本日も晴天。だが戦士隊の練兵場に隣接された隊士部屋は、少々慌ただしかった。何故なら、大掃除の日だからだ。
「おーい、これはこっちか?」
「ちょっと、こっち来てくれっ!」
「おまっ、金髪好きかっ!!」
「うわっ、腐海発見したっ!」
人の出入りが激しく、また普段は剣を持って勇ましく振るった姿しか見た事のないシャランは、隊士の持つ物を見て思わず固まっていた。
「馬鹿っ、姫様に掃除させんのも問題なのに、エロ本なんか見せんなっ!!」
「そもそも、姫さん入れたの誰だよっ!!」
「隊長だよっ、姫さんの上目使いにやられてたっ!!」
「それ見て笑ってたお前乙。」
シャランは日常的に戦士隊の訓練に参加する為、特にエイジス隊の面々はシャランがこの国の姫君だとしても、気安く接していた。流石に、式典等の公の場では控えていたが、この戦士隊専用の練兵場ではその必要がなかった。シャランもその気安さが嫌いではなく、好きにさせていた。
「おい大変だっ!!」
突然、外の広場の整備をしていた隊士が飛び込んでくる。その様子に何事かと、シャラン達は振り向いた。その飛び込んできた隊士は荒い息を吐いているが、あーやれやれと汗を拭っており重要性は低い様子だった。
「ふむ、何があった?」
「広場の整備してるやつが、広場の一部で鉄塊石見つけちまった。」
「ぎゃー、まじかっ!!」
飛び込んできた隊士の言葉に、隊士部屋は絶叫が響いた。この鉄塊石は、基本地面の中なら何処にでもある。ただ、表面に出ている物が氷山の一角と言われる程大きいのだ。しかも、その名から判るように鉄の塊である。
一部でも出ていれば、ましてや練兵場である。怪我をする可能性を減らす為、取り除かなければならない。この飛び込んできた隊士は、応援を呼びに来たのだった。
「あ~、ちくしょう。行くか。」
「だな、早く終わらせるぞ。」
ブツブツ言いながら隊士達は立ち上がり、玄関口に立てかけてあった備品のツルハシやシャベルを手に取ると、ゾロゾロと出て行った。シャランもそれに興味を持って、隊士達に続いた。
「おーい、こっちだ!」
鉄塊石が見つかった場所に駆け付けると、エイジスが手を振り大声で叫んでいた。すでに、その周辺は一メートル四方が、深さが七十センチ程掘り返されていた。その中心に薄い板状の物が顔を覗かせている。
「薄いっすね。」
「切れ味いいから気を付けろよ。」
「了解っす。」
更に、応援に駆け付けた隊士が加わると、掘る速度が上がった。肉体労働が得意な戦士隊の面々なので人数が増えたこともあり、掘り進めるペースが上がる。シャランは、その様子を興味津々に見ている。
「こんだけなら楽なんだけど。」
「下手すりゃ、途中で折ることも考慮に入れなければなぁ。」
隊士達がそんな事をいいながら、鉄塊石を掘っていく。大の大人がすっぽりと入れる深さまで掘り進んだ時、鉄塊石の全貌が明らかになった。
「薄っ!!」
「こりゃ、珍しいな。」
本来、鉄塊石は一塊との印象が強いが、掘り起こされた鉄塊石は、まるで板の様に薄かった。
「痛てっ!!」
「おいおい、気を付けろよ。」
どうやら隊士の一人が穴の中から運び出す最中に、薄い為切れ味よく、薄く指を切ってしまったようだ。
「どうします?この鉄塊石。」
ラングがエイジスに話しかけてきた。
「塊じゃないから精鉄しても微量だしなぁ、何かに使えるだろ。倉庫に放り込んどけ。」
「了解!」
それはこの鉄塊石の使い道だ。鉄塊石は一塊で精鉄され、武具に流用される。しかし、ここまで薄いとその精鉄量が少なく、とてもじゃないが使えない。
それでも鉄には違いない為、捨てるのは勿体無いと感じたエイジスは、鉄塊石を備品倉庫に入れておく事にした。貧乏性と言われそうだが、そもそも予算に余裕があるわけでもない。使えるものが何でも使う。
そして、運び終われば、またそれぞれの場所に掃除をしに戻る隊士達。掘り起こされた穴も綺麗に埋められ、また均されて穴があったとは判らなくなった。
シャランは、一度鉄塊石の入れられた倉庫の方を向き、興味を失ったように、また隊士部屋の掃除に戻ったのだった。