※10/5 今更ながらにかなり読みやすく修正しました
「はぁ〜温ったかぁい…やっぱり寒い日のこたつって最高ねぇ…」
霊夢はそう呟くと、みかんを頬張りながらこたつに足を入れて天板にうつぶせる。
そんな彼女を眺めながら君は二人分のお茶を淹れると、一方を彼女へと差し出した。
差しだされた茶碗を受け取ると、霊夢はこくりこくりと喉を鳴らしてそれを飲む。
「あー、美味し。…あんたもお茶淹れるの上手くなったわよねぇ」
そりゃあ霊夢に嫌というほど教えられたからな、と苦笑する君。
どちらかというと教えられた、というよりかは淹れ方を叩き込まれたと言った方が正解か。
あの時の霊夢はさながら子供の頃通っていた寺子屋の先生の如くだった。
始めの頃はよく、どんな淹れ方をしたらこんなに渋くなるのよ…と言われたものだ。それはそれとして捨てるわけでもなく、毎回飲んでくれた彼女には本当に感謝しかないのだが。
……そんな懐かしい記憶を思い返していると、何やらニヤニヤしている霊夢の顔が目に入る。
君は首を傾げてどうかしたのかと問うと、
「いや、前の事思い出してたら何か一緒に告白された時の事思い出しちゃってねぇ…」
む、と唸る君をよそに、頬を緩めて微笑む霊夢。
「早苗んとこに行けば良いのに、わざわざ毎日毎日この妖怪神社に参拝しに来て律儀にお賽銭も入れていって…」
あんたも物好きよねぇ。と微笑みながら言う霊夢。
―ええい、別に良いではないか。
「そしてある時急に大事な話があるなんて言って何事かと思ったら、「貴方の事が好きだ。付き合ってほしい」…なんてね。もう、あの時は本当にビックリしたわよ」
君はむず痒くなり思わず頭を掻くと反論すべく口を開く。
―それを言うならばその時の霊夢だって、「えっ、えええぇ!?…わ、私…?の事が好…きなの?」などと随分初心な反応をしていたではないか。
顔を真っ赤にし、動揺していた霊夢は大変可愛らしかったのを覚えている。
「なっ、ちょっ…あ、あれはあんたがいきなりあんな事言ったからでしょうが!」
もぉ、と赤面しながら頬を膨らませる霊夢を見て、君はすまなかったと笑みを浮かべながら謝罪する。
――しかしそういえば、何故霊夢は自分の告白を受けてくれたのだろうか。
一度気になってしまうと中々に消えないもので、頭の中に浮かんだその疑問をそのまま霊夢へ投げかけてみると、
「……別に、私も……………だったし…」
と、小さな声が返ってきた。
君は聞き取れなかった後半部分をもう一度聞こうとすると、
「あ、も、もうこんな時間じゃない!先にお風呂入っちゃって!ほ、ほらグズグズしない!」
と、強引に話を打ち切られてしまった。
はて、何と言っていたのだろうか。
ふぅ、と檜風呂に張られたお湯に浸かりながら一息付く。
あの後ほぼ強引に風呂に入らされた君は、湯船でゆったりと身体を温めていた。
外で降り続けてる雪はいつ頃止むのだろうか、だの鈴奈庵から借りていた本を返しに行かねばならないな、だのと益体もない事を考えていると不意に、
「ねぇー?お風呂の湯加減大丈夫ー?」
と、霊夢の声が聞こえてきた。
君は、丁度良い湯加減だ、大事ないと声に向かって返す。
「そう、それは良かった。それじゃあ私も一緒に入るから。」
ああ、分かっ―――…待て、今何と――。
君が慌てて聞き返す前にカララと音を立てて戸が開けられる。
そこに居たのは、一糸まとわぬ姿で立つ霊夢だった。
白く透き通る様な肌。人形の様な華奢な手足。
綺麗な形をした鎖骨に小さくて可愛らしいへそ。
そして、小さくもなく、かと言って大き過ぎるわけでもないバランスの良い感じの形をしたむ―――――そこまで認識してから君は、自分の顎を掴んで目線を無理矢理捻じ曲げると壁へと固定する。
「変態。」
と、からかうような言葉が背中に投げかけられる。
「やぁねぇ、別に付き合い始めってわけでも無いんだし。それに私の裸なんて何度も見たでしょ」
―"アレ"はまた別だろう。
霊夢の身体を洗ってるらしい音を後ろ手に聞きつつそう返す。
大体、もはや付き合い始めではないとはいえ、必要最低限の恥じらいは持つべきではないか。そうだ、そうに決まっている。
