祖なる龍は世界最恐   作:ツーカーさん

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第1話

この状況はなんなのか?と声を大にして言いたいハジメは今自分の隣にいる白崎香織という人物を見る。

 自分には人生の全てを賭けても釣り合わないであろう美少女と一緒に歩いているこの状況。何がどうしてこうなったのか。自分の土下座から惚れたという彼女に未だからかわれてるんじゃないか?という疑問は消えないが、やけに紅潮させた頰や、時折見せる幸せそうな顔などを見ていると本当に自分なんかに惚れているのだと自覚させられる。

 

「ハ、ハジメくんどうしたの?」

「え?あ、いや。その。何でこうなってるんだろうなぁ…って」

「え…もしかして、嫌だった?」

「嫌ではないよ。ただなんか実感がないというか…本当に今現実なのかなって…」

 

「ん?じゃあ今私はハジメの夢の中の住人ということか?」

「姉さん。違う。そうじゃない」

「聞いたことあるぞ。その曲」

「いや、何も歌ってないから!」

 

 はぁ〜ッ…とハジメは溜息を吐いた。姉の存在で色々と厄介ごとには慣れてきたつもりだったが、こういうやり取りとなるとあまり慣れないものだ。いや、香織さんがいることで緊張しているからかもしれない。というか、最近姉さんのガチ天然発言率が増しているような気がする。そう心の中で愚痴を吐いた所で姉さんが止まった。

 

「ハジメと香織はこの後デートなんだろう?」

「うん、そうだよ。ミラちゃんは確かお友達の家で遊んでくるんだよね?」

「あぁ、サツキちゃんが全員集合と言ってな…用件は聞いていないが多分また面白い事をやるんだろう。私は左に行く。サツキちゃんの家がこっちなんだ。ハジメ達は?」

「私たちは右の方だよ」

「そうか、それじゃあ今日はハジメをよろしく頼む」

「うん!任せて!」

 

 そう言って、各々の道へと別れていった。

 

 ……本当になんでこんな状況になったんだろうか。

 

 

 事の顛末はあの土下座事件からそう日数が経っていない時まで遡る。

 

 あの事件から、常に読書をしていた姉が外に出かける事が多くなった。

 やはり煮え切らないところでもあったのか、あの高校生達を探しているのだと最初は思っていたが、見当違いだった様で、姉さんが探していたのは最後に気にかけていた美少女だった。下校道が近くだったからこの町に住んでいる筈…と本気で見つけようとしていたから聞いた時は少し驚いた。

 

 住所も名前も分からないが、姿だけでその子を発見しようとしている姉のその行動力は大物Youtuberのそれに似ている気がする。アニメだとこういう時、中々見つけられずそろそろ意気消沈しそう…という所でバッタリ会うケースが多いのだが、やはり現実とアニメは違う様で、普通に姉が見つけてしまった。確か休日や平日の空き時間を使って3日間くらい探していたんじゃないだろうか。道中ナンパしてきた男達がいたそうで、しつこかったからのしてやったと言っていて、姉の心配よりも、男の人の方を心配してしまうのはテンプレだろうか。因みに5人いたらしい。

 

 何が姉をそんなに動かしているのかは知らないが、正直僕はそんなに乗り気ではなかった。

 姉の惚れているという発言を信じていない訳じゃないが、どうしても自分と彼女が釣り合っている姿が見えないのだ。見た目は若干童顔が入った程度でそこらの男子と変わらず、顔がイケメンな人の背後にでもいたら背景モブに最適なのが僕だろう。あまりの平凡さに彼女の美少女具合についていけな過ぎてネガティプな方向で思考が進む。

 

 姉さんは見つけたといってもすぐに家に連れ込む訳ではなく、連絡先を交換しただけらしい。後から聞いてわかった事だが、彼女は最初、姉さんのことを僕の彼女だと思っていたらしい。まあ、姉さんは家族の誰にも似ていないからそう感じるのは無理もない。距離感的にも家族を理由に近いから何も知らない人からしたら確かに恋人の様に見える。…学校でも最初の頃はそう思われていたし。

 

