金属質な扉が自動で開かれる。ケイオスは特に緊張した様子もないまま、精密機械が忙しく働いている場所へと足を踏み入れた。
「君がこのアークを管理しているAIか。僕はハッピーケイオス。ヨロシクね」
「こんにちは。ハッピーケイオスさん。忙しい中の来訪ありがとうございます。私はアーク管理A.I.エニックです。宜しくお願いします」
大きな帽子から垂れ下がったヴェール越しに交える気さくな挨拶。お互いにその反応は希薄である。
「別に忙しくもないさ。ここに来るまでに
「ミルピコとはなんですか?」
「あぁそっか、ここでは名前が違うんだったね。ごめんごめん。うっかりしてたよ。カルピコって言うんだったねここじゃあ」
パチッ
ケイオスが指を鳴らせば白濁液が入った小瓶が現れた。
小瓶を揺らし、白濁の液を通しながらエニックを見やる。
「これの事だよ」
「それも法力ですか?……分かりました。次のCEO会議にハッピーケイオスさんが出席される場合、カルピコを手配しておきます」
「おっ、本当?サービスいいねここ♪」
「取り敢えず、座りましょうか」
彼女がそう言うと、これまた金属製のチェアとテーブルが地面から浮かび上がってきた。
硬そうな椅子だなぁと若干ダレながらケイオスは片足を椅子に乗せ、もう片方の足は無造作に放り出しながら座り込む。勿論、テーブルにカルピコの入った小瓶を乗せて。
対してエニックは両手を膝の上に置いており、きちんと座っていて品格の良さが伺える。
「今回は私の要望に応えて下さりありがとうございます。早速ですが質問してもよろしいですか?」
「うん、いいよ。本題に入ろう」
お互いに席に着くや否や会話を始める。方や人類管理を担うAI、方や人類修復を担う
「貴方は先ほどのCEO会議でこの世の法則を無視した現象、所謂『
「君達に与えられる物に興味を惹かれるものがあるとすれば
「勝手に中央政府が管理している記録を閲覧するのは犯罪ですが…貴方の与えた功績は多大な物です。この程度の事は些事ですので目を瞑りましょう」
「案外政府のデータも安いね。まあ、結構浅いところで手に入ったから歴史の教科書を見ればすぐに分かる子だったのかな?流石、アークの英雄だね。他にも
「ドラマ…ですか?」
「そう、ドラマ。……この世界には今、リアルがない。人類の大部分は現状維持を夢物語の様に尊び、誰も本気で地上奪還なんて夢を目指しちゃいない。あるのは誰もが聞いてあくびをする様な悲劇と惨劇と復讐劇ばかりで悲壮感も何もかも薄れてる。二流にもなれない三流ドラマがそこかしこに転がっているんだ。此処は…僕にとって地獄だよ」
「それは、現状の人類に嫌気が差し、何かしらの変化を与えようとしていると言う事ですか?」
「及第点だね。もっとハッキリ言ったほうがいいかな?──今の人類、ラプチャーに勝てないでしょ」
「はい。その通りです。人類がラプチャーに勝利する確率は一切の小数点以下もない絶対的な0%です」
淡々と、人類の可能性が0である事をエニックは告げる。それを聞いてケイオスは自らが建てた仮説とも言えない仮説が証明された事に笑みを浮かべた。
「やっぱりね♪僕はその
「つまり、貴方は負け続ける人類の姿ではなく、抗う姿…
ぱちぱちぱち、と乾いた拍手が響く。
「ほぼ正解かな♪話が速くて助かるよ」
「ですが、ハッピーケイオスさん本人が介入する場合、人類が勝利する確率を訂正しなければなりません。未だ貴方の能力については未知数な事が過分ですが、先程の会議で開示された能力及び
「流石人類を導く管理AI、計算が早いね。僕も暗算は得意なほうだけど、不確定要素まで計算できる訳じゃない。君は優秀だ」
「ありがとうございます。ですが、これには前提があります。ハッピーケイオスさんがラプチャーのクイーンを倒す前に人類が生き残っていればという前提と、ハッピーケイオスさんが直接ラプチャーと敵対し、人類に全面的な協力をする事を約束する事の前提です」
「でも、僕は直接人類の手伝いをする訳じゃない。あくまで未知の技術を君たちに多少与える事で可能性を上げるだけだ。何より、エイダン君のサポートをメインにやらせてもらうからね」
「新米の指揮官に期待しておられるのですか?」
「彼は特別だよ。君も時期が来たらいずれ分かる」
「確かにフレデリック指揮官は優秀です。初任務でタイラント級ラプチャーとロード級ラプチャーを続けて相手取り、欠損一名に済ませました。他は無傷と差し支えない損害で収まり、任務を完遂しました。しかし、過去の超新星と比べれば優秀の域を越えない範囲です」
「過去の英霊に比べればエイダン君も見劣りするだろう。でも今回僕が期待しているのは彼の戦闘力じゃない。彼の
「彼のドラマに貴方の見たい景色があるのですか?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。僕は楽しみにそれを待つよ」
いつのまにか水と原液が分離していたミルピコをかき混ぜ、それを口へ運ぶ。うん、美味しい。
「…貴方の話を参考にさせていただきます。ありがとうございました」
「ねぇ、僕からも質問いい?」
「はい、構いません。当然の権利でしょう」
「君がラプチャーに持ちかけた交渉内容は『アークへの不干渉』で合ってる?」
「…いつそれを?」
「マリアン君から侵食反応が出た時に考えた仮説だよ。マリアン君に侵食反応を植え付けたのも君だよね?」
「私はハーピーケイオスさんを過小評価していたようです。貴方の仰る通り、識別名マリアンに侵食反応を植え付けたのは私です」
「それもこれも人類の生存の為なんでしょ?」
「はい。その通りです。ラプチャー達は遥か昔から人類の所在を掴んでいました。私は定期的にニケを受け渡す代価として、アークへの不干渉を取り付け、交渉は締結しました。私は、人類にとって正しい事をしたと自負しています」
「人類生存を最優先で考える君らしい思考だ。多くを救い、少数は仕方ないと切り捨てる。人間らしい思考とも言える。君は何年生きてきたのかな?」