「あんたって変な所ウブよねぇ」
くすくすと鈴の音のように笑うその声を聞きながら君は壁を睨みつける。
ええい、全く。
大体何故二人で入る必要があるのか、と君がぼやくと、
「あら、薪やお湯の節約にもなるし、それにたまには一緒に入りたいじゃない?」と、洗い流す音と共に声が返ってくる。
むぅ。そう言われてしまえば君とて反論する理由が無いではないか。
自分の大切な人が一緒に風呂に入ろうとしてくる、などと何と贅沢な悩みであろうか。
「ほら、私も入るんだからもう少しスペース空けなさいな」
そんな事を考えていると、身体を洗い終えたらしい霊夢が背中を指でツンツン、とつついてくる。
君はむ、と唸ると、仕方なく浴槽の真ん中から左端へと、身体を移動させる。
それを見た霊夢が、チャプと音を立てて湯船へと浸かる。
「はぁー…あったかぁい……」
幸せそうに呟く霊夢。そんな彼女を君は微かに微笑みながら見つめる。
「お風呂思い付いた人って絶対天才よねぇ、こんな天国を作ったんだもの…」
と、とろんとした瞳をしながら霊夢はそう言った。
ふむ、全くもってその通りだ。
やっている事としてはただ湯に身体を浸からせている、というだけの事なのだが、それでも日中の疲れが流れ落ちていくような感覚を覚えるのだ。
これを考えた人物は間違いなく偉大であろう―…と二人でそんな中身のない会話をしていると、不意に霊夢が悪知恵を思い付いた子供のような、そんな笑みを浮かべた。
君が何を、と問う前に霊夢がその背を君の胸へと寄り掛けた。
――!?
服越しでは無く、肌と肌が触れ合うそのひどく柔らかい感触とその行動による驚愕により硬直する君を横目に、ニマッといたずらっぽい笑みを浮かべる霊夢。
―ええい。
君は覚悟を決めると、彼女を後ろから抱きしめた。
強く、しかし霊夢が痛くないよう力加減を忘れずに――彼女があげた可愛らしい声と腕の中のひどく柔らかな感触を努めて意識しないよう――しっかりと抱きしめる。
「……えっち」
そう言いつつ、しかし満更でもない表情をしている彼女を見て君は苦笑する。
―嫌ならばすぐにでも離すが。
「…ううん、これでいい」
彼女はそう呟くように言うと、君の抱き締めている手にその小さな手を重ねる。
君はそうか、と返すとそれ以上は何も言わずに霊夢を抱きしめながら湯の温かさに身を委ねた。
そうし続け、どれ程経っただろうか。
「―ねぇ。」
不意に霊夢が口を開いた。君が何か、と問うと、
「…私ね、今とーっても幸せだと思うの」
―…そうか。そうだな。
幸せそうにそう呟く彼女を後ろから抱きしめながら、このまま二人でずっとこうしている事が出来るのならばどれ程幸せだろうか――などとそんな事を考えながら、二人してのぼせかけるまで君はずっとその体温を感じていた。
「うわっ、これまた降り積もってるわね…」
湯から上がり寝間着へと着替えた後、ふと戸を開けて外の様子を確認する霊夢の後ろから、君もまた外を見る。
既に真っ暗な境内には、白い雪がこれでもかと降り積もっていた。
それでいてその大粒の雪は未だ止むそぶりを見せず、音を立てずに降り続けている。
これは明日早起きでもして少しでも雪をどけねばなるまいと君が呟くと、男手もあるから今年はちょっと気が楽ね、と霊夢が応じる。
こう、指を鳴らすだけで瞬きの間に綺麗サッパリ消えてしまう魔法の様なものでもあれば良いのだが…。
まぁ、現実はそう上手くはいくまい、と君は思考を打ち切ると身体が冷えてしまっては困るし、何よりもうこんな時間だからそろそろ寝てしまおうと声をかけた。
「それもそうね。とっとと寝ちゃいましょ。」
霊夢はそう言うとパタンと戸を閉じ、部屋へと向かおうと―…。そこで先程のような、何やら子供が悪戯を思い付いたかのような笑みを浮かべる。
次は一体何を思い付いたのやら、と君は苦笑しながら問おうとすると、
「戸締まりの確認お願いね!私は先にお布団敷いとくから!」
そう君に言うとどこか軽快な足取りで部屋へと向かっていってしまった。
―ふむん。
君はそんな彼女の背を見送りながら数秒思案し――仕方なし。と戸の確認に向かった。