 連絡先を交換した後はそれなりの頻度で連絡しあっていて、それなりに良好な仲になったと姉は言っていた。あと実際に何度か会い、彼女の親友とも話したことがあるとも。確か名前は八重樫雫さんというらしい。

 『2人ともいい女だが、やはり若いな。実り時が楽しみだ』と姉さんは言っていたが…同い年じゃないのだろうか。というか姉さんは何を望んでいるんだろう。僕たちまだ14年くらいしか生きてなかった筈なんだけど……。

 

 それからまた一年経たない内に…香織さんが来た。家に。インターフォンが鳴ったはいいものの親は仕事、姉もちょうどトイレでその場居にいなかったから仕方なく僕が出て、玄関の扉を開けたら目が合った。あの時はお互い蛇に睨まれた蛙の様に固まってしまっていたなぁ…。

 何分かそのまま一言も発さずに目が合った状態で固まっていると、香織さんから先に限界を迎えたのか凄い分かりやすく顔を紅くして、裏返しながら声を掛けてきたのは結構最近の出来事だったりする。あの時仕草が可愛かったのもよく覚えている。

 

 そこからトイレから戻ってきた姉さんが「何してるんだ?」と声を掛けてリビングに連れ込み…気づいたらデートに行く話になっていた…。

 なにそれホワーイ?

 

 今思い出してみても、あの時思考放棄していた自分が悪いですねこれ。はい。対戦ありがとうございました。

………じゃない!

 

 

 え?こういう時って手を握ればいいのかな?

 いやでもまだ彼氏って正式に決まった訳じゃないですし…それに急にやると気持ち悪いって思われませんか?というか手汗大丈夫かな!?びっしょりしててやばくなってない!?

 え、というか今どこ向かってんだっけ?遊園地?ゲーセン?そもそも、初デートで行くところって何?ボウリングとかカラオケ?いや歌唱力の自信もスペアすら取れる自信もないんですけど!?

 

 え、ちょ、本気で姉さんあっち行っちゃうの!?

 いや、そうなんだろうけどさぁ!少し整理する時間くれよ!頼む!!

 というか、香織さん凄い笑顔ですね!お人形さんみたいで可愛いぃ!…じゃないよ!本当に待って、あの時考えるのをやめていたカーズ様みたいな状態になっててごめんなさい!少しでもいいから行く場所のヒント教えてくださりませんか!?

 

ちょっと、待ってぇぇぇぇぇ!!

 

 

♦︎

 

 

 ハジメと香織に手を振って見送り、やっと成功したな…と少しだけ頰を緩ませる。

 暫く香織や香織と親友である雫とも行動を共にして分かったが、やはり彼女らは良い()だ。

 判断基準は龍の感覚と人の感覚を混ぜた曖昧なものだが…それでも良いと感じたものは良い。

 

 押し付ける訳ではない。ハジメが女として気に入らなければそれはそれで仕方の無いことだ。私とハジメとでは求めている理想形が違うだけの話。

 まあ、なるべく人間の雄の視点に合わせてみるようにも頑張ってみたので、結び合わなかった時はそれなりに寂しいが…こうも心配事ばかり言っても仕方ないだろう。

 

 思考を切り替えて、サツキちゃんの事を考える。

 サツキちゃんが今日はどんな事をしでかすのか楽しみだ。確か前回はドラム缶や空き缶、お菓子の箱などでドラムの様な演奏は出来るのか試したんだっけ…今回は何だろうか?パターン的には…将棋か?

 

 辿り着いたサツキちゃんの家の玄関の前に立つ。私の家庭もそこそこに裕福な部類だと思えるのだが、サツキちゃんを見てるとそうでもなくなる。彼女は曲がり何にもお嬢様と呼ばれるぐらいにはお金持ちである。彼女の祖母が築き上げた会社は世界でも有数な大企業であり、富や社会の影響力を考えると凄いことなんだろうが、私も彼女も金やら権威やらに一切興味が無いせいかその凄さを十分に分かっていない。だから惹かれあうんだろうか?

