ダンメモたのちぃ。
ルビーちゃんは知っています。
お母さんが『私』を忘れて平和に過ごしているのを知っています。お母さんはルビーちゃんのお母さんではなく、『
はい、敢えて紛らわしく言う必要もありません。前世の肉親なのですから、良くも悪くも知っている相手ですとも。
ルビーちゃんは偶に、前世の実家を訪ねます。
辛いとき、もしくは現実を見たいとき。ルビーちゃんは前世の自宅に向かうのです。少しだけ遠くて、でも行けなくはない場所。楽しい思い出と辛い思い出が入り交じる、ルビーちゃんにとってもよく分からない場所です。
言ってしまえば、現実確認です。時々思います――ママぁが死んだ事が、ルビーちゃんが産まれたことが、せんせーがお兄ちゃんだったことが。
その全てが夢なのでは、と思ってしまうのです。
だから定期的に訪ねるのです。これは現実だ、と自分自身に言い聞かせるために。
……まあ。訪ねると言いましても、子供みたいにピンポンダッシュをしてお母さんの姿を確認するだけなのですが。
ルビーちゃんは知りませんでした。お母さんは
若い男の人と女の人がいました。あの人達の空気、雰囲気、様子――隠れ見て、察して理解しました。お母さんの息子娘でした。それも『
つまりルビーちゃんの知らない『
それでも思うところがあるのは否定しませんが。
…別に、ルビーちゃんはお母さんの不幸を願っているのではありません。
いつまでも引き摺れとも言いません。
と言うか、娘の死に際にも顔を見せない母親なのですから『私』が悲しく妄想する程の善人とも思えません。
それでも一重に他人と割り切れないのはルビーちゃんではなく『私』の弱さです。本当に面倒臭いです、面倒臭いったら面倒臭いのです。
幸せなら結構、と考えてしまうのは飽くまでもルビーちゃんです。『私』の本音はもっと醜くて気持ちが悪くて、お兄ちゃんやミヤえもんには見せられません。
――なんで、その笑顔を私には向けてくれなかったの?私は私を宥めるような、疲れた笑顔しか知らないのに。
――どうしてそんなに幸せそうなの?私は苦しんだ。でも先生にしか縋れなかった。
――私のことはもう忘れたの?死んだ私は、ただお母さんにとっては迷惑な重荷でしかなかったの?
――酷い、酷い…私はあんなにも良い子でいたのに。私に出来ることは全部やったよ?
――従順でいたのに。我儘なんて言わなかったのに。死ぬまで、良い子を演じ続けたのに。…ただ隣で手を握って欲しかっただけなのに。
――昔の優しさは嘘だったの?病気の…欠陥品だった私はお母さんの娘、足り得なかったの…?
……はい、これが醜くて気持ちの悪い『私』の本音です。愛に飢えて惨めな幼子のまま成長を止めた、子供の言葉なのです。
ルビーちゃんが気に止める必要もありません。自分のことですが、実のところ『私』も盲目的なだけで、何も認めない意地っ張りではないので。
分かっている筈なのに。あれから十年以上経って、お母さんを取り巻く環境だって変わっています。ルビーちゃんがママぁの死を乗り越えた演技を悠々としているように、お母さんだって『
なにもおかしなことはありません。むしろ、今となってもすすり泣いて後悔している方が不自然です。まあ、実際…お母さんは『
――これまで沢山の理由を重ねました。いっぱいの言い訳をしました。
でも『私』は何も納得していません。だから面倒臭いのです。ルビーちゃんは『私』が物凄く面倒臭いです。
納得してくれれば楽でした。自分への言い訳、言い聞かせがもっともっと上手ければ簡単でした。
ホントーに面倒臭いです。
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ルビーちゃんは知っています。
ゲームはとても時間を消費することを知っています。ルビーちゃんはゲームに疎いのですが、お兄ちゃんを遊びに誘いたいです。
でも、毎回カラオケに誘うのも芸がないと思われてしまいます。
そこで目を付けたのがゲームです。スマートフォンのソーシャルゲーム、SwitchやPlayStation、ミヤえもんが中古で買っていた3DS。単純にトランプやオセロも。
