魔王は最初の町の宿屋にいる。   作:yosshy3304

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第四十一話 シャランの武器。

 シャランは思わず動きを止めてしまった。ラーシャンの言葉にそれほど驚いてしまったのだ。自身の聞き間違いであればいいが、この距離ではそれもないだろう。

 

 「…な、なにっ!」

 

 なんとか絞り出した言葉がそれであった。だが、ラーシャンはその言葉に不思議そうに首を傾げている。

 

 「だって、姫様はもうついて行くって決めているんですよね。」

 

 「う、うむ。」

 

 ラーシャンは確信を持ってシャランに尋ねる。シャランは、ラーシャンのその問いに、ラーシャンの勢いに押されながら頷いた。

 

 「なら、何故行かないのですか?」

 

 「な、何故だと、それは私がこの国の姫だから…。」

 

 「なら、なおさら力付くで良いじゃないですか。」

 

 ラーシャンの問いにシャランは、何とか言葉を絞り出す。それは、まるでその事を言い訳に使っているようだった。しかし、ラーシャンはその事を指摘するどころか、シャランの背中を押してきた。

 

 ラーシャン曰く、シャランが何かを決めたのにそれを邪魔するのなら、そんなもの等関係無しに突き進めばいいじゃないかというものだった。ラーシャンとしてはこの国の王族の性格を上げただけであるが、そのラーシャンの言葉に、シャランは目から鱗が落ちる思いであった。

 

 「…そうか、そうだな。」

 

 「そうですよ。」

 

 落ち込み、まるで濁った泥水の様な目をしていたシャランの目が爛々と輝きだす。まるで、澄んだ炎の様に目に力が湧きあがってきていた。シャランの小さな呟きに、只々、笑顔で肯定したラーシャン。

 

 シャランは走り出していた。ただ、ラーシャンに一言、『すまん、助かった。』という言葉を残して。

 

 

 

 シャランは息一つ切らさず、戦士隊の練兵場まで走りこんだ。此処に来る前に一度自身の部屋に戻り、ハードレザーアーマーを着込んできていた。ハードレザーアーマーは軽装に分類される具足で、胸の部分や、肩、肘、膝等の主要部分しか守りが無いものだ。その上、革製なので当たり前だが鉄よりも遥かに軽い。

 

 その分、相手の攻撃を防ぐ防御力に不安が残るが、そもそもシャランは相手の攻撃を、耐える戦いではなく、回避に主体を置いているので、掠るような攻撃を防ぐのが目的にこの革装備を着ているのだった。

 

 そのシャランは、誰もいない練兵場の武器庫に向かって走り出す。流石にシャランも防具だけで戦場と呼べる場所に赴く気は無かった。

 

 「…私のまで持って行かれているか。」

 

 武器類の保管場所には何も飾られてなく、その場所にシャランのロングソードも無かった。今回の繁殖期に、『オルグ』が確認されていると報告を受けている。

 

 『オルグ』はオーガの一種であり、小柄で見た目がまるで醜い豚顔のオークの様な魔物だ。だが、小柄だと侮るなかれ、オルグは、巨体のオーガと同等の筋肉を持っている。

 

 ギュッと凝縮しただけではなく、巨体ではなくなり体重が減った分、体重を維持する筋肉が行動に廻される事となった。しかも、魔力で出来た重さの無い脂肪がその周りに纏わりついている。この脂肪がオルグをオークの様に見せている原因であるが、それと同時に防具の役割も果たしていた。

 

 そして、オルグと言う名前の由来が、その余りに強い力で、あらゆる武具を折ってしまう事から来ていた。オルグが出たと聞くと、武具を折られてもいいように、予備を多めに持っていく。

 

 発足して間もないエイジス隊は、まだ武器の数も少なくシャランのロングソードも予備として持って行っていた。武器の保管庫には、元々の数が少なかった事もあって、何もなかったのだ。

 

 「だが、手ぶらで行くわけにもいかないしな。」

 

 シャランは一つ呟くと、備品倉庫の方へと歩いていく。せめて、シャベルや、ツルハシ等の武器の代わりになる物を探しに来たのだ。だが、武器の代わりになる物すら、何も無い。やはりオルグ対策に持って行かれていた。

 

 黄色と黒のロープや、赤い尖がり帽子のコーン等は乱雑に置かれているが武器の代わりになるとは思えなかった。だがシャランの目的はそんなものではない。シャランは残されていると思われるあるものを取りに来てたのだ。

 

 「っ!あったっ!!」

 

 シャランが、奥に目をやると布に包まれた板状の物が見える。シャランは、それが何なのか知っていた。それこそがシャランの目的の物であり、武器の代わりになるもの。シャランはそれを抱えると備品倉庫を飛び出し、練兵場から走り出したのだった。

 

 

 

 板状の物を抱えながらシャランは走る。門を潜り抜け、貴族街に存在する鍛冶屋に向かって息一つ切らさず走った。

 

 「オヤジっ、居るかっ!!」

 

 「ほいよ、って姫さん如何したんじゃ?」

 

 鍛冶屋の扉を潜った瞬間、シャランは奥に向かって叫んだ。奥から、鍛冶屋のオヤジが出てくる。オヤジはシャランを見て、息こそ切らしていないものの、何時もの曲がりなりにも姫君としての体裁を整えている様子が無い事に疑問を持った。

 

 そして次に、鍛冶師としての感か。シャランの持つ板状の物に目が行く。

 

 「これに柄を付けてくれ。」

 

 「ふむ、怒られるんじゃないか?」

 

 「怒られるだけで済むのなら良いのだがな。」

 

 それだけヤバいものなのか、それとも何かやるのか?鍛冶屋のオヤジは、シャランの目の奥に覚悟を見た。シャランから受け取った板状の物の布を取り払うと、中から薄い鉄塊石が出てくる。

 

 思わず目を見開き驚くも、目の前のジッと待つシャランの様子に動きを再開する。

 

 「すぐ終わる、待っとれ。」

 

 こんな時のシャランは何を言っても引かないと知っている親父は、一言断り、必要な材料を取りに奥へと向かった。

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