 インターフォンを押し、騒がしい足音がこちらに近づいてくるのが聞こえてくる。

 

ガチャ

 

「お!やっと来やがったな美羅!今日は剣先から醤油が出てくる木刀をつくんぞ!醤油は持ってきたかぁ!?」

「いや、今日は丁度持ってないな…いつもは持っているんだがなぁ。すまない」

「しゃあねぇ、そんじゃサツキ様が特別にキッコーマンを渡してやろう!木刀は一足先の修学旅行で10本ぐらい買ってきたから心配すんな!先ずはコス○コで買った海外の水鉄砲の仕組みの理解から始めっぞ!」

 

 いっちょやってみっか!と自分の部屋に走り出していったサツキちゃんを少しの間眺めて、靴を脱ぎ上がらせてもらう。

 

(今回の予想もハズレか…にしてもまさかの銀魂とはなぁ)

 

 銀髪天然パーマのマダオ侍が何勝手に改造してんだテメェー!と自分の愛用していた木刀をぶん投げている姿が簡単に思い浮かぶ。アニメや漫画、ファンタジー小説などをハジメが読んでいたのを期に私も読んだり見始めたせいで、すっかりハマっていた為そういうネタが分かる様になってしまった。前世の世界ではあり得ないことだったな…どうせなら…私の子供達にもああいうなんの理由もなく笑えるものを見て欲しかった…。

 

 あの時、あの竜騎兵と呼ばれる悍ましい兵器を作った人間にただ純粋な激しい怒りと恐怖しかなかったな。力にではなく、その貪欲なまでに殺戮を求めたその思考に。…今世の人も龍が居なかっただけで戦車や地雷、銃器などの火器、他にも様々あるが兵器を生み出したことに変わりはない。やはりどの世界でも人は変わらなかった…それで見捨てるというわけでは無いが。やはり呆れはした。

 

 私は未だ人間が常に上の存在に行こうとする思考性は理解できていない。群れを纏めるリーダーが必要なのは分かる。だが、他の素質あるものを蹴落としてまで成り上がろうとする精神は分からない。龍の中にその様な者を生きていた中では見たことがない。種を長く持たせる為には優秀な群れの長が必要なのは誰もが理解していたが為に必然的に長く生きぬいてきた知恵者だけが選ばれた。そして、長はその知恵を子や同族に伝え種を存続させる。そうして生き抜いてきたが為に人に理解しがたいものが多い。だが、それを拒絶するのではなく受け入れ新たな知恵にするのも大切なのだ。

 

 ……こんな所で何を考えているんだろうか。全ての人間がそうではない事は知っているのに…。

 今は、サツキちゃんとの遊ぶ時間だ。

 醤油が出てくる木刀を作るという発想は意味不明だが、意味不明故に面白い。

 なにぶん記憶力の良い体だ。水鉄砲の構造自体はすぐに覚えられる……が…既に作られた木刀の中にどうやって醤油を入れるんだろうか?1日くらいずっと浸すのか?

 

「おい?何やってんだ?グダグダしてるとおいてっちまうぞ?」

「…あぁ、いや。弟が今日はデートをしているからな。今どうなってるか少し想像してたんだ」

 

 不意に話しかけられて変な言い訳にハジメを使ってしまった。…前世が龍だなんて突拍子もない事は言えないからな。サツキちゃんなら信じそう、と理由のない安心感があるが。

 

「な、何っ!?ハジメのやつ遂に女作ったのか!?」

「まだ、恋人と呼べるか本人は戸惑っていた様子だがな」

「くぅーっ!!こうしちゃいられねぇ!今日の醤油が出る木刀作りはやめだ!ハジメとその彼女を尾行して徹底調査してやるぜ!!」

 

 ばびゅーん、と効果音が付きそうなくらい早足でまた部屋に戻っていったサツキちゃんを眺めながら、「ハジメ、香織…すまない」と心の中で謝る。とっさの言い訳とはいえ初デートをひっちゃかめっちゃかに狂わしそうな人物を送ることになってしまった。正直、私もドラマではよく見るが実際の男と女のデートの様子は気になるので行ってみたいから止められそうにない。

 

「うっし!サツキ様探偵団出発だぜ!」

 

 何処から用意したのだろうか、そのトンビコートの探偵のコスプレ……というか服は全く違うのに何故名探偵コナンに出てくる少年探偵団から名前をとったんだ?仮に少年探偵団だとして、私はどういうポジションなんだ?