「これで良し、っと…」
戸締まりの確認を終えた君が寝室に入ろうとすると、ふとそんな声が聞こえた。
おおかた布団を敷いてくれていた霊夢だろう。
どうれと君が部屋を覗くと、それに気付いた霊夢がこちらを振り返る。
「あ、戸締まり大丈夫だった?」
君はそれに対して問題無いと応じ、布団を敷いてくれた礼を述べ―…そこで何やら違和感を感じた。
布団が敷いてあるには敷いてあるのだが、何故か1つしかなく、おまけにいつも君が使っている枕の横には霊夢のと思わしき枕が置いてあった。
――これはもしや。
君は思わず彼女の方を見やる。
「今日いつもよりかなり寒いでしょう?だから二人で一緒にくっついて寝れば温かいと思って」
そう来たか、と君は苦笑する。
まぁ別に君とて異論があるわけでもなし、そうした方が温かいのも事実。そう結論付けると部屋の電灯を消した。
すると途端に部屋が薄暗くなり、行灯の光だけがゆらゆらと煌めく。
君は一つ静かに息を吐くと、霊夢に寝よう、と声をかけ布団の中へと身体を潜り込ませる。
その後を追うように君の真正面に霊夢が布団へと身体を入れる。そうして二人一緒に横になり君はお休み、と声をかけると「…うん、お休み」と、霊夢の声が返ってくる。
それを聞くと君はゆっくりと目を閉じ―――――――…
どれ程経ったのだろうか、君はふと目を開けた。
眠れないという訳ではないのだが、寒さのせいか妙に目が冴えてしまう。
「…どうしたの、寝ないの?」
先程まで寝ていたにしては、少しばかりはっきりとしていて、それでいてどこか涙声のような声が君の真正面から投げかけられる。
それを言うならば霊夢もだろうと、君は小さな声でそう反論すると、「…そうね」と素直にそう言って黙り込んでしまう。
その仕草におや、と片眉を上げた君はどうかしたのかと問うた。
しかし彼女はそれでも暫く口をつぐんでおり、君は言いたくないのなら別に構わないが、と続ける。
そうしてどうしたものかと思案する頃になって、ようやく霊夢が口を開く。
「……笑わないでね?」
君は無言で肯定すると、言葉の続きを促した。
「夢を見たの。……貴方が突然私の前からいなくなっちゃう夢。いくら名前を呼んでもどれだけ探し回っても見つからなくて……」
それはぽつりと零れ落ちるような、か細く小さい、聞き漏らしそうな声だった。
「…怖いの。いつか、正夢になってしまいそうで……いつか本当にそうなってしまうんじゃないかって…」
それは本来誰に対しても平等であれと言われ続けてきたであろう博麗の巫女が、誰かを好きになるという感情を知り、誰かを愛するという事を知ったが故の弊害なのだろう。
そしてそれを彼女が知るきっかけになったのは他の誰でもない、君なのだ。
「バカみたいよね……天下の博麗の巫女がこんな事で怖いなんて…」
本当にバカみたいと繰り返し呟く霊夢を、君は思い切り自身の胸へと抱き寄せた。
ぎゅうと強く、しかし痛くないよう優しく加減して。
驚きの声をあげる霊夢に対して君はキッパリと言い切った。
――自分はここに居る。
絶対に突然霊夢の側から離れたりしないと、ずっと霊夢の隣に居続けると、霊夢が望むまでいつまでも愛し続けると、そう言葉を重ねて。
「…ばかぁ」
そう言う霊夢の声は、先程の涙声が混じったような声ではなく、どこか安心しきったような声へと変わっていた。
君は霊夢を抱きしめながら、その綺麗な黒髪を優しく梳くように撫でてやる。
優しく、優しく。そうして撫で続けている間にいつの間にか、すーすーと可愛らしい寝息が聞こえてきた。
次は霊夢が良い夢を見られますようにと、君は名も知らぬ博麗神社の神へと祈る。
そうしている間に霊夢の体温のおかげか、君にも眠気が訪れ始めた。
優しく想い人の頭を撫で、その温もりを感じ、そうして静かに目を閉じてゆく。
夜は静かに、更けていく。
…なんでこんなの書いちゃったんだろうね?無いなら自分で書けばいいじゃねぇか!!!!!の精神の結果がコレになります。酷いね。わざわざここまで読んでくださった方ホントにマジでありがとう御座います。いつか続き書く予定なので気長にお茶でも飲みながらお待ち下さい。