というか、もうプロローグ自体いらないんじゃね?と思っている今日この頃。
この世界の星々は初めて見る。
昨日は見ていられる余裕はそこまでなく、興味も薄かったというのが見ていない理由だ。
『星座』というシンプルなタイトルの本に記された星図と空の星座を見比べて、綺麗だな…と安直な感想が漏れ出る。読んでいくうちに、名前はエヒトにちなんだものが多いことに気づき、エヒトの絶対神性が色濃く現れているのがよく分かった。
先程、星に興味が薄いと言ったが、それは優先順位が低かったからであって、元々星はかなり好きだ。
ただ単に綺麗だから…というのもあるが、手が届かない美しさがあるからという理由もある。
それこそアメコミヴィランの様な存在さえ居なければ、彼らの輝きは失われる事なく、輝き続ける。生命の神秘…とはもう違うのかもしれない。理科として言うなら、星…つまり恒星の発光というのは、重水素によるD-D反応と、三重水素と重水素によるD-T反応の並行反応、つまり核融合からなる熱と共に生じる光のエネルギーだ。こう言うと、生命の神秘っぽさがなくなってしまうが…まあ、それでも、その事さえ知らなかった龍の私は本当に憧れたのだ。その輝きと、不変を保つその姿に。
何を根拠に、と聞かれればもう答えられない。無意識に好きになった物の一つだ。特にこれらしい理由といえばこれくらいだ。
暫くそうやって時間を潰していると、廊下の方で木の軋む音が聞こえた。
その音が扉の前で止まると、何不自由なく扉が開いた。
……案外遅かったな。
「おっすー、美羅。お前の言った通り来てやったぞ〜」
「少し遅かったが、何かあったのか?」
「んまぁ、ちょっとな。遅めの風呂に入ってただけの話だ」
確かに、彼女の髪は未だ湿っていて、心なしか頰が赤い。風呂から上がってからそこまで時間が経ってない様だ。
取り敢えず、立ち話をする訳にもいかないので私のベッドに招き、お互いに腰を下ろした。
すると、早速サツキちゃんが話を切り出してきた。
「そんで、今夜はミラの天職について聞かせてくれんだろ?」
「あぁ…そのつもりだ。ただちょっと待ってくれ…この話を何処からしようか考えていなかった」
「なんだよ。そんな長い話するつもりなのか?」
「この際、私の全てを知ってもらおうと思ってな。親友のサツキちゃんだからこそ知ってもらいたいんだ」
「っ…な〜んか、その言い方されると照れんなー」
「サツキちゃんが照れるとは珍しい」
「うっせ。……因みに聞くけどよ。ハジメには…」
私は首を横に振った。
サツキちゃんはそうか、とぼそりと呟いた。
少しの間、沈黙が続く。
何の言葉を切り出そうかと、目を配る場所もなく、また同じ星空を眺めていると…サツキちゃんが問いかけてきた。
「なぁ、それ本当に私が聴いていいもんか?」
「あぁ。こう、迷っているが、私は本当にサツキちゃんに知ってもらいたいんだ…こういう時ばかり口下手ですまない」
「なら、いくらでも待つけどよ…」
優しいな。サツキちゃんは……既に知っている事だが…。
サツキちゃんを長く待たせるわけにもいかず、迷いの気持ちを切り捨てて話し始めた。
「サツキちゃんは……前世というものを信じているか?」
…ぽつりと呟き始めると、あれだけ動かなかった唇が徐々に動くようになっていった。
私には前世の記憶がある事、前世の世界で自分は龍であった事、『祖まりの龍』と言われ恐れられていた事、竜大戦という戦争に参加していた事、戦いの最中子を失った事、その出来事から人を憎んで数え切れない程殺した事、それから数億年以上も隠居しながら生きていた事、その最中様々な人間に出会って…考えを変えさせられた事、その力は今でもほんのちょびっと使える事…等と淡々と話していった。
サツキちゃんはこちらを見ながら、ただ話を聴いてくれていた。驚いて話を止める事なく、時折相槌を打って納得している様だった。なんというか…それが嬉しかった。受け入れられている様で…それが温かく感じたんだ。