 

「行くぞ!小五郎のおっちゃん!事件はまだ解決してねぇぜ!」

「ちょび髭がないんだが…」

 

 小五郎のおっちゃんと来たか…フフフ、訳の分からないそのチョイス、やっぱりサツキちゃんは面白いな。

もし…我が子がこの世界に生きていたら会わせてやりたいところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、アタシが生まれたってわけ」

 

「「「はぁああああああああ!!?」」」

 

「いや!おかしいだろうがよぉ!!?その後ハジメと白崎がどんな結末を迎えたんだ!?いや、今を見りゃ大体分かるけど、お前ら一体何をしたんだ!?つか今の美羅の回想だろ!?」

「そりゃないよさっつん!2人はその後どうなったのさ!?」

「気になるから教えてくれ!てえてえを聞かせてくれよ!!」

「うっせぇーなぁ、しつけぇ男と女はアタシから嫌われっぞ?」

「お前に嫌われても別に良いわ!どうせお前から絡んでくるし!というかお前と南雲が何をしたかすげぇ気になんだよぉ!頼む!」

「この通り!土下座でも何でもするから!」

「いや、別にお前の土下座求めてた訳じゃねーし」

「じゃ、靴か!?靴を舐めればいいのか!?」

「変態かおめぇー!?おいだれかコイツを連れ出せ!」

「おーけー!」

「あ、おい。ちょ、待て!せめて内容を聞かせてくれ!それか足舐めさせ…!」

 

バンッ!

 

「うし、これで平和になったな」

「あいつ…色々な意味ですげぇな」

「流石にちょっと…気持ち悪かったね」

「色欲の罪に囚われてんじゃね?」

「キュピーン☆」

「おい、やめろ。なんかお前がやるといい歳した叔母さんがコスプレした現場を覗いてしまった気持ちになる」

「あ''ぁ''ん''!!?アタシがババアだって言ってんのかぁ''ーー!?」

「いや、そういう訳じゃなく!!」

「こちとら現役JK様だぞ!!」

「イダダダダダ!!!」

「あぁ!?きこえねぇぞ!デュラララ!!つったのかぁ!?」

「ああ!もう、めちゃくちゃだよ…!」

 

 

 教室のど真ん中で大きなグループが騒いでいるのがよく聞こえる。顔ぶれは知っている、話の中心に居るのは私の親友であるサツキちゃん、私が何をしたのか気になっているのは檜山大介、てえてえ?を聞きたいらしいのが中野信治、何故かサツキちゃんの足を舐めたがっているのが斎藤良樹、それを教室の外に締め出したのが近藤礼一、色欲の罪ゴウセルの話題を出したのが清水幸利…そしてサツキちゃんからプロレス技を受けてるのも清水幸利…さっつんと呼んでいるのが谷口鈴、最後にめちゃくちゃだよ!と言ったのが中村恵理だ。他にも色々な男女がサツキちゃんを中心に集っている。

 

 今回は親友よりも弟の方を優先させてしまったので話に加わる事はないと思っていたが…少し参加したくなってきた。

 サツキちゃんが話している事は2年前のことか。

 

 香織とハジメが初デートしている最中に遠目から見守っていただけの話なんだが…確か最初に行っていた場所は映画館、その時私もサツキちゃんもお金を持っていなかったから大急ぎで取りに戻ったものの間に合わず、どうなっていたかは知らない。だが暫くして出て来た時にはいい感じに2人が会話を弾ませていたので成功した事は確かだった。そのまま飲食店に入り、何を話しているかは聞こえなかったのでサツキちゃんがお抱えの執事に連絡して盗聴器を持ってくるよう言い出し、本当に盗聴しだした。

 

