女友達から命を狙われているようです 作:ちぃたら
そろそろ冬か、という頃に俺は退院した。
そこから今年の春に凪が来るまで、特にこれといった出来事はなかったはずだ。
ただ、5人で活動することが多くなった。
金城の家でクリスマスパーティーをしたり、近所の神社に初詣に行ったり、バレンタインにチョコを3個(うち1個は陽菜から、残りの2個は差出人不明を)貰ったり、ホワイトデーに5人で遊園地行ったくらいだ。まあ学生の本分は勉強っていうもんな。そういうもんだよな、うん。
春休みは家でゲームしてたし。そんなもんだよな。勉強しろって? うるせえよ。
前年度は散々な目に遭ったが、今年度に入ってから良いことばかりだ。
凪が帰ってきて、紆余曲折することもなくあっさり付き合い始めた。
皆に凪を紹介しても、笑顔で受け入れられたし。大親友だけはきょろきょろしながらよくわからん表情をしてたけど。
もしかしたら今が幸せの絶頂期なのかもしれない。明日には死んでるかもしれん。
今まさに命を狙われてるからな。多分。
「幸せそうですね」
ぽつりと、金城が言った。
「ああ、めちゃくちゃ幸せだよ。今までの苦労が報われた気分だなぁ」
そういえば、金城って。
凪がいる場だと、あまり喋らないような気がする。何? 不仲なの?
普段はニコニコしてるけど、実は苦手だったりするの?
仲良くなれる場を設けるべきか。凪のために。ギスギスしてたら居心地悪いもんな。
「……いつ別れるんですか?」
ん? え?
今金城が変なこと言ったぞ。言ったよな? 言ったような気がする。自信ないけど。
いつ別れる? って何? え、俺と凪がってこと?
思わず賢木と陽菜を見る。2人とも、さっきとは打って変わって、神妙な面持ちだ。
え、マジで言って――
「今日、書店に用事があるって言ってませんでした? 行くなら、こっちから行った方が近いことは知ってますよね?」
――そう言いながら書店のある方に指を差す金城。
びっっっっっくりした。心臓止まるかと思った。
そうだ。そういえばシャー芯が切れたんだった。あぶねぇ。ありがとな金城。
そうだよな、金城はそんなこと言わない。
今日の俺は、本当にどうかしているのかもしれない。
殺気がどうとか、殺されるかもとか。そんなこと、この3人に限ってするわけがないだろ。
今日は帰ったらゆっくり休もう。
……あれ? 俺、シャー芯切れたこと話したっけ。話したな。多分。
そんなこんなで、書店でシャー芯と、ついでにこの間出たばかりの漫画の新刊を買って、帰路につく。
なんか、一人で帰るって久々だな。あいつらもあのまま3人で帰ったみたいだし。
……と思っていたら。家の近くの公園に3人ともいるのを見つけた。
何してんだ、こんなところで。陽菜はともかく、賢木と金城はこっちじゃないだろ。
まぁいいや、ちょっと驚かせてやるか。
「よっ兄弟。何やってんだ、こんなとこで」
忍び足を始めたところで、後ろから声が聞こえたと同時に、肩を掴まれる。心臓止まるかと思った。今日2度目だ。振り返れば、
「み、道久こそ、助っ人はどうしたんだよ!」
「呼ばれてしばらくはやってたんだけどな。用事あった奴が、結局来れるようになったってんで、早めに切り上げたんだよ。で、何やって――」
そう言いながら、俺の行こうとしていた先を一瞥すると。
「――……あー、いや、うん。悪いことは言わないから、そのままにしておかないか?」
え? なんで?
驚かすだけだぞ? 別にあの3人の邪魔しようってわけじゃない。いやよく考えたらそれって邪魔してるわ。馬鹿か俺は。馬鹿だったわ。
女子だけで積もる話があるんだろう。でも凪がいないぞ。
凪がいない時に話す内容って何だ? 『あいつ調子に乗ってるよね』とか? 許さんぞ。そんなこと話してたら絶対に許さん。でもあいつらに限ってそんなわけがなかった。あいつらは良い奴だからな。
今日はたまたまこの公園に来たかっただけかもしれない。あるよなそんなこと。気分転換の一環かもしれない。
そうだな。大親友の言う通り、そっとしておこう。
「そういえばオレ、お前ん家に用事あるの思い出した。早く行こうぜ!」
わかったから、引っ張らないでくれよ。
急かす大親友と一緒に、俺の家へ。
そして『これ失くしたと思ってたんだよな~』なんて言いながら、俺の部屋にあったストラップを拾い上げると、そのまま帰っていった。
大親友のキャラが定まらなくてやばい。頭抱えるレベルでやばい。