「これが、祖龍として生きた私の一部だ。流石に数億年以上もの物語をここで語る訳にも行かんのでな。色々と端折らせて貰ったが」
「……こういう時のコメントは流石のアタシも持ってないけどよ…言う事は、まずこれだな。……ミラ、お前……やっぱり……婆さん、だったんだな…」
「あ、あぁ。そうだが…そ、そこか?サツキちゃんなら、『祖龍』とかw厨二病の奴が考えたあだ名みてぇww。と言われると思ったぞ」
「アタシにとっちゃソコだ。いっつも思ってたんだよ。なんか婆ちゃん家の畳の匂いがすんなぁ…って。だからかもしんねぇが、お前と居るとアタシは安心した。まぁ、今じゃ匂いだけじゃなくて、ミラだから安心できる何か、があるけどよ。…悪りぃがその何かはアタシでも言葉が思いつかねぇが、多分、信頼って奴だと思う」
「そ、そうか…こういう時、私もなんて言えばいいのか私も分からないが…そうだな……ありがとう」
「おう。…つか、ミラの中のアタシの評価ってどうなってんだ?」
「端的に言ってしまえば…人間の中での奇行種。独創的な観点と誰にもない発想力を携えた優秀で優しい人」
「それ褒めてんのか?貶してんのか?」
「褒めてるつもりだぞ?」
「前半の奇行種褒めてるように聞こえねー…」
「む。そうか…すまない」
「まぁそれは自他共に認めるからいいけどよ!」
「自他共に認めているならいいじゃないか…」
「拗ねんなよ婆ちゃん!」
「拗ねてなんかないぞ。私は」
アハハ!と笑っているサツキちゃんを見ながら安堵した。拒絶は流石にないだろうが、少しでもこの関係が変わってしまうというのは、私からすればとてつもなく恐ろしいことだからな。……億単位も生きた婆さんなのに、精神的余裕もないなんて…なんて
「んま、これでミラが祖龍っていう凄え龍なのは分かったけどよ。ハジメにはどう伝えるつもりだ?」
「まあ、サツキちゃんと同じく、部屋に連れ込んで2人っきりになったら伝えるつもりだが…」
「香織とか雫には伝えるつもりあるか?」
「むぅ…今のところないが…」
「それだったらもう香織と雫にも伝えた方がいいんじゃねぇか?元々、お前の思惑でアイツら相思相愛になったし、雫もハジメを好きになってんだからよ」
「…2人の人生を操ったのは私だしな。いつまでも隠し事をしてる訳にもいかないか…でも、彼女らはこんな突拍子も無い話信じてくれるだろうか?」
「お前のそのバグった身体能力とか、逸脱した記憶能力の由来伝えたらなんとかなんだろ。アタシは…なんつうの?もう、ミラだからなぁ。みたいな感じで納得しちまったけど。つか、龍化なんてスキルあんだろ?それ見せりゃ一発だろ。……あ!!そういや、アタシまだミラの龍化見てねぇ!」
「見たいのか?」
「そりゃ勿論見てぇに決まってんだろ!昼も言ったが、このサツキ様は常にロマンと少年心に情熱を燃やしながら生きてんだからよ!」
「なら、脱ぐか」
「脱ぐ必要あんのか?」
「地球にいた頃に一度翼を出したら服を突き破った」
「そーか、なら仕方ねぇな」
スルリと上着を脱ぎ、ベットに放り投げる。そのまま下着も脱いで真っ裸の状態になった。
サツキちゃんの方に目を向けると、今か今かと龍に成る瞬間を子供の様に目を輝かせて待っていた。
その様子に微笑みながら、意識を龍に向ける。
腕と脚に白い鱗が纏わりつき、尾てい骨あたりから尻尾がちょこんと生えてきた。背中に意識を向ければ小さな翼が出現し…頭に漆黒の角も生えた。その角以外は全てが白く、穢れは無い。
しかし、どれも不完全だ。腕と脚の裏には鱗が行き渡っていないし、中途半端に人の皮膚と龍の皮膚が分けられている。翼も正直に言えば赤子同然。尻尾なんて…取ってつけたようにコスプレ染みてる。角も一対か……本当なら三対なんだが…。これが今の私の限界か…分かってはいたが、拙いな。
そんな、不完全な姿でもサツキちゃんにはお気に召した様だ。
「おぉ!!これが祖龍の鱗ってやつか!かてぇ!」
「もう全盛期の力にはとてもじゃないが及ばないがな…」
「ドラゴンの本物の尻尾も小せえけど可愛いな!」