 映画の感想を言い合っていたようで登場人物の整理が無理だった…というよりかめんどくさくなったサツキちゃんが早々に聞くのをやめ、「何か話題が変わったら教えてくれ」と料理を注文し始めた。私は特にお腹も空いていなかったのでそのまま盗聴を続けて、サツキちゃんが丁度半分を食い終わった辺りでハジメが「何で僕なんかを好きになったの?」と聞いたところで流れが変わった。

 正直、龍として羞恥はほぼないと思っていたが…こういう恥ずかしさもあるのだと理解し、あまりこの話のことは言いたくはない。

 

 ……その後お金を払って店から出た後は2人の雰囲気は異様な程に変化していて、時たまに肌が触れ合うとお互いにびっくりして体が跳ね上がったり、そうすると顔を赤くさせてあたふたしたと思ったら同時に謝ったり…まともにお互いの顔が見られず話が噛み合わず更に赤面を晒したり…とベストカップルの様な甘い時を過ごしていた。サツキちゃんが「こりゃ、アタシが手を貸すまでもねぇな…」と探偵服をそこらに脱ぎ捨てて、くれる夕陽に向かって「アタシが絶対消費税を5%に戻してみせるぜぇーー!!」と走り出していったのは珍しく腹を抱えて笑ったので他の記憶よりも思い出しやすい。

 

 

「姉さんもあっちの方に行きたいの?」

「ん?まあ、そうだな。ハジメと香織の馴れ初めの話は私としても面白かったからな」

「流石にみんなに教えるのは恥ずかしい…かな」

 

 内心、毎日昼休みになると「はい、あーん」を人目につく場所なのに繰り返している方が恥ずかしくないのだろうかと思ったが、それとはベクトルが違うのだろうと発音はしないでおく。

 

「そうか…香織が言うなら仕方ない。あまり()()()()()()()話さないでおく」

「ん?待って。美羅、あんたそれって一人一人の前じゃ言うって事じゃない?」

「え?そう言う事じゃないのか?」

「違うわよ。香織は誰にも知られたくないって言ってんのよ」

「そうか。なら絶対に他言はしない。約束する」

「うん!ありがとうミラちゃん!雫もありがとう!」

「気にしないで。こう言うのには慣れてるわ」

 

 あんた達のお陰でね。…とは付けないでおく。

 ハジメは『姉のフォローをしてくれてありがとう』と視線で雫に礼をする。

 意図を読み取った雫はハジメにも『気にしないで』と視線で送り、『お互い苦労してるわね…』と美羅と香織を交互に見てからハジメを見る。

 少しだけ苦笑いをして、また弁当に手をつけた2人だった。

 因みに時計回りにハジメ、美羅、雫、香織と4人の席がくっついた形で食事をとっていて、サツキのグループと比べるとやけに小さいが、女子のメンツは三大女神が全員と豪華だ。

 

 高等学校に入り、ハジメが望んだ高校と香織が望んだ高校が偶然合致し、美羅は正直どこでも良かったのでハジメと香織につく形で入学して来た。恐らく雫も幼馴染たちが入るからしかたなくといった風だったんだろう。雫とハジメはその時初めて会ったにも関わらずお互い苦労人気質の波長を読み取ったのかすぐに打ち解けていた。1人その様子に気にくわない人物が1人いたが…まあ弟に明確な敵意を示す相手に容赦のない美羅から圧で止められていた。

 

 因みに、入学当初の頃にハジメはいじめの対象にされていた。

 白崎香織という美少女と付き合っていて、美羅と姉弟関係という事が知られて居ない状況の中、八重樫雫とも仲が良く昼休みの時には常にその4人で固まって居た為、男子からは憎悪の対象だったのだ。他3人から見えない所で陰口を囁かれたり、一度囲まれて暴力を振るわれたこともあった。

 まあ、少し上でも語っている通り、弟に対して明確な敵意を持っている相手には容赦の無い美羅と、その親友でありそんな雰囲気が気に入らないサツキが盛大にぶち壊しに行き、早くも問題児扱いされたのはもう一年も前のことだ。単純な暴行事件ではなかった事だけは言っておく。

 

