないのに勢いだけで叫んでいる。後でこの時を振り返り、恥辱に身を震わせるに違いない。

 

 彼らを筆頭に、冒険者相手に商売を行っている者達が援軍として現れた。

 

 「なっ、なにっ!?」

 

 「…意外な援軍だな。」

 

 「メイズは居ちゃいけないでしょっ!!」

 

 町人という戦力には普通数えない者達の援軍によって、折角用意した影の魔物軍団が壊滅させられるのを見ていたジャガンは驚き、実力はあるのを知っていたジャナサンは思わず顔を抑え、ウオイスが援軍に魔王が混じっている事にツッコんでいた。魔王軍をぶったおす魔王。

 

 数分程度で、騎士団の背後を襲おうとしていた魔物達は、泣き喚き鼻水が垂れるのも構わず逃げ惑っていた。

 

 

 

 「…ぐっ、なんていう力だ。」

 

 「おいおい、俺達じゃぁ、これが精一杯だぞ。」

 

 一部の騎士達もまた壊滅しかかっていた。

 

 ウラミー、ツラミーと名乗った同じ顔の魔王達の所だ。

 

 「さて、やっと終わりだね、ウラミー。」

 

 「うん、やっともっと面白い所に行けるね、ツラミー。」

 

 二人が声を合わせて、『それじゃぁ、バイバイ。』と、まるで子供が玩具を捨てるように、騎士達に腕を振るった。

 

 「あらあら、だめよ。オイタしちゃ。君達の様な子供には早すぎるわ。」

 

 が、その腕を掴む妖艶なウエイトレスがいた。

 

 

 

 「ちっ、面白い事の途中だったのに。」

 

 ジャガンの攻撃は苛烈を極めていた。折角の面白くなりそうな事を邪魔されて怒っているのだ。動揺したのは人々のはチャンスが生まれた喜ばしい事なのかもしれないが、攻撃にさらされているジャナサンとウオイスは堪ったものじゃない。何とか受け流すのに必死だ。

 

 しかし、体力の低下だけは避けられなかった。普段ならなんともない小さな段差に足を取られて二人とも転んでしまったのだ。

 

 「なんだ、それだけか。」

 

 ジャガンは本当に興味を無くしたような目で見下ろしながら腕を振るった。

 

 「…ぐはっ、ってアッツうぅ!!」

 

 振るいきれなかった。何処からか飛んできた鋼鉄の腕がジャガンの顔に命中し、ジャガンを吹き飛ばしたからだ。しかも、どうやらその腕は熱せられていたらしく、熱さに転げまわるジャガン。腕だと思っていたのは鋼鉄の小手であった。片一方の小手がない鋼鉄の鎧を着込んだ文字通り燃えている炎の料理人がいた。

 

 

 

 「…ぐっ。」

 

 「……お前脆い。もういい。」

 

 アクレツはシャランを追い詰めていた。シャランは卓越した技術と長年の経験から、アクレツの怪力を防ぎきっていた。彼女の持つのは自身の身長と同じ長さの大剣だ。その重さの為、受け流す、避けると言う事ができなかった。アクレツの高い自力に押され遂に大剣が半分に折れてしまったのだ。

 

 アクレツは飽きてしまったのだろう、身体強化にまわしていた魔力で砲撃魔法をシャラン目掛けて打つ。それは、余りに巨大で例え身軽でも、避けることはできなかっただろう。その威力に気付いたシャランは諦めていた。時間稼ぎは十分にしたと言えるかは判らない。しかし自分の持てる力は出し切ったと言える。心残りは、もう一度メイズに…。

 

 瞬間、砲撃魔法の魔力が何かに切られた。その威力は高く、斬撃の通った後は大地に刻まれ、木々は切り裂かれ、山は真っ二つに、そして雲をも切り裂いていた。久しぶりに陽光が降り注ぐ。

 

 「大丈夫ですかシャランさん。」

 

 会いたかった魔王の声がした。

 

 

 

 

 

 「さて、この手を離してくれるかな?」

 

 「うん、僕達を子供扱いはやめてほしいよね。」

 

 「そうね。離してあげるわ。」

 

 ランは二人の魔王をブン投げた。

 

 「さて、殺されたいみたいだね、ウラミー。」

 

 「うん、嬲り殺してあげようよ、ツラミー。」

 

 二人の魔王は目の前の人物が、原初のサキュバスだとは気付いていなかった。それはそうだろう。ランは元々人の姿に近い。背中にある羽さえ衣服で隠せば人にしか見えなかった。さて、どこの世界にアンミラを着て魔王に挑む者がいるのか。目の前の存在はそんな格好で自分達に挑んできている。舐められていると感じた魔王二人は、ランを嬲り殺す事に決めた。

 

 左右から、身体強化した肉体で攻める。しかし、ランには届いていなかった。同じく身体強化した腕で反らしたり、時には両手を開くように殴り飛ばす。開脚するように左右から襲ってきた魔王を蹴り飛ばした時もあれば、砲撃魔法を二つ駆使して吹き飛ばした。ランにとっては、完全に同期した攻撃など、片一方の攻撃をさばけるなら左右逆転した攻撃を同時に出せばいいだけの単純な作業であった。魔王二人の攻撃は届く処か隔絶した実力差がそこにはあった。

 

 「…さて、何者だい?君は。」

 

 「…うん、僕達をここまで甚振れるなんて。」

 

 「くすくす、魔王様の配下ですよ。」

 

 意地と根性でボロボロの体を起き上がらせる。息を切らせながら目の前のランに疑問をぶつけた。ランの回答は簡潔に、ただ笑いながら真実だけを述べた。瞬間、巨大な魔力が吹き荒れる。唯でさえ魔王メイズの側仕えであったランはそんじゃそこ等の魔王等相手にならない魔力を有している。後ろにかばっている騎士達は実力が低すぎて気付いていないだろうが、この場でランの次に実力を有する魔王二人はそれに気付いた。余りに禍々しく、圧倒的に巨大な魔力に顔を青くする。体が自然に震えていた。

 

 「あらあら、魔王を名乗る者がこの程度で震えてちゃ話にならないわ。今その震えを止めてあげるわ。」

 

 いつも通りの笑顔でそういった後、地面を蹴り移動する。魔王二人の前にランが現れ、首を跳ね飛ばした。光になって消えていく魔王二人。この場所の戦いは決した。

 

 「くすくす、弱かったわね。」

 

 ランが呟いた瞬間ランの前方の森から灼熱の炎が上がった。消えて行った二人の魔王と同じ魔力が一つ消えていくのが分かった。

 

 「あらあら、どうやら、あっちも終わったわね。」

 

 ランは一言つぶやいて、騎士達の治療を始めたのだった。

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