一体何時間だったのだろうか、暗かった辺りが明るくなって来た頃、最初に動いたのはギーツだった。変身を解除し倒れているルーミアの方へ寄る
「大丈夫か……ルーミア」
「これが大丈夫そうに見えるなら、貴方の目節穴じゃないかしら?」
辺りが血の海になりその真ん中に子供の姿に戻ったルーミアが横たわっていた、瑛須はルーミアに手を差し伸べるもそれを振り払い立ちあがろうとするも力を出し切ったからか上手く立ち上がれない
「今回は……俺の勝ちって事でいいか?」
「はぁ…そうすればいいじゃない……」
「じゃあそう言うこ……と……で……」
不意に視界がぼやけ地面に倒れる瑛須、耳を澄ませると静かに寝息が聞こえてくる。ルーミアに勝ったとは言え瑛須は人間、妖怪を目の前にして寝息を立てるなどまるで自分を食べてくださいと言っているようなものだ
ルーミアは少しずつ陰を瑛須の方へ伸ばす。あともう少し…もうちょっと…目と鼻の先にまで迫った陰が瑛須に飛び掛かろうとした時
「は〜い、そこまでよ?」
ルーミアの首筋に扇子が当てられる、さっきまで瑛須がいた所には彼の姿はなく代わりに紫が立っていた
恨めしそうに紫を睨みつけるルーミアだが、当の本人は涼しい顔で受け流す
「賢者様が何の様?また私を封印しに来た訳?」
「さぁ?どうかしらね……、でも彼を食べたら貴方、ここに居られなくなるかもしれないわよ?」
「それ、あんたの私情も入ってる?たかが人間一人になんでそこまで入れ込むのかしら?」
「その人間に負けたのは貴方よ?それにね……」
ゆっくりと近づきと腰を下ろし、微笑を浮かべルーミアを見下す紫。
「彼はね、私の恩人でもあるのよ?そんな彼を貴方のご飯にはさせられないわ……、それじゃ私はこれで」
「……封印しないの?」
「する必要ある?少なくとも、今の貴方には必要ないと思うけど?」
そう言い残し、隙間に消えていく紫。ルーミアはその背中が見えなくなるとため息を漏らし、眼を閉じる
「ほんっと、嫌な奴……」
その呟きは誰にも聞こえる事はなく、数分後にはルーミアの寝息が聞こえて来た
「全く……いつ帰って来たんだか……それにしても兄さんがこの時間まで寝てるのは珍しわね」
霊夢は昼過ぎになっても起きてこない瑛須が気になり、様子を見に来ていた。いつ帰って来たかは不明だが着ている服が新しい物になっているのは着替えからだろうか……
ふと外から人の気配がしたので外に出る霊夢
「あれ……おかしいわね?確かに人の気配がしたんだけどなぁ‥ん?」
霊夢の視線の先には賽銭箱、その上に白と黒の二つの箱が置いてあった。その箱を手に取りよく見ると、白の箱の蓋の中央には狐、黒の箱には狸を模した絵が描かれていた
「なんなのよこれ?誰がこれを……兄さんに聞いてみよ」
「は〜い霊夢〜?お花見しましょ〜」
「お邪魔しま〜す」
「げっ!紫に幽々子!ええい、帰りなさい!こっちは忙しいのよ!」
隙間から現れた紫と幽々子を見て顔を顰める霊夢、そのまま駆け足で神社の中に入って行く霊夢を追いかける二人
それを木の上から見ていた人影がいた、ケーラだ。今の三人のやり取りを見てケーラが笑いながら手にしたカードを見る
「これがお前が望んだ願いか……よかったなぁ…お前も望み通りだぞ?」
西行寺幽々子が幸せで笑っていられる世界
櫻井嬰寸
「俺からのプレゼント……ちゃんと使ってくれよ?博麗瑛須」
次回から萃夢想篇に入ります