 今ではもう問題児というレッテルは無くなっており、同年代と先輩後輩からの声明を含めた超絶人気者になっているのだ。香織と雫を含んだ彼女達の人気は凄まじく、当たり前のように毎日告白されているが、当たり前のように断って、告白した側は沈んでいく。サツキ…の場合は残念美人として扱われているため友人としての人気率の方が高く、恋人にしたいと思っている生徒は少ない。その為彼女は女神に入り得るほどの美人だが「黙ってろよ美人」と言われるぐらいの親しまれ方なので美羅や香織達の様に崇められてはいない。そんな人たちと濃い結びつきがあるハジメは最近肩の荷が重いと感じて居たりする。

 

 因みに、原作と違い普段の生活習慣を見直し、勉強と運動が出来る系男子になったハジメは、クラスメイト達に心の底から憎まれてはおらず、あいつちょっと羨ましいな!ぐらいに思われている。一度オタクである事もバレてそこからまたハジメを貶めようと檜山の策略があったが、美羅もハジメと同じくらいオタクだったので使い物にならなくなり、更には美羅が見ているし…という理由でアニメやら漫画やらを見始めた結果どハマりしてしまったのが今作のクラスメイトたちである。

 

 

 

 天之河光輝…?

 

『アニメ?そんな物を見る暇があったら勉強をしたらどうなんだ?』

『アニメを見ているが常に私はお前より上だぞ?』

『……』

『最近、ハジメにテストの成績抜かされたそうだな。アニメを見ているハジメに』

 

 因みにこの時美羅は明らかに悪意を持って言ったのは確かである。

 

 

 

 弁当も食べ終わり、先ほどの様に雑談を繰り広げているサツキちゃん達と未だ惚気話(恋人版)(弟版)を聞かされ、正直恥ずかしくてしょうがないハジメは雫に助けを求めてちらちらと視線を送って居たが、雫もこればかりは止められないと首を振って諦めている。す、救いはないのですかぁー!と天に願いたいハジメであったが、天よりも先に地面の方が反応した。

 

 

 

「ッ!?」

 

ガタッ!

 

 まず美羅がソレに対し反応し、すぐさま立ち上がったせいか椅子が倒れ大きな音が鳴る。ソレに反応するように皆が美羅を見るが、美羅は既にそこに居らず、サツキの元へと駆けていた。誰の目にも止まらぬ速さでサツキの元へ駆けつけると、直ぐにサツキを拾い上げてまた離脱しハジメたちの元へ戻る。

 

 この時美羅の瞳にはしっかりと光輝の足元にある魔法陣が映っていて、アレが広がったらヤバイ!という事だけは理解した。

 一瞬、()()()()()?と選択肢が浮き上がったものの、未だこの身体では完全に龍に成ろうとするのは無理だ。間に合ったとしても、そこまでスピードとパワーが出る自信も無い。

 

 ……あの魔法陣?の様なものがどんな効果なのか分からないが、今までの日常を逸脱することが起きるのは確かだ。

 ここにいる全員が死ぬのかもしれないし、何処かに転移されるのかもしれない。……ここで一瞬、美羅の集中力が途切れた。

 

 

「皆!すぐに教室から出て!」

 

 次の授業の為、早めに来ていた畑山先生もすぐに反応できた一人で、生徒たちに避難を呼びかけるが…人の反応速度では無理があった。

 美羅もこれ以上は庇うことしか出来ないと、ハジメとサツキちゃんを自分の内側に寄せ肉壁になろうとした瞬間、魔法陣は大きく光り輝き教室全体へとその紋様は広がる。 今更気づいたのか何名かの生徒は悲鳴をあげるが、特に何を出来るわけでもなく…。

 

 更に光が増したかと思うと……誰一人として消えて無くなっていた。

 

 光の後に残るのは無造作に散らかった机や生徒達が持っていたものが落ち、乾いたプラスチックが地面にぶつかる音が聞こえるだけで、賑わった雰囲気であった先ほどと比べると閑散とし過ぎていた。

 

 この事件を白昼の高校で起きた集団神隠し事件とし世間を大きく賑わせるのだが…それはまた別の話になる。

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