種類が多くて目が回ります。さてさて、お兄ちゃんはどのゲームが好みなのでしょう?ルビーちゃんもお兄ちゃんも転生者なので、そこら辺がとっても複雑です。
前世のお兄ちゃんは何のゲームをやっていたのでしょう。そもそもゲームに興味はあったのでしょうか。
何も分かりません。ルビーちゃんは最近始めた"アニマルのフォレスト"的なゲームにハマっていますが、アレはアレで男の人を誘って一緒にやるジャンルではありません。
"爆弾男"的なゲームや某"愉快なパーティゲーム"はルビーちゃんがどーせお兄ちゃんに勝てないからつまらないですし、ただひたすらマリモを育てるだけのスマホゲームも虚しいだけです。
一人でやるのであれば、しょーじき何でも良いのです。ルビーちゃんは何にでも程々にハマりますし、いつの間にか過ぎている時間がそれを証明してくれます。
でもお兄ちゃんはどうなのでしょう。ありのまま言いますと、お兄ちゃんがゲームをしている姿は見たことがありません。
暇があったらルビーちゃんのライバルである監督さんの元で演技指導を受けていましたし、それ以外の時間はルビーちゃんが無理やりカラオケに引っ張って行ってました。
…こうして考えますと、お兄ちゃんは非常に忙しい人です。ルビーちゃんとの交流は必要なので仕方がありませんが、他のことに関しましても。
傍から見ていても血気迫る何かを感じます。執念、とでもいいましょうか。語りに語れるほどお兄ちゃんの全てを把握している訳でもありませんが、でもお兄ちゃんがママぁの最期の言葉だけを胸に行動しているとは思えません。
……
兄妹だから顔が、なんて話ではありません。
ルビーちゃんはアイドルを
一人だけを求めて、たった一人に見て欲しくて、その為だけに一番星を超える。それがルビーちゃんです。そして、お兄ちゃんはそんなルビーちゃんに
執念、妄執、そんな危機すら覚える感情がお兄ちゃんの中で燻っています。
でも、やはり分かりません。
目を逸らしてなんかいません。ルビーちゃんは役割をまっとうして、ちゃんと俯瞰しています。その上で分からないということは単純に情報不足なのでしょう。
兎に角、ルビーちゃんはお兄ちゃんをゲームに誘いたいです。そして、どうせ誘うなら楽しんで欲しいのです。お兄ちゃんが何を考えているのかは分かりませんが、ストレスが溜まっているのはルビーちゃんにだってわかります。
よって、これはルビーちゃんがお兄ちゃんと仲良くキャッキャウフフをするためだけではありません。飽くまでもお兄ちゃんのストレス発散が目的です。
それに――ルビーちゃんがお兄ちゃんに勝つチャンスでもあるんです。
ルビーちゃんは俯瞰します。前世から今世にかけて、ルビーちゃんとお兄ちゃんの関係について俯瞰して、まとめました。
その結果、どうやらルビーちゃんはお兄ちゃんに少なくない負担をかけているらしいのです。
前世は常に心配をかけまして、今世ではカラオケに付き合ってもらったり、テスト勉強や受験対策を講じてもらいました。その上、普段から色々と心労をかけている自覚だってあります。
……はい、白状します。嫌われないためのご機嫌取りをしたいのです。
残念ながら大人可愛い文房具を揃えているルビーちゃんのお財布は、涙が出るほど軽くスッカラカンです。そしてミヤえもんから前借りしたので来月のお小遣いもありません。
…よって、ルビーちゃんは全力全開で媚び売りをします。将来のトップアイドルの全力媚び売りなのですから、お兄ちゃんだってデレデレ笑顔でストレスも消え去るハズです。まあ、堅物お兄ちゃんなのでどーせ無理なのでしょうが。
お兄ちゃんに勝ちたいです。お兄ちゃんのご機嫌取りがしたいです。お兄ちゃんに喜んで欲しいです。
……本当に、ルビーちゃんは心の底からお兄ちゃんに惚れているのです。たくさん理由を並べるのは簡単ですが、全部お兄ちゃんが絡みます。
何でもとは言いませんが、お兄ちゃんのための行動には躊躇しません。これがルビーちゃんの愛のカタチです。言葉にはできなくても、ずっと行動で愛を示し続けます。
だから計画も何もなく、テキトーなゲームを持って今日もお兄ちゃんの部屋に突撃するのです。ほのかに染めた頬は、察して欲しい乙女心なのですから。
この後、ゲームでボコボコにされました。解せません…ッ!