「まぁ、完全な龍化は今の私では不可能なんだ。これで勘弁してくれ」
「アタシはこれでも結構満足してるぜ!生のドラゴン娘なんて初めて見たからな!」
「そうか。なら良いんだ」
そのまま暫くサツキちゃんは私の角や翼、鱗を触り続けていた。この状態で自分に触れることもなかった為、妙にくすぐったく感じる。
そのせいか「んっ…」と、変な声が出てしまい、丁度際どい所に触れていたサツキちゃんに変な勘違いをされてしまった…誤解はすぐに解いたが…それでも妙な空気は続いて、心なしかサツキちゃんの顔がさっきよりも赤く染まり、手つきも慎重になった気がする。
そのまま少し経つと、満足しきったのか触るのを終えて、少し目を背けながら「ありがとな」と言ってきた。
私も「気にするな」とだけ応えたが…何故か妙に目を合わせづらく、そのまま龍化を解除した。
「……取り敢えず、もう遅いし…寝るか」
「…あぁ」
彼女の提案に頷いて、布団に横たわり、目を閉じた。
不思議と身体が熱い…。今は、ひんやりとした布団の温度がとても心地良かった。
妙にサツキちゃんが布団に入ってくるのが遅い…そう思って目を開ければ、彼女は服を脱ぎ捨ていて、その穢れのない肢体を全て曝け出していた。
少し驚き、ニヒリと笑ったサツキちゃんの顔が目に入る。すると、彼女は布団の中に素早く潜り込んできた。彼女の足が蛇のようにまとわりつき、滑らかな肌と肉付きの良いふんわりとした肉感が私の肌を刺激してくる。
「…意外だな。昨日限りだと思っていた」
「アタシもこの感覚にハマっちまったのかもな…妙にクセになるんだよ。…あと、ミラの体温を直に感じるのもなんか良いんだ」
足から温度が共有される。それだけで、少し…いやかなりの多幸感が湧いてくる。いったいこの気持ちは何なのだろう…。
より近づいたせいか…サツキちゃんの吐息が私の耳にかかってくすぐったい…思わず身を震わせてしまった。
身を震わせた原因である彼女の口元を、つい凝視してしまう。彼女の唇はぷるっとしていて瑞々しく、健康的なピンク色が月明かりに照らされて妖艶に光っていた。思わず、魅入る…可笑しい。可笑しいぞ私…。
「やってることがいやらしいぞ…」
「へへっ、そうか?まぁ、そうかもな…でもいいんじゃね。アタシら…こんな感じだろ?」
更に顔を寄せてきて、少しでも動けば互いの唇が触れ合う距離に来てしまった。
そのせいか、サツキちゃんの乳房も私の乳房と当たって柔らかい感触が広がり、心臓の熱が伝わってくる。
互いに息の音が聞こえ…妙に艶めかしい。
その状態が何秒か続いて…私は思ってしまった。いや、欲してしまった。
彼女の唇を。彼女の乳房を。彼女の肉体を…。その全てを……。
ふつふつと湧き上がってくる情欲を抑えられず…私の中での枷が外れた。
「サツキちゃん……さっき言ってなかった事が一つある」
「ん?なんだよ?」
「龍は独占欲がかなり強いんだ」
サツキちゃんに覆い被さり、そのまま唇を近づける…。
ふっくらとした感触も抵抗されて一瞬だけだったが、感覚的には1分間以上もしていたような気がする。
顔を真っ赤に染め、手の甲で口元を覆っているサツキちゃんを見てニヤリと破顔した。
億年以上の婆さんでも、結構な性欲はあるんだ。この湧き上がる情欲…トリガーを引いたのは君なんだからな…。
「サツキちゃんは…これから誰にも渡さない。渡すものか…。龍に気に入られてしまったんだ。覚悟しておけよ…。
もう、逃がさない。
昔から感じ取っていたミラさんの
元々、サツキさんからすれば早くに出会った変わり者である自分の同年代の理解者で、協力者。
そんな人と人生の大半を過ごして、ただの親友で終わるはずもなく……
…とか言いつつ、ガールズラブ路線に入ってしまったので、更に拍車がかかってしまったの巻。
ミラさんにヤンデレ属性を持たせるのは間違ってない筈。
初めて夜伽描写書いたけど、やっぱり『初めて』というのはとても難しい試みでした。正直語彙力の無さに絶望してました。それでも、描きたかったとこ書いたので満足。