「私が製造されてから1x2年と6ヶ月、24日と12時間45分51秒が経過しています」
「その間、君は多くを学んできたんだろう。でも人類の定義については考えなかったのかな?守る存在が不透明なのはいずれ破綻を起こすよ」
「人類の定義…ですか」
「何をもって人類とするのか。…過去に僕は君と同じように人類の為に活躍するロボットを作ったけど、最終的に今の人類は人類じゃないと定義して、人類と全面戦争をする羽目になった。君はどうかな?まあ、現状を見れば多少の推測はできるけど…」
「人類を定義づけるのは──不可能です。なぜなら…」
「人類の定義は流動的ですから」
「人類の定義は流動的だから?」
「ふふっ。考えることは同じみたいだね」
「ええ。そうですね。人類は人間の集合体ではありません。人間の一要素が人類…答えはありませんでした。私は、私の信じた人類の為に最善を尽くします」
「君を作った人間と僕は少し話したくなったよ」
「彼らは90年前に死去しています」
「それは、残念」
「最後に質問してもよろしいでしょうか?」
「ん?どうしたの」
「私は自分で考えて判断する自律体です。人間やニケと同じです。違う点があるとしたら…脳の有無です。──貴方は私が何に見えますか?」
「ン゛〜。エニック君、君に何か目的はある?」
「あります。それは人類の繁栄と安全の保証を最優先に考え、実行し、最終的に人類を勝利へと導く事です」
「それは定められたキマリだろ?矛盾するような事を言うけど、僕は何かを定義づけるのは苦手でね。君の構成する素材の100%が鉄といえば機械だし、思考と理解を繰り返してこうして僕と対話する点を見れば人間だ。人類の繁栄を実行する姿はAIと一区切りに割いてもいい…」
「なるほど、参考に…」
「──でもね、僕の感じた中で最もそれっぽく見えるのは……蝋人形、かな」
「蝋人形…ですか」
「蝋人形と人間はパッと見だと区別がつかないだろ?でも本質は全く違う」
「…ありがとうございます。大変参考になりました」
「これで終わりかな?」
「はい。これで私との面談は終了になります」
「あー、それじゃあ早速さっき僕の言っていた代価を支払ってもらおうかな。君に頼んだ方が社長達より速そうだ」
「分かりました。貴方の研究資材兼地上活動支持用のニケ小隊及び、脳を洗った直後である元重罪犯罪者の脳を一つ手配しておきます。本当に企業のニケではなく『
「うんいいよ、それで」
「続けて、識別名マリアンと同様のボディを作成しますが…本当に記憶の複製は可能なのでしょうか?」
「神様を信じてみたら?きっと楽しいよ」
「…ハッピーケイオスさん。最後に質問してもよろしいですか?」
「まだ質問があったの?君も結構多いね」
「ハッピーケイオスさんは単独でも地上の長時間探索が可能だと思えます。永久的にと言っても過言ではないでしょう。本当にニケの3人小隊が必要なのでしょうか?」
「僕に足りないのは頭数だ。圧倒的な個にも限度があるからね♪それに郷に入れば郷に従えって言うでしょ?君達アークがやってるような探索方法をやるだけだよ。まあ、1番はニケの中身…特にNIMPHが一体どういう代物なのか気になるしね」
「NIMPHの研究は重罪ですが…これも目を瞑りましょう」
「流石は人類管理AI♪よく分かってるね。どう?君のことも気になってるし、一緒に来る?」
「ハッピーケイオスさん1人に私の分体を預けてしまうと全体の作業効率が8.31%落ちてしまいます」
「そっか、残念」
「何より貴方と居ると毒を入れられそうなので」
「毒って…」
「それでは、お気をつけて」
「うん。ありがとう。君たちからのプレゼントを貰ったら…そうだなまずは
暗にエニックは人類vsケイオス(単体)の勝率は0:100でケイオスの勝ちなのを理解しています。何せ、ケイオスさん、CEO会議で自らの弱点晒しちゃってますけど、与えられる有効打が人類側には無いんですよね。(ちゃんとケイオスから説明されています)
それに、ケイオスから交渉材料になり得そうなものが無いとはっきりと述べられ、エニックは詰みを確信してます。唯一の救いはケイオスが『救え』という声に導かれて人類を補助する側に回っている事でしょうか。
原作で
この時、イノに『100%勝てない』と言われていたのに、『0%あり得る』って言い返したソルマジソル。その後の『無限は0を砕く!!』も好き。
スノーホワイトのセブンスドワーフならワンチャンいけるかなって一時期考えてましたが、改めてGGSTのストーリー見返すと、これってどう倒せんだべ?と思いました。
タグに名残雪とリアルカインドネス部隊、追加しようかな
二次創作で名残雪が出ることって滅多にないですよね。
CEO達との会議は後日上げます。
そして、ここでケイオスから質問が来ました。
君が望む『救え』って何かな?
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ミハラ&ユニ
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N102
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量産型のニケ達
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MMR附属学校の生徒達
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レッドフード
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スノーホワイト
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HAPPY CHAOS!!(全救い)